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『BEACHSIDE! GIRLHUNT! 』
ガルー・A・Aaa0076hero001)&小鉄aa0213)&白虎丸aa0123hero001)&オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&恋迷路 ネリネaa1453hero002)&レオンハルトaa0405hero001)&麻生 遊夜aa0452)&シキaa0890hero001)&レティシア ブランシェaa0626hero001)&ブラッドaa4236hero001

●SEA
 ガルー・A・Aは暇を持て余していた。季節は夏、天気は文句なしの快晴。
(それなのに予定の一つもないとは、俺様も落ちたもんだ)
 そう考えて、彼ははたと思い当った。予定がないなら作れば良い。行き先は――そうだ、海にしよう。幸いにも彼には、突然の思い付きを実行する人脈があったのである。



「それで、何で俺なんだ?」
 真夏の太陽の下、怪訝な表情を浮かべてレティシア ブランシェは言った。水着に着替えてはいるが、上半身は大きなタオルで覆われている。
「夏と言えば海。海と言えばナンパ。ナンパするなら独り者を誘わねぇとな」
「無茶苦茶に失礼だな」
「で、相も変わらず女っ気のないレティを……」
 揶揄うために。
「……助けるためにこうして誘ったわけだ」
「その間はなんだ」
 ガルーは呆れたようにため息を吐く。
「これだからお前さんは浮いた話が出てこねぇんだ。折角の夏なんだから楽しまなきゃ損だろ」
 なんだか不当にけなされた気もしないではないが、レティシアとて遊ぶのが嫌なわけではない。ナンパに乗り気でないだけだ。
「つーか……このメンバーでナンパすんのか?」
 レティシアの視線はかなり低い位置に固定された。アンクルストラップのサンダルとかぼちゃパンツ風の水着、そしてつば広の麦わら帽子をばっちり着こなすのはシキである。
「チビ助はイレギュラーだ。あと、彼女もな」
 ガルーが言ったのは、紅一点の恋迷路 ネリネのことである。使用人として仕える相手でもある能力者が財閥の用事で不在だったらしく、今日は休日だったのだ。
「海に来るのって久しぶりだなぁ」
 そう呟いて笑みを浮かべる彼女。オレンジ地に白のネリネ柄のビキニとパレオがまぶしい。
「ネリネは、いつもとちがういんしょうだね。よくにあっているよ」
「本当? 嬉しいな! シキちゃんもすっごく可愛いよ」
「ふふ、そうだろう」
 予定外のメンバーではあったが、これはこれで楽しいので良いだろう。
「白虎丸でござる。以後お見知りおきを」
「ブラッドだ」
 初対面同士挨拶をしてる二人の元にやって来たのは小鉄だ。
「白虎丸殿、ご一緒できて嬉しいでござる!」
「あいつに声がかかったのだが、今日は用事が合ったようでな。代わりに来たでござるよ」
 ブラッドは突如発生した「ござる」ゾーンに戸惑いを隠せない。しかも片やホワイトタイガー頭、片やスポーツ水着に覆面という職質待ったなしの二名である。海には興味のなかったブラッドだが、ガルーに荷物持ちという名目で拉致されてきたようだ。
「こういう機会は少ないからな、男共でバカ騒ぎするのも悪くない」
 左手の薬指に指輪を光らせるのは麻生 遊夜。メンバー唯一の既婚者であり、孤児たちの父親代わり。年下を見ると世話を焼かずにいられないらしい。
「それ、すごいことになってんな」
 にまにまと笑うガルーに、オリヴィエ・オドランが怪訝そうな視線を向ける。
「やれやれ、心配しなくてもいいってのにな」
 ナンパ指南ということで、遊夜の首筋には愛しい嫁の牙によるマーキングがくっきりと残されている。
「そういえば遊びで海に来るのは初めてだなぁ」
 海風に吹かれながら爽やかな笑みを浮かべたのはレオンハルトだ。最近は仕事が忙しく、友人と遊びに行く機会がなかった。ガルーの誘いには二つ返事で参加の返事を返してくれた。
「というわけで、さっそくガルー先生のナンパ講座を始めるぜ!」
「おー!」
「レオンハルト、裏切ったな……」
 レティシアの恨み言は誰にも響くことなく、砂粒の間に染みていった。

●TEACHER?
