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『豪雨と密林の腕試し 』
依雅 志錬aa4364)&aa4364hero002)&麻生 遊夜aa0452)&ユフォアリーヤaa0452hero001

●お誘い
「実力……試して みたい。今 わたしの、実力……だと、どこまで いけるか わかんな――し……」
 きっかけはH.O.P.E.支部待合室での雑談中、依雅 志錬(aa4364)がぽろりと零した発言だった。片言に近く、途切れ途切れになりやすい彼女の話を要約するとこうである。
 今現在の自分の実力でどこまでの状況に対応できるか、実際の依頼で一体どこまで動けるのか、それが気になる。ので、一度腕試しをしてみたい。向かい側の椅子に腰掛け、ふんふんと話を聞いていた麻生 遊夜(aa0452)は、志錬が話し終わったと同時に端末を取り出した。
「ふむ……それじゃあ、特別訓練に参加するのはどうだ?」
「特別 訓練……?」
「これなんだが」
 端末に表示されたのは一通のメール文。最新の機材を用いて、限りなく実践に近い戦闘訓練を実施する……。
「今ギアナ支部が大変な事になっているだろ? そこでの本格的な活動に備えて、特別訓練を実施するそうだ。せっかくだ、一緒に参加しないか?」
 志錬は端末と遊夜の顔を見比べた。腕試ししたいと思った矢先の特別訓練、渡りに船とはこの事である。遊夜からのお誘いに、志錬は一も二もなく頷いた。

●嵐の前の一時
 遊夜からの説明にあった通り、特別訓練はギアナ支部での活動を想定し、限りなく実践に近い形式で行われるものであった。能力者二人一組のタッグを編成し、ギアナ高地テーブルマウンテンへ出撃するという想定で行われる。エリア全体に『極限環境:密林』のゾーンルールが敷かれており、『豪雨降りしきるジャングルに覆われた山岳地帯』での戦闘訓練を執り行う。目標は現地に散在する愚神・従魔群、及びドロップゾーンの脅威を排除する事。仮想敵は急所以外高防御となっており、愚神の数は一体、従魔の数は十五体……。
「尚、本訓練は個人・タッグ双方でポイント評価が行われる。評価項目は『討伐数』『進行速度』『戦術アシスト』とし、訓練後に別途端末情報として公開予定だ。仮想とは言え、気を引き締めてかかるように」
 職員の説明が終わったと同時に、参加者達はそれぞれ身支度を整え始めた。遊夜と志錬が参加するグループは能力者・英雄を一組として計八組で構成され、ブレイブナイトが二組、ドレッドノートが二組、シャドウルーカーが二組、そして遊夜と志錬でジャックポットが二組……。S(aa4364hero002)は元気いっぱいに声を張り上げ、遊夜とユフォアリーヤ(aa0452hero001)の周りをぴょこぴょこ飛び跳ねる。
『わあいっ、先生と一緒での訓練ですね! 私いつも以上にやっちゃいますです! 見ててくださいっ見ててくださいねっ!』
 相方である志錬の突発的な一言に便乗し、拳を握り締めながら自身のやる気を熱烈アピール。
 その内心の半分は「自分たちの目標ともいえる人物とタッグを組めて嬉しい!」だが、「自分たちの目標ともいえる人物と競いたい!」というのがもう半分を占めている。
 そして、それは志錬とて同じ事。嬉しさ半分、対抗心半分の内情を抱えつつ、今回の相棒にして目指すべき二人へと改めて頭を下げる。
「……よ――しく」
「おう、よろしく」
『……ん、シレンも、エスも、頑張ろうね』
 遊夜がニッと、ユフォアリーヤがふんわりと、志錬とSに笑みを返した。のんびりとも言える雰囲気を、職員の鋭い声が一瞬で掻き消す。
「ただ今より訓練を開始する。全員配置につくように!」

●訓練開始
 戦闘区域は60m×60m。そのように説明されたが、肉眼で区域全てを把握するのは不可能だった。天井ではスプリンクラーがフル稼働で豪雨を再現、何処を見ても模造原生林が鬱蒼と生い茂っている。障害物多数。視界は極めて不良。山岳地帯との設定通り、高低差も激しく平坦な足場はほとんどない。
 個人・タッグ双方でポイント評価を行う事から、チーム内での対抗意識を煽られそうなものではあるが、こんな状況下での単独行動は自殺行為に等しいものだ。また、敵の情報が「急所以外高防御」以外不明というのも懸念するべきポイントだ。
