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『林間学校、ハードモード?』
紫 征四郎aa0076)&ガルー・A・Aaa0076hero001)&真昼・O・ノッテaa0061hero002)&アーテル・V・ノクスaa0061hero001)&木陰 黎夜aa0061)&ユエリャン・李aa0076hero002

「林間学校なんてわくわくしますね!」
「まひるも楽しみですのっ」
 目的地へと向かう列車の中、向かい合わせに座った紫 征四郎(aa0076)と真昼・O・ノッテ(aa0061hero002)は窓から身を乗り出す勢いで通り過ぎる景色を眺めていた。
 三両編成のローカル列車には冷房などない。
 その代わり、全開にした窓から入る風はひんやりと心地良く二人の頬を撫でていた。
「まだまだアツいですけど、風は少し秋のニオイがするのです」
「秋の匂い、ですの?」
 征四郎の言葉に真昼はくんくんと鼻を鳴らしてみる。
「せいしろうさま、まひるにはわかりませんの……」
「ダイジョウブなのですよ、征四郎にもよくわからないのです」
 えっへん、征四郎は背筋を伸ばす。
「よくわからないことでも、わかったように言うのがオトナなのですよ。ね、レイヤ?」
「……んぅ? あぁ、うん……」
 真昼の隣に座った木陰 黎夜(aa0061)は、半分居眠りしているような口調でぼんやりと答えた。
 隠れていないほうの目が真っ赤になっている。
「どうしたのです? あ、マドからとびこんだ虫が目に入ったですか?」
 慌てて窓を閉めようとする征四郎を制し、黎夜は首を振った。
「そうじゃない、から……楽しみで、あんまり寝れなかった、だけ……」
 目が赤いのは寝不足のせいだ。
「小学校の学校行事、殆ど参加していないし……こういうの、初めてだから……」
「レイヤもはじめてなのですね、征四郎もはじめてなのです!」
 学校の夏休み企画だったキャンプにも行きそびれ、今年の夏はこれで終わりかとガッカリしていたところにこの誘い。
 これが舞い上がらずにいられようか。
「まひろも、こんな大勢でお出かけするのは初めてですの」
 通路を挟んで反対側では、大人組の三人――ガルー・A・A(aa0076hero001)、アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)、ユエリャン・李(aa0076hero002)が船を漕いでいた。
「ガルーたちも楽しみでねむれなかったのでしょうか」
「それは、違うと思う……大人って、乗り物で座るとすぐ寝る、から……」
「もったいないですの、こんなに素敵な景色ですのに」
 窓の外を流れる景色は田んぼや畑、山や林ばかりだが、大人には退屈な風景も子供にとっては珍しいものばかりだった。
 と、真昼が小さく「あっ」と声を上げる。
「マヒル、どうしたのです?」
「今むこうで何かが光りましたの」
 真昼が指さす山の切れ目から、ちらりと見えたもの。
「あれは……海、だね……」
「うみ、なのです!?」
「うみ、ですの!?」
 思わず立ち上がり、背伸びする二人。
 けれど、その目の前が急に真っ暗になった。
 何事かと身を竦ませる二人に、黎夜は小さく笑いかける。
「大丈夫、トンネルに入った、だけ……」
 長いトンネルを抜ければ、目的地はもうすぐだ。
 そろそろ大人達を起こして、降りる準備をしておこう。



「うーーーみーーー!」
 白い砂浜に、打ち寄せる青い波。
「レイヤ、マヒル、海なのです! こんな近くに海があるのです!」
「林間学校って、聞いたのに……」
「まひる、水着の用意をしていませんの」
「征四郎もなのです」
「うちも……」
 三人の目が、恨めしそうに大人達を見る。
「仕方ないだろ、良さそうなコテージがここしか空いてなかったんだ」
 視線の集中攻撃をガルーが打ち返した。
「それに林間学校は遊びじゃないんだからな」
 そう、これは一泊二日のお泊り勉強会。
 何を勉強するかと言えば――

