▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『 三者三様三変化のハロウィン 』
御門 鈴音aa0175)&輝夜aa0175hero001)&朔夜aa0175hero002

プロローグ
 ハッピーハロウィン。それは西洋のお祭り。
 子供たちが仮想して町中を練り歩き。お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ。
 そう言ってお菓子をねだるのが習わし。
 鈴音自身、もうすでにそんなイベントとは縁のない年頃だけれど。
「おい、輝夜。ハロウィンって知ってるか?」
「はろうぃん? なんじゃそれは、うまいのか?」
 『Trick or treat』と唱える子供たちを見ると思うのだ。
(この子たちもお菓子をもらえたら喜ぶかなぁ)
 輝夜といつも遊んでくれているお友達。それだけじゃない。
 このあたりには小学校も密集していて子供たちも多いし。
 きっとそう言う催しをやれば、輝夜も喜ぶと思うのだ。それに。
「いまいち友達ができないあの子も……ね」
 重たい買い物袋を抱え直すと、輝夜は友人たちに手を振って家の前で別れた。
 鈴音の部屋の窓を見あげれるとカーテンが開け放たれており、本を読んでいる朔夜が髪をなびかせている。
 そんな朔夜は二人に気が付くと本を閉じてこういった。
「お子様のお世話、大変そうね。お姉さま」
 かっちーんと場の空気が氷りつく、青筋たてる輝夜と姉が怒っているのを見下ろして楽しそうに口元吊り上げる朔夜。
 そんな二人を交互に見て鈴音は溜息をついた。
「はぁ。ケンカするとお菓子はなしよ」
 今日のお菓子はマフィンである。
 買い物袋から取り出してそれをふると。二人は犬のように大人しくなりそのお菓子を目で追った。
 やはり、子供にお菓子は正義なのかもしれない。
「さぁ、三時のおやつの準備をしてね」
 そう鈴音は自室への階段を上る。

第一章
  
 五条文菜は鈴音の友人である。後輩であることは置いておいて。
 彼女は何かと鈴音の周りを飛び回っている忙しい人。
 趣味は映画の撮影編集で、趣味と実益を兼ねた映研に所属している。
 そんな友人の名前をスマートフォンのディスプレイに表示する鈴音。
 皿洗いでぬれた手をエプロンで拭いてから画面にタッチした。
「はいはい先輩、こんな夜にどうしました? 事件ですか?」
 そう三コールで電話に出る文菜。そんな文菜の言葉に鈴音は苦笑いを浮かべた。
「そんなにいつも事件に巻き込まれてるわけじゃないよ……ちょっと聞きたいことがあってね」
「なんです? 面白いことなら協力しますよ」
「実はね」
 かくかくしかじか、まるまるうまうま。
 鈴音は近所の子供たちのためにもハロウィンの催し物を何か開けないかと文菜に相談する。
 すると文菜は驚いたように言葉を返した。
「へぇ〜。先輩変わりましたね」
「変わった?」
「はい、先輩は心の中でそう思うことはあっても行動に移せない人だと思ってました」
 文菜は言葉を続ける。人助けをしたいと思っていても、それは自分にはできないこと。そうやって諦めている人だと思っていたと。
「昔は確かにそうだったかも?」
 文菜は鈴音の身の回りで数少ない、中学時代。
 つまり、誓約前の鈴音を知っている人物だ。
 そんな彼女からすると鈴音は、そんな風に映っていたらしい。
「やっぱり、輝夜ちゃんと、朔夜ちゃんの影響ですか?」
「うーんどうなんだろ、そんなたいそうなものじゃないけど……」
 鈴音は今に視線を移す。朔夜は大好きな子供向け番組に夢中だし、輝夜は輝夜でだらしない格好で寝ている。
 口の周りにカステラのカスをつけたまま、とろけるように脱力していた。
「そうなのかな?」
 鈴音が文菜に問いかける。
「変わりましたね先輩。いい方向に」
 そう文菜は告げると一泊置いて息を吸い込んだ。
 再び口を開く時にはしんみりした空気など無く、いつもの文菜に戻っていたのである。
「それならうちが映画の試写会やりますし、それと合わせてチャリティーではハロウィン企画します? ちょうど先輩を誘おうと思ってたんです」
「ほんと? いいの?」
 あまりにあっさりことが運び戸惑う鈴音
「はい、ただ先輩にはやってほしいことがあります」
「うん! ありがとう、何でもやるね」
 そう、鈴音はその時喜んだのだが。
 鈴音はすっかり忘れていたのだ。
 文菜が大歓迎する楽しいこととは鈴音いじりも含まれていること。
 そして、半年以上前だろうか。
 映研に協力したときに起こったあの三蔵事件。
 それを思い出していたなら。あの惨劇は防がれていただろうに。