 よって全員近過ぎず、しかし離れ過ぎずの距離を保ち、協力しながら情報収集・敵の撃破を目指す事となった。四チームに分かれてそれぞれに配置、進行エリアを決定し、そして開始を知らせるブザー音が鳴り響く。
『状況開始です! 各チームが指定エリアへの移動を開始、索敵情報の共有・解析を急ぎます……』
 先程の元気っ子な様子とは打って変わり、Sはオペレーターモードで無線機へと語り掛けた。Sが担当を申し出たのは「情報整理」。志錬も含め計八箇所から寄せられる不特定多数の情報を纏め、戦術価値を生み出させる事、戦闘行動に最大限確実性を持たせる事を目的とする。
 一方の志錬は索敵重視の斥候担当。相方の精度を引き上げるためにも、出来る限り素早く、正確な情報を取得する事が求められる。
 遊夜は17式20ミリ自動小銃を両手に携え、志錬と付かず離れずの距離を保ちながら移動していた。気付いた事があればすぐにSに報告するが、斥候役の志錬とは違い、遊夜の役目は潜行してのステルス・キル。
 豪雨により地肌が滑り、気を抜けば足下を掬われる。そんな状況下で志錬も得物を手に密林を進み……と、その視界の先で、微かに枝葉が動いた気がした。
 志錬は「敵 かも」とSと遊夜に言伝てて、そのまま静かに後ろへ下がった。茂みに潜み、息を殺して待っていると、一見すると猿のような姿の従魔……正確には従魔を模したロボットが現れた。見た目は猿に似ているが、全身の皮膚が岩のようになっている。岩に覆われていないのはごく一部のみ。この岩肌が「急所以外高防御」という事だろう。
 Sが二人の位置を確認しながら指示を出し、遊夜は移動を開始した。志錬が従魔の正面に、遊夜が従魔の左斜め後方に陣取るという形になる。
「倒すには急所を狙う必要がある、か……。急所狙うなら目・耳・口内だ。基本弱く気を逸らせる。潰せりゃ楽になるしな」
『……それ以外は、関節……膝や膝裏に、集中……膝カックンで、体勢崩し……部位破壊は、行動阻害』
 無線機越しに遊夜とユフォアリーヤが志錬とSにアドバイスを出す。二人の指摘は当たっていた。正確に言うと職員も全く同じ想定で今回のプランを組んだのだろう。豪雨に紛れて見えにくいが、目・耳・口などの感覚器、そして関節は岩肌で覆われてはいないようだ。とは言え、それらは岩肌に覆われずとも範囲を狭められており、遠くから狙うにはあまりに小さな的だったが……。
『現在、他のチームも模擬従魔と交戦中。全て同じ外見の猿型従魔という事です』
 Sが取り纏めた情報を志錬と遊夜へと告げる。他のチームも交戦中、つまり応援は来ないという事。もっとも応援を呼べた所で、敵に勘付かれていない現状ではこのまま潜み、奇襲攻撃で急所を狙った方が良さそうだ。
「ここは同時攻撃……変則的な十字砲火といくか。俺はここから膝裏関節を狙撃する」
「わたしは、左目 狙う……」
『それでは、カウントを開始します。10』
 遊夜の提案とSのカウントを受けながら、志錬は茂みから銃を構え、従魔の左目へ照準を合わせた。志錬は自分の実力を量りかねているようだが、共鳴した志錬の命中力は決して低いものではない。
『9』
 だが、今は豪雨環境。足場も不良な山岳地帯。木々が障害物としてより一層視界を狭め、その上狙うべき的は岩肌に囲まれた、たった数mmのズレさえ許さぬ小さな的。
『8』
 至難以上の超高難度。志錬は長く息を吐き、引き金に人差し指を乗せる。Sのカウントが進んでいく。4、3、2、1……。
『0!』
 自分の口からSの声がタイミングを告げたと同時に、志錬の弾丸は発射され直線へと突き進んだ。眼球を狙った弾丸は、しかしわずかばかりの誤差で従魔の眦へと当たる。
「……!」
 眦に受けた衝撃に、従魔は顔を上げ弾の飛来した方向へそのまま突撃しようとした。だが、その伸びきった膝の裏を、斜め後方から射出された遊夜の弾丸が抉り抜く。
「ここから先は通行止めだぜ」
 遊夜の決め台詞と共に敵の膝が地面に着いた。志錬はすかさず銃口を向けた。狙うのは先程は閉じられていた、しかし今は開かれつつある従魔の口腔。
 従魔の口が悲鳴のために大きく開いた、そこに志錬の二発目の弾が撃ち出された。弾丸は今度は過たずに的の中央へ吸い込まれ、喉の奥を貫かれた模造従魔が大きく揺れた。従魔の眼は光を失くし、そして全ての活動を止める。