「これよりコテージをベースキャンプとしてサバイバル訓練を開始する!」
 鬼教官ガルーの宣言で海とは一旦お別れ、六人はすぐ傍まで迫った里山の森に分け入って行く。
 なお服装は動きやすさと機能性を重視した、ジャージに運動靴である。
「征四郎はもっとかわいいのがよかったのです」
「我輩もその意見には全面的に賛成ではあるがな」
 ユエリャンが溜息混じりに首を振る。
「この大型犬が『これぞ林間学校の定番にして鉄板』などと言いおってからに」
「それっぽい気分を盛り上げるためにも、小物での演出は不可欠だろうが」
 こういった学校行事を体験したことのない三人に、少しでもそれに近い空気を味わってほしいという親心。
 それはわかるが、しかし。
「なにも我輩達まで揃いにすることはないであろう」
「こういうのは一体感みたいなもんが大事なの!」
 ガルーにも学校行事というものはよくわからないが、制服だの体操着だの給食着だの、やたらと皆でお揃いにしたがるのは恐らくそういうことなのだろうと解釈した、らしい。
「はいはい、そこまでですよお二人とも」
 仲良く喧嘩する二人の間にアーテルが割って入る。
「のんびりしている時間はありません、夕飯が肉なしカレーになっても良いのですか?」
 他の材料は持って来たが肉だけは現地調達、カレーにお肉を入れたければ頑張るしかなかった。
「幸いこの山には猪が多く出るそうです。狩りの仕方は俺が教えますよ」
「我輩が教えるのは武器の扱いであるな」
「俺様はもしもの時の応急救護だな。迅速な傷の手当とか、そのへんで採れる薬草の種類なんかを教えてやるぜ」
 生き延びるためにはその全てが必要となる、それがサバイバルだ。

「でもブキのつかいかたなら知っているのですよ?」
「普段から使い慣れているものなら、そうであろうな」
 何を今更と首を傾げる征四郎の手から、ユエリャンは愛用の武具を取り上げた。
「しかし例えば、これが使えぬとしたら何とする?」
「ほかに持っているものを使うのです」
「それさえもなければ……そう、荷物を全て無くしてしまったら?」
「それは、こまるのですね……」
 困っていても始まらないことはわかるが、ではどうすると訊かれても征四郎には答えられなかった。
「よし、折角のサバイバルだ。現地調達で、一番簡単で効果のある武具を作ろう。弓と矢だ」
 出来れば使う道具も現地調達といきたいところだが、初心者には少々厳しかろう。
「ナイフだけは使っていいが、それ以外は全てこの森で調達するのだぞ」
 それで本当に「使える」弓矢が作れるのだろうかと半信半疑な子供達を連れて、ユエリャンは森の奥へと分け入って行く。
「うちもオモチャの弓矢なら、工作で作ったことあるし、けっこうよく飛んだ、けど……」
 それで猪の突進を止められるかと言えば、甚だ心許ないと言わざるを得ない。
「矢尻とか、どうするんだろう……まさか、石とか……?」
 黎夜の脳裏に原始人っぽいビジュアルが浮かぶ。
 その疑問には答えずに、ユエリャン先生は授業を進めていった。
「理屈を説明するより、やって見せたほうが理解も早いであろうからな」
 まず手始めに手頃な太さの木を切って、何となく弓矢っぽい形になるようにナイフで削る。
 次に少し細めの木を切って皮を剥ぎ、取り出した繊維を捩って縄を作る。
「これが弓の弦になるわけであるな。次は細く真っ直ぐな木で矢を作るのであるが……」
 ユエリャンは子供達を見る。
「頼んでおいたものは見付かったであるか?」
「はい、いっぱい落ちてましたの」
 真昼は鳥の羽を差し出す。
「これを樹脂でくっつけて、縄で縛る。先端は尖らせて火で炙っておけば強度が増すでな」
 ユエリャンは出来たばかりの弓に矢を番える。
 放たれたそれは、10メートルほど先にある木の幹にしっかりと突き刺さった。
「すごい、矢尻もないのに……」
 これが先程の答えかと、黎夜が目を見張る。
 これなら猪も簡単に倒せる、かも?

