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『俺様ちゃんは毎日以下略 』
ゾファル・G・初火ka4407

「ふあぁ〜あ」
 ゾファル・G・初火(ka4407)がなんともだらしのない顔であくびをした。薄い掛け布団はどこへやら、ベッドの上であぐらをかいた姿勢でむにゃむにゃと目をこする。浴衣風の寝間着はだらりん。
「あちぃじゃ〜ん……」
 ぼそ、っとそんなことを言うが、さもありなん。すでに窓から差し込む光は角度がある。
そこで扉がノックされた。
「ゾファルさん、おはようございます。きょうは天気がいいのでお布団を干しますよ?」
 入ってきたのは、お手伝いさん。
ここは同盟領の農業推進地、ジェオルジ。その田舎村タスカービレの青竜紅刃流道場二階のゾファルの部屋。師範代の一人になったゾファルはすっかりここに住み込んでいたりする。
「そりゃ今晩が楽しみじゃ〜ん」
 ゾファル、半分まだ寝ているようにも見えるが陽に干した布団の天国っぷりは分かるようで大人しくベッドから下り部屋から出ようとする。
「朝ご飯はいつもの所にゾファルさんの分を残してますよ」
「さんきゅじゃーん」
 そろそろ目が覚めてきたようで語尾もしっかりしはじめた。

「ゾファルさん、おはようございます!」
 下におりて顔を洗い、ベーコンエッグサンドにコーンスープ、サラダに紅茶をおいしくいただいていると門下生がやって来た。
「おはようちゃーん。朝稽古は終わってるはずだし、畑仕事はどうしたじゃん?」
「村で不審人物が見掛けられるって噂なんですよ。早めにゾファルさんの耳にも入れようと……」
「午後からイ寺のおっさんが来て稽古するじゃーん」
 いまは遅い朝食をとるのに真面目なので取り合わない。はむはむとサンドを味わうのに余念がない。
「もちろんイ寺さんにも伝えますけどね」
 とにかく、村人で門下生の男は昼食用の葉野菜を置いていった。
「そういや避暑がてらの観光客も増えたって言ってたじゃーん」
 おいしく朝食を平らげると、道場の縁側でごろごろ。周囲をみると確かに見ない顔が歩いているのが散見される。
「さて、魚のすり身はできたぜ」
「観光客もいるし、外で焼こう」
 庭ではほかの門下生がちくわ焼きを実演していた。東方風の村づくりの一環だ。これを珍しがって買う観光客もいる。着実に村づくりの成果が出ていた。
「頑張るといいじゃーん」
 ゾファル、もちろん手伝わない。
 で、昼食時。
「お、昼飯はちくわじゃーん」
 遅い朝食の後でもしっかり食べる。サワーソースやタルタルソースなどをちくわに掛けてスティック状のキュウリやパプリカ、そして焼いた肉とともに葉野菜に包んで、パクリ。焼き飯風のパエリアもたっぷりと食す。
「うん、うまいじゃん」
 ゾファル、ご満悦。


「稽古の前に聞いてくれ」
 午後。稽古のためリゼリオから戻ったイ寺鑑(kz0175)師範が門下生を集めて言う。
曰く、近隣の村で臨時に開催するカジノで青竜紅刃流が用心棒として頼りにされたとのこと。
「ふわぁ〜ぁ」
 説明の進む中、少し離れた場所でゾファルがあくびをしている。午後もごろごろしようとしたところを鑑に見つかり、「示しがつかない」とこっぴどく怒られしぶしぶ付き合っていたりする。
「長時間立っていることと俊敏性が求められる。今日から走り込みも取り入れる」
「マジ、じゃん?」
 鑑の言葉を遠くに聞いたゾファル、あくびが途中で止まっていた。
 で、列を作り走る姿にゾファルの姿はなかった。
「付き合ってらんないじゃーん」
 近くの木陰でシェスタを決め込んでいた。道場の方を見ると布団が干されている。晩にはもふもふになっているだろう。
 そして日が落ち、夕食時。
 門下生もほぼ帰ったあと、住み込んでいる鑑とお手伝いさん、それとロッソ移住民の独身門下生たちが席に着く。
「お、うまそうじゃーん」
 どこからともなくゾファルもやって来て席に着く。住み込んでいるので権利はあるが、稽古の時には消えていたはず。
「あの……」
 新入りの若者が不満そうに口を出そうとした。
 その時だった。
「ゾーさん、東方流は全員で『いただきます』が先」
 鑑、いきなりグリルチキンとペペロンチーノに手を伸ばそうとしたゾファルを制止した。
「何だと、イ寺のおっさん!」
 ゾファル、がたを身を起こす。
「食べ物に感謝の気持ちもないのか?」
「そっちじゃないじゃん。呼び名じゃん!」
「では、顔を貸してもらう」
「上等じゃん!」
 二人して稽古場に行く。
「おい」
「ああ」
 門下生も慌ててついて行く。
 たちまちガツッとかバキッとか尋常ではない打撃音が響く。
「あの……」
 残った新入りが不安を口にした。
「すぐに戻ってきますよ」
 お手伝いさんが笑顔で言う通り、二人は汗を拭いつつ戻ってきた。
「いいか、飯が冷めるからこれくらいにしてやったじゃん!」
「分かった分かった。じゃ、全員そろったな。いただきます」
 ゾファルをいなして合唱する鑑。全員復唱して白ワイン「レ・リリカ」を飲み、チキンにナイフを入れる。
「うまい!」
 ゾファルの機嫌はすっかり直っている。
「食事後はいつものように道場で瞑想後、読書をするから」
「ごっそさんじゃーん」
 鑑が門下生に伝える。その横を一番に食べ終えたゾファルが楊枝をしーはーしつつどこかに消えた。
「あれ、いいんですか?」
 新入りは不満そうにお手伝いさんにこぼした。
「じゃ、鑑さんには私から言っておきますから明日はゾファルさんを観察してみてください」
 お手伝いさんはクスクス微笑するのみ。
 その頃、ゾファル。
「もふもふで気持ちよすぎじゃんかー」
 自室のベッドで布団にくるまり、天使のような笑顔を浮かべていたりする。



