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『 焔を食らい合う 』
煤原 燃衣aa2271)&火蛾魅 塵aa5095


プロローグ
「え! 本当ですか!」
 暁本部。ここはH.O.P.E.に加入してまだ間もない新兵を育成する場として生まれた『煤原 燃衣(aa2271)』を筆頭とする戦闘集団の総本山。
 その体長室から食堂にまで突き抜けるような大声で燃衣はその名を口にする。
「塵君が生きてたんですか!」
 『火蛾魅 塵(aa5095)』その男の名前を口に出す時、燃衣はひどく懐かしんだ表情をする。もう二度と会えないかのような。
 彼は燃衣の従兄弟……と言っても遠方の人で小学生の頃のひと夏だけ燃衣の地元で遊んだ程度だ。
 だが一度しか会えなかったと言っても印象はとても強い。
 能力がズバ抜けて高い、田舎の暑苦しさに平然と耐え。三階から落下しても無傷。発想力も悪魔的で、全てのステータスに置いて同年代を圧倒していた。
 だからだろうか、並々ならぬ自信家で怖い者知らずだった。
「『力への目覚め』も早かったんですよ。弱い従魔であれば子供ながら軽く蹴散らすほど。
 だが自分も愚神の事件に巻き込まれ、意気消沈している頃に彼の知らせを聞いたのだが。
 不幸にも命を落としたと。
 燃衣はこの時血を分けた存在を全て失ったと思ったのだが。
「でも、生きていた」
 燃衣は喜び勇んで荷物を整える。彼にあいに行こう、そして話を聞こうそう思い、ダイヤルを回す。