「なによこれーーーーーー!」
 
 衣装を着た鈴音が一人で世界に向けて理不尽を叫ぶ。
 少ない布面積。オレンジの南瓜カラーを主体にした短いスカート。頭に申し訳程度の獣耳。
 わがままビースト鈴音。ここに爆誕。
 三蔵の衣装よろしく胸を支える布が少ないので、その芳醇な実りの秋を象徴するかのようなあれが、揺れる、揺れる。
 それは近所の子供たちだけでなく、近所の大人たちも集められるほどの集客力を持っていた。
「うわーん、こんなの聞いてないよ〜」 
 そんな鈴音の姿を眺めながら棒付きキャンディーをぺろぺろしているのは輝夜。
 今日は朔夜がいないので、獲得したお菓子を奪われる心配がなく足をパタパタとやりながら道行く人々の、トリックオアトリートの声を聴いていた。
「鈴音よ……浅はかじゃったな」
 輝夜の表情は賢者のように静まり返っている。
「文菜に協力を仰ぐ時点で悪魔に魂を売り渡したも同じこと……」
 魂……というよりこの場合体であるが。
「文菜の提案を飲んだ時点でこうなることは決まっておった。神や仏が嫌いな妾じゃが、今だけはお主のために祈ってやろう。南無……」
「うわーん、次の撮影希望の方こちらデース」
 大きいお友達とは写真撮影。
 小さな子供たちの『お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ』の声にはお菓子を的確にばらまいていく鈴音。
「悪戯しちゃうぞって、冗談になってないよ〜」
 半泣きの鈴音が、カボチャ型のかごにお菓子を補充しているのをみて輝夜は首をひねる。
「にしても今日はなぜ、お菓子がもらえるのじゃ?」
 そう、輝夜は理解していなかった。
 このハロウィンというシステムを。
 そして鈴音は理解させたくなかった。
 このハロウィンというシステムを。
「おい、健太。健太。なぜ今日はお菓子がもらえるのじゃ。三時のおやつはまだ先じゃろう?」 
 そう呼び止められた少年は『小川 健太(NPC)』一時期公園の覇権をかけて輝夜と戦い惨敗した少年である。
「おまえ、知らないのか? 今日は祭なんだぜ……ってこの前行っただろうが」
「わるいのう。聞いておらんかった。で? 続きを」
 無駄にカリスマ性を発揮する輝夜。そのなんだかよくわからない威圧感に文句を言いつつ逆らえない健太である。
「だから、外国のお祭りなんだって秋の豊作の為に悪霊を祓う儀式が起源なんだぜ」
 難しい言葉をのべつまくなしに並べ立てる健太、たぶん輝夜に説明したくて勉強してきたのだろう。
「ほう、それでなぜお菓子」
「子供はおばけになって、トリックオアトリートって言っていいんだぜ、悪戯されたくなかったらお菓子をよこせってな」
「なるほど、それで人間たちは己が身の可愛さゆえにお菓子を差し出すのじゃな」
「いや、そんな深刻なかんじじゃねぇよ?」
 そう告げると健太は友達に呼ばれ踵を返す、鈴音になんとか悪戯してやろうという腹積もりらしい。
 がんばれ鈴音。
「にしても、そうか、そうか。お菓子かいたずらとな」
 輝夜は膝に肘を乗っけて、その上に頭を乗せる。丸めた背中からはらりと美しい髪が零れ落ちた。
「まったく菓子ごときで喰い散らかさんで欲しいと……命乞いとは人間共は本当に浅はかよのぉ……」
 手渡されるお菓子たち、気が付けば棒についていたキャンディーはなく、輝夜の舌はまだ甘味を欲している。
「お菓子……」
 じゅるりと唾を飲み込む輝夜。気が付けば手のひらが濡れていた。
「いや待て……。ここのところわらわ鬼である事忘れとりゃせんか?」
 話を思い出す輝夜。彼女がイメージするハロウィンは日本の百鬼夜行に近い。
 であればなんだ? 鬼だ。
 鬼も参加する権利はあるのではないか?
「……わらわは今、人間に感化され人間の生活に溶け込み野生を失った飼い猫のようになっておらぬか……?」
 同時に思う。鬼の本業とは何だったろうか。
 そう人間を苦しめること。
 本来、自分にとって人間は食料なのだ。今は鉄臭い人間しかいないので食べる気が起きないだけで。
「そうわらわは闇に生きる魑魅魍魎、物の怪の頂点に立つ『鬼』……鬼なら鬼らしく人間共に恐怖を思い知らせてくれる!」
 その瞳がギラリと光った、思い出されるかのようにあふれる禍々しい霊力と力。
 輝夜が飛ぶように立ち上がる。
「ふふふふ、今に見ていろ人間達よ」
 何やらテンションのおかしい輝夜。だが彼女を止める者が今はいない。
 そして姿を消す輝夜。彼女は街中人の気配がある場所まで走った。


