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『運動会でお医者さんごっこ♪ 』
弓月・小太ka4679

 パーン、パーンと周囲広くに開催を伝える花火が上がる。
「わ! 賑やかだね〜」
 運動場に足を運んだフラ・キャンディ(kz0121)は瞳を輝かせてお尻を突き出していた。連合町内会運動会に集まった人の数は彼女の予想よりかなり多かったようで。加えて、グラウンドに張り巡らされた色とりどりの旗やトラックを囲むように連なるテントなどとにかく目新しかった。
「まさかクリムゾンウエストでも運動会が開催されるとは思いませんでしたよぅ」
 連れ立った弓月・小太(ka4679)もびっくり。実はリアルブルーで開催された大運動会の影響でクリムゾンウエストでもやろうという地域が出てきたのだったり。
「こんにちは。選手の方ですね? こちらの衣装に着替えてあちらのテントで待機してください」
「あ、はいですよぅ」
「わくわくしてきた。早く行こう、小太さん」
 呼ばれて受付を済ませて更衣室に移動する二人。小太は手早く着替え出て来た。
「それにしても……」
 で、自分の格好を改めてみる。
 半袖短パン姿の体操服だ。
「運動会に正装なんてあるんですねぇ…。確かに運動はしやすそうな…ぁ、フラさん……」
「その、小太さん……」
 しばらくするとフラが上着の裾を下に引っ張りつつ困った様子で出てきた。
「これ、小さいんじゃないかな?」
 これ、と見せた格好は紺色ブルマの体操服姿。お尻を突き出し困ったようにぴっちりしたヒップのラインに指を入れて食い込まないよう整えている。
 まるっとした可愛いヒップラインを見せられた小太、瞬く間に赤面する。
「え、えと、可愛いですよぉ(///)」
「そ、そう? ありがと。……でももしかして上着の裾は出してだらんとさせるのかな?」
「みんなブルマの中に入れてるようですよぅ?」
「あ、そっか。体を動かすうちにおへそが見えちゃうかもだしね」
「ふぇっ!?」
 フラ、いちいちやって見せる。白い肌を目の当たりにして小太の顔はさらに赤くなってうずうず。
 ここで呼び出しが。
「参加者の方は集まってくださ〜い。競技説明しま〜す」
 慌てて控えテントに行き、さらなる衝撃を受けることになった。
「ハンターの人はハンデとして二人三脚で競技してもらいます」
「に、二人三脚ですぅ!?」
 小太、固まった。係員はその手に鉢巻きを握らせ、にこり。
「一般の人と身体能力が違いますから。特殊な力も使っちゃダメですよ」
 言っていることは分かる。
 分かるのだが……。
「うーん、まあ仕方ないよね。ええと、こうしてこうして……こんなもんかな?」
 愕然とする小太を尻目にフラが鉢巻きを取って二人の足首をまとめて縛った。手早い作業に得意満面で横から見上げるフラ。
「(フ、フラさんの顔が近いですよぉ(///))」
 至近距離。しかも体と体も近い。触れそうで触れない絶妙な距離感でまたうずうずする。
「そ、それにしてもこれは競技によっては大変かもですぅ」
 汗たら〜しながら冷静に今後のことに思いを巡らせた。
 ただ、次の言葉までは予想できなかった!
「じゃ、障害物競走の参加者さん、選手入場しますよ〜」
「ふ、ふぇっ!」
 聞いてない。
 てっきりただの徒競走かと思っていた。
「というか、二人三脚で障害物競走ですかぁ?」
 何そのすでに障害ありきな状態は!
「行こう、小太さん。まずは内の足からだよ」
 そんな中でもフラは健気だった。文句の一つも不平の一つも漏らさない。
「あの、フラさん。フラさんは納得してるのでしょうかぁ?」
「え? 小太さんと一緒に参加できるんだからボクは満足だよ」
 一緒だからボクは満足だよ。
 ボクは満足だよ……。
「ほら、小太さん。掛け声に合わせてね。イチ・ニ、イチ・ニ……」
 ぽぅ、と小さな幸せに浸っている小太の手を自分の腰の一番細い部分にあてがい、自らも小太の腰に手を回しリード。ぎゅっと密着する。
 ああ、手の平に感じる腰の繊細さよ、体操着越しに密着する肌の柔らかさよ。
(こ、これで一日過ごすんですかぁ?)
 フラの甘い香りに包まれつつ、なんだかむずむずする気持ちにぐるぐると困惑するのだった。

