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『つかの間の休日 』
アシェ−ルka2983

 朝と言うにはやや遅く、昼と言うにはまだ早い、店がちらほらと開き始める頃合い。
 空気はまだ少し冷えていて、けれど雲のない日差しにそう時間はかからず暖かくなるだろう事を感じさせる、そんな時分。
 帝都バルトアンデルスの、少し散らかった町並みを歩くアシェールの足取りは軽やかだった。
 たまの休日である、だがそれだけというわけではない。
 噴水広場のベンチには、約束の時間にはまだ少し早いというのに覚えのある金髪の少女の姿があった。
 懐中時計を取り出して、何やらそわそわした様子である。
 ちょっとだけ芽生えたいたずら心に、彼女の視界に入らないようにとそっと迂回し後ろからそっと距離を詰める。
 当の狙われている本人はそれに気づいた様子はない。
「みーもーざーさんっ!」
「ひゃぁっ!」
 後ろから突然抱きつかれて声を上げる少女、ミモザは取り落としそうになった懐中時計を捕まえて振り返り、そしてその相手がアシェールであると気づいてほっと胸をなでおろした。
「アシェおねーちゃん……おどかさないでくださいよ〜」
「あはは、ごめんなさい。そわそわしながら待ってるのを見たらつい」
 いたずら心をくすぐるような、そんな可愛らしい無防備さがあったのだ。
 そんな二人の様子は年頃の友達同士と言った感じである。
 髪色が近ければ姉妹と見る人もいたに違いない。
「それで、今日はどこへ行くんですか?」
 目を輝かせながら聞くミモザに、アシェールは少しだけ焦らすようにもったいぶってから行き先を告げる。
「実は行きつけの服屋さんが冬物を入荷する予定なのが……今日なのです!」
 人差し指を突き出しどやっ、とポーズを決めるアシェールだった。


「あぁ! この服、可愛いぃ!」
 新入荷の冬物服をとっかえひっかえし、白地に黒のファーのついたコートを前に合わせる帽子や手袋を探して回る。
 テンションの高いアシェールに圧倒されつつも、そんな時間の過ごし方がミモザにとっては新鮮だった。
 特に、今現在厄介になっているお店の主とはベクトルが正反対だし。
「ミモザさんミモザさん、これとこれ、どっちが似合うと思いますか!?」
 帽子を二つに手袋を三つ、アシェールに並べて示されてミモザはしばし頭をひねる。
 何が似合うか、と言われると白と桃色が中心となっているから、帽子や手袋はアクセントになるような方がいいかもしれない。
「手袋は桃色で、帽子は……こっちのほうが似合うんじゃないでしょうか?」
 ミモザの選んだものはポンポン付きの可愛らしい手袋に、リボンをあしらったキャスケットだった。
 普段の色からすると若干桃色度が下がるのだが、それに気づいたアシェールはまた別のコートを探しに店の奥へと潜っていく。
 潜り終えたアシェールが戻ってくる頃にはミモザも自分の冬物衣類を一通り見繕ったあとで、試着タイムである。
 一着ずつ、着ては見せあいあれが可愛いこれが可愛いと話し合う。
 その最中、何着目かのコートをお互い着た所で二人して行動が止まる。
 少しして、アシェールはなんとか吐き出すようにその言葉を口にした。
「……胸……が、もっとあれば……」
 そう、着込んだコートの不備に気づいたのだ。

 ――胸元が緩い。

 年頃の女の子である、気になるのはしょうがない。
 だが、コートで緩いというのは防寒の意味でも少し……辛いものがある。
 結局そのまましばらく、どうするかを悩みながら過ごすこととなった。

