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『戦え、男子スイーツ部』
矢野 古代jb1679)&柘榴 今日jb6210)&ファウストjb8866


 男子スイーツ部。
 それはスイーツをこよなく愛する男子の男子による男子のための部活である。
 かといって女子禁制などとカタいことは言わない。
 言わないが、「君そんなに男が甘い物頬張ってるの見たいの?」と言う特殊性癖の目覚めのような言葉に実質的な拒否を感じなくもない部活である。

 現在の部員数、三名。
 彼等は本日、創部以来初めてとなる対外試合に挑んでいた。

 スイーツ部がいったい何と戦うのかと?

 頭上から容赦なく照りつけるこの真夏の太陽か。
 焼け付く足下から立ちのぼる尋常ならざる熱気と照り返しの眩しさか。

 それとも「男がスイーツなんて」という時代錯誤の偏見か。
 男は甘いものが苦手に違いないというステレオタイプなものの見方か。

 いいや、そのどれでもない。
 食いたい時に食いたいものを食いたいだけ食う、その欲求だ。
 つまり既にして目の前に「それ」が置かれている時点で、彼等の敗北は決定的であった。

 だが、本当の戦いはここから始まるのだ。



「負けたっていいじゃない、にんげんだもの」
「そッスよね! 己の欲望に忠実に生きるって素晴らしいッス!」
 久遠ヶ原島、とあるスイーツカフェ。
 淡いピンクを基調にしたパステルカラーで統一された可愛らしい店の、レースとフリルで飾られた丸テーブル。
 三人の男子がそれを囲んでいた。
 一人目は男子と呼ぶにはいささかトウが立ちすぎているかもしれない中年男性。
 二人目は辛うじて男子と言えなくもない見た目18歳の大学生。
 そして三人目は見た目こそ若いが男子というほどでもなく、しかも既に800年ほどその姿のままだというご長寿さん。
「我輩は人間ではないのだが……」
「まあまあ、細かいことは気にするなファウストさん」
 ファウスト(jb8866)の言葉に、矢野 古代(jb1679)が悟りきった表情を浮かべつつ首を振る。
「衝動の前に理性は無力、流されるまま身を委ねるも一興だとは思わんかね」
「さすが古代さんッス、なんかよくわかんねーけど良いこと言うッスね!」
 カチカチカチ、柘榴 今日(jb6210)が拍手の代わりに両手に持ったスプーンを鳴らす。
 そのスプーン、右手にあるのはごく一般的な標準サイズのスイーツ用。
 だが左手のスプーンは柄がやけに長い上に、お玉のように角度が付いている。
 何故そんなものが必要なのか――答えは目の前にあった。

 見た目はチョコにフルーツ、アイスクリームなどがてんこ盛りになった、ごく普通のパフェだ。
 ただし、サイズ感が違う。違いすぎる。
 普通のパフェはトレイに三つ乗せても、ウェイトレスが片手で軽々と運べる重さである。
 しかし、それを運んで来たのは屈強なウェイターだった。
 しかも一度にひとつずつ、両腕に抱えて。

「後学のために知りたいのだが、重さはどれくらいになるのだろうか」
「はい、器を抜きにして20キロほどございます」
 古代の問いに、ウェイターはさりげなく力瘤を見せびらかしつつニコヤカに答える。
「時間制限はございませんので、どうぞごゆっくりお召し上がりください!」
 その笑顔の裏で「完食できるものならやってみろ」と言われているような気がした。

「ごゆっくり、と言われてもな」
 ファウストは視界を塞ぐ物体に視線を注ぐ。
 目を逸らしてもなお視界に入る大きさのそれは、いつぞやの巨大パフェと同等か――いや、ゆうにそれを越えるサイズと重量感だ。
 しかもあの時は当事者ではなく応援する側、しかし今回は。
(「これを、食べるのか」)
 超巨大パフェを見つめたまま固まるファウスト、しかしその手は自ら意思を持ったようにスマホを取り出し、ぱしゃ。
 そのまま流れるような動作で友人一同に送信した――「すいーつなう」のコメント付きで。

