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『友達の友達から聞いた話 』
オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&ユエリャン・李aa0076hero002)&ヰ鶴 文aa0626hero002)&大黒 存影aa3876)&雁屋 和aa0035

「……夢を、見るんだ。知らない家の」

 誰かから聞いた噂話。
 友達の友達から聞いた話。

「夢、ねぇ」
「まぁそういうこともあるであろうな」

 ただの夢、夢は夢、しょせんは夢。
 そう思っていたんだ。その時は。







 夢を見るんだ。知らない家の。
 ――顔色の悪いオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)の相談に、雁屋 和(aa0035)は半信半疑、ユエリャン・李(aa0076hero002)は許容はしつつも冷静な様子だった。
「それで……夢の詳しい内容は?」
 幽霊なんて――とは思いつつも、この生真面目な友人が冗談や嘘を言うとは思えなくて。和はオリヴィエに言葉を促した。どこか、気味の悪さを感じながら。
 コクンと頷いたオリヴィエは、しかし、わずかに眉根を寄せる。思い出すのもおぞましい、という様子だった。それでもポツリポツリ、視線を落としたまま、英雄は語り始める。夢の、話を。

 ――気付けば、この世界のどこにでもあるような……大きめの一軒家にいる。
 窓の外は空が真っ白い曇りで、まるで死体の肌のような色で、どうにも気味が悪い。
 家の中は電気がついておらず薄暗く、スイッチをつけてもブレーカーを操作しても明かりは灯らない。
 誰もいない……ハズなのに妙にひとけを感じて……薄ら寒いほど静かで……時計の秒針の音と、自分の足音だけが嫌なほど響く。
 家から出ようとしても、それができない。玄関に向かって、ドアを開けたら、気付けば二階の和室にいたり、浴室にいたり……家の中もチグハグなんだ。一階から階段を登っても一階にいたり……。

「そこで俺は何度も死んで……いや、殺されてるんだ」
 こめかみを押さえ、オリヴィエは溜息を吐く。「殺される?」と問いかけたユエリャンに、「誰に殺されてるのかは分からない」と彼は答えた。それから「死因も様々だ」と付け加える。死因の詳しくは話したがらない。それほど気味悪く不可解なものなのだろう。
「そもそもがおかしいんだ。俺は普段、眠ることなんてないのに……最近はボンヤリするだけで、気付いたら夢の中の……例の家にいるんだ」
 英雄は睡眠を必要としない。なのに。いや、それどころか。眠る時間が長くなっている、とオリヴィエは告げる。
「夢は脳の記憶整理とも言うが……それにしても妙であるな」
 ユエリャンは考え込む仕草を見せる。和も「従魔か愚神の仕業って可能性も……?」と首を傾げていた。

 窓の外では入道雲が、素知らぬ顔で部屋を覗き込んでいる。
 ガラスに隔てられがセミの声がエアコンの風に震えていた。

 ――ただの夢、夢は夢、しょせんは夢。
 ――ただの噂、友達の友達から聞いた話。


 じじじじじ。セミが鳴いている。


 じじじじじじじじじ――







 妙だ、と思った。

 嫌に湿った心地を感じて、ヰ鶴 文(aa0626hero002)は目を覚ました。
 見覚えの無い天井。見覚えの無い和室。見覚えの無い布団。……彼を包んでいたのは、不愉快な湿度を与える冷たい布団だった。気味悪さに、見覚えの無い違和感に、文は反射的に布団をはねのけて飛び起きる。
「っ? ……!?」
 離れても肌にまとわり付いているようなベタつきに思わず眉根を寄せつつ、彼は周囲を見渡した。

「……なに、ここ」

 妙だ。知らない場所。自分は……こんなところで横になった覚えはない。妙だ、そうだ、静か過ぎる。真夏の盛り、窓を閉め切っていても、朝っぱらから忙しなくセミの声が聞こえるハズなのに。