「ナンパ? つまり、人を見極める修業でござるな!?」
 小鉄はそう結論付けた。
「レティシア殿に手本を見せてくるでござる!」
 言うが早いか駆け出し、あっという間に小さくなる小鉄の姿。
「大丈夫なのか、あれ」
 オリヴィエが唖然として言う。
「まぁ、大人だから平気だと思うがね」
 遊夜は白虎丸と共にパラソルやシートの準備をしている。
「チビ助はおとなしくしてろよ。かき氷くらいなら買ってやるから」
「ふむ、なかなかよいこころがけだね」
 尊大に答えるシキだが、表情は嬉しそうだ。
「ネリネちゃんも一緒にどうですか?」
「良いんですか? 嬉しいです!」
 ネリネは瞳を輝かせる。癒しだ。
「フランクフルトも、かってくれたまえ」
「はいはい」
 一方、ブラッドはパラソルの下に座ってビデオカメラを回し始めた。
「そんなもの撮ってどうするんだ?」
「弱みを握れれば儲けモノだろう?」
 オリヴィエが問えば、ブラッドはあくび交じりに応える。
「遊びたいなら行ってこいよ。荷物番なら足りてるから」
「俺は別に……」
 実はオリヴィエは泳げないのである。海まで来てしまったはいいが、どうしたものか。そう考えていると。
「あそびにさそうのかね。わたしが、おてほんをみせてあげよう」
 戻って来たシキが開口一番そう言った。ガルーに買ってもらったかき氷を手に女性をナンパしに行く。
「やあ、あついね。かきごおりは、もうたべたかい。つめたくておいしいよ」
 声をかけられた女性たちは、シキの可愛さにすっかり警戒を解いている。話題は好みのシロップやらどこから遊びに来たのかという質問やらほのぼのとしたものだが、会話を続けながら順調にこちらに歩いてくる。
「あちらにいるのが、わたしのゆうじんたちだ。きみも、いっしょにあそばないかい?」
 女性たちはしばし沈黙した後、硬い声で言った。
「子供をナンパに使うなんて最低……」
 聞く耳持たず去って行く彼女たちの背を見送りながら、シキは言った。
「ガルーのめつきが、わるいのがいけない」
「目つきは関係ねぇだろ」
 白虎丸は、手持無沙汰のオリヴィエともに砂の城を作り始めた。シキはネリネと共にかき氷の続きを食べている。
「ひとくちたべるかね?」
「ありがとう! イチゴ味も要る?」
 メロン味のシロップで緑に染まったシキの舌を見て、ネリネが笑う。華やかに談笑する声をBGMに、続いては遊夜の出番。
「ん? ユーヤ、うわきはいけないよ」
 シキの言葉に彼は苦笑する。マーキングのせいで、もとより成功の可能性は高くないと思うが。
「『あいつらと遊んでやってくれねぇか』って方向性で行ってみるか」
 遊夜は20代なかばの二人組に目を付けた。
「見ての通り男だらけでな、よかったら花を添えてくれると助かるんだが」
 一説によると、堂々とした態度はナンパの成功率を上げるという。引け腰ではダメなのだ。
「そうね、貴方が遊んでくれるなら考えるけど」
 赤いマニキュアの女が遊夜の噛み痕をみて妖艶に笑う。
「っと、それは勘弁してもらおうかな」
 嫁が怖いわけではなく、遊夜の愛は彼女だけのものだから。決して噛まれたくないからじゃない。――多分。
「残念。遊び慣れた人が良かったんだけど。頑張ってね、お兄さんたち」
 応援されてしまった。ブラッドはまた欠伸をしている。ナンパ組が次に目を付けたのは彼だ。舌打ちして出て言ったブラッドだったが、話し込んでいるかと思うと連絡先のメモをぴらぴらさせて帰って来た。
「今日は女子会だから別の日に連絡して、だと」
 不要物をレティシアに押し付け、ふらふらと去って行く。じっとしているのに疲れたらしく、飲み物でも買いに行くという。その時。
「ただいまでござる!」
 小鉄が帰って来た。10人ばかりのマッチョメンを引きつれて。
「たくましいおとこどもだ。いまからみせものでもはじめるのかい?」
「せっかく砂場に来たので、相撲の稽古に付き合っていただこうかと」
「それは良いでござるな!」
