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『 サマーバケーション 』
橘 由香里aa1855)&宮ヶ匁 蛍丸aa2951

プロローグ

『橘 由香里 (aa1855@WTZERO)』家、今にて。
 由香里はたまの休みなので部屋の掃除をしていた。パタパタと足を揺らす英雄を掃除機のヘッドでガスガス攻撃しながらどかして、昼の陽気に少し楽しくなってみたりする。
「季節の変わり目は乾燥するわね」
 そう洗濯物の干し具合に感動していると唐突に彼女の電話が鳴った『黒金 蛍丸(aa2951@WTZERO)』の連絡である。
「はい、蛍丸くん? どうしたのいきなり」
 英雄が耳をそばだたせていたのは気配でわかったがそれも無視して作業の手を止めて少し長話に興じる由香里。
 そんな彼女の声音がある単語を境に半トーン上がった。
「え? 海? でも季節はずれじゃ。南国の海に行く?」
 うんうんと、熱心に頷く由香里。当然だろう、彼氏からのお誘い嬉しくないわけではない。しかも二人きりの旅行にはいい思い出も多い。
 これはチャンスである。
「わかった、準備しておくわね。ええ、水着も新しくしていくから。ふふふ。じゃあまたね」
 そう由香里は電話を切ると、英雄の隣で正座する。そしてひとつ咳払いすると口をふらいた。
「わたし……」
 そんな由香里に食い気味な感じで英雄が。言ってくるがよい。と告げた。
「二つ返事ね」
 不敵に微笑む英雄。
「それに、二人きりで海に行って、暗くなるまでまって雰囲気作ればいけるのではないか?」
 以前から由香里は気になっていた。蛍丸がその……いろいろ求めてこないこと。
 キスより先に進まないこと。
 そんな悩みを抱えていたからこそ、英雄は行った。これが好機だと。
「そうね、少し頑張っちゃおうかしら」
 告げると水着のカタログを引っ張り出して、一週間後に控えた旅行に備える。
 露出が多いのは恥ずかしいので機能美優先の、鮮やかな海に這えるだろう水色の物にした。
 喜んでもらえるといいなと微笑む由香里である。
 だが、そんな彼女を旅の魔物が襲う。
 楽しい旅行はトラブルもその勘定のうち。というが。
 まさか出鼻から挫かれる運命だとはゆかりも思わなかったに違いない。
「な、なな」
 由香里が乗り込んでいた飛行機には見知ったエージェントがたくさん載っていた。つまりこれは
「南国デートって、ほとんど任務じゃないの!!」
 由香里の心の絶叫が抜けるような空にこだました気がした。

