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『煌めく夏の水遊びから。 』
ka5978)&静玖ka5980)&ka6002

 ぱしゃん、と川面で何かが跳ねる、ひどく涼やかな音がした。

「何か……何……?」
「うーん、何やろなぁ? 魚?」

 跳ねた水の方を見やって、こくり、澪(ka6002)が小首を傾げる。その隣で静玖(ka5980)もまた、双子の片割れとそっくり同じに小首を傾げ、それから宙を睨みやるように考えを巡らせた。
 うーん、と考え、考え。けれども、そうして考えたところですでに姿も見えない相手の正体などわかるはずもないと、あっさりその思考を放棄した静玖はひょい、と澪を見てにっかり笑う。

「それより早ぉ遊ぼうな! うち、もう暑ぅてたまらへんわ」
「うん……せっかく来たんだし……」
「――2人とも。遊ぶのは良いけれど、あんまり羽目を外すんじゃないよ」

 こくり、こくりと頷きあって再び、今度は夏の日差しに煌めく水と同じようにキラキラとした眼差しで川面を見つめ始めた双子の妹たちに、微笑みながら雹(ka5978)が一応そんな注意をした。何しろ彼女たちはどうかすれば今すぐにだってあの、輝く川面に飛び込んでいってしまいそうだったから。
 そんな兄の言葉に双子は、「はーい!」「わかった……」と揃って良いお返事をしたのだけれども、眼差しは相変わらず川面に釘付けだ。これではいったい、どこまで雹の注意をちゃんと聞いていたかは大いに怪しい。
 とはいえ、自身が口にしたそれがあくまで『いちおう』の注意に過ぎないのは実のところ、雹自身もよくわかっていたりした。だから案の定、良い返事とは裏腹に早速妹たちが川べりへと駆けて行ったのを見ても、ただ、浮かべた微笑みを柔らかな苦笑へと変えただけ。
 やれやれと息を吐きながら、妹たちがきゃいきゃいとはしゃぎながら川面を覗き込んでいるのを、見守る。――今日は兄妹3人で、川涼みにやって来たのだ。
 このところ暑い日々が続いているから、気分転換と避暑を兼ねて。せっかくだからみんなで浴衣を着て、見た目からして涼やかに。
 とはいえいささか、涼やかすぎる気はしないでもないけれど――と苦笑う雹の眼差しの先では、気付けば妹たちが浴衣の裾をたくし上げて川岸に座り、流れる水に足をつけて、冷たい、気持ち良い、と楽しげにはしゃいでいる。さらにいえば時々、裾をたくし上げすぎて、見えてはいけない領域まで見えてしまいそうになっている。
 他に見ている人がいたらどうするのかと、兄というよりむしろ親のような気持ちになる雹の眼差しはだが、夏の突き刺さるような日差しに似ず、どこまでも穏やかで暖かだ。妹たちがあんなに楽しそうなのだし、いざとなれば雹がどうにかすれば良いだけだ――そう、どうにか。
 兄にそんな風に見守られながら、静玖と澪は川べりの岩の上に並んで座り、ぱしゃぱしゃと足で川面を蹴って遊んでいた。そうして、跳ねる水が陽光に煌めいて様々に表情を変えるのが楽しいと、2人顔を見合わせ笑う。
 さらさらと流れてゆく水は冷たくて、けれどもその感触が夏の暑さに火照った体にはひどく気持ち良い。ね、うん、と囁き合ってはくすくす笑う、そんな時間もくすぐったくて気持ち良い。

 ぱしゃ、ぱしゃり。
 ぴちゃん、ぱちゃん……ッ!

 足を動かすのに合わせて、川面に水の華が咲く。きらきらと眩しげに煌めく水の花びらが、咲いては散って、また咲いて。
 そんな風に遊んでいたら、いつの間にか静玖も澪も、濡れないようにたくし上げていたはずの浴衣の裾が、すっかりびしょ濡れになっていた。ならばもう気にする事はないだろうと、思い切って川にざぶんと飛び込んでしまう。
 そうして川の中を水を蹴散らし駆け出そうとした、静玖はけれども澪がその場に立ち止まったままなのに気が付いて、おや、と片割れを振り返り。

「どしたん?」
「兄様……」

 小首を傾げて尋ねた静玖に、澪は思わしげな表情を浮かべてそう呟いた。――日頃は戦闘以外は寡黙で、あまり表情を変えたりしない澪だけれども、こうして大好きな家族と一緒にいるなら別だ。
 ゆえに喜怒哀楽が非常にはっきりしている静玖程ではないものの、見るからに心配そうな、困ったような表情の澪の言葉に、兄ぃ? と静玖は岸辺のほうを振り返った。そこには河原に来た時と同じ、しゃんとした浴衣姿で、水に入るでもなくこちらを見守ってくれている雹の姿がある。
 ふむ、と静玖は澪の言わんとするところを察し、小さく鼻を鳴らした。考えを巡らせるように、大きく大きく水を蹴る。
 せっかく兄妹水入らずで遊びに来たと言うのに、自分たちだけで遊んでいたんじゃ、なんとも勿体無い。と言うかこれじゃそもそも、何のためにやってきたのかわからない、気がする。
 3人で遊びに来たからには、雹だって一緒に、3人で遊ぶのが絶対に良いはずなのだ。それなのに、と静玖は何度も何度も水を蹴り、澪はどうしたものかと兄を見やって考えて。
 そや、と静玖が不意に水を蹴る足を止め、瞳を悪戯に輝かせて振り返った。

