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『その道と分かれる道。 』
彩咲 姫乃aa0941

 何度となく通った道、バスの停車時刻、出発時刻と言った情報もすでにスマホに入っているほどここには通い慣れてしまった。
 グロリア社が支援する孤児院。H.O.P.E.と提携するその孤児院には能力者やその適性が見られる子供が多く入っているという。
 『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』はその孤児院の人気者だ。
「おお、ごめんごめん、通してくれな」
 面倒見がいい姫乃は特に年下の子供たちから慕われ、今日もどこからか来訪の知らせを受けた子供たちが玄関で待機していた。
 遊んでとせがまれることには慣れっこだったので対策もちゃんと考えてある。
「ほら、サマーフェスのお土産のお菓子とアイスだ」
 そう子供たちに餌付けをして、道をあけてもらう。
 食べ物に気を取られているうちは大人しい子供たち。そのあいだに一通りの挨拶は済ませてしまいたかった。
「お、ナイアか。どうしたそんなところに突っ立って」
 姫乃がトイレに寄ろうと足を向けると『ナイア・レイドレクス(NPC)』が立ち尽くしてこちらを見ていた。その手には大きなスプーンが握られている。
「ああ、あるよ。二人の分」
 姫乃がそう告げると、ナイアは安心したように笑った。
(最近、よく笑うようになったな)
 ナイアはもともと十代とは思えない神秘的な雰囲気を纏っていたのだが。この前孤児院を訪問してからつきものが堕ちたようにどんどん子供らしさを増している。
 今でも姫乃や彼女意外と一緒にいる時はすかした、大人びた雰囲気を醸し出すことがほとんどだが、三人でいる時はよく笑うようになった。
「ひかりは?」
「部屋よ。こっち」
 そう先導して歩くナイアに追いつく姫乃、そのまま視聴覚室に通されると熱心にモニターを眺める『三浦 ひかり(NPC)』の後ろ姿が目に入った。
「おう、ひかり。何見てるんだ?」
「うん、これね。エージェントさんたちの戦闘データ」
 姫乃はこの時思った。何でそんなものを見てる? と。
「それより、姫乃がお土産を買ってきてくれたのよ」
 そうナイアが告げると、光は喜び勇んでモニターを消す。
「あ、あとはライブ映像と。グッズと」
 そう机の前に物を広げて見せる度にひかリは感嘆の声を上げる。
「行きたかったなぁ」
「来年は一緒に行こうか、三人でな」
 そう姫乃は笑って見せるとDVDプレイヤーに手をかけた。そして中身を取り出して友人から受け取ったライブ映像を披露して見せる。
「特別に持って行ってもいいって言われたんだ」
 ひかりは一瞬でその光景に見入ってしまった。ナイアも最初は興味なさ気だったが徐々に引き込まれていく。
 そんな二人の背中を見ながら姫乃はどうしてもそのDVDの存在が気になっていた。
 それというのは、姫乃が最近リンカー研修がこの孤児院で行われると聞いていたから。
「まさか、参加するのか?」
 二人ともリンカーとしての適性は高いという、英雄がいれば契約はできるだろう。
 だから研修に出るのは当然かもしれない。
 だが、その目的によっては。
 そう姫乃は拳を握りしめる。
 そしてDVDを観終わった二人は姫乃を振り返る、そしてその纏っている空気がいつもと違うことに気が付いた。
「どうしたの? 姫乃」
「なぁ、二人は生来の夢とかってあるか?」
 姫乃はそう問いかける。
「なに? 急に」
 そうナイアは答えた。
「俺はな、まぁいろいろあったりなかったりするんだが……」
「煮え切らないわね」
 ナイアは不敵に笑って見せる。
「私はアイドルになりたいな、ステージの上で歌って踊りたい」
 そうだろうと姫乃は思っていた。けど今のひかりの足では無理だ。
「だからね、私リンカーになって足を機械にしてもらうの、アイアンパンクになる」 
「ひかり……」
 やっぱりか、そう姫乃は思った。
「それ、意味をわかってて言ってるのか?」
「え?」
 空気が変わったことをひかりもナイアも感じたのだろう。
 戸惑いの表情をうかべた、あとは恐れ。
「親にもらった体に傷をつけるなってこと?」
「そうじゃない。それに俺はアイアンパンクに偏見なんてない。そうじゃないんだ、自分の理想に近づくために努力するのはいいことだ、けどさ」
 姫乃はDVDをひかりにつきつける。
「見ただろ、俺達は命を懸けてるんだ」
「それは、遊び感覚でリンカーになるなってこと?」
 ナイアがそう問いかける。
「それも違う。俺は……あああ!」
 姫乃は帽子を投げ捨てて頭をかいた、言葉がうまく出てこない。こういう時に誰かを説得できる言葉を持っていたならどれだけよかったか。
「力はあるだけで戦いに巻き込まれる、なぁひかり。本当にリンカーじゃないとダメなのか? アイドルなんて目指す手段はいくらでもあるだろ」
「でも、アイドルになるなら踊れないと、踊れないアイドルなんて無理だよ、今のままじゃ私アイドルになんてなれない」
「険しくない道なんてあるわけないだろ!」
 姫乃は戸惑いを声に滲ませて告げる。
「けど、どんなに険しくても命が無事ならなんだってできる。だからよく考えてくれ」
 ひかりは姫乃を見て目を見開いた。
 こんなに必死に何かを訴えかけてくる姫乃は初めてだったから。
「うん、わかったよ。でも私だって本気でアイドルに……」
「それはわかってる、わかってるけどさ……」 
 そう意気消沈して座り込む姫乃。
 リンカー講習は一週間後に控えている。だから姫乃はその講師に立候補することを決めた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』
『三浦 ひかり(NPC)』
『ナイア・レイドレクス(NPC)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 遅くなってしまって申し訳ありません。
 鳴海です。この度はOMCご注文ありがとうございました。
 今回はちょっと時系列が複雑なので補足を。
 今回のお話が戦闘に来て、依頼のエピローグ部分に入り。そしておまけノベルに繋がります。
 おまけの方は未来を指し示す希望の後のお話を描きました。
 『その道と分かれる道』→『WD未来を指し示す希望』→『おまけ』の順で読んでみてください。
 それではおまけの方でもお会いしましょう、鳴海でした。ありがとうございました。

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2017年09月14日

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