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『叛逆の騎士と白き手の淑女 』
ガレシュテインaa4663hero001)&ベネトナシュaa4612hero001

 都内某所。華やかに飾り付けられた会場で、とある企業のパーティが行われていた。優秀なAGWを多数製造している会社で、グロリア社ほどの規模は持たないもののH.O.P.E.とは縁が深かった。
「緊張しているんですか? 大丈夫、わたしもいますから」
 会場の外。ふわふわの金髪を持つ清楚な女性が、隣を歩く偉丈夫に話しかけた。
「いいえ、兄上。そんなことは……」
 華奢な人差し指が、唇にふれそうな距離にぴんと立てられる。
「今は女性ですから、兄様ではなくてガレスと呼んで下さいね」
 腕を絡められ、偉丈夫が身を固くする。女性のエスコートには慣れていない様子だ。
「分かっていますあにっ……じゃなくて、姉……ガレシュティン嬢」
「ガレスの方が恋人っぽくて良いと思うのですが」
 絵になる二人の正体は、H.O.P.E.エージェント。英雄であるガレシュテインとベネトナシュは異父兄弟の関係にある。共鳴するとガレシュテインが女性の姿に、ベネトナシュが青年の姿になることもあり、恋人を装って潜入することにしたのだ。もちろん能力者たちの許可も取っている。
「こ、恋人……」
 共鳴時のベネトナシュは普段ならばもっと落ち着いていて、威厳すら感じるほどだ。しかし今回ばかりはそうもいかないらしい。
「あら、あなたも同意したでしょう? それともわたしが恋人ではご不満かしら?」
 言葉の割にはちっとも気分を害した様子はない。むしろ――。
「もしかして、楽しんでいませんか?」
「さぁ、どうでしょうか?」
 今日お披露目されるのは、欧州で発掘された宝石を利用したアイテムだ。宝石はライヴスに高い親和性を持ち、持ち主の力を増幅させるという珍しいものらしい。それを狙い、ヴィランがパーティに潜伏しているとの情報を掴んだH.O.P.E.はエージェントを派遣したのだ。場に溶け込むため、服装はスーツと膝下丈のパーティドレスだ。
「社長、ご無沙汰しております」
「これはベネトナシュ君。今日は来てくれてありがとう」
 目で合図すれば社長は小さく首を振る。今のところ、異常はないようだ。
「ガレスさんは、またお美しくなられましたね」
「まぁ、お上手なんですから」
 ガレシュテインは口元に手を当ててくすくすと笑う。兄の自然な演技には感服するが、どうにも調子が狂う。
「飲み物を取ってまいりましょう」
 ベネトナシュは見回りもかねて、その場を離れる。
「これはこれは、美しいお嬢さんですね。社長、私にもご紹介願えませんか?」
 ガレシュテインたちの元へ寄って来たのは脂ぎった壮年の男。取引先の幹部らしい。自己紹介を終えた所で、社長は他の参加者に呼ばれ去って行く。
「では、私もこれで……」
「まぁまぁ、もう少しお付き合いください」
 なかば無理矢理に手を取られ、嫌悪感が走る。この体は、能力者の女性から借りているものだ。この男の好きにさせるのは我慢ならなかった。
「恐れ入りますが……」
 万力のような力で握り返され、男がうめき声をあげる。一気に腕を捻り上げると、にこやかな表情のまま言う。
「連れの者を探さなくてはなりません。お暇しても、よろしいでしょうか?」
「も、勿論だよ!」
 男は手をさすりながら逃げて行った。
「見かけによらず気の強いお嬢さんだね」
 後ろから拍手の音が聞こえた。振り返ると、若い男が立っていた。派手なスーツが似合っていて女性に騒がれそうな容姿だが、なぜか好感が持てなかった。
「おもしろいね、キミ。よかったら一緒にお酒でも」
「申し訳ありません。アルコールには弱いので」
 遠回しの拒絶も男は意に介さない。
「抜けるように白い肌をしているからね。きっと真っ赤になって可愛いんだろうなぁ」