「な、な、こーゆぅんはどやろ? ただ兄ぃを呼ぶんはおもろないから……」
「え……うん……? ……うん、面白そう……」

 そうして静玖がとっておきの『思い付き』を耳打ちをしたのに、された澪はほんの少しだけ考えてから、こっくり大きく頷いた。静玖の『思い付き』はいかにも楽しそうで、兄様もきっと楽しいと思ってくれそう、と思ったのだ。
 ならば、と簡単に相談をして、よく似た表情でこくり、頷く。そうして揃ってくるんと雹を振り返り、おーい、と大きく手を振った。

「兄ぃ! そんなとこで見とらんと、兄ぃもきいや〜」
「兄様もいっしょに……遊ぼ……」

 さすがは双子と言うべきか、日頃はいかにも正反対の妹たちは、けれどもぴったりと息の合った様子でそんな風に兄を呼ぶ。――それは思い返せばはるか昔、妹たちがまだ稚い子供だった頃から変わらない笑み。
 おやおや、とその呼び声に目を細めてしまったのはきっと、それゆえの懐かしさ。懐かしさゆえの、愛おしさ。
 ゆえに雹は微笑んで、妹たちに誘われるままに川へと足を踏み入れた。ひやり、冷たく流れる水の感触が気持ち良い。
 それに一瞬だけ眼差しを足元に落とした雹は、けれどもすぐに両手を妹たちに引っ張られ、それどころではなくなった。

「こらこら。そんなに引っ張ったら危ないよ」
「えぇやんえぇやん、遊んでーや兄ぃー」
「兄様、遊ぼ……」

 思いのほかゴロゴロとした、川底の石に足を取られないよう気を付けながらそう言ったけれども、双子たちはお構いなしだ。どころか甘えるかのように、ますます両側からぐいぐい手を引っ張ってくる。
 仕方ないなぁと、また微笑んだ雹はすぐにその笑みを悪戯なそれに変え、ぐい、と引っ張られていた手に、引っ張り返すように力を込めた。わわッ!? とバランスが崩れてぐらつく静玖と澪を、力を入れすぎないように気を付けながら、ぐい、ぐい、と引っ張ってやると、これが遊びだと理解した妹たちから歓声が上がった。
 そうと分かれば静玖と澪だって負けてはいない。互いに目と目を見合わせて、息を合わせてそれまで以上に思い切り、雹の両手をぶんぶん振り回すように思い思いの方向に引っ張りあっていたと思ったら、気づけば雹が妹たちを追いかける鬼ごっこになっていた。
 川の中で、走って、走って。きゃいきゃい逃げる双子たちが、雹の動きの邪魔をしようと手当たり次第に川の水をかけて回るうち、兄妹3人で全力の水かけ大会になって。
 そうしてひとしきり遊び回っていれば、さすがにちょっと疲れてくる。ずっと冷たい川の中にいては、いくら暑いとはいえ身体も冷えてしまうだろうし。

(そろそろ一度上がって休憩した方が良いかな……?)

 そんな風に考えながら雹が何気なく空を見上げた、瞬間。
 ――どんッ!

「うわ……ッ!?」

 不意に背中を強く突き飛ばされて、雹は慌てた声を上げた。と、思った時には完全にバランスを崩して倒れ込み、冷たい川面に顔から突っ込んでいて。
 ――バッシャー……ン……ッ!!
 夏の晴れやかな青空に、冷たい水柱が盛大に立ち上った。なんとか手をつき顔面衝突は回避して、さて犯人はと背後を振り返れば案の定、ニヤニヤ笑いの双子がいる。
 聞かなくても、こっそりと雹の背中に回り込んだ静玖と澪が思い切り背中を突き飛ばしたのだということが、わかった。こら、と目顔で2人を叱ってみたけれど、返ってきたのは一切悪びれた様子のない、ただただ無邪気とも言える楽しげな笑みだけだ。
 してやったり、と言わんばかりのいい笑顔で、静玖がにまにまこう言った。

「兄ぃ、涼しぃなりはったやろ?」
「まったく……仕方ないなあ、静玖は」

 その笑みに、怒ってみせた顔はあっという間に苦笑へと変わってしまった。というよりもともと、妹たちへの怒りは少しも感じていなかったりする。
 だから、1度苦笑してしまったらもうどうしようもなくて、川底にどっかり座り込んでしまった雹はくすくす、くすくす笑い出してしまった。そんな雹の傍らに、ぱしゃん、と同じようにしゃがみこんだ澪が、兄の顔を覗き込むようにこくり、小首を傾げる。