 その威力に魅せられた子供達は、競うように自分専用の弓矢を作り始めた。
 力が必要な作業や難しい部分は大人に手伝ってもらいながら――
「いたっ」
 鋭い声に、ガルーが顔を上げる。
「征四郎、どうした?」
「あ、だいじょうぶなのです」
 木屑が手に刺さっただけだと、それを無造作に引き抜いた征四郎はそのまま作業を続けようとする。
「征四郎はふだんから手ならいしていますから、こういうことにはなれているのです」
「うちも、応急救護の知識は、ある……」
「まひろも簡単な手当なら出来ますの」
 しかし。
「それは薬や道具が揃っている時の話だろう、今のように何もない状況ならどうする」
 ガルーは真剣な表情で首を振った。
「それに、森での怪我を甘く見ないほうがいい」
 自然界には様々な細菌が潜んでいる。
 針で刺したような小さな傷が致命傷になることもあるのだ。
「といってもここには消毒薬も水もない」
「でもガルー、おさけは持ってるのですよね?」
「そりゃまあ……ってそれは大人の嗜みだから! 人をアル中みたいに言わないでくれる!?」
 先生の威厳、台無し。
「確かに酒はアルコール消毒の代わりになるが、それはそれとして子供だけの場合はそうもいかないだろうが」
 そんな時のために、薬草の知識を伝授しよう。
 それに手近にあるものを使った応急処置の方法も。
「特に、戦中は迅速な応急措置が求められる。声をかけることも重要だ。生きるという思いが消えれば、人は容易に死ぬ」
「お、おどかさないでください……」
「脅しじゃない、事実だ」
 声の重さに、子供達の目の色が変わる。
 薬草の見分け方に活用法、枝を使った突き指や骨折の手当、止血法、担架の作り方、それにナイフの扱い方などなど――
「ここで使う技術は武器作りにも応用出来る。ああ、筋が良いな。その調子だ」
 褒める時はしっかり褒め、調子に乗ったらすかさず脅し、ガルー先生の授業は続く。
 それが終わる頃には弓矢の方もすっかり出来上がっていた。

「では、次は罠の作成ですね」
 アーテル先生の授業はまず、簡単な落とし穴から。
「仕掛ける場所は獲物の痕跡が多く残っている付近、なるべく新しいもののほうが良いですね」
「でもお兄さま、穴を掘る道具はどういたしますの?」
 真昼が困ったように尋ねる。
 手元の道具はナイフ一本、それでちまちま掘れないこともなさそうだが、ちまちますぎて陽が暮れてしまいそうだ。
「かといって、素手でもそう簡単には、掘れそうもない……」
 黎夜が試しに掘ってみるが、森の地面は意外に固かった。
「そうですね、では先程の応用といきましょうか」
 弓矢を作ったのと同じ要領で木を削って組み合わせ、縄の先端をワナ結びにする。
「アーテル、ここは、こうで良いですか?」
「ええ、上手ですよ」
 出来映えを褒められて征四郎は上機嫌。
「なんだか工作みたいで楽しいのです」
 しかし、途端にアーテルの表情が険しくなった。
「確かにそうかもしれません。けれど、狩猟は生きるための手段です」
 反撃されれば命の危険があるし、何よりそれは相手の命を奪う行為だ。
「命をいただく相手への敬意を忘れずに、常に緊張感をもって行ってくださいね」
 普段よりも厳しい口調で言われ、子供達は神妙な顔で頷く。
 やはりこれも、遊びではないのだ。

 更に何ヶ所か同じような罠を仕掛け、後はじっと待つだけ――
 というのも退屈だし、ここからは学んだことを実地に生かす実践コーナーということで。
「のぞむところです、征四郎はかくれてコソコソするのは好きではないのです」
 勝負は正々堂々、狙いを決めたらアタックあるのみ。
「では三組に分かれて獲物を探しましょう」
 組み合わせは大人と子供一人ずつ。クジ引きの結果、征四郎にはユエリャンが、黎夜にはガルー、真昼にはアーテルが付いた。
「お供いたしますの、お兄さま」
「逆ですよ、真昼ちゃん。先生は後ろで見ているだけですからね」
「はい、頑張りますの」
 不安を呑み込んで、真昼はお手製の弓矢を握り締めた。

 三手に分かれた一行はまず、猪の痕跡を辿って森の中を歩く。
 最初に見付けたのは征四郎だった。
「おしょくじ中に、ごめんなさいです」
 まずは急所を外した威嚇射撃で気を引いて――
 が、当たらない。
 急所どころか掠りもしない。
 信じてたのに、征四郎は本番に強い子だって!
 しかしヘコんでいる場合ではない、気が付いた猪がこちらにガンを飛ばしている!
「逃げるぞ」
「はい、ワナのばしょにさそいこむのですね!」
 任せてくれと胸を張り、征四郎は走り出した。
 その間にユエリャンは草笛で仲間に合図を送る。
「おっ、どうやらこっちに来るらしいな。黎夜ちゃん、準備は良いか?」
 ガルーの言葉に黙って頷き、黎夜は弓に矢を番えた。
「レイヤ、たのんだのです!」
 追われる征四郎が罠の手前で脇に逸れ、そのまま突っ込んだ猪が罠にかかったところで黎夜が急所を一撃――と、頭の中では華麗なるイメージが出来上がっていたのだが。
 猪は意外に足が速かった。

 どーん!