 なれなれしく腰を抱こうとする男。あの場面を見ていてこうしてくるということは、拒絶されない自信があるのだろう。ガレシュテインが再び実力行使に出ようとした、その時。
「その方から手を離してもらおうか」
 声はベネトナシュのものだった。ガレシュテインに近づけさせまいと、男の肩に手をかけている。
「なんだ男連れかよ」
 男はその手を乱暴に振り払って踵を返す。バランスを崩したベネトナシュは、壁に手をつく。――ちょうど進行方向にいた兄を巻き込む形で。見る見るうちに赤くなる弟の顔を、ガレシュテインはきょとんとした顔で見つめていた。が、やがて思い出したように言った。
「助かりましたよ。ありがとうございます、ベネト」
 頭を撫でると、ベネトナシュの顔が曇る。うっかり弟向きの対応をしてしまったことに気づいたガレシュテインは謝る。
「そうではありません! このような状況で……ガレスには危機感がないのですか?」
 またしてもガレシュテインはきょとんと小首を傾げた。
「ベネトは良い子ですもの。危害を加えるようなことがないのはよくわかっていますよ?」
「……私以外の前ではもっと警戒なさるのですね」
「ええ、もちろん」
 腕の中に閉じ込める形になっていた彼女を開放し、ベネトナシュは言う。
「一人にさせて申し訳ありませんでした。少々、強引な方々に捕まっておりまして」
 おそらく押しの強い女性でもいたのだろう。手荒な手段は取れないだろうから、逃れるのに苦労したに違いない。
「改めて飲み物を取りに行こうとしたら、先ほどの場面が目に飛び込んできまして」
「では、今度はふたりで行きましょう。『カップル』ならば変に絡まれることもないでしょうから」
 固まる弟の腕を絡め取りながら、ガレシュテインは花の様に笑った。



 いよいよ新作AGWのお披露目の時となった。照明が落とされ、スポットライトに照らされた社長がAGWにかけられた白い布を取り去る。
「宝石を生かしたアクセサリー型の装備か」
「綺麗ですね」
 二人のエージェントは最前列の端でお披露目を見守っていた。まわりからも称賛の声や感嘆のため息が聞こえてくる。
「はーい、ごくろーさま! そのアクセ、あたしたちが頂きまーす」
 突然、あざけるような声が聞こえた。来た。飛び出そうとする兄を手で制し、ベネトナシュが社長の前に立ちふさがる。敵はガスマスクとボディスーツを身につけた男女だった。
「やはり現れたか、ヴィラン」
「何だい、アンタ! 邪魔するなら殺すよ!」
 女がハスキーな声で威嚇してくる。
「これは正義を守る力とするため、彼らが懸命に開発したものだ。貴様らのような者には渡せん」
「H.O.P.E.の野郎か」
 男が忌々しそうに言って、槍型の武器を取り出した。ハルバードをその手に出現させ、ベネトナシュは相手をにらみ返す。
「オラッ!」
 耳障りな金属音が戦闘開始の合図だった。突き出された槍とハルバードが火花を上げてぶつかり合う。
「ベネト!」
「あなたは避難を優先させてください!」
「……わかりました」
 ガレシュテインはステージ上の社長に駆け寄る。
「ついでに死にな、クソ社長!」
 女は拳銃を社長に向け、3連撃を放つ。――レイピアでは捌ききれない。一瞬のうちにそう判断したガレシュテインは、その身を盾にすることを決める。社長と共に身を伏せた彼女の視界に飛び込んできたのは、翻る赤い色。菫色の瞳が見開かれる。
「戦さ場であろうと凛と咲く菫、貴様ごときに摘ませてなるものか」
 弾丸の軌道上へと飛び出したのは、ベネトナシュだった。
「頼もしいナイト様だねぇ。あたしの銃弾は痛かったでしょ」
「……いや、まるで効かないな」
 胸に刻み付けられた、後悔の痛みに比べれば。
 かつての世界で、彼はガレシュテインの死を止めることができなかった。罪滅ぼしなどとは思っていない。ただ今度こそ、大切な兄のことを守り抜きたいのだ。