「兄様、楽しい? 私は、楽しい……」
「――ああ、もちろん。もちろん楽しいよ、澪」
「……良かった」

 そうして尋ねた澪の言葉に、尋ねられた雹はしっかりと頷き返してくれたから、あぁ良かった、と澪は心からほっとして胸をなでおろした。せっかく大好きな兄様と大好きな静玖と一緒に遊んでいるのだから、澪がとても楽しいように、2人も楽しいと思ってくれていれば良いな、と心配していたのだ。
 ――静玖は喜怒哀楽が見ていてはっきりしているけれど。この兄は時々、澪とは別の意味で喜怒哀楽が解りにくい時があるように思うから。
 だから楽しいと頷いてくれて、しっかり澪の目を見て笑ってくれた兄は確かに言葉の通り、この時間を楽しんでくれているのだと感じられて、心から安心した。ゆえにほっと息を吐いて、澪はぱしゃん、と立ち上がる。
 静玖、と双子の片割れを振り返って、その手を引いた。

「あっちも涼しそう。いこ」
「あ、えぇなぁ! ほな早速……」
「――澪、静玖。はしゃぎすぎちゃ駄目だよ?」

 少し離れた浅瀬を指差しそう言った、澪の取った手をぶんぶん振り回して静玖が顔を好奇心に輝かせる。そうして2人、また駆けて行こうとしたところに雹からそんな注意をされて、思わず澪は静玖と顔を見合わせ、うーん、と考え込んでしまった。
 何しろ兄を川に突き倒したり、バシャバシャ水を駆けまくったり、すでにかなり羽目を外してはしゃいでいる自覚がある。傍目にはいかにもおとなしげで、自分から悪戯を思いつく事はあまりないけれど、静玖の『悪巧み』はなんだかとても楽しそうで、つい積極的に乗ってしまう澪なのだ。
 まぁ、これ以上に羽目を外さないように、ということなのだろうと考えて、澪はこくんと大きく頷いた。手を繋いでいる静玖ももちろん、ぶんぶんと力強く首を縦に振っている――こちらはどちらかと言えば、うちは全然はしゃいだりしてへんぇ、くらいは思っていそうだ。
 双子それぞれの反応に、やれやれ、次はどんな悪戯をされることやら、ともう何度目か知れない苦笑いが浮かぶのを、堪えるのは無理な話で。バシャバシャと走っていった妹たちの背中を見送りながら、雹は仕方ないなぁ、と笑う。
 きっとどんな悪戯されてもなんだかんだで許してしまうのだろう、我ながらあまあまな兄だという自覚はあった。とはいえ出来ればあまり激しくない悪戯が良いものだと、考えながら浅瀬でバシャバシャ遊んび始めた静玖と澪をのんびり見守っていたら、不意に妹たちからひときわ高い歓声が上がり。
 今度は何事かと見やった雹の視線が、ちょうど兄を振り返った静玖と澪の視線とがっちりぶつかる。と、何やら両手でしっかり抱えている静玖が、伸び上がるようにその両手を頭上で大きく振った。

「兄ぃ! これでご飯食べさせて!」
「これで……って……」

 これこれ、と何度も頭上の両手を天に突き上げるように振るから、何かと思えばその手に抱えられているのは、まだぴちぴちと活きの良い魚。――どうやら浅瀬で泳いでいたのを、見事捕まえたらしい。
 もちろん、魚獲りの道具など何も持っていないから、身一つでの真剣勝負(?)。だからこそ見事飯のタネを確保出来た、という喜びはひとしおだと満足かつ誇らしげに笑う静玖を、野生児と呼んでも決して間違いではあるまい。
 そんな静玖の傍らで、ぴちぴち跳ねる魚を見上げていた澪が、あ、と呟いた。

「あの時跳ねてたの……この魚だったのかな……?」
「あぁ〜、アレなぁ! うん、きっとそぉやわ!」
「そう……かもね」

 うんうん大きく頷いた静玖の手の中の、まだまだ活きが良い魚を見ながら雹も、来た当初に跳ねた水の煌めきを思い出す。そうして、さてどう料理するのが一番良いだろうかと、楽しく考え始めたのだった。





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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職 業 】
 ka5978  /  雹  / 男  / 16  / 格闘士
 ka5980  /  静玖 / 女  / 11  / 符術師
 ka6002  /  澪  / 女  / 12  / 舞刀士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、蓮華・水無月でございます。
この度はご発注頂きましてありがとうございました。

ご兄妹で川遊びの物語、如何でしたでしょうか。
前回に引き続き、今回もかなり自由に綴らせて頂いてしまいましたが……その、自由な感じですよね……(何が
すでに季節はすっかり秋を感じますが、夏の盛りの輝く時間を少しでもお届け出来ていれば幸いです。
もしイメージと違うなどあられましたら、いつでもお気軽にリテイクをお申し付けくださいませ(土下座

ご兄妹のイメージ通りの、束の間の休息で兄妹水いらずの絆深まるノベルであれば良いのですけれども。

それでは、これにて失礼致します(深々と
イベントノベル(パーティ) -
蓮華・水無月 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年10月02日

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