 白虎丸だけは乗り気である。レオンハルトは慌てて、女性に声をかける練習なのだと説明する。マッチョメンには「申し訳ない」と頭を下げ、お帰り頂くことにした。
「声をかけるべき相手を間違えておったでござるか。これは失敬したでござる」
 小鉄は照れ臭そうに言う。
「して、女子たちを集めて何の修業を?」
 小鉄への説明がてら、レッスンは実践編へと移るのだった。

●TRY
 ガルー先生は咳払いして、場を仕切りなおす。
「じゃ、改めて……あっちから女性が歩いてきたとするよな」
 少し遠い位置に移動したレオンハルトが、ガルーの合図で歩いてくる。
「そちらのレディ」
「え、私ですかぁ?」
 レオンハルト改め、レオ子は裏声で答える。頭には花の髪飾りをつけた金髪美人である。彼の名誉のためにつけたしておくと、飾りは能力者のもの。間違ってカバンに入っていただけで、女装の趣味などはない。
「あまりの美しさに思わず声をかけてしまいました。俺様と一夏の思い出を作りませんか?」
「キャー素敵! ぜひエスコートしてください!」
 レティシアは歯の浮くようなセリフに鳥肌を立てる。
「こんなちょろい奴、いるのか?」
「何よー、あんたに乙女心のなにがわかるのよー」
 ガルーがふざけながら反論していると、真剣な表情でやって来たのは白虎丸だ。
「お初にお目にかかる。俺は白虎丸と申す者でござる」
「は?」
「失礼ながら、女性がそのような格好でいるのは問題があると思う……でござる。これを使うでござるよ!」
 差し出したのは貝殻ビキニ。白虎丸は女性口調のガルーと簡易な女装をしたレオンハルトを女子だと思い込んでいた。ちなみに水着は彼の趣味ではなく、能力者に押し付けられたものである。
 誤解を解こうとした彼らだったが、あまりの思い込みの強固さに匙を投げる。訂正は後回しにして、『お芝居』に付き合ってくれるよう頼むことにした。様子を見ていた遊夜が「一人で歩いてる女子より、グループの方が警戒心を解きやすいんじゃないか」とアドバイスしたためだ。
「誰かのコピーをするより、レティシアさんの良さを伸ばす方が効率的じゃないでしょうか?」
 レオンハルトの案を取り入れ、レティシアの思うナンパをやらせてみることにした。レオ子と白虎丸子が歩いてくるところに、レティシアが声をかけるというシチュエーションだ。
「なるほど、俺は女子になりきってお誘いを受ければいいんでござるな!」
「うん……それは理解できるんだな……」
 温泉ロケ中の女性タレントのようにタオルを巻いたガルーが、がっくり肩を落とした。
 テイク2。
「白ちゃんさんってちょー美白だよねー。うらやましー!」
「そうでござるにゃん? レオ子殿は貝殻が良くお似合いでござるにゃん」
 ――色々とツッコミが追いつかない。とりあえずガルーは口を出さず見守る。
「あー、そこの三人、止まれ……」
 ガルーは額に手を当てる。愛想も何も合ったものではない。素材は良いのに台無しである。
「きゃー。イケメン。白ちゃんさんのタイプじゃなーい?」
「たいぷ……? えーと、れてぃしあ殿、何か御用でござるにゃん?」
 初対面という設定だが、細かいクオリティは求めるだけ無駄だ。
「暇だったらちょっと来てほしいんだが」
 レティシアは頭をかき、明後日の方向に視線を投げる。
「やだもー、ちょっとお兄さんきょどうふし〜ん」
「きもーい。ひょっとして不審者ー?」
 ガル子がモブっぽく横から茶々を入れる。
「……お前ら絶対、指導したいんじゃなくて面白がってるだけだろ」
「えー? だってその誘い方はないだろ。ネリネちゃんもそう思いますよね?」
 女性代表として問われたネリネは気まずそうに頷く。
「ごめんなさい。私もちょっとどうかなーと……」
 さらにアドバイスを求められて、ネリネはうーんと考える。
「女性を褒めて見てはどうでしょう? みんな、おしゃれしてここに来てると思いますし!」
「それは良いかもな。まず練習として、恋迷路を褒めて見たらどうだ? 水着とか、髪型とか
