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『哀恋のお人形2 』
イアル・ミラール7523


 ビスク・ドールとして姿を変えられてしまったイアルは、意識を保ったままで魔女に体の一部を必要に弄られていた。それが嫌でたまらずに心で叫び涙をこぼし続けていたが、言葉も発することが出来るずにただ体をカタカタと震わせるだけの今の姿は、あまりにも滑稽であった。
「――あら、珍しい人形ね」
「!」
 聞き覚えのある声が響いていた。
 動くことの出来ないイアルからは確認は出来なかったが、間違いなくこの声は響カスミのものであった。
 ガシャン、と金属の音がした。
 それが少しずつ近づいてくる気配がする。
 そして数秒後、イアルの視界内にその姿が現れた。

 ――ああ、カスミ……。

 イアルの言葉は、カスミには届かない。
 そればかりか、彼女はやはり魔女の手下となっているままで、瞳の光は失われていた。
 
 ――カスミ、カスミ……!

 イアルはひたすらに彼女の名を呼び続けた。
 だがそれでもやはり、カスミ自身にイアルの声は届かなかった。
 金属音がいしていたのは、彼女が身に着けているビキニアーマーがぶつかり合うそれであった。際どいその出で立ちは魔女の趣味なのだろうか。
「臭いわねぇ……ご主人様、コレを守るんですか?」
「ええ、そうよ。そのうちわるーい忍びの女の子が取り戻しに来るわ。でも今のところは居場所すら突き止められないでしょうから、貴女はコレで遊んであげなさい。……嫌いじゃないでしょう?」
「……ええ、早く咥えたいです……」

 ――な、何を言ってるの、カスミ……! ダメよ、やめて!!

 カスミが恍惚の表情を浮かべている。そして彼女は躊躇いもなくその唇を開いて、身を屈めてきた。
 イアルはそれを眼下で確認して、悲鳴に近い声を上げる。
 誰にも届かない声であった。
「ふふ……苦しんでいるの? イアル・ミラール。大丈夫よ、そのうち快楽で悲しみや苦しみなんて無くなってしまうわ」
 魔女がそう言いながら嘲笑った。
 カスミは自分の足元で膝をつき、それを咥えて嬉しそうにしている。
 誰よりも親しみを感じていた友人が、自我を忘れてこんな行為に耽っている。
 そう考えるだけで、イアルの心は引き裂かれてしまいそうであった。

 ――やめて、やめてカスミ……。目を覚まして……!

 必死にそう伝えようと思っても、声は出せない。
 自分は今は人形で、あの異形の部分以外は動けないのだから。
 そんな人形であるはずのイアルの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「あらあら……完全な人形になったとはいえ……涙は零せるのね。七不思議みたいで楽しいわね」
 魔女はそれすら嗤いながら見るだけだ。
 屈辱であった。
 これこそが魔女の目的でもあったが、それ以上に心が憎悪に染まっていく。
 親友を助けられず、愛する人すら遠ざけられ、自分はこんなにも無力だ。
「ああ、本当に臭いわねぇ……よくこれで平気で、いられるわね……っ」
 カスミはそんなことを言いながら、イアルの人形を床へと転がした。
 彼女の唇の端には白い液体が付着している。つい先程まで咥えていたものから出たそれを、カスミは飲み込んだようであった。
「最初から臭いんだったら、もっと臭くなったって良いわよね!」
 人形に跨りながら、カスミはその場で粗相をした。
 信じられない光景が目の前で繰り広げられている。
 夢か何かだと思わずにいられない、そんな光景であった。

 ――嫌だ。イヤよ……こんな、状況……。

「ウフフ……アハハハ……ッ いい姿ね。今のあなたにふさわしいわ、イアル・ミラール!」
 魔女はその光景を見つめながら高笑いを続けていた。
 キン、と響くその笑い声はまるでイアルの体に染み込むようにして降り注ぎ、彼女の心を蝕んだ。

 ――こんなの、嫌、イヤ……。

 ――もう、何も聞きたくない、見たくない……。

 ――何も……。

「あら、本当にお人形になっちゃったのかしら?」
 イアルの変化に気づいたのか、魔女がそんな事をいった。
 カスミはそんなイアルの上に跨ったままで、また生身の部分を弄り続けている。まさに雌犬、とでも言ったところか。
「ふふふ……それも一興よ……身も心もお人形になったコレを、どうしてくれようかしら」
 魔女はその場を数歩歩きまた踵を返して数歩を下がる。そんな行動を繰り返しつつ、思案を続けていた。
 その表情は、実に楽しそうなものであった。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【7523 : イアル・ミラール : 女性 : 20歳 : 素足の王女】
【NPCA026 : 響・カスミ : 女性 :27歳 :音楽教師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつも有難うございます。
 彼女たちに救いの手は差し伸べられるのか。そんなことを考えています。
東京怪談ノベル(シングル) -
涼月青 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年08月18日

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