「まずは一体撃破だな。このまま気を引き締めて行こうか」
 遊夜の声に志錬は頷き、模造従魔をその場に置いて再び密林を進み始めた。平坦なその表情から、志錬が何を考えているのかを推し量るのは不可能だった。

●狙撃手の意地
 その後は敵と遭遇する事なく豪雨の中を歩き続けた。他のチームからの報告では、どのチームも一体、あるいは二体の猿型従魔と遭遇し、そして撃破したとの事。計六体の従魔を倒した事になるが、愚神の遭遇情報はない。じれったくはあるが、索敵しつつ敵のボスを目指すより他はなさそうだ。
「次、どっち 行けば――い?」
『このまま真っ直ぐ進んで下さい』
 纏めた情報を解析し、未踏の地を割り出したSが適宜指示を出し、志錬と遊夜は草木を掻き分け、ただ黙々と人工雨と人工林を進んでいく。
 と、視界の先に異様なものを発見し、志錬は遊夜に待ったをかけた。見れば、密林のど真ん中に、全長10mはあろうという岩が一つ鎮座している。いや、それは岩ではなかった。よく観察しないと分からないが、かすかに動いているような気がする……。
「これ 愚神……?」
「そのようだな。一見するとただの岩にしか見えないが、材質が猿型従魔の皮膚と同じだ。問題は目も口も何も見えないという事だが……」
『他のチームに私達の現在地と、愚神の位置を伝えました。あと少しで到着するそうです』
 志錬と遊夜の推測に、Sが参加者達への伝達内容を続け、程なくして他の参加者達も全員その場に現れた。敵を観察し、推測を出し合うが、突破口となりそうな意見は出てこない。
「仕方ない、俺達が攻撃を仕掛けよう」
「それじゃあ俺達ジャックポットはここで待機し、潜伏して狙撃を行う」
 ドレッドノートの提案に遊夜が返し、遊夜と志錬を置いて六人は愚神へ駆け出した。模造愚神は襲撃者の気配に気付いたらしく、起き上がって隠していた巨大な尻尾を横に振るう。
「こいつ、トカゲ型のようだ。一応目が開いているが、岩に隠れて見えにくいな」
「口もありそうだが、閉じてて狙うのは難しそうだ。どうにかこじ開けさせて……」
「おい、模造従魔が来ているぞ!」
 周囲を警戒していた遊夜が仲間達に声を上げ、同時に密林から猿型従魔が現れた。設定数から撃破数を抜いた残数、計九体。その全てが参加者達に襲い掛かり、愚神の周囲はあっという間に乱戦へともつれ込んだ。
 志錬は味方に攻撃を集中させる敵の討ち取りを図ろうとしたが、乱戦状態の中で敵の急所だけを狙うのは、先程の猿型従魔の眼を狙うよりさらに難易度が上がっていた。命中度の問題もあるし、その上どの敵を先に撃破すべきか、その優先順位を決めねばならない。
 遊夜は考えた。とりあえず手当たり次第敵を倒す、という方法はもちろんあるが、『進行速度』『戦術アシスト』の面から考え、最も優先するべき撃破対象はどれだろうか。従魔は数は多いが強さは大した事はないはずだ。一方の愚神は、少なくとも倒せば『ドロップゾーンの脅威を排除する』という目標を達成出来る……。
「愚神を先に狙おうと思うが」
「先に 愚神 倒さな――い?」
 遊夜と志錬は同時に述べ、同時に逆方向へ走り出した。狙うのは十字砲火による両目潰し。Sが愚神の周囲にいる仲間達から情報を集める。
『愚神の目は金色の光を発しているそうです。開閉は一定の間隔で行われているようですが』
「確認 した。今、閉じてる……開ける――も 閉める――も 五秒 感覚……」
『それでは、愚神が目を開けた直後に発砲出来るよう、カウントを行います』
 Sの返答に志錬は頷き、自分の位置から見える光……愚神の左目へ照準を定めた。遊夜も配置について小銃を構え、無線機へと声を飛ばす。
「何時でも行けるぜ」
『……ん、狙い目』
『それでは、カウントを開始します。10』
 ユフォアリーヤの声に繋げSのカウントが始まった。志錬は呼吸を整えながら、決して見失わぬように金色の光を注視する。
『5』
 模造従魔の瞼が落ち、金色の光も消え失せる。後は自分の感覚を頼りにするより他はない。仲間達はジャックポットの狙撃を邪魔しないよう従魔達を留めていたが、その様子さえ今の志錬の目には全く入らなかった。確実に当てなければならない。たかが訓練とは言え、これは自分の腕試し。全力で試さねばならない。実際の戦いの時、きちんと戦えるように――!
