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『More Splash! NO More Scandal! 』
フラン・アイナットaa4719)&小宮 雅春aa4756)&御剣 正宗aa5043

 太陽が強く照り付ける、ある休日。3人の青年はプールへと遊びに来ていた。
「混んでるなー。ま、今日は暑いし仕方ないのなー」
 一人目はフラン・アイナット。目を引く長身に褐色の肌。原色に近い赤の水着を見事に着こなしていた。
「はぐれないように気を付けないとね」
 二人目は彼の隣を歩く、小宮 雅春。いつもは下ろしている髪を高い位置で結んでいる。顔立ちはすっきりとした美形であるのに、それを感じさせないのは『微妙』と言わざるを得ないファッションセンスのせいだろう。褪せた青色の生地に白抜きのハイビスカス柄の水着。ラッシュガードはグリーン系の蛍光色である。
「あれが一番人気の絶叫系スライダーか。見てるだけでぞっとするよ……」
 雅春が言う。このプールの一番人気は都内最恐といわれるウォータースライダー『WATER DRAGON』。登り龍をイメージしたデザインが特徴だ。スピードを重視した急なコースの連続に加え、ラストの急降下はスリル満点と評判だ。
「気になるのか、雅春さん? 俺ならいつでも付き合うぜ?」
「ぜ、絶対ムリ!」
 くすり、と笑みを漏らしたのが3人目の御剣 正宗。勇ましい名に反し、見た目は少女のように可愛らしい青年だ。選んだ水着は、丈の短いサーフパンツにラッシュガードパーカー。女子が選んでもおかしくない組み合わせだ。彼を男と見抜くのは至難のワザだろう。
「ボクは腹が減ったな……」
 彼が目を向けたのは、ファーストフードなどを売っている店舗だった。
「いいね。僕、レジャー先だといつも買っちゃうものがあるんだ」
 いの一番に注文に向かったのは雅春だった。
「お兄さん、運がいいねぇ。ちょうど揚げたてだよ!」
 ふっくらとしたおばちゃん店員がにっこり笑う。よくこの料理を作ってくれた母とは全く似ていないが、不思議と暖かな気持ちになった。
「唐揚げウマー」
 カップに入った熱々のからあげを楊枝で刺してぱくり。サクサクの衣の中からとじゅわりと溢れ、口内に広がる肉汁。雅春は幸せそうに目を細める。
「……僕は……フライドポテトを貰おう」
 正宗が言った。いつの間にか後ろに並んでいたらしい。ちょっぴり物足りなさそうなのは、好物のフィッシュアンドチップスが売っていなかったからかもしれない。
「って、あれ? フランくんは?」
 正宗はポテトを口にくわえたまま、すっと指をさす。見ればフランが女子たちに囲まれ、握手を求められている。
「すごいね。やっぱり有名人なんだなあ……」
 正宗が頷きを返す。
「ファンサービスは大事だもんね。ちょっとだけ待ってようか」
 フランは英雄とコンビを組み、アイドル活動をしている。活動期間はまだ短いが、リンカーアイドルとして注目を浴び始めているとか。
「ありがとな! これからも応援よろしく!」
 さわやかに手を振って戻ってくるフラン。屋台でフランクフルトを買い求め、再びプールサイドを歩き出す。向かうのは『MINI DRAGON』。お子様から大人まで楽しめる、複数人向けのスライダーだ。
「いやー、悪いな」
 正宗も、雅春も首を振る。友人の人気者ぶりを見るのは悪い気分ではない。
「そういえば3人で出掛けるのは初めてだったよなー」
「……ボクは大抵、英雄と一緒だから……」
「正宗くんは英雄さんと仲良しだもんね」
 雅春がいうと、フランがくすっと息を漏らした。
「仲良しっていうなら、雅春さんトコもだろ」
「ふふ、そう見えてるなら嬉しいな」
 実のところ、英雄に留守を任せることには後ろ髪を引かれる思いがあった。しかし優しい英雄は「リフレッシュしてくることも大切」と快く送り出してくれた。今日は彼女の厚意に甘えて遊びにやってきたというわけなのだ。
「ま、仲良し具合なら、うちも負けてないけどなー」
 結局、みんな相棒のことが大好きらしい。帰りには何か土産でも買って帰ろうということで話がまとまった。
「みんな揃って、気が早いのなー」
 フランがからから笑うと、正宗が微笑みながら頷く。
「……着いた、ね」
 雅春がごくりとつばを飲み込んだ。『MINI DRAGON』の列は、名物の『WATER DRAGON』に比べると短かった。専用の浮き輪――形状は平べったいボートといった感じだ――に一列になって座り、広いコースを滑り降りていくのだ。
「一番前は嫌だなあ。いや、むしろ前が見えない方が怖いのかな……?」
 雅春が身をすくませながら言う。
「じゃあ、雅春さんは真ん中にしたらいんじゃね? 俺は一番前がいいけど、正宗は……」
 闘志を瞳に宿した正宗と目があって、フランは口の端を上げる。
「行くぜ! じゃん、けん、ぽん!」
 結果は正宗の勝利。正宗は無言のまま、拳を天に突き上げた。ちょうど身長順に並んだ形になったため、最後尾のフランも視界は良好そうだ。
「次の方、どうぞ!」
 係員が元気よく声をかける。蛇行したコースには水が流れていて、スムーズな道行きをアシストしていた。右へ左へ蛇行し、時には湾曲した壁に沿って斜めになりながら進む。適度なスリルは、ファミリー用だからと侮っていた正宗とフランを満足させた。――が。
「ひゃあ! 落ち……! はぁ、セーフ……」
 絶叫系が大の苦手である雅春だけは、か細い声を悲鳴を上げ続けるのだった。
「ヤッホー!」
「うわあ!」
 ハイテンションなフランの声と、雅春の悲鳴が重なる。船はトップスピードを保ったまま着水し、短い航海を終えた。着水用の浅いプールに飛び降り、雅春は胸に手を当てる。
「大丈夫かー?」
「何とかね。はあ、怖かった……」
 二人の手を借り何とかプールサイドに上がった雅春だが、その足どりはへろへろと頼りないものなのだった。