 遊夜が言う。ネリネは予想外の展開に顔を赤くして待っている。
「え……。あ、良い色の水着だな」
「……ありがとうございます?」
 こてんと首を傾げるネリネ。
「そうだね。あかるいいろがネリネによくにあっている。じぶんでえらんだのかい?」
「うん、そうなの。私と同じ名前の花の柄でね、一目で気に入っちゃった」
 ネリネの表情が華やいだ。
「せんすがよいね。わたしのふくもえらんでみてほしいものだ」
「そんなにほめられると照れちゃうな。今度、一緒にお買い物に行きたいね」
 間。
「シキのナンパが成功したな」
 遊夜がふっと噴き出す。
「買い物といえばそろそろ昼でござるな。まだ修業が続きそうなら、拙者がまとめて買い出しに行くでござるよ?」
 悪気なく発された小鉄の言葉は、彼らに現実に引き戻した。
「いろいろやって来たけど、全く手ごたえがない……。もう、当たって砕けろ作戦でいいんじゃねぇかな」
 ガルーは据わった目で言った。ついに実践のとき。皆は固唾を飲んで行方を見守る。
「そこの」
「あー、ごめんなさーい」
「すみません」
「そういうの大丈夫なんでー!」
 ほとんどの女性はろくに話も聞かずに去っていく。一同はレティの背中がだんだんと小さくなるような錯覚をする。
「あの……」
「なんですか?」
 ついに3名の女性グループが立ち止まってくれた。
「あー、良かったら一緒に飯食わねぇか。あの辺の連中の奢りで」
 せめてもの仕返しにそう提案すると、女性たちは乗って来てくれた。
「え、良いのか?」
「自分から誘ったのにー! お兄さんおもしろーい!」
 レティシアが見守る仲間たちを振り返る。ガルーは思わず拳を突き上げた。
「海に落とせー!」
 やっかみ半分、祝福半分。ガルーの号令でわっしょいわっしょいと運ばれていくレティシア。ネリネとシキは祝福の拍手を送っている。やがて大きく上がった水柱に周囲からも祝福の拍手が送られた。右往左往する様子を見守っていたのは、何も彼らだけではなかった。いつの間にか多くの男性客を味方につけていたのだ。
「よかった……よかった」
 レオンハルトに至っては涙ぐんでいる。遊夜はどさくさに紛れてガルーに突き飛ばされている。こちらも、やっかみと祝福する気持ちの発露らしい。
 ――ただし。
 女性客からの心証は最悪であった。オリヴィエはドン引きした様子でこちらを見る女性たちの視線を感じ、ただ「早く終われ」と願っていた。
「覚えとけよ……」
 水から顔を出したレティシアに、ガルーは落とす瞬間奪っていたタオルを渡す。彼は傷口を隠すように被りなおすと、波打ち際で笑っている女性たちの元へ帰ることにした。
 屋台で何か買い込んで食べようと話がまとまりかけたとき、ようやくブラッドが帰って来た。
「今から飯か?」
 皆は目をむいた。幼稚園児と思しき女児がブラッドのラッシュガードの裾を握っているのだ。
「そ、その子は……?」
 震える声でレオンハルトが問う。
「誘拐?」
 オリヴィエがぼそりとこぼした感想に、ナンパした女性たちがさっと青ざめる。
「私たち、ちょっと用事を思い出したっていうか……」
 脱兎のように逃げていく女性たち。ブラッドを取り囲む友人たちの視線は冷たい。円の中心に追い込まれたブラッドはまるで、折から脱走した危険動物である。
「落とす? むしろ、埋めた方が良い?」
 ガルーの言葉にレオンハルトが首を振る。
「ここは友人として、警察まで付き添うのが良いのでは?」
「とりあえず、自由を奪うために埋める方向でどうでござろう?」
 小鉄がブラッドから目を離さないまま提案すると、シキが頷く。
「ブラッド、むだなていこうはやめて、ひとじちをこちらへわたしたまえ」
 ナンパの話にはいまいちついていけていなかった白虎丸だが、今回ばかりはことの重大さを理解したらしい。
「オリヴィエ殿は、穴を掘るでござる! 俺たちは犯人の逮捕を!」
「いや、待て……」
