▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『与えられし享楽 』
イアル・ミラール7523

 イアルと萌は、神妙な面持ちで本部へと戻ってきた。
 出迎えた令嬢がその異様さに問いかけるが、二人とも彼女に返事をすることが出来ずに、少し時間がほしいとだけ告げて、身体チェックを行える部屋へと向かった。
「う、うぅ……」
 イアルはまともに歩くことが出来ずに、前かがみになり両腕で下半身を隠すようにして前を進んだ。
 それを支える萌も、彼女を直視することが出来ずに少しだけ顔を反らしている。その頬は少しだけ赤く、何かを意識しているのは確かであった。
「イアル、あの……今から検査をするから、取り敢えずはそこに横になって。その後に、その……触診をするから」
「え、ええ……わかったわ……」
 萌にそう言われ、イアルはぎこちない動きのままで診察台に乗った。
 行ったのは、X線検査と魔力測定であった。
 魔女に植え付けられたらしい、植物の正体を探るためだ。
 下腹部を撫でられただけだった。それだけなのに、彼女は大きなものをイアルに残していった。
「……これは……完全に一体化してしまっているわ」
 技師である女性にデータを渡されて、結果を見た萌が眉根を寄せた。
 だがしかし、いつものような冷静さを保つことができなかった。
「あの、これ……本当に……『そう』なんですか?」
「萌ちゃんにはまだ早かったかしら? でも触診は貴女がするんでしょ?」
「それは……そう、ですけど……」
 技師の女性にからかわれつつも、萌はイアルを振り返った。
 そして人払いを願い出たあと、彼女は診察台で横たわったままのイアルの傍へと歩み寄る。
「……イアル」
「も、萌……見ないで……」
「でも、確かめないと……その、報告もあるし……」
「早く……してね……耐えられないわ」
 イアルは体温が上昇していた。
 頬も紅潮していて、それが色っぽくも見える。
 ガウン型の検診衣の上からであるか、萌がそろりと手を差し出した。そして小さな手のひらが、イアルの下半身あたりへと伸びる。
「ひっ……」
 当然のように、イアルが拒絶の反応を見せた。
 それでも萌は止めることはせずに、その場をまさぐる。
「も、萌……そんな風に、触ってはダメよ……」
「でも、ちゃんと、確かめないと……」
 萌は何故だかとても興奮していた。イアルが明らかに嫌がっているのに、その場を離れることが出来ない。そして、今行っている事を、止めることが出来なかった。
「これが、い、一体化……。あのね、イアル……その、これなんだけど、触ってわかるように……イアルの体に馴染んじゃったみたいなの。それで……摘出は難しいみたいで……」
「……っ、うう……」
 真っ赤になりながらそう言う萌とは違い、イアルは羞恥とショックを隠しきれずに、仰向けのまま両手で顔を覆った。手のひらから、静かに涙が零れ落ちる。
 それを間近で見た萌は、我に返って自分の手を引いた。
「イアル……もう大丈夫だから、シャワー浴びに行こう」
「…………」
 萌がそう言いながらイアルの体に手を添えて、起こそうとした。
 するとイアルはそれには抵抗なく応えて体を起こし、自分から診察台を降りてみせる。
「……取り乱してしまってごめんなさい、萌」
「ううん……私こそ、こんな恥ずかしい思いをさせちゃって、ごめんね……」
 その場で互いに謝罪をすると、二人の間の空気が少しだけ柔らかなものになった。
 自然と手と手がふれあい、改めて握り合う。
 それが恋人繋ぎとなるのは、やはり特別な関係であるからなのか。
 そんなことを考えながら、二人はシャワールームへと向かった。

 いつも通り、同じ空間で互いの体を洗い合う。
 たっぷりの泡に包まれつつ、石鹸の香りが漂う中、イアルの体の一部だけがどうしても臭っていた。
 魔女に植え付けられたあの部分であった。
 いくら洗ってもその匂いは取れずに、困惑気味になる。
「そう言えば、最初は植物だったよね……」
「ええ……どうやらこの臭い含めて、あの魔女の仕業なんでしょうね。……もういっそ、切り取ってしまおうかしら」
「それはダメ! 体の一部になっちゃってるんだから、危険すぎるよ!」
 泡で見えづらいが、イアルの美しい肢体にソレは食い込んでいる。心では拒絶したが、体にはうまく適合してしまったらしいその『植物』は、萌の言うとおりに既にイアルの一部として機能していた。
「…………」
「…………」
 沈黙が生まれた。
 イアルにも萌にも、特別な気持ちが沸き上がってきているのだ。

 ――コレでもっと愛し合えるわよ。

 魔女の言葉が再生される。イアルの脳内でも、萌の脳内でも。
 拒絶はしているはずなのに、どうしても拒絶しきれない。
 求めてみたい。
 感じてみたい。
 そう、心で呟いてしまえば、後はもう欲望に身を任せるしか無い。
「……萌」
「イアル……」
 シャワーの湯が跳ねる中で、二人は互いの体を寄せ合った。
 そして互いに名を呼びあった後、唇が重なり、影も一つとなって体温を確かめ合う。
 二度目となる触れ合いは、以前以上に熱いものとなり、数時間先も続いていた。



「ん……」
 静まり返った深夜、ふと目が覚めた萌が、隣で眠るイアルを確認して安堵のため息を漏らした。
 イアルは体に起きた不調を酷く厭っていたが、それでもこうして触れ合うことには積極的であった。
 だから萌もそれを素直に受け入れて、『快楽』を知った。
 イアルの体の中にある魔力を吸収して、魔女の施した『植物』がまるで元からそこにあるかのように活動を続けていた。こうなるともう、魔女に直接術を解いてもらう他には、体からは引き離せないのだろう。
「……どうしたら」
 萌は小さくそう呟いた。
 それでもその声はか弱く、意識にブレが生じている自覚があった。
 イアルが自分へともたらす悦びを、感じてしまったから。
「……、……」
 こんなはずではない。
 これでは、エージェントとしては失格だ。
 そうは思いつつも、乱れる心が萌の意思を狂わせていく。
「……イアル、どうしたらいいの」
 不安を感じてそう呟けば、それに応えるようにして、隣で眠っていたはずのイアルが腕を伸ばしてきた。
「萌が傍にいてくれれば、いいわ……」
「うん、傍にいるよ……絶対……」
 二人は柔らかく抱き合い、言葉を交わした。
 それから暫くそうしていると、再びの睡魔が訪れて、萌もイアルも眠りに落ちたのであった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【7523 : イアル・ミラール : 女性 : 20歳 : 素足の王女】
【NPCA019 : 茂枝・萌 : 女性 : 14歳 : IO2エージェント NINJA】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 いつも有難うございます。
 今後この二人がどうなっていくかはまだ解りませんが、どんな道を選ぶんだろうなと考えていたりもします。
 また機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
東京怪談ノベル(シングル) -
涼月青 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年07月31日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.