 *   *   *

(結局、店員さんに勧められてスカーフまで合わせて買ってしまいましたね)
 大きめの手提げ袋はお買い上げした一式で結構大きくなっている。
 時間は昼下がりで何処かで食べようかという所で、ミモザがクレープ屋に興味を示しお昼代わりにという話になった。
 アシェお姉ちゃんは荷物あるからここでまってて、といってミモザが一人買いに行ったのが少し前の話。
 なんとなく胸に手を当てたアシェールは、いやいや、まだこれからです、と自分に言い聞かせる。
 まだ希望はある、諦めてはいけないのだ。
「どうしたの、アシェおねえちゃん?」
「んぅ!? いえいえ、なんでもありませんよ」
 せっかくだからとミモザチョイスで頼んだものを受け取ると、なかなかに高カロリーそうなものを渡される。
 クリームの塊もかくや、といった具合で見ようによってはブーケのように見えなくもない。
「ちなみにミモザさん、私のはなんでしょう?」
「チョコバナナベリーベリーホイップクリームカスタードカラフルスプレークッキーだって」
 名前、長っ。
「……ミモザさんのは?」
「ダブルアイスキャラメルホイップクリームチョコカスタードナッツチップクッキー」
「呪文めいてますね」
 そしてよく覚えてますね?
 この子一切のよどみ無く詠唱しましたよ。
「他の人達の注文はもっと長かったよ?」
 遠目に見えるクレープ屋に興味を抱きつつも、隣に腰を下ろしたミモザと一緒に甘味に舌鼓を打つ。
 平和な昼下がりのスイーツはちょっとした幸せの味である、隣にいるのが可愛い後輩となればなおさらだ。
 隣を見ればほっぺにクリームをつけながらクレープと格闘するミモザの姿に、ほんのりと頬が緩む。
「ミモザさん、ほっぺについてますよ」
「ふぇっ!?」
「あ、鼻にもついてます」
「ふええっ!?」
 反応がかわいくて思わず笑ってしまったアシェールにつられてかミモザも笑い、暫くの間笑い声が公園の一角を彩っていた。


 服を見て、公園でスイーツを堪能した二人だが、今はなぜかアシェールの行きつけの武具店へと足を運んでいた。
 というのも、ミモザが新しい装備を見たいと言ったのがきっかけである。
 ハンターらしいといえばらしい休日かもしれない。
「射撃武器は命中にも気を配りますよね」
 試射場でアタッチメントを付け替えながら、手に馴染みそうかどうかを試すミモザを見つつそんな言葉をかける。
 命中を気にしながらもあえて左手だけの右手を添えない射撃は、実践を意識してのことなのだろう。
 連続する発砲音に、漂う硝煙の匂いは、少しだけ戦場を思わせる。
「うん。手が小さいせいもあって、なかなか使いやすいのが見つからなくて……」
 グリップのサイズが合わないのか、確かに若干安定性にかけているようである。
「オートマトンって、パーツの入れ替えで強くなったりしないのですか?」
 アシェールから放たれた言葉に、射撃音が止まる。
 驚きなのか、それとも予想外なのか、しばし振り向いたままの状態で固まったミモザは首を傾げた状態である。
「聞いたことは……私はないですけど」
「そうなんですかー」
 少し残念そうにしつつ、エバーグリーンの復興が進めばそういう可能性もあるのかな、なんて頭の片隅で考える。
 それはきっと、良い未来だろう。
 ふと考え事に意識が逸れていたのか、発砲音は途切れ気づけばミモザの姿が隣りにあった。
「アシェおねーちゃん、術具のおすすめって、ある?」
(これは……頼れる先輩を見る目ですね!)
 きゅぴーん、と直感したアシェールはちょっとドヤッとポーズを決めて言い放った。
「魔導具とか法具は、威力重視ですよ!」
 魔術師としての経験則からの答えに、目をきらきらと輝かせるミモザ。
 かくして、アシェール主導によるミモザ用の魔導機械探しが始まった。
 休日はまだまだ、これからである。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
【ka2983/アシェール/女性/16/魔術師】
【kz0227/ミモザ/女性/13/機導師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご指名いただきありがとうございます。
ミモザちゃんをご指名とのことで、一緒の休日を彩る機会をありがとうございます。
良い休日になったようでしたら幸いです。

そして作業時間をほぼほぼフルにもらってしまい、遅くなりまして申し訳ありません。
リテイクなどありましたらお気軽にお申し付けください。
この度はご依頼ありがとうございました。
――紫月紫織
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紫月紫織 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年10月26日

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