本編 二人だけの時間
 
「由香里さん、どうしたんです?」
 蛍丸は飛行機の急な階段でふらつく由香里に手を差し伸べた。
「いえ……別に」
 蛍丸は首をかしげる。
「実は任務は明後日からですから。明日は海で遊べるんですよ」
「そ、そうなの?」
 光り輝く由香里の顔。喜んでもらえてよかった。そう蛍丸は胸をなでおろす。
「いきましょう、ホテルも予約してありますから」
 その言葉に由香里は顔を赤らめる。今回は任務に先んじてくる形になったためリンカーが個別で宿をとることになっているのだ。
 だから蛍丸は海も見える空港に近いホテルを予約した。
「蛍丸君ってなれてるのね」
「任務でいろんなところに行ってますからね、宿の確保は慣れました」
 そんな雑談をしながらエレベーターを上がり部屋まで向かうと、205号室の前で止まり由香里に鍵を差し出した。
「あ、蛍丸君、これって」
 由香里が顔を赤らめて俯く。
「安心してください。僕は隣の部屋にいますから」
 そう206号室の鍵を振って見せる。
 唖然と硬直する由香里、その由香里に背を向けて隣の部屋の鍵を通す。
「おやすみなさい、明日は10時頃に迎えに来ますから。鍵はちゃんとしておいてください、危ないですからね」
 蛍丸はラッキースケベの神に愛されている。
 何が起こるか分からない、トラブルの芽は摘んでおこうと思ったのだ。
「……ええ、わかったわ。また明日」
「ええ、また明日。おやすみなさい」
 そう蛍丸は扉を閉めるとふと、由香里さん元気がなかったなぁなんて思いながらベットに横たわる。
「疲れてたのかな……」
 ただ、疲れているのは蛍丸も同じで横になり瞼を下ろすとすぐに眠ることができた。
 そして翌日。
 波打ち際は絶好の海水浴日和。賑わう観光客と、海パンにパーカーの蛍丸はパラソルを砂浜に突き立てていた。
 そんな蛍丸が日差しに負けじと顔をあげると、視線の向こうから由香里が歩いてくる。
「あ、由香里さん」
「……あの」
 由香里は清楚な水着に身を包んでいる。
「とてもよく似合ってますよ」 
 過激な水着だったらどうしようかと思っていた蛍丸である。
「さぁ、行きましょうか」
「蛍丸君?」
「はい?」
「もっと大胆な水着の方がよかった?」
 その言葉に心臓が高鳴る蛍丸。
「そ、そんなことないですよ! さぁ。遊びにいきましょう」
 そんな蛍丸の耳に、潮騒とかさなって『もう』とため息をつくような声が聞えた。
 その後二人は夏を取り返すように季節を楽しんだ。
 ビーチバレーをしたり、さらわれてきた水着をすくった蛍丸が赤面したり。
 南国の女性たちの大胆な水着に赤面したり、赤面したり。
「蛍丸くん!」
「はひぃ!」
 びくりと飛び上がる蛍丸。
「すけべ」
 そう言って、由香里はベッと舌を出してボールをぶつけてやったり。
 水から上がってお昼ご飯を食べ、釣り具を借りて二人で糸を垂らしたり。 
 木陰でお昼寝してみたり。
 気が付けば夕方となっていた。ディナーはホテルでと予定しているので二人は早々に帰宅準備を済ませる。
「あの、蛍丸君」
 パラソルを担いだ蛍丸に由香里が声をかけた。
「あの……せっかく星が出てきたから。その見て行かない?」
 綺麗よ。
 そう儚げに微笑む由香里は、髪を揺らし、藍色と茜色の狭間で蛍丸を見つめていた。
 後ろ手に組んで蛍丸を見つめる視線がなぜか不安げで。
 気が付けば蛍丸は、いいですよ。と答えていた。
 二人で人がいなくなった波打ち際を歩く。 
 いろんな話をした、これまでの話、これからの話。
 今この時の話。
「蛍丸君その……私に興味ない?」
「え? 恋人なんだから興味ないわけないじゃないですか」
 そう蛍丸があっけらかんと告げると、由香里は肩を落とす。
「いや、そう言う意味じゃないの。でもそこもあなたの魅力かしらね」
「ん? どういうことですか?」
 首をひねる蛍丸。
 そんな蛍丸は肌寒さを感じて立ち止まる。
「もどりましょう、由香里さん。風邪をひきますよ」
 そうとった由香里の手。引かれる力強さに由香里はその身をゆだねて蛍丸にしなだれかかった。
「え……ええええ。ええええええ!」
 いきなりの展開。急展開である、驚く蛍丸。蛇に睨まれたように動けない。
 体温が伝わってくる、体が冷えるどころかむしろ体が熱い。由香里の体温が、触れている肌面積の少なさから信じられないほどに伝わる。
 蛍丸の顔がみるみる赤くなっていった。
「私、魅力ないかな?」
「そ、そんなことないです。だって由香里さんが一番。その……」
「蛍丸君は私と、どうなりたいの?」
 その言葉を吐いた由香里はもう恥ずかしくて目も合わせられないようだ、何を言ってるんだか自分でも分からずただただ高鳴る心臓を押さえつけるので精一杯。
「あ、あの、大切にしたいです」
「そうじゃなくて!」
 もはや蛍丸の首を揺らす勢いで迫る由香里。
「いや、ほら、えぇと……その。だって、付き合い始めてもう随分経つし……
そろそろ……キ、キス以上の関係になってもいいかな……って」
「キス以上!!」
「……え! 私今何を言って」
 大混乱の二人である。蛍丸はよりガッチガチになるし、由香里に至ってはフリーズして空回りしたのに気が付いて落ち込んで。
 恥かしさのあまり何も言えなくなってしまう二人。
「あああ、そ。それは」
「こまりました」
 口元を抑えて視線を足元へ投げる由香里、それでいて蛍丸の反応が気になるのだろう、チラチラと蛍丸を視線でおっている。
 対して蛍丸は『キス以上の関係』という言葉で全てを理解した。
「あああ、あの。僕。意識してなかったわけじゃなくて。でも由香里さんを怯えさせるのも嫌で、その……」
 蛍丸は徐々に冷静さを取り戻し由香里の視線に自分の視線を合わせた。
「そ、そうよね。貴方にも自分のペースってものがある訳だし……。ごめんね」
 そう意気消沈する由香里、そんな彼女の肩に手を置いて蛍丸は告げた。
「由香里。ごめんなさい。僕の心の準備がまだだったみたいです」
 その言葉の魅力に魅入られる少女。由香里は蛍丸の手を取って一歩歩み寄った。
「いいのよ。蛍丸」
 焦る必要なない。だって二人はこれからも同じ道を歩むんだから。
 そう由香里は思えた。
 二人の影が解け合う。波打ち際で立った二人、そんな二人の姿も夜がヴェールとなって包み隠した。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『橘 由香里 (aa1855@WTZERO)』
『黒金 蛍丸(aa2951@WTZERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 納品が遅くなってしまってすみません。鳴海でございます。
 今回は二人の夏休み的な感じで意識して書いてみましたがいかがでしたでしょうか。
 ラブコメとしても今回、ラブを強めに色っぽく頑張ってみようと思いながら書いてました。
 お二人は私としても大好きなPCさんなので、幸せになっていただけるように今後とも全力を尽くしていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。
 それでは鳴海でした。ありがとうございました。
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2017年10月11日

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