 かち、こち、かち、こち――

 時計の音だけが聞こえる。見渡せば、壁掛け時計。針がない。一つもない。なのに、ない針で時を刻み、音を立てている。じっと見ていると違和感に吐き気すら感じそうで、文は思わずと顔をそらした。
「……、」
 窓もない部屋……電気も点いておらず、薄暗い。一先ず、ここから立ち去って、見知った場所に帰らなければ。そう思った文は一歩を踏み出した。嫌に湿気った畳がぶよぶよと彼の足を沈める。良く見れば所々がカビて腐敗していた。それを素足で踏んでいかねばならない不快感に、文は「なんなんだよ……」と恐怖がない交ぜになった悪態を吐いた。
 とかく、文の目に映る全てが、彼の生理的嫌悪感を煽る。大体、こういうホラーめいたモノは好きじゃないのだ――思いつつ、この部屋から出る為のふすまを勢い良く開けた。

「う わッ!!?」

 ふすまを開けたまさに眼前。そこに立っていたのは、そして驚きの声を上げたのは、棒つき飴を咥えた見知らぬ男――大黒 存影(aa3876)だった。『見知らぬ男』は文にたいそう驚いたようで、三白眼の目を真ん丸にして彼を凝視している。
「だ、……っ誰だ」
 文は驚きのまま警戒を露に、帯刀している刃に手をかけようとして――武器がないことに気付く――重心を低くした姿勢のまま、存影をキッと睨み付けた。
「え、あ、あー……人間、なのか?」
 両手を上げて「敵意はない」「落ち着け」と示しつつ、緊張の残る声で存影が尋ねる。文は眉間にシワを寄せた。そのまま警戒を解くことなく、呟く。
「……人間じゃない」
「なっ、」
「英雄、だ。……不本意ながら、な」
 不本意の理由は説明せず、文はそのままジロリと存影の頭の天辺から爪先までを眺め渡す。お前はなんなんだ、と眼差しで促せば、男は大きく溜息を吐いた。
「俺は人間……だな。名前は大黒存影。まあ、ひとまず、お前の敵じゃない。愚神でも従魔でもない」
「……あんたが人だっていう、証拠がない」
「ま、そらそーだわな。仮に人間証明書ってのを突きつけても、お前は疑いの目を向けるだろうが」
 存影は皮肉気に肩を竦める。「で、どうするんだ」と続けて問いかけた。このまま睨み合ったまま永遠に時を過ごすのか、敵と断じて攻撃するのか、ひとまず話し合ってくれるのか。
 文はしばし彼を見つめる――完全に信頼こそはまだできないものの、存影の言うことも尤もだ。ここでいきなり殴りあった所で、事態が解決しそうな気配はない。
 それに、だ……怖いし嫌だしこんな場所からは早く解放されたいし。原因があるのなら、協力すれば解決の糸口も見えるかもしれない。そう思ってはようやっと警戒を解き、英雄は自らの名を口にするのだった。
「……ヰ鶴文、だ」







「やっぱり……夢なのか? 幻想蝶も反応しなかったし……」
 存影は手の中の幻想蝶に視線を落とし、物言わぬそれに溜息を吐いた。夢ならば、と思ってかれこれ何度も頬をつねってみているが、痛いだけで夢が終わる気配もない。
「その……例の、夢の話。……詳しく、思い出せないのか?」
 文が問いかける。「僕は噂として朧に聞いた程度でしかない」と付け加えた。すると存影は緩やかに首を振った。
「俺が噂話を聞いたのは子供からでな。……子供が遊びで話す、よくある噂話の怪談だと思って、聞き流してたんだよ。だから断片的にしか……」
 存影は『実家』である孤児院の家族達が話していたことを思い返す。それを昨夜、布団の中でふと思い出して――気付いたらここに。
「だが安心しろ、こういうホラー系の知識なら多少はある」
 ホラー。存影が口にした単語に、文の顔色が悪くなる。
「過去、俺にトラウマを作ったホラーゲームだと……『こういう場合に外に出るには逆に積極的に調べないと駄目』で、そして『仲間を見つけて協力しないとヤバイ』。
 ゲームを話に持ち出したが、ふざけてなんかないからな。人生、何が役に立つか――」
 そこまで話して、存影は文が立ち止まっていたことに気付く。どうした? と振り返れば、彼は青ざめた顔で向こう側を指差していた。存影は怪訝のままそちらを見やり……凍りつく。