「ね、今のフランくんじゃない?」
「え、嘘!」
 少女たちの隣を通りぬけた瞬間、またしてもそんな声が聞こえてきた。
「やっぱりアイドルのフランくんだよ! どうしよー、声かけちゃおうかなー?」
 少女たちは興奮した様子で話し合う。憧れ。戸惑い。ときめき。きらきらとした感情が微笑ましくて、雅春はふっと笑みを漏らす。
「気づかれたようだな……」
 正宗はフランを見上げ、小声で言う。
「あの金髪の子、すっごく可愛いけど誰なんだろ?」
「隣の茶髪の人も美人っぽいしー……」
 雅春の顔がさっと青ざめた。
「茶髪の人って……もしかして僕?」
「そうだと思うぞ。そして、金髪がボクだな」
 正宗はこういった状況には慣れっこだ。涼しい顔で答える。
「いけない! 正宗くんならともかく、僕が彼女に間違われたらフランくんの名誉に関わる!」
 雅春は、フランの背を押して女子たちの元へと歩いていく。正宗は「ボクでも困ると思うが……」と思いつつ、その後ろに続いた。
「あの……」
「はい! ……え、男の人!?」
 間近に寄って、声さえ出してしまえば話は早かった。
「そうなんです。僕も、こっちの正宗くんもフランくんのお友達です」
「そんなに可愛いのに……! もしかしてあなたもアイドル?」
 正宗は驚いた顔をして、ぶんぶんと首を振る。
「確かに正宗くんならアイドルって言われても信じちゃうかも」
 雅春までが女子の意見に賛成するので、正宗は困惑した。可愛いと言ってもらえるのは嬉しいが、この反応は予想外だったのだ。その間にフランは女子たちと握手を交わすと、身を屈めて目線を合わせる。
「ま、そんなわけで、今日はプライベートでなー。静かに見守ってくれると嬉しいのなー」
 囁くような声で言って、ぱちりとウインク。女子たちは思わず悲鳴を上げそうになるが、慌てて両手で口を覆ってそれを押しとどめた。
「……すごいね、フランくん」
 雅春が言うと、正宗は頷く。
(……やっぱり……ボクにアイドルは無理だな……)
 そんなことを思いながら。
「おまたせ! 次はどこ行く?」
「まだ行ってないところかぁ……。あ、波のプールなんていいんじゃない?」
 せっかくなので、浮き輪をレンタルして波のプールへ。ドーナツの穴のような部分に尻を落とし、ぷかぷかと漂ってみることにした。
「あはは、本物の波みたいで面白いねー」
 雅春は波が来るたびに控えめな歓声を上げ、嬉しそうに笑う。
「……楽しそうだな……」
 悪気のない微笑みを浮かべ正宗が感想を漏らすと、雅春は照れ笑いした。
「プールで遊ぶのって子供のころ以来だからね。ちょっとはしゃいじゃってたかもしれないなぁ……」
「いいんじゃね? 俺はそういう雅春も好きだぜ!」
「楽しむときは……思いっきりで良いだろう……」
 雅春は頷く。
「そうだ!」
 フランは浮き輪からぴょいと飛び降りる。プールは浅く、彼の上半身はほとんど水につからないくらいだ。
「それっ!」
 雅春の視点がぐらりと傾く。眩しい太陽が眼を焼いたかと思うと、次の瞬間、彼の体は水中に沈んでいた。後方に向かって倒れたのだと気づくのに数秒。犯人がわかったのはさらに数秒後ーー水の外へと顔を出し、いたずら顔で笑うフランと、びしょぬれになった正宗と目が合ってからだった。
「あはは! いたずら大成功!」
「もう、フランくんったらひどいよー」
 雅春は苦笑交じりに言うと、張り付く前髪を手で払った。
「いやー、童心に帰ってみようと思ってなー」
 正宗は「何でボクまで……」という目をして、ため息を吐く。
「な、次は流れるプールに行こうぜ!」
「……その次は、『WATER DRAGON』……」
「それは勘弁して!?」
「……冗談だ」
 太陽。水しぶき。笑い声。青年たちはしばしの間、少年の心を取り戻し、大いに夏のひとときを楽しんだのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【フラン・アイナット(aa4719)/男性/22歳/命中適性】
【小宮 雅春(aa4756)/男性/24歳/生命適正】
【御剣 正宗(aa5043)/?/22歳/攻撃適性】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました、高庭ぺん銀です。
仲良しなお友達とのプールでのひととき。楽しんで頂けましたら幸いです。
口調・行動などの違和感、その他不備などありましたら、どうぞリテイクをお申し付けください。 それでは、また皆様にお会いできる時を楽しみにしております。
イベントノベル(パーティ) -
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2017年08月25日

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