 翌日。
「昨晩、上手くイ寺のおっさんに稽古に付き合わされたじゃ〜ん」
 午後の日差しを避けた木陰の中、ハンモックに揺られつつ腹を立てていた。
「ゾファルさーん」
 ここで門下生何人かがやって来た。体つきの大きいのばかりである。
「あ? イ寺のおっさんとの稽古はどうしたじゃーん?」
「その構えじゃ青竜と紅刃を自在に使えないって……」
 青竜紅刃流は銃剣流派である。撃って斬撃、斬り付けてから射撃などの動きは必須である。
 ゾファル、やらせてみるとべた足四股踏みの構えだった。
「東方流は剣の重さで斬るんじゃなくて刀の刃で斬るじゃん。もっと軽く、踵を浮かせ気味に構えるといいじゃーん」
 ここに泣きついて来た門下生、いずれも力自慢だったり俊敏性に劣る者ばかり。やや流派になじめないでいるのも無理はない。
「昨日いなかったのはそういう人にアドバイスをしてたからか……」
 隠れていた新人、この光景を見て納得した。もっとも昨日のゾファルは完全なサボりだったが。
「でも、ゾファルさんはいつも大きくて重い武器を使ってますよね?」
「どでかい武器による一撃必殺は二の太刀要らずじゃん」
 食い下がる門下生にハンモックから上体を起こし真顔で答えた。
「威嚇程度ならともかく、素人武芸には合わんじゃーん」
 それだけ言ってまた転がった。
「といっても、カジノの用心棒なら青竜紅刃流でなくても」
「俺らイ寺さんの教え方じゃ落ちこぼれだから、せめてゾーさんに……」
 彼らとしてみれば、昨晩のゾファル対鑑の手合わせに感心していた。鑑の方でうまくいかないなら、とゾファルを頼みにしている。
 だから昨晩の引き金になった言葉を使ってみた。
「なんつったじゃん? いま?」
「あ、いや……」
 再び身を起こしたゾファルに気圧される二人。効果はてきめん……いや、効果ありすぎ。
「よし、いいじゃん。バウンサー用に無手武術の喧嘩殺法を仕込んでやろうじゃーん」
 ついにハンモックからゆらりと立った。
 そして。
「狙うのは顎先、そして側頭部!」
 一人に言葉通りの攻撃を見舞う。といってもグーではなく、安全のために手はパーだ。
「でかいやつには鳩尾! ふらつきゃ足を掛けて後頭部から落とす!」
 大きい門下生には肘打ちから大外刈り。
 手加減付きだが鬼気迫る稽古だ。
「胸ぐら掴まれりゃそのまま巻き込んで投げりゃいいじゃーん!」
 ストレス発散を含めて念入りにやっているとかいうのは内緒である。
「ひぃ……」
 隠れてみていた新入りは完全にビビっている。
 が、すぐに目を見張った。
 近所の主婦たちがやって来たのである。場違いなことこの上ない。
「ゾファルさん、忙しいとこ悪いけど、この刃物……」
「あん? 任せとくじゃ〜ん」
 稽古終わり、と今度はそちらへ。
 そして砥石を出すと主婦たちの持ってきた水入りの桶を受け取り、次々と研いでいく。
「ゾファルさん、さすがね〜」
「やっぱり手つきが違うわ」
「ここまで研げば力を入れずに切れるはずじゃん」
 作業が終わるとやんやと手をたたき盛り上がる主婦たち。
「……」
 こっそり観察していた新入り、愕然としつつも心の中でゾファルに謝った。
「よし。自分も頑張ろう……ん?」
 やる気を出して振り向いた時、びくっと回れ右して逃げる男に気付いた。

 どうやら不審者だったようで、その日から二度と姿を現すことはなかったという。
 ちなみに新人がゾファルを見直した日の晩。
「お、今晩は猪肉のシチューじゃーん」
「『いただきます』が先!」
 ゾファルの日常は、変わらない。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4407/ゾファル・G・初火/女性/16/闘狩人(エンフォーサー)
kz0175/イ寺鑑/男性/35/舞刀士(ソードダンサー)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ゾファル・G・初火 様

 いつもお世話様になっております。
 自堕落つれづれだらだら小説をお送りします。
 ひたすら非生産的なことをやっていても良かったのですが、ゾファルさんのあずかり知らないところで不審者が勝手に喧嘩殺法の稽古現場を見てびびって退散し、知らないうちに役に立っていたというお話でございます。
 そして三食食っちゃ寝の道場食客としては日々の献立が大変重要かと思われます。
 大サービスで四食分の献立を描写しました。
 ゾファルさんのお気に召しましたら、幸いです。
 この度はファナティックブラッドにて展開しているお話を膨らませてくださりありがとうございます。こちらもとても楽しかったです。

 それでは、ご発注ありがとうございました♪
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ファナティックブラッド
2017年08月31日

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