 そんな小太にさらなる悲劇が襲う。
「あれ、もしかして僕たち一番最初の組ですかぁ?」
「そうみたいだよね。小太さん、がんばろっ!」
 はっ、と正気に返った時はもう遅い。
「位置について、用意……」
 ぱん、と号砲が鳴った。
「行くよ、イチ・ニ、イチ・ニ……」
「はわっ」
 あっさりとほかの参加者から離される。
「でも良かったかも。先が分かるから」
「た、確かにそうですねぇ」
 二人の視線の先には最初の障害と悪戦苦闘している先行選手の姿があった。
 最初はパン食いだ。
「ボクたちの背だとジャンプしないとダメだね」
「そ、それじゃいきますよ〜。せーのっ……」
 ぴょん、ぱくっ。
「んふっふ!」
「んん、んんんんん〜!」
 見事吊るされたアンパンに食いついた。フラが「届いた!」と喜ぶ一方、小太が「顔、近いです〜」とか真っ赤になって慌ててたり。
 勢いで唇と唇が触れる。
 という寸前でぷはー、と小太が口を放す。
「あ、食べてから走ってくださいね。二人で一つでいいです」
「だって、急ごう!」
 係員の説明にフラが急いで半分にちぎってそれぞれ食べた。ここは二人に有利に働いたようだ。これで順位を上げる!

 で、次の障害物は。
「網をくぐるんだって」
「匍匐前進ですよぅ」
 というわけでうつぶせになって網に突入。
 ただ、二人三脚だと普通に匍匐前進をするわけにもいかず。
「あっ、ちょっと……小太さん離れすぎだよぅ。股が広がってブルマがお尻に食い込んじゃう!」
「ふぇっ? そ、それは大変ですよぉ」
「あーっ、触っちゃダメ。っていうか網、網〜っ!」
「こ、こっちがこんぐらがっちゃいましたぁ」
「脱げてるー。小太さんの服、網に引っかかって脱げそうになってるよぅ!」
「フラさん? それズボンをずらしてますよぉ」
 なんだか二人で半分抱き合いながらひどい状態になっているようで。

 再び順位を下げ、三番目の障害に。
「白い小麦粉……」
「この中に顔を突っ込んで口で白い棒状の飴を探す、ですかぁ……」
 フラと小太、愕然としている。
「お二人で大変だから大きいの一本を入れておきました」
「それって、二人で一つをくわえて走るってことだよね?」
「親切のようでハードルが上がってますよぉ」
 係員の説明に愕然とするフラと小太。
 が、最下位なのでひるんでいる暇はない。
「がんばろっ」
「そ、そうですねぇ」
 せーの、で白い粉に顔を付ける。
 係員の親切に偽りはなく、長い飴がすぐに見つかった。
「んん!」
「んんん……」
 というわけで、二人が白くなった顔を上げると見事に長い飴の端っこを咥えた状態。
 これ幸いとそのまま走る!
「ん! んんんんー」
 おや。
 小太が何か言ってるぞ?
「ん?」
 フラ、もちろん気付かない。至近距離に顔があるが……特に赤くなってるわけではないし、とか。鼻の頭が触れそうだけど触れてもないし。唇も触れてないし。とか、とか。
 ただし!
(フ、フラさんの顔が凄く近いですよぉ(///))
 小太の心の叫びはやっぱりそれで、赤くなってないのは白い粉が隠しているから。
 その時だった!
 ――ぱきっ!
「ん?」
 二人三脚で揺れるため、飴が真ん中で折れてしまった。
「んん!」
「ん」
 このままでもいいよね、と折れた飴をそれぞれ咥えて急ぐのだったり。