『0!』
 Sが「0」を告げたと同時に、十字を形作るように弾丸が二つ発射された。二つの弾丸は宙を切り、愚神の目をそれぞれに全く同時に撃ち抜いた。模造愚神が口を開けて苦痛の声を周囲に響かせ、そこに遊夜と志錬が全く同時に銃を向ける。
「俺達から逃げられると思うなよ」
『……何処にいても、当ててあげる』
「また きちんと、撃ち抜いて みせる」
『ええ、倒してみせますよ!』
 遊夜が、ユフォアリーヤが、志錬が、Sが宣告を下し、そして弾丸は放たれた。弾は愚神の口腔に呑み込まれ、その内部から豪快な破壊音を響かせた。

●訓練終了
 ポイント評価項目である『討伐数』『戦術アシスト』には以下の追加説明があった。『討伐数』は敵を最後に倒した者にのみ加算される。だが、それだと途中攻撃した者に不公平が生じるため、その場合は『戦術アシスト』の方に、討伐に貢献した度合によって点数が加算される。
 そして遊夜と志錬の結果はと言うと……。
『……! やりましたですっやりましたですよっ!』
「……」
 端末情報の内容にSは両手を上げて飛び跳ね、志錬は表情を変えないまま文面を凝視した。無邪気に喜びを爆発させるSの姿を、遊夜とユフォアリーヤは微笑まし気な様子で見やる。
「こういう状況では俺達以上の才能か……」
『……ん、頼もしいねぇ』
 志錬の索敵行動と狙撃、Sの情報統制とサポートが、『戦術アシスト』において高く評価された。なお、狙撃に関しては遊夜も『討伐数』『戦術アシスト』共にかなりのポイントが付けられていたが、その他の評価という所で差が生じたようである。
「ま、ああも早く進めたのは志錬とSのおかげだしな」
『……ん、二人とも、頑張ったね』
 遊夜とユフォアリーヤのお褒めの言葉を耳にしながら、しかし志錬の表情は変わらなかった。一見すると無とも言える表情で端末を眺め続けるのみ。
 だが、変わらないのは表情だけで、心なしか周囲に花のようなものが浮かんでいる、ような気がする。
 遊夜は愛弟子に近付くと、志錬の頭もSの頭も同様に撫で繰り回した。勝ち負けなど関係ない。どちらにしても弟子を愛でる!
「良くやった、流石だな!」
『……ん、シレンも、エスも、えらいえらい』
 Sは『先生、リーヤさん!』と遊夜とユフォアリーヤに飛びついた。志錬ははにかみさえしないまま……しかし周囲に飛び散らせる幻影の花を増やし、噛み締める喜びを存分に体現するのだった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【依雅 志錬(aa4364)/外見性別:女性/外見年齢:13歳/ワイルドブラッド】
【S(aa4364hero002)/外見性別:女性/外見年齢:11歳/ジャックポット】
【麻生 遊夜(aa0452)/外見性別:男性/外見年齢:34歳/アイアンパンク】
【ユフォアリーヤ(aa0452hero001)/外見性別:女性/外見年齢:16歳/ジャックポット】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。この度は発注内容に関してお手間を取らせてしまい、大変申し訳ありませんでした。
 にも関わらず引き続きご指名下さった事、心より感謝申し上げます。
 状況設定や展開など、かなりの部分をアドリブさせて頂きました。PC様の口調等について、差異がございましたらお手数ですがリテイクお願い致します。
 今後の皆様のご活躍、心よりお祈り致しております。
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雪虫 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年10月20日

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