 暗い廊下の向こう。
 暗がりの中に何かいる。
 人間……? にしては、手足や首など、パーツが気持ち悪いほど、ひょろ長い。

「……本当に、無理。怖いのだけは」
 冷静になれと自分に言い聞かせつつも。顔を引き攣らせて、文は半歩下がる。存影は驚愕のあまり、棒つき飴が口からこぼれ落ちた。
 人の形をした何かが一歩、こっちに寄ってきたのは同時。
「逃げるぞッ」
 存影は反射的に声を張った。文の服を掴んで、反対側へと走り出す。そのまま手近な戸を開けて、古びた物置へと駆け込んだ。
「……っど、どうすんの、行き止まり……」
 焦燥しきった文が呼吸を詰まらせ存影に問う。すると答えるよりも先に、存影は文を埃っぽい押入れの中に放り込む。
「……大黒さん、っ!」
「じっとしてろ!」
 閉められるふすま。けれどわずかな隙間。存影の背中が見えて、――「ぐがッ」という苦悶の声と共に彼の体が『浮き上がる』。理由はすぐに分かった。天井から垂れた首吊り縄――文は思わず押入れから飛び出そうとした。彼を救うためだ。
 何者かの顔が押入れを覗き込み、その隙間を塞いだのは直後。
 文が最後に見たのは、こちらを凝視する目玉と、そして、だらんと力を失い垂れ下がってしまった存影――







(確か――そう、この手の悪夢は……感染、する、だっけ)

 目を覚ました和は、「やっぱり」と呟いた。見知らぬ暗い家。彼女は古びて朽ちた仏壇の前に倒れていた。
(動かないのは愚、かと言って動きすぎるのも愚のはず――蛮勇を振るう場面じゃない、か)
 湿った畳。時計の音。窓が見えたのですぐに駆け寄った。……開かない。ガラスを叩いても、割れすらしない。空は死体めいて白い。見える町の風景はどこにでもある住宅街だが、誰もいない。不気味なほどに。
 ここはどこなのか。町の風景に何かヒントがないか和は目を凝らす。――と。ふと電柱に目が留まった。

「、 ッ!!」

 目が合ってしまう。電柱からこちらをジイと見上げていた子供。気持ち悪いほど口が大きく赤く裂けていて、笑った顔が張り付いていた。……人間じゃない。手を振っていた。思わず和はしゃがみこんで姿を隠す。
 次の瞬間だ。和のいる部屋のふすまが開き――
「君……!」
「ユエリャンさん!」
 そこにいたのは、オリヴィエの手を引いたユエリャンだった。見知った顔に、和はどっと安心する。
「窓には近寄らないで……なにかがこっちを見てる」
「……」
 ユエリャンは眉をひそめた。その手を握るオリヴィエは青い顔でうつむいて、酷く怯えた様子である。
「大丈夫だ、オリヴィエ。三人寄れば文殊の知恵とも言うであろう」
 己が『子』を落ち着かせるように優しくそう言って、ユエリャンは改めて和を見やった。
「ひとまず、出口を探そう」
 出口なんてあるのか、わからないけれど。
「……そうね」
 緊張を孕んだ表情で和は頷いた。殴ってどうにかなる問題ではなさそうだが、好きなように弄ばれるのは癪だった。


 ――ぎし。ぎし。


 一歩の度に、軋む廊下。
 どこにいても、時計の針の音が聞こえる。

「! ユエリャンさん、これ」
 最中だった。和が、廊下に棒つき飴が落ちているのを見つける。
「ふむ……食べかけのようだが」
 誰ぞが食べていたのだろうか。だったらどうして?