 後ろからどつかれた征四郎は、そのまま黎夜に体当たり。
 猪はと見れば、足に絡んだ縄を引きちぎって真っ直ぐに突き進んで来る。
 間一髪、征四郎を抱えるように脇に転がった黎夜は、起き上がりざまに弓を引いた。
 猪の行く手には真昼の姿がある。
「ここは通しませんの!」
 真昼はありったけの矢を猪に向けて放った。
 思わず足を止めたその尻に、黎夜の矢が突き刺さる。
 距離を詰めながら二矢、三矢。
「征四郎、今だよ……」
「はいっ」
 狙いは定めなくてもいい、とにかく当てることだけを考えて矢を放つ。
 至近距離から首筋に一撃。
 しかし手負いの獣には火に油、猪は闇雲に暴れ手当たり次第に反撃を加えようと突っ込んで来る――が。
「ここから先は大人の仕事ですね」
「よくやった、下がってな」
「なかなかの狩人ぶりであったぞ」
 ガルー、アーテル、ユエリャンが子供達の前に立ち塞がった。
「短剣があれば、まひるもお役に立てましたのに」
 真昼が残念そうに呟くが、ここは先生達に任せて見学に回るしかなさそうだ。
 生徒達が遠巻きに見守る中、猪はあっという間に動かなくなった。

 だが、狩りは獲物を倒して終わりではない。
 それを捌いて肉にしなければ料理の材料にならないのだ。
「無理に見る必要はありませんよ?」
 ナイフを使って器用に解体していくアーテルの手元を、子供達は食い入るように見つめる。
「アーテルは、平気、なの……?」
 黎夜の問いに直接は答えず、アーテルは言った。
「このままにしておけば、これは腐って森に還るだけだ。肉として食べるためには、誰かがこうして手を加えなければならない」
「……お店に並んでいるお肉も、きっと誰かがお肉にしてくださったのですわね……」
「ニクになるまえは、ウシやブタやトリやイノシシだったのですね……」
 しんみりと呟く真昼と征四郎。
 だが「だから食べない」ということにはならない。

「かんしゃのこころで、おいしくいただくのです!」
 コテージに戻った子供達は、さっそくカレー作りに取りかかる。
 宿にはキッチンもあるが、林間学校と言えば飯盒炊爨。
 砂浜に石を積んで竈を作り、大きな鍋と飯盒を火にかける。
「征四郎はジャガイモ係、真昼はニンジン係、お願い……」
「かわをむいて、切ればいいのですね」
「にんじんはどういたしますの? 皮を剥いて切る……どこまでが皮ですの?」
「マヒルははじめてなのです? だいじょうぶなのです、征四郎がおしえてあげるのですよ!」
 頼りにされたいお年頃の征四郎が、手取り足取りアドバイス。
「ありがとうございます、せいしろうさま。ええと、次はどういたしましょう?」
 その様子を見守りながら、黎夜は慣れた手つきでタマネギを切り、用意された肉を小さく切り分けていく。
 が、なーんかさっきからそわそわうろうろ、手を出したくてウズウズしている大人が約一名。
「こ、これでもがんばっているのです。およめさんシュギョウのような……」
「えっ花嫁修業ってどういうこと……」
「とにかくガルーはあっち行っててください、レンシュウになりませんので!」
「おや、嫌われたねぇ」
 他人事のようにクスクスと笑うユエリャン。
 しかし。
「ユエリャンはもっとあっちに行ってて!!」
「何故だ! 面白そうだから手伝ってやると言っておるのに!」
「ユエちゃんはまず面白そうとか言ってる時点でアウトだろ」
 何しろかつて家のキッチンを三度爆発させた腕前の持ち主だからね!
「いいか、絶対に妙なことするなよ絶対だぞ」
「なんなら肉を焼く為の火炎放射器を持ってきてやるぞ」
「だから妙なことするな、つーか大惨事の未来しか見えないマジやめて」
 そんな二人の漫才を見て、真昼が楽しそうに笑う。
「お二人は本当に仲がよろしいんですのね」
 他意はない、言葉そのままの意味だが、それをつい深読みしてしまうのが大人の哀しさか。
「何かあったら、言うから……女の子たちで、やらせて、な……?」
 黎夜にまで言われては、素直に引き下がるしかない。
「あー、お前らだけでか。いいだろう。怪我したら治してやる」
 とは言うものの、ガルーはやっぱり気になってそわそわうろうろ。
「だってやっぱり怪我はない方が良いんだよ」
「見張っていたからといって怪我がなくなるものでもないでしょうに」
 結局、過保護ぶりを見かねたアーテルに引きずられて行く羽目になるのだった。

 出来上がった猪肉カレーはスパイスが効いているせいか、それとも小さめに切ってしっかり煮込んだのが良かったのか、癖はあるもののなかなか美味しく出来上がっていた。
 白いごはんにたっぷりとカレーをかけて、いただきます。
 アーテルの分だけ肉が抜かれているのは黎夜の配慮だろう。
 飯盒に残ったお焦げは早い者勝ちで!


