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『 漂流する魂 』
杏子aa4344)&カナメaa4344hero002
 漂流する魂

踵を返して正門をくぐる、電車に揺られている間も焦燥はやまなかった、この事件の全容にやっと手が届く。そんな思いが、何年かぶりに自分を焦らせた。
 『杏子(aa4344)』は思い描く。
 語って聞かされた伝承、それがこの事件と関係あるのかないのか。
 それだけでも話が変わってくる。
 だが杏子が急いだところで電車は加速しない。
 社内で揺られて、慣れ親しんだ街へ早くつくことをねがう。
「捕まったって本当かい?」
 そんな杏子は遙華から教えられた警察署までタクシーで直行すると、取調室まで直進。
 杏子は流れるようなしぐさで扉に体を滑り込ませその部屋に入った。
 中では警察の人が男と対面で座っている。そのガラスの向こうのやり取りを穏やかに見守っているのが『西大寺遙華(az0026)』
「あら、ずいぶん早かったのね」
 意外に落ちつている遙華を見ると、なんだか体から力が抜ける杏子である。荒く上がった息を整えて、状況をかみ砕こうと脳に酸素を回した。
「あの男が?」
「ええ、薙刀窃盗の犯人ね」
「なるほど、しかし。パッとしない男だね。本当にあいつが盗んだのかい?」
 その言葉を受けて遙華は顔をしかめた。
「それが、実行犯というだけで手引きした人は別にいるみたいなのよね」
 遙華は言葉を続ける。すべてはあの男が自供したことだという。
「あの男は依頼があって、あなたの実家の事を調べていた」
 遙華はその時ちらりと杏子を見た。
「ああ、実家からは離れていたのよね、ごめんなさい」
「いや、そこはいいさ。それより続きは……」
「目的は薙刀を盗むこと、でもこれは彼の意思じゃない。別の人間が欲しがっていて、依頼を受け盗み出そうとしていた」
「じゃあ、あの男は」
「事情も知らない実行犯、そして、ここで問題が一つ」
「なんだい?」
 杏子が息をのんだ。
「ええ。実はもう薙刀は彼の依頼主の元に送られてしまったそうなのよ」
 やっぱりか。そうため息をついて杏子は遙華と向き直った。
「もう少し追跡するのが早かったら取引前に捕まえられたんだけどね……」
 そう遙華もため息をつく。
「今は彼を取り調べるしかやることがないから、帰ってもらっても大丈夫だけど。どうする?」
「お言葉に甘えさせてもらうよ」
 そう杏子は肩を落として踵を返す。
「何かあればこちらから連絡するから」
 そんな遙華の声を背中にうけて杏子は帰路についた。
 久々に変える我が家はやけに小さく感じられる、実家に言ったせいだろうか。
 娘は自分の家に帰った。今は一人。
 電気をつけて台所へ、コップへ水を注いで一気に飲み下した。
 徒労の苦労を抱えた体を杏子は抱えて歩き、寝室へと帰ると体をベットに横たえた、そして瞼を閉じる。
「ああ、疲れた」
 そうため息をつく杏子、そんな杏子が眠りにつくのも、早かった。
 暗い中を堕ちていく、意識が薄皮一枚一枚はがされていき、だんだん自分を自分だと認識できなくなっていく。
 杏子はやがて、それをただ見ているだけになった。
 不思議な光景。幻想的な光景だ。
 それは、過去? 未来? 現在? 
 そんな疑問も浮かばない。
 ただただ落ちていく、潜っていく。
 その光景。豊かな緑が、夜の闇に染められて、けれど焚かれたかがり火は、鮮やかに境内を染め上げる。
 オレンジ色の光が、闇に飲まれまいと懸命にあたりを照らしている。
 小さな神社。その真ん中に黒い巫女装束を来た少女が立っていて、小さな妖怪たちと遊んでいる。
 手を取り合って輪になって。謳うように踊るように。
 揺らめくかがり火、伸びる影は一つだけ。
 この世ならざるものと、この世に息づくものの遊び場。
 次の瞬間唐突に視界が切り替わった。
 銀色に月が輝く晩。少女は森を見下ろしていた。
 空を駆ける。空を走る。空を飛ぶ。
 そう少女は何の道具も無しに空を飛んでいた。巫女装束がバタバタと風にはためいている。
 そんな少女を遮る影があった。目の前に現れたのは妖怪。
 しかし少女と遊んでいた妖怪のように優しげな面影はない。
 悪辣な笑みを浮かべた妖怪と少女は空中でぶつかり合った。
 それて、落ちて、追って上がる。舞うように空を駆ける少女。
 少女はその手からお札を投げた。それは空中ではじけ光のたまとなる。
 それは文様をかたどって空を彩り、妖怪の行く手を遮った。
 だが妖怪の力は強いらしく、片腕でその壁を壊す。
 キラキラと夜空にガラス片のように光が舞う。
 それを上書きするように光が走った。少女が印を結ぶと。何重にも光のひもが連なって、妖怪を雁字搦めに縛ろうとまとわりつく。
 それを妖怪はするりと避け。避けて、避けて。
 少女に手を伸ばす。あとすんでのところで追いつかれる。
 その時少女は身を翻した。
 再びお札を投げる少女。
 それを妖怪は避ける。
 目と鼻の先をお札が飛来していく。 迫る妖怪。
 にやついた笑み。今度こそ捕まえた。そう思ったのだろう。だがそうはならなかった。
その鼻っ面を少女は御払い棒で叩いたのだ。
堕ちていく妖怪。その無様な姿を『カナメ(aa4344hero002)』はじっと見下ろしていた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『杏子(aa4344)』
『カナメ(aa4344hero002)』
『西大寺遙華(az0026)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております。鳴海です。
 この度はOMCご注文ありがとうございました。
 今回は前回から薙刀盗難事件を追うお話という事で書かせていただいておりますが、カナメさんが杏子さんとどのような出会い方をされるかがすごく楽しみですね。
 見守らせていただければと思います。
 それではまたの機会によろしくお願いします。鳴海でした。ありがとうございました。
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2017年08月22日

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