 ガレシュテインは唇をかみしめ、社長をかばいながら降壇した。逃げ遅れた人々を励まし、会場の外へと誘導する。幸い、ヴィランたちは彼女を追えなかった。ベネトナシュが数の不利をものともしない勢いで、二人の敵を相手取っていたからだ。
「おいおい、どこからンな力がわいてくるんだ」
「貴様らにはわかるまい。何のためらいもなく命を奪おうとする外道共にはな」
 男は息を切らしている。流した血の量ならば確実にベネトナシュの方が多いはずなのに、戦況は不利になっていく。ベネトナシュの攻撃は凶悪なほど的確に急所を狙ってくる。まるで死神だ。こちらは防戦一方。致命傷をしのぐことしかできない。
「やっばいなぁ……これじゃ、ボスに殺されちゃう」
 女は構えを解き、AGWの元へと駆けだした。
「アンタはそいつの相手をよろしく。ブツはあたしがちゃーんと持ち帰るからさっ!」
 女は冷や汗をだらだらと流しながら、指輪やイヤリングに加工されたAGWをかき集める。男からはとめどない罵声が浴びせられる。しかし女を追うには、ベネトナシュを倒さなくてはならない。状況は絶望的だった。
「あばよ、元相棒!」
 入り口を飛び出そうとした瞬間、女は突然足を止め、無理矢理に体を後ろに反らした。眼前に突きつけられたのはベネトナシュの振るうレイピア。
「逃がしませんよ」
 女の右手を突いて拳銃を落とさせ、丸腰になったところを拘束する。
「あなたがたには揃って罪を償っていただきます。そうですね、ベネト」
 ひときわ大きな金属音が、高く、長く、響いた。跳ね飛ばされた槍がくるくると回転しながら宙を舞い、やがて床に突き刺さる。
「い、命だけは……」
「言っただろう。生きて罪を償え」
 ヴィランを見下ろしたエージェントの顔は、死神ではなく、美しく誇り高き騎士のものだった。



 ヴィランたちは共鳴を解いた状態で縛られ、H.O.P.E.の護送車へと連行された。
「一件落着ですね」
 微笑んで弟を見上げたガレシュテインの体がゆらりと横向きに傾ぐ。ベネトナシュはとっさに背中と腰に手を回して支える。まるでダンス中の一コマにも見えた。
「ありがとう。ヒールが折れてしまったみたいですね」
「危ないですから、そのままで。私の首に腕を回して下さい」
 今の二人にはかなりの体格差がある。軽々と横抱きにすることができた。綿でも抱いているような――と言っては大げさだが彼女の軽さと柔らかさを表現する言葉を、彼は他に持たなかった。
「ベネトは頼りになりますね」
 至近距離で微笑まれ、顔に熱が集まる。中身は兄でも、やはり見た目は美しい女性なのだ。
「またいつこういった任務があるかわかりません。ベネトには訓練が必要かもしれませんね」
「か、勘弁してください……!」
 眉を下げる弟の腕の中で、ガレシュテインはころころと笑った。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ガレシュテイン(aa4663hero001)/男性/16歳/ブレイブナイト】
【ベネトナシュ(aa4612hero001)/男性/17歳/ドレッドノート】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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おまたせいたしました、高庭ぺん銀です。お互いのことが大好きな微笑ましいお二人。今回は共鳴状態でのお話ということで、新鮮な気持ちで書かせていただきました。
作品内に不備などありましたら、どうぞリテイクをお申し付けください。それではまたお会いできる日を楽しみにしております。
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2017年09月15日

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