第二章 天使とハロウィン

 朔夜は他の中のカードを素早く小銭入れに戻すとバスを降りる。
 見上げた先には病院がいた。
 この病院に来るのは何度目だろう。頻繁に訪れているつもりはないがICカードの使い方も覚えるくらいにはこの病院に来ていた。
「町が騒がしいわね? 病院も」
 そう朔夜は首をひねりつつ。受付で面会の手続きを済ませ夢子の病室へと向かった。
「いらっしゃい」
 そう夢子はいつもの笑顔で迎えてくれた。
「はい、朔夜ちゃんにもこれ上げるね」
 そう夢子が差し出したのは棒付きキャンディーだった。
「あら、ありがとう」
 夢子がお菓子を食べているなんて珍しい。そう思いながら隣に座る。
 すると夢子はさみしそうな表情を見せた。
「どうしたのよ、いったい、あなたが暗い顔をしてるなんて珍しい」
 そう飴をガリガリかじりながら朔夜は告げた、すると夢子は視線を外に向ける。
 その病室からは庭が見えるのだが、そこには黒いマントをかぶった少年たちがはしゃぎまわっている。
「ハロウィンなんだけど、体調崩しちゃって。あー、参加したかったな」
 そうごろりと横になる夢子。
「ハロウィン?」
「うん、子供たちがお菓子を貰える日だけど、体調が悪くなって参加できなくなっちゃったんだ」
「体長って……大丈夫なの? あなた」
「うん、全然平気、だけどお医者様は熱が下がるまで病室から出ちゃダメって」
「それはそうよ、自分の体を大事にして、お菓子より体の方が大事よ」
「でも、お菓子が沢山食べられたら、体もよくなるきがするなぁ」
「え? そうなの?」
 驚きに雨の棒をポロリと落とす朔夜。
「あー、ひまだなぁ」
 そんな朔夜を横目にすねてしまう夢子である。
「お菓子より、体の方が大事でしょう? 寝ていなさいよ」
「お医者さんと同じこと言う……はーい、わかりました」
 そんな夢子のベットから朔夜は飛び降りると病室から出た。後ろ手に戸を閉めると複雑な表情を見せる
「これだから人間のガキは……!」
 そう言いながら朔夜は院内の様子を改めて眺める。
 人々が浮かれているが、これはハロウィンというお祭りの仕業だったのかと改めて納得する。
「トリックオアトリートねぇ」
 朔夜はふむと考える。
 夢子が病室から出るには……いや、今の体調で病室から出すのは危険だろう。
 だったらせめてお菓子を食べさせてあげるには。
 そう小銭入れを開くと中には銀色の硬貨が二枚とカードのみ。
 これでは何も買えない。
「悪戯かお菓子か……」
 そう朔夜がつぶやいたところで閃いた。
 自分にピッタリな方法で夢子を喜ばせる方法があるではないか。
「べ、べつにこれは、そのいつものお礼? というか、なんというか……」
 そう朔夜は頬を赤らめながら何かに対して言い訳をしつつ病室を後にした、目指すは商店街。
 そう、朔夜は自分がお菓子をもらってそれを夢子に上げればいい。そう考え付いたのだ。
 しかし、邪知のカリスマである朔夜は歩いているうちに思考をあらぬ方向に働かせていく。
「トリックオアトリートとか言ってお菓子を貰って回るの面倒じゃない? 奪えば話早くない? 沢山持って帰れば夢子大喜びじゃない?」
 本来のハロウィンの構造など頭の隅である。朔夜の頭の中にはこの任務を遂行した後、夢子が見せてくれるであろう笑顔で埋め尽くされる。
「でも、これはあれよ、あれなんだからね。仕方なくなんだから。特別なんだから夢子は私に感謝しないといけないわ」
 理由が特に思いつかない朔夜は足取り軽く商店街を目指す。
 それが悪夢の始まりとなるなど、知らずに。

