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『ライク・アライク 』
ウィンター ニックスaa1482hero002)&結羅織aa0890hero002

「夏と言うのは勢いだ、積極的に押されて悪い気を持つ男はそうそういない!」

 真夏。青空。さんざめくセミの声にも負けないぐらいの大きな声で、ウィンター ニックス(aa1482hero002)はそう言った。
「ましてや結羅織殿のような素敵な女性なら尚更だ、押してダメなら押し倒すぐらいの気概が合っていると思うぞ!」
 変わらぬ勢いで彼が振り返れば、そこには夏の日差しに目を細めた結羅織(aa1461)が立っていた。彼女は「なるほどですわ!」と目を輝かせて頷くも、
「でも相手がいないんです……!」
 ワァッと両手で顔を覆って俯いた。

 真夏の町に男女が二人。
 パッと見ではデートであるが、二人は恋人関係ではない。友人以上恋人未満とか片思いとかそういうじれったいモノでもない。百パーセントのパーフェクトなる健全な関係だ。

「デート(仮)じゃない相手が! どうしたら彼氏ができると思います!?」
 顔を上げて必死に訴える結羅織。「わたくしもラブロマンスとか強引系ハーレムとかドS調教とかヤンデレ妄執愛とかしてみたいです!」と立て続けにティーンズラブ読み過ぎな言葉をまくしたてれば、ニックスはその意味を理解していないまま「任せろ!」と雄々しく言い返す。
「こんな言葉がある……百聞は一見にしかず! 実際にデートってやつを体験してみたら、なにか突破口になるかもしれんぞ!」
「そ、そうですわよね……そうですわよね!」
「そうとも! 互いをもっと知るにはデートが一番だ!」
 というわけで、ニックスは改めて結羅織に向き直ると。

「本日はしかとエスコートをさせていただくぞ!」







「年上の男性にエスコートされるなんてリア充ですわよね!」

 クーラーの利いた涼しいショッピングモール。「暑い中、女性を歩かせるわけにはいかん!」とニックスの計らいである。そんな彼の隣に並び、結羅織はご機嫌だ。
(この気の利きよう、流石は、ウィンターお兄様ですわ……!)
 女の子のファッションというものは、得てして夏は暑く、冬は寒い。世の女子達は厳しい環境に耐え忍びつつ、それでもファッションに勤しんでいるのだ。
 更に夏場となると、汗をかくとメイクがよれる崩れる、日差しは肌を容赦なく焼く。夏の屋外というものはどこまでも女の敵なのである……。
 ので、涼しい場所でのデートはまさに女子に優しい。今一度、結羅織は心の中でニックスを褒め称えた。
 ちなみに、ニックスはデートコースとして海も候補に上げていたが、人混みや親密度を考慮し除外したのである。
「結羅織殿ならすぐにでもリア充とやらになれるさ!」
 カラカラ笑うニックスには、スカした厭味たらしさや押しつけがましさなどカケラもない。爽やかで裏表がなく、変に気取らないでいい空気を感じさせてくれる。
「……これも、オトナの男性の余裕、というやつなのかしら?」
「褒めてくれてるのか? はっはっは! 結羅織殿のようなベッピンさんに褒められるとは、男冥利に尽きるってもんだ!」
 ベッピンさん。ニックスの口からナチュラルに放たれた褒め言葉に、結羅織は「まあ」とはにかみ微笑んだ。恋に恋する乙女としては、イケメンの年上に褒められるというシチュは悪くない。むしろご褒美です。
「それは口説き文句というやつなのかしら。うふ! でもわたくし、生憎、ウィンターお兄様のことは狙いませんことよ?」
 なぜならば! ともったいぶるような間を置いてから、結羅織はニックスにウインクをして見せる。
「ウィンターお兄様には想い人がいらっしゃいますものね、ウフフ☆」
「想い人?」
「ええ、わたくし、存じ上げておりましてよ。第一英雄の……」
「ああ〜、兄弟のことだな! おうともさ、兄弟のことは確かに、しかと! 心から好いているぞ!」
 爽やかな笑顔と立てられる親指。「まあ、やっぱり!」と結羅織は両手で包んだ頬をポッと染める。実は結羅織、かの第一英雄とニックスが付き合っている――つまり恋人関係だと思っているのだ。
(この夏はどんなところへデートに行かれたんでしょう?)
 など、妄想しては結羅織は「キャッ」となるのだ。つまりはオトメティックなのだ。ロマンティックが止まらないのだ。
 ちなみにニックスの方は、結羅織の「恋人関係だ」という勘違いに全く気が付いていないし、この先も気付かない。少なくとも今日一日の間は。

 さて、そんな頃合である。
 二人は水着を売っている店の前に通りかかる。時期が時期だけに大々的なアピールだ。小麦色のマネキンが、様々な水着を身に着けてポーズを決めている。

「夏のデートといえば、やっぱり海かしら!」
 マネキンを見、結羅織が言う。
「バカンスなんてオシャレですし、普段は見せない水着姿をアピールするチャンスですし!」
「そうだな! やっぱり『見て欲しくって』って選んでくれた水着って思うと嬉しい気持ちになる! 水着、見ていくか?」
「ええ、水着を買おうかと思っていたところでして。……見せる相手は! いません!! けれどもッ!!!」
「備えあれば憂いなしだぞ!」
「ですよね、備えあれば憂いなしですわ!」

