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『『彼の生立ち』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 自分の過去について語ったってから数週間が経ち、暑い夏が訪れた頃。
 アレスディア・ヴォルフリートはディラ・ビラジスを誘って、彼の過去について聞かせてほしいと何度か尋ねたのだが、はぐらかされたり、誤魔化されたり、その件についての話を避けられてしまっていた。
 そういえば、アレスティアが自分の過去の話をする代わりに、ディラが何故人との関わりを拒むのか、話すと約束してくれるか? と、持ちかけた時、彼は乗り気ではない様子だったことを思いだす。
(まだ心の整理がついてないのかもしれぬ)
 アレスティアと違い、ディラは彼女と出会った数年前まで、闇の中にいたのだから。
 もうしばらく時間おいた方が良いのだろうかと、アレスディアが尋ねなくなった頃。
 ディラは彼女を彼女の過去話を聞いた公園へと誘った。
 夕方。
 木陰のベンチに腰かけて、手の中のペッドボトルのドリンクを見ながら、ディラは重い口調で語り始めた。
「親はいない。兄弟もいない。育ててくれた人もいない」
 物心ついた時は既に独りだった。
 どうやって生きてきたのかはよく覚えていない。
 ただ、周りには自分と同じような子供が沢山いた。
 時には手を組んで、時には食糧を奪い合って、生きてきた。
「弱肉強食な普通の動物の世界」
 この東京という世界の人々の生き方は悪くはないのだが。
 そんな弱肉強食な姿が、人間の本質なんじゃないかと、ディラは今でも思っているようだった。
 アレスディアは彼の話や、考えに口を挟むことはなく、ただ静かに聞いていた。
「孤児院のような場所ではなく。整えられた道路も公園もない。動物たちが生きる場所。そんな俺たちの住処に、迎えが来た」
 それはどこかの国の騎士だった。
 食べものと生きる道をディラたちに与えた。
 善悪の知識もなく、言葉もまともに喋れない。ただ、生きる為に殺して食べていた、一匹の肉食動物でしかない自分に、人の生活を教えてくれた。
 訓練に明け暮れ、力をつけて、そして駆り出された場所は、戦場だった。
 生きる為に殺してきた。ずっと、ずっと……。
「国や騎士団の目的とか、どうでもいいことだった」
 食べる為に、自分の為に殺していた頃とは違い、命じられるままに、騎士団の為に不要なものを滅していたあの頃。
「あの頃も、俺はただの1匹の肉食動物だったのかもしれない」
 具体的な国名や、参加した作戦については彼は話さなかった。
 彼がどんな作戦に参加してきたかは……彼と出会った時の事件から推察できる。
 罪なき者をも、理不尽に、力で、非道に虐げてきたのだろう。
 アレスティアは話の内容をじっくりと咀嚼するように、目をつぶった。
 ディラも何も言わず、木漏れ日で模様のついた地を見るともなく見ていた。
 しばらくして、目を開いたアレスディアは、まずディラに話してくれたことに対しての、感謝の言葉を口にした。それから……。
「今は、どうなのだろう。今ここにこうして私と共にあるのは、私の言葉に流されただけなのか」
「……」
「それとも、ディラ殿の意志によるものか」
「意思だ。そんな凄い志があるわけじゃないが。動物の本能ではない、人としての意思を、今は持っている。だから、今、ここにいるのは……いたくて、いる」
 彼がアレスディアに向けた目は、意志の籠る強い目でも、迷いを感じる不安げなものでもなかった。
 少しの気恥ずかしさと、僅かな優しさを感じる眼。
 アレスティアはほっと胸を撫で下ろした。
 そしてふと気づく。
「孤児ということは誕生日も明瞭ではないということか」
「……えっ、あ、ああ」
 何故かディラは目を泳がせた。
「うむ。であればディラ殿自ら決められてはどうだろうか。口に合うかの自信はないが、精一杯、作らせていただく」
「は、はは……。それじゃ、アレスの都合の良い日で。その日を誕生日にする」
 ディラはそう言って、淡い笑みを見せた。
「私の都合の良い日か……」
 ディラはその日を、一生誕生日として祝っていくのだろうか。
 そして、その日は彼にとって、初めて迎える誕生日で、初めての祝われる日となることに気付き、アレスティアは僅かな緊張を覚えるのだった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸です。
ご依頼ありがとうございました。
誕生日、適当に決めようと思っていたのがばれてしまいましたので、アレスディアさんにお任せしてしまいました。
特にご希望がなければ、こちらで考えますので大丈夫です。
それでは引き続きよろしくお願いいたします!
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年08月24日

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