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『薬を知る竜、美しき幼い竜』
シリューナ・リュクテイア3785)&ファルス・ティレイラ(3733)

 様々な魔法ガラスで作られた細工達は、静かにその美しい体を光らせながら棚に大切に保管されている。
 そんな魔法ガラス細工達の瞳、いや身体中のガラスに映るのは見慣れた女店主とシリューナ・リュクテイア(3785)の姿だ。
 よく見れば、シリューナの後ろに小柄な少女・ファルス・ティレイラ(3733)が楽しく話す二人を交互に顔を見た。
「ティレ、こちらが依頼主の店主よ」
 シリューナが女店主を紹介すると、ファルスはぺこりと頭を下げる。
「ティレイラさん、依頼よろしくお願いいたします」
「はい、頑張って作りますね!」
 にっこりと満面の笑みで答えるファルスを見て、女店主は満足げに頷いた。
「シリューナさんは魔法の液体を、ティレイラさんは沢山のガラス細工の花をお願いします」
「お任せ下さい」
 シリューナがそう言うと、女店主は『任せました』と言って自分の作業台に向かった。
 ファルスは小さな箱に煙突の様に管が付いた魔法道具に魔力を注ぐと、管から透明なのに虹色に光る球体が生成される、これは『魔法ガラスの膜』だ。
 用意されていた小さな花を『魔法ガラスの膜』にぽいっと入れると、球体の中にある『花』に吸い込まれるかの様に収縮し『花』を『ガラス細工の花』へと変わった。
 それを用意された花の分を全てすれば良いだけだ。
 ファルスは、慣れた手つきで管から花のガラス細工を取り、綿が敷かれた箱にそっと入れる。
「綺麗……」
 ファルスは光を浴びて7色に輝くガラスを見てため息を吐いた。
 工房に入る時にも見たが、女店主が1つ1つ魔法で作り上げた細工達は今にも動きそうだ。
 それは、女店主の思いが細工に命を与えたかの様に……。
 どんな思いで作っているのか? 自分にも作れるのだろうか? と、考えながらファルスは花のガラス細工を作る。

(あぁ、美しくて可愛いティレ……)
 魔法の液体を作り終えたシリューナは、女店主と他愛もない話をしつつも視線はファルスの方へと向けてしまう。
「良い、お弟子さんを貰って良かったですね」
「ええ、それにルビーの様な瞳に濡れ鴉の様な髪が美しくて……つい愛でてしまうわ」
 出されたお茶を口にするとシリューナは、呪術でオブジェにしたファルスを思い出しながら言う。
「溺愛なさっているのですね。私にもあんな弟子を作るべきかしら?」
「貴女好みの弟子を作れば良いわ。そしたら毎日が別世界に感じる程に、がらりと世界が変わるのよ」
 と、シリューナは美しく優しい笑みを浮かべた。
「そんなに?」
「私は少なくとも、そう感じますわ」
 驚く女店主にシリューナは、ファルスの方へと視線を向けた。

「はー……」
 花のガラス細工を作り続けるファルスは、魔法道具に送る魔力の量を誤ってしまう。
 管から出てくる球体は勢いよく膨らみ、ファルスの上半身を覆う程に膨らんでしまった。
「わわっ! ガラス細工にされてしまうの!」
 背中から鱗に覆われた翼を出し、飛んで逃げようとするもファルスは魔法ガラスの膜にすっぽりと覆われてしまった。
 魔法ガラスの膜は徐々にファルスを包み込もうとする。
「つ、翼が……尻尾も……!」
 ファルスは、再び翼を動かそうとするも体より大きな部分は魔法ガラスの膜に覆われ、美しいガラス細工と化していたのだ。
 柔らかく暖かい魔法ガラスの膜。
 ファルスの翼と尻尾を覆い、次は頭と足から徐々に彼女を美しいガラス細工へと変えてゆく。
 生きた、ガラス細工へと。
(あれ? この感覚は……とても、心地が良い)
 膜に包まれた感覚は、ファルスにとって何処か懐かしくそして居心地の良く感じた。
 だが、問題がある。
「あ、あれ? う、動け……ない!?」
 ファルスは、翼をはばたかせようとしても翼は動かず、手足をばたつかせようと動かすがびくともしない。
「お、お姉さまーっ! 助けてー!」
 と、ファルスは悲鳴に近い声を上げた。

「騒がしいですね……」
 ドスドスと響く音を聞いて女店主は首を傾げた。
「ティレがきっとぼーっとして、躓いたのかもしれませんね」
 シリューナは慣れた様子でお茶を口に運ぶ。
「お、お姉さまーっ! 助けてー!」
 と、ファルスの悲鳴が2人の耳に届く。
「あ、シリューナさん、まって私も」
 その声を聞いたシリューナは、素早く立ち上がり声がした方へと駆け出した。
 ファルスが作業している場所に近付くと、そこには美しい少女がガラス細工と化していた。
「これは素晴らしい」
 そのガラス細工となったファルスを、シリューナは恍惚とした表情で見つめながら感嘆の声を上げた。
 天を見上げ、物語に出てくる大型船の先頭を飾る女性を象った像の様な美しいファルス。

 あぁ、たまらない……

 シリューナは熱くなっていく指先をそっと、ガラスの膜に覆われたファルスの体に着けてスーと滑らせた。
 綺麗に整われた顔、美しく女性らしさが出てきている体の曲線、簡単に折れてしまいそうな腕、そして柔らかく少し肉付きの良い足をシリューナは感触を楽しむ。
 ふつふつ、と胸が高揚していくが女店主の前なのを思い出し、シリューナはその高揚を理性で抑えた。
 ファルスがトラブルやミスをした時に与える罰として、シリューナが呪術でオブジェにした時よりも美しい。
「まぁ、シリューナさん。これは見事な生きた作品ですね……私も楽しみたい」
 女店主が手を伸ばそうとする、が。
「店主、お楽しみは後日で良い?」
「そういえば貴女のお弟子さんでしたね。ごめんなさい、その時を楽しみにしています」
 シリューナの顔を見て察した女店主は、手を引っ込めると楽しそうに笑みを浮かべた。
「すみません。それと、ティレがこの有り様なので今日の作業はここまで」
「素敵なモノが見れたので……シリューナさん、楽しんでらっしゃい」
 固まったファルスを抱えるシリューナに、女店主は工房のドアを開けるとそう言った。
「それでは失礼、また明日」
「ええ、明日も作業をお願いします」
 女店主に言い終えると、シリューナはガラス細工と化したファルスを抱え自宅へとの向かった。

 早く、この美しい少女を愛でたい。

 その事で頭が、心が、一杯になる。

 見た目はガラス細工なのに、抱える腕に体温がゆっくりと伝わる。

 早く。

 早く。

 高揚する心を抑え、シリューナは翼を羽ばたかせる。
 その腕の中で、ファルスは動けないが暖かく懐かしい感覚に包まれながらも『お姉さま、出して』と呟いた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3785/シリューナ・リュクテイア/女/212/魔法薬屋】
【3733/ファルス・ティレイラ/女/15/配達屋さん(なんでも屋さん)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はパーティーノベル(2名)を発注していただき、ありがとうございました。
納品が遅れてしまって、本当にすみません。
ご希望通りの内容になっていたら幸いです。
もし、何かありましたら遠慮なくリテイクしてください。
本当に発注していただき、ありがとうございます。
東京怪談ノベル(パーティ) -
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東京怪談
2017年10月02日

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