 と、いうわけで。

「大胆すぎやしません!?」
「じゃあパレオ付きのやつにすればいい!」

 などなどありまして。

 結羅織がニックスから「こっちの方が似合うぞ!」と(無駄にセンスの良い)アドバイスを受けつつ購入したのは、オレンジ調の花柄が鮮やかなパレオ付きビキニだ。
 いつかこれを見せる相手の殿方が現れればいいなぁ……なんてポヤンと思いつつ、「ありがとうございました〜」と店員の声を背中に受ける結羅織は、ショッピング袋を大事に手に持つのであった。
「良いのが買えて良かったな、結羅織殿!」
「ウィンターお兄様も、ご助言感謝致しますわ」
「こういうのは得意なんでな!」
 流行よりも、その人に似合うものを。そういった「選ぶこと」ならお任せあれ。
 向ける笑顔に、返す笑顔。つくづく、「素敵な方」だと結羅織は思う。紳士的にエスコートや気遣いをしてくれるが、それはあくまでもさりげない範囲で、尊重してくれている意志に好感が持てる。まあ、異性としての想いが芽生えるとかはないのだが。
「で、だ。結羅織殿」
 最中、ニックスが結羅織を呼ぶ。「はい?」と彼女が応えれば、彼は笑顔でこう言った。
「近くにオススメの喫茶店があるんだ。行くぞ!」
 行くぞ、と言っているのに、その言葉には強引さはなくて。もちろん、結羅織は「是非とも!」と頷いたのであった。







 夕暮れの町。
 空は茜、雲は橙、東の果てから夜が来る。
 傾く太陽に町は染まり、今日の終わりを知らしめる。

「素敵な景色……」
 良く冷えたウーロン茶を飲みながら、窓ガラス越しの景色に結羅織は瞳を細めた。
「だろー」
 向かいに座ったニックスが言う。二人はとあるビルの上階に位置する喫茶店にいた。しとやかなジャズ、穏やかな照明に、一望できる町の景色。なんとも洒落た店である。
 この辺りの町は、ニックスにとって勝手知ったる庭のようなものだ。伊達に遊んでない伊達男。ちなみにこの席も、事前にキチンと予約していた手際の良さである。

 ややあって、二人のテーブルにとろとろ玉子のオムライスが運ばれてくる。ニックスのイチオシメニューだ。ちなみに日替わりケーキとセットになっていて、それは食後に運ばれてくる。今日のケーキは夏みかんのレアチーズケーキだそうだ。
 さて、デザートに胸を膨らませつつも、まずはメインディッシュ。手を合わせて頂きます。

「とってもオシャレですわ……!」
 昔ながらでいて、どこかオシャレなオムライスに、結羅織は感嘆の声を上げる。世の女子が熱心に食べ物を撮影してSNSに投稿する気持ちがちょっとだけ分かった気がした。
 さて、キラキラ銀色のスプーンですくえば、とろりふわりと柔らかで。立ち上る湯気、食欲をそそる赤いチキンライス、とろんと玉子にデミグラスソース。ふうふう冷ましていそいそ食べれば、見た目を裏切らないまろやかな食感の味わいが、口の中に広がった。
「おいしい……ですわ……!」
 目を輝かせる結羅織。「だろ!」とニックスも嬉しそうだ、豪快な大口でオムライス(Lサイズ)を頬張る。

 ジャズが弾む。食器の音。
 窓の外は夜を迎える。
 ……最中だった。

「結羅織殿」
 ふと、オムライスを飲み込んだニックスが声をかけた。結羅織が顔を上げれば、彼が窓の外を指差す。なんだろう? と彼女が顔を向けてみれば――

 どーん。

 大きな音と閃光と。
 夜の空を飾る、それは花火だった。

「ここから、近くの花火大会が見えるんだ」
 特等席なんだ、と頬杖を突いたニックスもまた、花火を眺めている。
「綺麗……!」
 結羅織は目を丸くする。ひゅるるるる、次々と打ち上がっては、咲き乱れゆく光の花。
 店主が気を利かせて店の照明を少し落とした。いっそう、花火が浮き上がる。
「あの、ウィンターお兄様」
「ん? なんだ」
「今日は本当にありがとうございますわ!」
「おう、どういたしましてだ! でもまだ終わりじゃないぞ」
「え?」
「デートは帰るまでがデートだからな!」
 花火の光。「それもそうですわね」と結羅織はくつくつ微笑んだ。

 やがて、夏みかんのレアチーズケーキがそっと運ばれてくる。
 白いレアチーズケーキに乗った夏みかんゼリーが、つやつやきらきら、花火の光を照り返していた。

(……ああ、いつか、彼氏とこんな夏を過ごしてみたいものですわ……)
 惚れ惚れ、結羅織が想像するアバンチュール。
 ニックスは、物思いに耽る乙女の横顔を微笑ましく見守りつつ、デザート用のスプーンを手にした。

 一口、夏みかんのレアチーズケーキは、甘酸っぱく舌の上でとろけていった。



『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ウィンター ニックス(aa1482hero002)/男/27歳/ジャックポット
結羅織(aa1461)/女/15歳/バトルメディック
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2017年09月04日

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