 後ずさろうにも、退路はなし。とにかく状況を説明しなければ――。そんなブラッドの耳に届いたのは、能天気な声。
「ブラッドさん、お待たせしましたー!」
「ママー!」
 ブラッドが連れていた女児が言う。現れたのは女児よりもさらに小さな子供を連れた夫婦。
「……いったいどういうことなんですか?」
 ネリネがぱちぱちと目を瞬かせる。
「さっき迷子になったこの子を、ブラッドさんが送り届けてくれまして」
「何か、編に懐かれちまったんだよ……」
「この子ったら『一緒にご飯食べる』って言って譲らなくて……」
 母親の言葉を父親が引き継ぐ。
「そうしたら『こっちも大人数だから、数人増えても変わらないだろう』ってブラッドさんが仰ってくれまして。お邪魔じゃなければ、ご一緒してもいいでしょうか?」
 武力制裁から逃れたブラッドだったが、今度は謝罪の嵐と人助けへの称賛に少々いたたまれなくなる。
「もういいだろ。ナンパも一応は成功したようだし、このメンバーで食べようぜ」
 ブラッドはため息を吐く。一同はほのぼのとした昼食タイムを過ごすことになったのだった。
 余談だが、白虎丸の『誤解』は昼食後に解けることとなる。方法については語られることはなかったが、ガルーが「どうしたらいいの、あの子。脱げば宜しいか」と呟いていたのが目撃されたそうである。

●MEMORY
 食事の後は持ってきたビーチボールで遊ぶことになった。
「ビーチバレーですか! 私もやりますっ」
 ネリネが手を上げる。バレーにはそこそこ自信がある。砂に書いたあみだくじの結果、相棒はオリヴィエ、最初の対戦相手はガルーと小鉄に決まった。
 オリヴィエは小さな体と素早さを生かし、時にはスライディングでボールを拾っていく。ネリネは彼が繋いだ球を決して無駄にせず、タイミングばっちりのジャンプから鋭いアタックを浴びせる。
「二人ともやるでござるな!」
 小鉄がどこか嬉しそうに言う。試合はオリヴィエたちがリード。なぜか毎回顔面を狙われるガルーが調子を崩し始めているのだ。
「リーヴィ……」
「すまないわざとだ」
「まだまだ挽回できるでござるよ! 次はこっちのサーブでござる!」
 小鉄もコートを縦横無尽に走り回り、ラインぎりぎりのボールまであきらめず拾う活躍を見せる。そのくせ疲れるどころか、試合が白熱するほど元気になっているような気もする。まさに脳筋忍者。しかし、一歩及ばず。
「今日は一段と調子良いかも!」
 第一回戦の勝者はネリネとオリヴィエ。たゆんたゆんと揺れる胸部が、相手のペースを乱す武器になることに彼女は気づいていなかった。
 何度かローテーションしたころ、見学していたシキがおもむろに立ち上がった。
「きみたちは、ビーチバレーをがんばりたまえ。わたしは、おみやげをさがしてくるよ」
「離れすぎるなよ」
 ブラッドと組み、フォロー役として活躍していた遊夜が声をかける。レオンハルト・白虎丸コンビとの試合は拮抗している。レオンハルトの無駄のない動きと白虎丸の長身から繰り出されるアタックは要警戒だ。シキは鷹揚に頷くと、熱戦が遠目に見えるほどの位置でシーグラスや貝殻を探し始めた。
「いやぁ……動いた動いた」
 楽しそうにレオンハルトが座り込む。遊夜たちとの対戦には辛くも勝利。戦績自体はまずまずだったが、それはあまり気にならないらしい。
「あっちぃのに元気だなあいつら……」
 急に首筋に押し当てられたのは冷たいジュース。声の主はレティシアだった。
「お疲れ様です」
「誰かさんたちのおかげでな」
 彼は飛んで来たボールを思い切り打ち返す。上向きの直線を描いて飛んだボールは、コート内にいたガルーの顎にクリーンヒットしたのだった。



 ビーチバレーの後はのんびりと過ごすことになった。
「白虎丸殿、拙者と勝負と参るでござるよ! あのブイに先に触れた方が勝ちでござる」
「望むところでござる!」
 ただし、ござるコンビは嬉々として遠泳対決を始めていたが。
 オリヴィエもレティシアに誘われ海の中へと向かう。
「……あ。足が」