 お腹いっぱい食べて片付けも終わったら、子供は寝る時間だ。
「まだねむくないのです……」
 そう言いながら船を漕ぎ始めた征四郎や、うさぎのぬいぐるみ、コニーさんを抱えたまま寝落ちそうな真昼を促して、黎夜は寝室へ。
「おやすみ、ごゆっくり……」

 ここから先は夜の巻。
 テーブルに酒とつまみを置いて、男達は大いに語る。
「まずはお疲れさんっと」
 ガルーがキンキンに冷やした缶ビールを捧げて乾杯の音頭を取る。
「あいつらもそれぞれに何か思うところがあったようで、何よりだな」
「あの子らは心配なかろう、それよりも……大型犬は割と酔うのだから、程々にしておけよ」
 ユエリャンは強めの酒を水のように流し込みながら、ガルーをじろり。
「ノクスは飲めるクチだな。なに、我輩にはそちらの方が都合が良い。話し相手が早々にいなくなっては味気ないでな」
「つまり、普段は早々に潰れるということですか」
「ほっとけよ、そんなことより――アーテルんとこは随分様変わりしたよな」
「ええ、まあ」
「何があった? いや、無理に聞き出そうとは思わないが」
「構いませんよ、むしろ聞いて欲しいと思っていたところです」
 最近、とある依頼で思うところがあった。
「その出来事から口調を素に戻して、成り行きでそのままにというのが真相なのですが……黎夜との会話が足りなかった事を思い知りました。お互い、相手は自分を嫌っているのだろうと思い込んでいて――」
「だが、そいつは誤解だったんだろう?」
「ええ、話し合いは大切ですね……たとえどんなに親しくても、黙っていてはわからない事もある」
「そうか……遠くから見ていても、黎夜ちゃんの成長は著しいが、そういうわけだったんだな」
「ええ、あの子の成長ぶりは思っていた以上で……嬉しくもあり寂しくもあり、といったところですが」
「まぁ、なんだ。良い方へ進んでいるなら、それで良いんだ」
 二人の会話を、ユエリャンはただ黙って聞いていた。
 と、そこに――

「アーテルは、とてもかっこよくなったのです」
 こそこそびくびく、征四郎が顔を出す。
「征四郎、お前なんで……あぁ、お化けが怖くてトイレに行けないのか」
「そ、そんなことはないのです! せ、征四郎はただ、オトナでもよふかしはよくないと……!」
「あーはいはい、気遣いありがとうなー、じゃあトイレ行って寝るか」
「で、ですから征四郎はトイレに起きたわけでは……いえ、トイレには、いきますけど……ねんのために」
 そう言いながら、征四郎はガルーのシャツの裾をしっかりと握るのだった。



 翌朝、寝起きの悪い黎夜がベッドの上でぼんやりしていると、廊下から元気な足音が響いて来る。
「レイヤ、レイヤ! おきてるのですか!?」
「つきさま、嬉しいお知らせですの!」
 勢いよくドアを開けて飛び込んで来た征四郎と真昼は目を輝かせ、口々にまくしたてた。
「きょうは海でおよげるのです!」
「昨日頑張ったご褒美だそうですの、臨海学校というのだそうですの」
「へえ……じゃあ、どこかで水着、買わないと……」

 しかし彼等はまだ知らない。
 本日の「授業」が着衣水泳であることを――



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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子供組
【aa0076/紫 征四郎/女性/外見年齢9歳/初めての林間学校・班員そのいち】
【aa0061/木陰 黎夜/?/外見年齢14歳/初めての林間学校・班長】
【aa0061hero002/真昼・O・ノッテ/女性/外見年齢10歳/初めての林間学校・班員そのに】

大人組
【aa0076hero001/ガルー・A・A/男性/外見年齢32歳/体育会系保健室教諭】
【aa0076hero002/ユエリャン・李/?/外見年齢28歳/体育会系図画工作教諭】
【aa0061hero001/アーテル・V・ノクス/男性/外見年齢22歳/体育会系家庭科教諭】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、STANZAです。
この度はご依頼ありがとうございました。

口調や設定等、齟齬がありましたらご遠慮なくリテイクをお申し付けください。
イベントノベル(パーティ) -
STANZA クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年10月24日

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