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『―混沌の象徴・4― 』
海原・みなも1252

 門を潜って建物の中に入ると、3つの扉がエントランスホールの向こう側に見えていた。
 その右端の扉から、ガルダが出て来る所だった。そう、パーティーの一角を担う少女――瀬名雫である。
「あら、久し振りだね。元気だったぁ?」
「中身はね。体は今迄死んでたから、すっかり鈍ってるさ。一年分のブランクが出来ちまった事になるね」
 悪戯っぽく笑いながら再会の挨拶をして来た雫に、少年――ウィザードが苦笑いを浮かべながら応えている。そして、その隣には、やはり笑うしかない状況になったラミア――海原みなもが肩を並べていた。
「扉が3つあるね、もしかして練習ステージが3面あるって事かい?」
「うん。ほら、種族によって得意だったり、逆に苦手だったりするシチュエーションがあるでしょう? それを克服するのに、いきなり実戦じゃあリスクが大きいから……」
 訓練ステージで練度を上げてから、実戦に進めるよう配慮されたんだよ、とみなもが説明を加えた。因みに、雫が先程まで居たのは山岳ステージだった。彼女は飛翔能力に磨きを掛け、高い山も軽く飛び越え、且つ樹木の陰からの不意打ちにも対応できるように鍛錬するつもりだったのだ……が、今日は低レベルなキャラしか来ていなかったようで、イマイチ物足りないという雰囲気であった。
「他の二つは?」
 尤もな質問が、ウィザードの口から飛び出す。それに対しては、雫が応えていた。
「スタンダードな原野ステージと、海洋ステージだよ」
「至れり尽くせり、って訳か。海洋ステージってのは、全面が海なの?」
「まさか。ちゃんと砂浜と磯部、それに水面が揃ってるよ」
「よし。じゃあ波打ち際でトレーニングするから、付き合ってくれ。何しろ鈍っちゃってるからね」
 魔術を効率的に操るにも、先ずは体力ありきだ……と、如何にも体育会系な発想が飛び出すあたり、やはり彼も中身は中学生男子だという事であろう。
 そして、その提案を断る理由も無い事から、彼らは不完全燃焼気味だった雫を含む3人で海洋ステージへと入って行った。