本編
 燃衣の中にある塵の記憶、それは驚愕に値する者ばかりだったが、性格に関してはあまり、少年というものを逸脱していないように感じた。
 何せ、少年だった頃の燃衣と馬が合う程度には少年だったのだ。
 だから、その姿を、言葉を、思想を聞いたときには驚愕で言葉が出なかった。
 そうであってみれば塵はまるで人間が変わっていたのである。
「よぉ。燃衣……だっけか? 生きてたってなぁ」
 そうぎらついた瞳で燃衣を見つめる塵の緑色の瞳。
 それに燃衣は慣れ親しんだ物を感じた。
 あれはクソ野郎の目だ。濁りきり、警戒しきり、何をし出すか分からない。
 そんな犯罪者の瞳だ。
「塵君。あなた人を殺しましたか」
 燃衣は問いかける。それまで飄々としていた塵の動きがぴたりと止まった。
「おれちゃんよ。お前のこと、クソガキだと思ってたけどよぉ。ちげえわ、むかつく餓鬼だ」
 殺気が湧きあがる。
 その殺気を受けて燃衣は、信じられない気持ちでいっぱいだった。冷や汗が止まらない。
「やだなぁ、挨拶もまだなのに。お久しぶりです、HOPEへや何時?」
「答える必要はねぇな」
「その格好は一体何があったんですか」
 燃衣は言葉を投げかける、コミュニケーションが取れると思っていた。
 だが塵はクククと笑うばかりで答えない。
「なぁ、クソガキ」
「は?」
 直後、吹き荒れる魔力の塊が燃衣の脇を通過してリフトを吹き飛ばした。
 ここで燃衣はすべてを理解する。
 おかしいと思ったのだ。二人であうだけなのに、街中の喫茶店ではなく。
 寂れた港の使われていない倉庫の中で会おうなんて。
 もともと戦うつもりだったのだ。
「ちっと力を見せてみろよ、燃衣ちゃん」
 直後燃衣は共鳴していた、正しい判断である、でなければ次の瞬間四肢がバラバラに吹き飛んでいただろう。
 突如吹き荒れる爆風。
 直撃を受けるが天井を足場に威力を殺し、床に降りる。
 次いで顔をあげた時には燃衣も本気の瞳だった。
「てめぇ、暴れたりねぇなら大人しくさせてやるよ」
 次いで燃衣が駆ける。スピードでなら圧倒的にこちらが上。
 だが塵は他の全てが燃衣より上である。
「な!」
 眼前を覆う爆風の壁。それを燃衣は右ストレートで突き破り速度を緩めない。
 しかしもうすでにそこに塵はいない。
「上!?」
 そう頭上、見れば塵は高く飛んで燃衣の斜め上を取っていた。
 底から放たれる爆炎の嵐。
 弾丸は三種類。球体。純粋に威力が高いと思われる。
 その周囲にばらまかれている小さな個体、あれは牽制用。こちらの動きを阻害するための飽和射撃。
 三つ目が三角の形をした、それ。あれは……。
「ホーミング弾ですか」
 先ず燃衣は前に飛んで膝立ちに。
 気合を入れて地面を叩きコンクリートの塊を投げてそれを盾にする。回り込んできたホーミング弾を走って背後にまとめ、そして追いつかれそうになった瞬間。飛ぶ。
 それも後方。追尾性の高い攻撃は後ろには進めない。その性質を利用した回避だが。
 甘い。ホーミング弾が爆ぜた。
 周囲360度へ発射された弾丸に燃衣がひるむ。
「つかまえたぁ」
 塵の声が耳元で聞こえる。
 次の瞬間には高熱を背中に感じ、地面に叩きつけられていた。
「ぐあっ」
「その程度ならよ。声をかけた意味が……ねぇわ! 死ね」
 次いで燃衣は弾かれたように起き上がる。距離を取る。
 と見せかけて反転。足元を爆破、速力を生みはじかれたように塵へ。
 そう塵は燃衣の背後を取るために近づいてしまった。
 それが運のつき、超接近戦は燃衣の得意分野……だと思っていた。
 違う、違うのだ。
 超接近戦において、重要となるのは腕力や速度ではない。反射能力。
 そして塵はカウンターの達人。
 カウンターとは相手の動きに合わせて攻撃を叩き込む技術。
 つまり反射神経に置いて、塵は格段に燃衣より上なのである。
「おおおおお!」
 先ず右ストレートを手の甲でそらし、塵は左肩を爆破した。
 そうすると燃衣の体は回転する。地面に向けて転がるが、その体勢から燃衣は無理やり蹴りを放ってきた。だから塵は燃衣の体に左手を向けて爆破。
 燃衣は地面をバウンドしながら転がった。
 しかし燃衣は瞬時に立ち上がる。
 声にならない叫びをあげて、駆けだそうとする燃衣の足元を塵は爆破した。
 またも倒れ込む燃衣。
 だが燃衣もこのまま黙っていられない。
 バチバチと何かが爆ぜる音がした。まるで燃えたつ前のまきのような。
 そして燃衣を鮮やかな炎が包む。『火綯体』である。命を削って己の力の極限を引き出す手法、燃衣がたどり着いた極地。
 その速度はけた違い。塵の反応速度を超えて一気に距離を詰め。そして渾身の一撃を突きだそうとする。
 だが。
「動くな、あそこに一般人が居る、消し飛ばすぜ」
 燃衣が目を見開いた。怒りを宿した瞳、それと共にいとこが本当に闇に落ちてしまったのだと実感も沸いた。
 次いで燃衣は振り返る。だが当然そこには誰もいない。
「フェイクだ。あまちゃんよ」
 次いで塵の拳から放たれる炎の槍。地獄の業火。
 だが、その向こうから燃衣は腕を伸ばしてきた。
 そして塵は瞳を伏せる。
 なぜか瞼の裏によぎったのだ。
 あの時の光景。涙を流しながら自分を殺そうとする女。彼女を愛していた。彼女に愛されていた。
 だがそれを愚神が踏みにじったのだ。
 全てが終わったのち。炭のように崩れていく彼女を抱え、塵は絶望の淵にいた。
 彼女は囁く、呻く。あいつらをみんな、殺してほしい。 
 その声がまだ耳にこびりついていて。
 塵は思う、何故今それを思い出したのだろう。
 それは燃衣が自身の鏡合わせのようだと思ったからかもしれない。
 燃衣の拳が自分の目の前に突き出され、それが叩き込まれることなく開かれる。
 今の一撃を受けていれば自分もただでは済まなかっただろう。
「てめぇ、なんで殴らなかった」
「それで解決する気がしなかったからです」
 告げると燃衣はその場に倒れ込む。
 それを不機嫌そうに見下ろして、塵は踵を返した。
「本当に俺ちゃんの力を借りたかったら、もう少し強くなれよ」
「力を力を借りる?」
「ラグストーカーよ。俺も追ってんだわ」
 燃衣は思わず動かないはずの上半身を起こす。
「燃衣ちゃんの仇にぁ俺ちゃんも用事がある」
 そう告げて、塵は廃墟を後にするのだった。



エピローグ
 その後もうろうとする意識の中で、燃衣の英雄が何事かを騒ぎ立てる声を聞いた。
 その言葉に再び衝撃を受けることになる。

――……奴は……"俺"の生まれ変わりだ。

 その言葉の意味が、運命の歯車をさらに激しく回し始める。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『火蛾魅 塵(aa5095)』
『煤原 燃衣(aa2271)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、鳴海です。
 この度は、OMCご注文ありがとうございました。
 今回は因縁のお二人のバトルという感じで、勢いのあるものを目指してみましたがどうでしょう。
 塵さんがラグストーカー戦にどのように関わってくるかも楽しみですね。
 また、ラグストーカー編本編も楽しみにしておりますのでよろしくお願いします。戦闘演出を考えながらお待ちしております。
 それでは、この辺で、鳴海でした。
 ありがとうございました。
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2017年08月18日

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