 ぎし。ぎし――

 軋む音が響く。
「……っ」
 オリヴィエが小さく息を呑んで、ユエリャンの手をいっそう強く握った。
「縄の音……」
 チラ、と見やる先には、戸が半開きの……物置だろうか。
 ユエリャンと和は視線を交わす。行くべきか否か。ややあって、和が「私が見てくる」と意を決して、一歩。

 覗きこんだ。


「ひっ!」
 ぎし。ぎし。そこには、風もないのに揺られているモノ。縄で、首を吊られた、……。……しかもそれが、目の前で、ぶちりと。どさりと。縄で吊られたところから千切れて、落ちる。ごとん。苦悶のままこと切れた顔が、転がった。
「これは……、」
 後ろから共に様子を窺ったユエリャンも惨状に顔をしかめた。と、二人は物置の隅で蹲って、ゴソゴソと何かをしている銀髪の青年を見つける。
「……文?」
 その名を呼んだのはユエリャンだった。
 顔を上げたのは確かに文だ。
 だが文の口周りはべったりと赤色に染まっていた。

 ……自分の指を食べていたから。

「なッ……!」
 狂気的な情景にユエリャンは目を見開く。文は焦点のあっていない目をして、言葉にも形容できない奇声を――嗚咽を――? 喚き散らす。明らかに異常だった。そう、まるで、何かに取り憑かれているかのような。あれは文の見た目をしているが、もう中身は文じゃない。ユエリャンはそれを嫌でも理解する。
「っ知り合いの、方ですか?」
「かもしれんが、『もう違う』! 逃げるぞ!」
 切羽詰ったユエリャンの返答に、和も本能的に思うのだ。この状況、殴ってどうのこうので解決なんてできない問題だ。
「怖い、怖い、怖い、怖い」
 ユエリャンに手を引かれるオリヴィエは震えながらその呟きを繰り返す。『アレ』に攻撃などが通用しないことは、ここではオリヴィエが誰よりも知っていた。抵抗もできない。理解もできない。意味が分からない。そんな恐怖が、彼の心を塗り潰している。
「っ……見て! 玄関が」
 和が先を指差すと、下り階段の向こう側に玄関が。あそこが外に繋がっている保障はないが、それでも今は目指すしかなくて。
(アイツは追ってきてるの――?)
 一瞬、和は後ろを振り返る。

 ほぼ密着している距離、真後ろに、不気味なほど白くてぶよぶよした人間がいた。

「え、」
 伸ばされた腕が和を掴む。後ろを振り返ったままの和の頭を、体を。
「あ゛ッ ぐ」
 そのまま、もっともっと『後ろを向かせようと』、万力のような腕が無理矢理、和の体を頭を捻っていく。人間の許容量を超えて。肌が筋が骨が裂けて千切れるのも厭わずに。想像を絶する激痛に、美しかった和の顔が哀れなほど歪んでいっても。
「いだッ ア゛ 痛い、い゛だァあ゛あ やッ めて、 」

 ぶち。

 ぼと。

 ぼと、ぼと、ぼと、……。

 鞠のように弾んだ『和』が、ユエリャンとオリヴィエを通り越して、階段から転がり落ちていった。
「あ、ああ、あ」
 オリヴィエは恐怖に視界が暗くなるのを感じた。
「ぃ、嫌だ、もう、嫌、イヤ、イヤダ、あ、ア ユエ にげて」
 もう立っていられなくて、へたりこんで、怖くて怖くて嗚咽を漏らす。
「オリヴィエ! 大丈夫だ、お前は母が護るからっ!」
 ユエリャンは半ば叫ぶようにそう声を張り、オリヴィエの小さな体を抱き上げる。肉体労働なんて普段はしない手に足に無理をさせて、階段を下りる。振り返っている暇はない。
 いつかは報いを受けるであろう――ユエリャンは己の運命に対してそう達観しているが。それが友人や、愛するオリヴィエに降り注ぐことには、常の冷静さを保ってなどいられなかった。
 逃げねば。逃げねば。逃げねば。どこに? どこでもいい。階段はあと一段、降りて、――