 最後は、借り物。
「もちろん、一人一つずつです」
 係員からの無情な説明。
「フラさん、何でしたぁ?」
「安眠マスク。小太さんは?」
「……聴診器」
 あるのか、と顔を見合わせる。
「はい。観客の方に行って呼び掛けて。みんなまだゴールしてないですよ?」
「は、はいですよぉ」
 係員に促され慌てて借りに行く。
「安眠マスクを貸して下さ〜い」
「そ、その……聴診器を持ってる人はいますかぁ?」
 内心、いるわけないと思ったら手を挙げる人がいた。
「すぐに名乗り出てくれてよかったね」
「そ、そうですね。……でも最下位ですぅ」
 やっぱり二人三脚がネックとなり、ゴール手前で皆に抜かれた。
「あ、最後に借り物でポーズポーズ」
 ゴール前で係員にそう促される。もう順位は決まっているので、最後ながら完走を目指す二人に場内から温かい声援が送られていた。これに応えろというのだ。
「それじゃ安眠マスクを掛けるね」
「え、ええと……悪いところはないですかぁ?」
 目隠ししたフラの胸元に小太が聴診器を当てる。服の上からだがドキドキが止まらない。周りはどっと沸いていた。

「まさかお医者さんごっこをする羽目になるとはぁ……」
「ボク、目隠ししてたからドキドキしてたんだよ?」
 走り終えた二人にはお弁当の支給があった。二人三脚のリボンをほどき、二人仲良く肩を並べて昼食だ。
「あ。小太さん、それだけじゃ足りないよね? ボクのおむすび一つ分けてあげるね?」
「ふぇ? そんなことは……」
「はい、あーん」
 断るつもりだったが、フラが期待を込めて俵おむすびを差し出している。
「あ、あーん、ですぅ……」
「はい、ぱくっ」
 ぱくっ、もきゅもきゅ。
「そ、それじゃお返しにフラさんにはこのおかずを……」
 はい、あーんですよぅ、とか楽しく過ごす。

 その後、玉入れにも参加した。もちろん二人三脚で。一緒にジャンプして投げて、下の球を拾おうとして頭ごちん、とか。
「お疲れ様でした。お二人は片付けはないですから先にシャワーを浴びてください」
 競技終了後、係員から気を遣われた。
「そ、それじゃ」
 お言葉に甘えた。
「女性の更衣室はこっちだね。じゃ、小太さん、後で」
「男性はこっちですぅ」
 分かれて借りていた体操服を脱ぐ。そこで気付いた。
「はわっ。聴診器、借りたままですよぅ!」
 慌てて返しに行こうとするも借りた人がどこにいるか分からない。本部に相談に行くと、そこで内緒話を聞いた。一見難しい借り物の場合は本部で用意し、あらかじめ観客に預けていたとのこと。
「そういうことでしたかぁ……」
 ほっとした。
 それはもう、完全に。
「後でフラさんの安眠マスクも返却ですねぇ……さあ、結構汗をかきましたしさっぱりしましょぅ」
 ほんわり脱力してそんな考え事をしつつ、裸になって腰にタオルを巻いてシャワー室の個室の扉を……。
「え、小太……さん?」
「…ふぇ? ……ふ…フラ…さん…はわわ!?」
 がちゃ、と開けるとフラの小さな姿があった。すぐに気付いて胸を腕で隠して背中を向けたが可愛いお尻がこっちを以下略。
 その時だった!
「あー、汗かいた」
「みんなが来る前に先に使わせてもらいましょう」
 女性たちがシャワー室に入ろうと扉を開けた!
「小太さん!」
「ふええっ!」
 フラ、抱き着くように小太を個室に入れて扉を閉めた。直後に女性たちの入って来る気配。
「フ、フラさん、顔が凄く近いですよぉ」
「下、見ちゃダメだからね」
 小太を隠したのは、近ければ見られないとの打算もあったようで。
 フラ、必要以上に小太に顔を近付けるのも下を見せないため。小太の方は視線に困っているが。
 もちろん、女性たちがシャワーを始める音に紛れてすぐに脱出。
「まさか最後までドキドキするとはぁ……」
 ほっとする小太の視界が真っ黒になった。
「小太さん、罰としてしばらく安眠マスクで目隠ししててね!」
 まあ、それでフラの機嫌がなおるなら、と大人しくする小太である。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様

 いつもお世話様になっております。
 体育の日から遅れちゃいましたが、完成です。
 障害物競走に力を入れてしまったため発注分の徒競走がカットされたり競技順序が変わってますが、力を入れた結果だということで。
 借り物競争、お約束的展開の伏線になるようにしてみました。
 うん。小太さん、悪くない。不可抗力。
 ラストのフラちゃんは完全に照れ隠しですね。

 ではでは、ご発注ありがとうございました。
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2017年10月23日

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