***

「……って、何よこれ! 嵐じゃない!」
「先に入った人が、気象データを弄ったんだね。たぶん荒天での戦闘を想定した訓練、してるんじゃないかな?」
「早い者勝ち、って訳か……仕方ない。いきなりハードな展開だけど、この中でトレーニングするしか無いな」
 海洋でのシチュエーションに慣れていない雫が、思わず不満の声を漏らす。が、実戦ではこのようなシチュエーションも当然あるだろうから、文句は言えない。ステージの主導権は、先に入った者が握るのがこの闘技場のルールなのだ。
「雫さぁん、空から光の矢を撃ってください! あたし、それを回避する練習がしたいです!」
「おっけ、分かった……けど、酷い天気だねー! 雷まで鳴ってるじゃない。雨でずぶ濡れだし」
 その言に対し、どうせ後でシャワーを浴びるだろう? と、ウィザードが暗に『諦めろ』と促して来る。やはり、統率力で彼に敵う者は、このパーティーには居ないようだ。
 こうして、ウィザードは砂浜ランニングを、みなもは雫の協力を得て攻撃回避訓練を、雫は荒天時の飛行訓練を兼ねた射撃をと、三者三様にトレーニングをする事となった……のだが、直後に意外な展開が訪れた。それも唐突に。
「君達、3人かい? 良かったら、俺達と3オン3の練習試合をやらないか?」
 先にこのステージに陣取ったパーティーの一員と思しきヒドラが、いきなり試合を申し込んできた。その提案に、女子二人は戸惑ったような表情を浮かべた……が、意外にもウィザードは乗り気なようであった。
「面白い、他流試合って訳だね。どうだろう、二人とも?」
「あたしは、ちょっと……」
 難色を示したのは雫だった。元々彼女は、この悪天候に辟易していてテンションが下がっていたのだ。が、みなもは……
「うん、いいよ。でも、彼は今さっき生き返ったばかりなの。だから彼への攻撃はしない、って約束してくれるならだけど」
「俺は別に……」
「ダメ! また死んじゃったら、どうするの!?」
 そう。練習用のステージとは言え、ガードが掛かる訳では無い。強力なダメージを受ければ、ライフポイントがゼロになってしまう事もある。みなもはそれを危惧して、病み上がり状態のウィザードへの攻撃を控えるよう、条件を出したのだった。
「ふぅん……良いだろう、見たところ彼は人型。海洋ではほぼ無力だろうからね」
 恐らく、このヒドラが相手パーティーのリーダー格なのであろう。が、彼は同じく指揮権を持っていると思しきウィザードにハンデありと見て、挑発して来ていた。
「……あまり舐めないで欲しいね、人型でも充分に戦えるんだぜ?」
「君は陸地から動けないだろ? 悪いけど、俺達が海洋に出てしまえば無力だよ……時間が勿体ない、始めようか!」
 ウィザードの抗議を無視して、強引に『試合』は開始された。しかし、相手も3体であるという宣言があったのに、眼前にはヒドラが居るだけ。他の2体は何処にいるか分からない。これはアンフェアである。
「待って! 他のメンバーは……」
「甘いね! 実戦で相手に手の内を見せるバカが、何処に居る!?」
「くッ!!」
 みなもが中断を呼び掛けるが、ヒドラはかなり好戦的な態度に出ていた。そして、みなもが彼に対して嫌悪感を抱き始めた、その刹那……上空から悲鳴が聞こえて来た!
「あ……あああぁぁぁぁ!!」
「雫さん!!」
 雲間から飛び出して来た光の束に、彼女は捉えられていた。その束を放っていたのは、ガルダに似た翌獣のようであったが……
「な、何だアイツは!?」
「驚いたかい、兄さん。アイツはアンタと同じウィザードさ……但し、サンダーバードとのキメラだがな!!」
「……!!」
 キメラ……所謂『合成獣』である。が、デフォルトのキャラ構成にそんなものは存在しない。恐らくは進化形態のひとつなのであろうが、これは初めて見る例であった。が、驚いている暇は無かった。
「余所見をしている場合か? 俺達もお前たちと同じ、3体だと言った筈だぜ」
「何ッ!?」
 突如、彼の脇腹を鋭い刃が掠めていた。その正体は、浅い水面に隠れていたケルピーの鬣だった。
「酷い! 彼は攻撃しないって、さっき……」
「俺は攻撃しない、そう言っただけさ。他の奴がどうしようと、そいつらの勝手だ! さぁお嬢さん、アンタの相手は俺だぜ?」
 ヒドラは醜く表情を歪めたかと思うと、突如光を放ち、巨大化した。そして、その姿を変えていき……
「あ、あれは……海龍!?」
「リヴァイアサンだ! 奴も、変身属性を持っていたのか!」
 脇腹を押さえながら、ウィザードが叫ぶ。その声を聞いたみなもは、思わず慄いた。が、しかし……
「恐れるな! 君も、君の中にも……あの力があるだろう!?」
「で、でも……あれは!!」
「このままでは、俺も彼女も助からない!! 躊躇うな、力を開放するんだ!!」
 ウィザードは、みなもが既にティアマトへの変身を自由意思で行える事を見抜いていた。が、彼女は立ち竦んだまま動かない。
しかし、敵パーティーの攻撃は容赦なく続いていた。
「……やめてえぇぇぇぇ!!」
 その雄叫びと共に、みなもの体は強い光を放っていた。そして天高く舞い上がり、あの姿へ……そう、神獣・ティアマトへと変身していた。しかし何故か、その目には涙が浮かんでいたのだった。

<了>

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【1252/海原・みなも/女性/13歳/女学生】
【NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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オリジナルキャラクターとして、海原みなもの恋人役であるウィザード(男性)を登場させています。
連作である為、初見の方に於かれましては少々遡ってお読み頂かないと、意味の通じないシーンが散見されますが、予めご了承ください。

実戦で使える力を培うために行う模擬戦闘。それを行うだけの筈だった。
しかし、狡猾で好戦的なパーティーと相まみえる事となり、しかもその中の一人は……
変身譚を、という御指示ではありましたが、普通に変身させてしまったのでは面白みが無い。なので、少々悪戯をしてみました。
依頼者様のご期待に添えれば幸いで御座います。
東京怪談ノベル(シングル) -
県 裕樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年08月25日

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