 視界がグルリと回る。

「!?」
 冷たい。重い。ここは? 声が出ない。息ができない。苦しい。ここは――水の中?
「ッ? ――!?」
 ごぼ、とユエリャンは泡を吐いた。狭い。冷たい。……水が張られた浴槽の底。起き上がるのなんて簡単なはずなのに。なぜか体が動かない。なぜ、……水の中、幾つもの手がユエリャンを掴んでいた。水の底に、縛り付けていた。
「 ――ッ、」
 自分が吐いた泡で揺らぐ水面に。オリヴィエが見える。こっちを覗き込んで、ユエリャンを救おうと手を伸ばしている『子』の姿が。駄目、こっちに来ては駄目。
(オリヴィエ、オリヴィエ、)
 ユエリャンはパニック状態だった。あんなに怯えていたオリヴィエを一人残すわけには。助けなければ。なのに。狂いそうな焦燥と絶望がユエリャンの脳を焼く。

(嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ!)

 母は、子を二度失うことを耐えられない。
 もがく体、伸ばそうとした手、浴槽にたゆたう赤い髪、……それもやがて、ゆるゆると水底へと重く沈んでいく……。

「どうして、……」
 オリヴィエは見ていることしかできなかった。助けることができなかった。母を。友人を。彼等の知り合いを。冷たい浴槽を覗き込んで、震えることしかできなかった。

「俺達が、悪いことをしたのか?」

 ひた、ひた、遠くから足音が聞こえる。

「だったら、謝る、謝るからッ……!」

 がら、り。浴槽の戸が、開く。

「だからもうッ、もうこんな、こんなことは、嫌だ、やめてくれッ……!!」

 振り返った。包丁が振り下ろされた。
 浴槽の冷たいタイルに、温かい赤が散る。







 目を覚ました。
 いつもの見知った寝室だった。
 空は青色に晴れていた。
 セミが忙しなく鳴いていた。

 存影は思わず自らの首をさすった。無事だ。くっついている。痕も何もない。息ができる。呆然としていた。心臓がいつまでも震えていた。でも夢だった、なんだ夢だったじゃないか。なんだよ、なんだ……こぼれた笑いは、乾ききって掠れていた。

 文は自分の両手を見た。指は十本、ちゃんとある。けれど喉につっかえているような心地と不快感に胃液がせり上がり――便所へと駆けていく。胃の中身が、全て口から出た。便器にぶちまけられたそこに指は一本も含まれていなかった。はずだ。

 和は自分の喉に手を添えて、布団から起き上がったまま青ざめていた。夢? 夢だった? 夢にしては、あの痛みは、まるで本物のようで……階段を転がり落ちた視点を思い出しては、ゾッと気持ちが悪くなった。

 ユエリャンは起き上がってもなおヒステリー状態だった。髪を振り乱し青ざめた顔で「オリヴィエはどこだ! 我輩の子はどこだ!!」と声を枯らして子を探していた。あまりに狂乱しているものだから、同居している能力者や英雄に取り押さえられたほどだ。

 オリヴィエは起き上がることもままならず、丸くなって震えていた。遠く、能力者の電話でのやりとりが聞こえてくる。その話を聞いて……ユエリャンもあの夢を見たのだと。あの夢は、夢であるが事実だったのだと、絶望めいて思い知る。


 最初に行動したのは文だった。夢の中で朧に見た知り合い――ユエリャンに連絡を取り、夢のことを話して。それから、文は存影を探した。同じH.O.P.E.所属のエージェントと知ったのはすぐで。
 そして五人は夢ではない世界で出会うのだ。
 ただならぬ気配を感じつつ。けれど、それを何とかしようと足掻くために。


 ――ただの夢、夢は夢、しょせんは夢。
 ――ただの噂、友達の友達から聞いた話。

 ――でも、本当の話。逃れられない現実の話。


 じじじじじ。セミが鳴いている。


 じじじじじじじじじ―― じじじじ――




『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)/男/11歳/ジャックポット
ユエリャン・李(aa0076hero002)/?/28歳/シャドウルーカー
ヰ鶴 文(aa0626hero002)/男/20歳/カオティックブレイド
大黒 存影(aa3876)/男/22歳/生命適性
雁屋 和(aa0035)/女/20歳/攻撃適性
イベントノベル(パーティ) -
ガンマ クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年08月16日

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