 浮き輪に乗って引っ張られているうちに、思いの外深い位置まで来ていたらしい。爪先を目一杯伸ばしてみても、オリヴィエの足は海底を軽くこするばかりだ。
「ほら、俺の肩持って体浮かせてみろ。案外怖くねぇから」
 ゴーグルをつけて息を止めるよう指示すると、オリヴィエが言う通りにする。ゴーグル越しに水の中に目を凝らせば、レティシアの足元を魚が泳いでいく。彩度の低い色の魚と透明ではない水が、うすぼんやりとした映像を作り出す。オリヴィエは目を輝かせてその様子を見入る。体は軽く、まるで空を飛んでいるようだった。
 急に体が沈む。とっさにぎゅっと口を強く結び、海水が入らないようにする。足が浮いているため、体勢は不自然な前のめり。そこでやっと犯人の正体に気づいた。しっかりとオリヴィエの肩を掴んでおぼれさせないようにしている張本人――レティシアが突然しゃがんだのが、オリヴィエの難破の原因だ。彼はご丁寧に、海面までのエスコートもしてくれる。
「……何、を……」
 息を切らして、抗議するオリヴィエ。もちろん浮き輪に体を通すのも忘れない。
「底の方に綺麗な貝とか魚いただろ。見えたか?」
 レティシアは答える。細められた目と白い歯。それはいつになく楽しそうな表情で――。こんな笑顔を向けることができるなら、ナンパ特訓などきっと必要なかっただろう。
「っと、あぶね!」
 が、今彼の目の前にいるのはオリヴィエなので、降って来たのは拳の雨。レティシアは苦笑しながら、オリヴィエの両手を受け止めた。
「海の中で社交ダンス……?」
 遠くでネリネが首を傾げていたことをふたりは知らない。
 白虎丸とオリヴィエが作っていた小さな城は、遊夜・ネリネ・シキ・レオンハルトに拾われた。今や彼らの手によって何倍にも膨れ上がり、巨大な要塞の如く仕上がっていた。
「ガルーとブラッドにもへやをあたえよう。このあたりでいいかね?」
 指をぐりぐりと押し込み、壁面に窓を描くシキ。
「皆さんが戻ってきたら、ここで写真撮りましょうか?」
 ネリネの提案に皆が頷いた。
 どたばたと楽しい一日は、城と共に移した集合写真によって締めくくられたのだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ガルー・A・A(aa0076hero001)/男性/32歳/バトルメディック】
【白虎丸(aa0123hero001)/男性/45歳/バトルメディック】
【オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)/男性/11歳/ジャックポット】
【恋迷路 ネリネ(aa1453hero002)/女性/18歳/ソフィスビショップ】
【レオンハルト(aa0405hero001)/男性/22歳/ジャックポット】
【麻生 遊夜(aa0452)/男性/34歳/命中適正】
【シキ(aa0890hero001)/?/7歳/ジャックポット】
【レティシア ブランシェ(aa0626hero001)/男性/27歳/ジャックポット】
【小鉄(aa0213)/男性/24歳/回避適性】
【ブラッド(aa4236hero001)/男性/27歳/ジャックポット】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
お待たせいたしました、高庭ぺん銀です。この度はご発注ありがとうございました。仲間との海でのひととき。良い思い出になっていましたら幸いです。
口調や行動などイメージとの違いなどありましたら、どうぞリテイクをお申し付けください。それではまたお会いできる日を楽しみにしております。
イベントノベル(パーティ) -
高庭ぺん銀 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年08月18日

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