 今日はイマドキの若い子らしく、スマホでパシャパシャ撮りまくる。
「料理の写真は真上から撮ると○ンスタ映えするッスよ!」
 ○ンスタ映え=お洒落で女子力高い、という認識が一部にはあるらしいが、女子か。
「でもこういう系は真横からカワイイ背景と一緒に撮るのが良いんッス、その場合は背景を適度にボカすとポイント高いッスね!」
 やはり女子か。
「あ、でも自撮りはしないッス!」
 そこは女子じゃないのか。
「っと、こいつは消しとかねーとッスね!」
 パフェのグラスに古代さんの顔が映り込んじゃったよ。
 でもスマホの画像加工アプリなら簡単に消せるから大丈夫、ほら!
「……、…………、………………ぶふーーーーーーーっ!!」
「どうした柘榴さん」
「あ、いや、なんでも……ぶふっ、や、古代さんは見ちゃだめッスぶふふふ!」
「ふむ、それなら我輩が代わりに見て……、…………、………………」
 スマホの画面を覗き込んだファウストは、固まった。
 巨大パフェを見た時よりも更に長く、固まっていた。
「いや、我輩は何も見ておらぬぞ」
 そうとも、何も見ていない。
 デカ目補正と小顔効果と美白加工が盛られた中年男の姿など。
「いや、消すつもりだったんスよ、それがうっかり加工モードになってて……!」
 消します、今度こそ消します、危ないからもう画像まるごと削除ね!
「……あれ?」
「柘榴さん、今度は何だ」
「うっかりそのまま上げちまったッス」
 しかも青い鳥のほうに。
 きっとスマホが空気読んだんでしょうね、ええ。
「でも大丈夫ッス、もう盛りすぎて身元不明ッスから!」
 娘さんにだけは、わかってしまいそうな気がしないでもないけれど。

「まあ、それはいいとして、だな」
 いいのか古代さん、さすが大人の余裕。
「撮影が終わったらきちんと残さず食べるんだぞ」
「わかってるッスよ、こっからが本番ッス!」
 今日は右手に普通のスプーン、左手に長柄のスプーンを構える。
「なるほど、この柄の長いのは底のほうからすくって食べる用なんッスね」
 攻略中のパートに飽きたら他のパートで口直しも出来る、というわけか。
「それでも大して楽になるようには思えないッスけどね!」
 誰だ、夏だから冷たいスイーツを食べようって話してたところに超巨大パフェの話題をぶっ込んで来たのは。
「夏はかき氷もありッスがこのもっちりぷるぷるもいいスよ! 喉にするんって通って最高!」
 自分か。

「確かに、これが通常の大きさであればな」
 ファウストが同意を示すが、この大きさは少々、いやかなり無謀だったのではないだろうか。
 巨大なグラスには、チョコソースやシリアルを間に挟んで何層にも重なったバニラアイス。
 一番上にはイチゴのババロアが存在感たっぷりに鎮座し、そこに過剰なホイップクリームと、メロンやバナナ、キウイフルーツ、イチゴ、サクランボにワッフル、ウェハースなどなどが、溢れんばかりに盛られている。
 その名もジャンボババロアパフェ。
 しかし、いくらなんでもジャンボすぎるのではないだろうか。
「器からはみ出たこの部分だけでも通常の十倍はありそうだぞ……」
 確か一般的な最大サイズは8キロ程度だと聞いた気がするが、さすが久遠ヶ原。
 この程度は軽く平らげてしまう猛者も多いのだろう。
 しかし生憎、ファウストの胃袋にブラックホールは仕込まれていないのだが――
「まぁ食べ物を粗末にしてはならんからな……うむ」
 覚悟を決めて、一口。
「美味い」
 ファウストも甘味は好きなほうだ。
 が、孫のように可愛がっている子供達をダシに――いやいや、彼等に奢るついでに食べることはあっても、男一人では些か頼みづらい。
 そもそも店に入ることさえ憚られる。
 だから普段は食べたい時には食べたい分だけ自分で作ることが多いのだが、気が付けばいつの間にやら入部していた男子スイーツ部。
(「こういう時に仲間がいるというのは良いものだ……」)
 良いものではある、が。
 徒党を組むと、人は何かと暴走しがちなものである。
 仲間がいるからこそ、時に恐ろしい結果を招くこともあるのだ。
(「なんだこれは、無限パフェか?」)
 食べても食べても減らないんですけど。
(「そう言えば遙か昔、馬鹿な実験をしたことがあったな」)
 はぐれ悪魔は何日くらい食事を取らないと危険な状態になるか、それを知るために飲まず食わずで数週間。
 危うく危険を通り越して帰還不能になるところだった。
 今度はその逆か、はぐれ悪魔は腹にどれほど詰め込んだら危険な状態になるのだろう……。

「ほんと、美味いッスね!」
 本日の今日は、女性人格である「未来」を封印していた。
 だって男子会だもんね!
 その未来は「封印されてやるから代わりに限定ケーキを買って来い」と命じる程度には甘い物スキーである。
 よって今日も甘い物がとっても大好きだった。
 味覚一緒だからね!
 しかし、いくら甘味スキーでも――
「パフェって最初は楽しいのにシリアルだらけになると何故こうもテンション下がるんスかねえ」
 そのスプーンはシリアルの層を掻き回すだけで、ちっとも口元に運ばれる気配がない。
「なんでコレ入ってるんスかねぇ……」
 ぐるぐる、ぐちゃぐちゃ。
 掻き回すたびに、ますます食欲をそそらないシロモノに成り果てていくパフェ。
「それは舌休めのためだな」
「舌休めッス?」
 まだ上層のフルーツを食べながら、古代が頷く。
「冷たいものばかり食べていると舌の感覚が麻痺して、味覚が鈍感になるんだ」
 つまり、あまり美味しいと感じなくなってくるわけで。
「そんな時にシリアルを食べると食感の違いで麻痺した感覚が目覚め、また美味しく食べられるというわけだな」
「なるほど、さすが古代さん物知りッス! でも、このぐちゃぐちゃになったヤツは役に立ちそうもないッスね……」
 それでも食べるよ、食べるけど……ほぼ拷問。
 あとこれ、このチョコソース。
「チョコソースだと喉が焼けるッス。チョコは好きなのに」
 もうギブアップしていいッスかね?

 ところで古代さんは余裕の表情で食べ進めてますけど、大丈夫なんでしょうか。
 完食、いけそうですか?
「問題ない、俺には強い味方がいるからな」
 徐に取り出した携帯電話、呼び出したるは愛しい娘の電話番号。
 だがしかし。
「……電話に、出んわ!」
 ギャグは滑り、助っ人は来ず。
 目の前には山のようなジャンボパフェ。
 矢野古代(40)の命運や如何に。

 次回「明暗を分けるもの」
 刮目して待て!


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb1679/矢野 古代/男性/外見年齢40歳/★完敗★】
【jb6210/柘榴 今日/男性/外見年齢18歳/☆完勝☆】
【jb8866/ファウスト/男性/外見年齢28歳/★惜敗★】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、STANZAです。
この度はご依頼ありがとうございました。

なお完敗と惜敗の差はダイスの数値によります。
(ダイス判定で偶数なら食べきる、奇数なら不可とのことでしたので、数値が大きいほうが勝敗の度合いも高い、と)

誤字脱字、口調等の齟齬などがありましたら、リテイクはご遠慮なくどうぞ。
※上記データは発注時のものです(現在とは異なる可能性があります)
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エリュシオン
2017年10月12日

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