  *   *

 その時鈴音は思い出した。自分がなぜあの英雄たちをきつく見張っていたのかと。
 最近は忘れていた。
 輝夜だって最近はテレビを破壊するなんて奇行に走らなくなったし。朔夜は朔夜ですごく大人しくなった。
 けれどそれは彼女たちがこの世界に慣れてきただけの話だったのだ。
 そう、なれてきただけの話。驚きがなくなってきただけの話。
 どう行動すれば鈴音に怒られないか学習し。自分たちの欲求とうまく付き合う方法を見つけただけの話。
 けれど彼女たちの本質は、大迷惑。
 何せ鈴音が少し目を話したすきに商店街が阿鼻叫喚の大炎上へと姿を変えるくらいなのだから。
「たすけてくれ〜」
「しにたくない〜」
 尻の毛すらもむしられそうな勢いでお菓子を駆る朔夜。
「あははははは! 無様な人間達。特別よ。私はそこの鬼みたいに小さいことは言わないわ。お菓子も受け取ってあげるし、いたずらも持っていきなさい」
「朔夜よ! わらわのお菓子狩りを邪魔するつもりか」
「何を言っているの? お姉さま。本来ここにあるお菓子は全て私のお菓子。あなたは鈴音の持ってきたカステラでもしゃぶっていなさい」
「ほう、怒髪天じゃ朔夜、覚悟はできておるのかのう?」
「ええ、お姉さま、あなたが持っているお菓子、そして私のお菓子すべてをかけてココで決着をつけましょう」
 そして二人が同時に同じ言葉を口ずさんだ。

「「トリックオアトリート!」」

 なぜこんなことになってしまったのか、鈴音は考える。
 飛び交うダンスカブルや、輝夜の振るう大剣の音を聞きながら考えた。
 いや、もはやそれは現実逃避に等しいが。逃げ惑う商店街の人たちの話を聞く限りではこんな感じだった。
「あ、あの女の子がいきなり現れて、脅かそうとするから。可愛いわねっていったら」
「あの。銀色の女の子は絞り尽くす勢いで全部のお菓子を勝手に」
 どうやら輝夜は誰かに怖がってもらいたかった様子。
 朔夜は……なんだろう、なにがしたいのだろうか、普段からそんなに食い意地が張っている方ではないのだが。
「先輩! 放心してないで! 止めないと大変なことになりますよ」
「わかってる……」
 鈴音はそう小さくつぶやくと、近くの八百屋のねぎを手に取った。
 そんな二人は戦いの最中鈴音の影に気が付くと。
 飛び上がって抱き着いた。
 鬼のような形相の鈴音。
 背後に般若が見える。一瞬で血の気を失う二人。
「おおお、すすすす鈴音。このような場所で奇遇じゃな」
「ここここ。これはね、姉さまが勝手に」
「おい! 朔夜! 一人言い逃れしようというのか」
「大体お姉さまが最初にわけのわからない怖がらせなんてやってるから、お菓子をもらえなくなったんじゃない。お姉さまのせいよ」
「ほぉ! 言うたな! そこに直れ。そっ首跳ね落してやろう」
「お姉さまこそ、心臓えぐって物言わぬ屍にしてあげるわ。その後レコーダー括り付けて、ハッピーハロウィンってしか言えないお人形にしてあげる」
「アンタたち二人ともアウトにきまってんでしょ!!」
 ネギで殴られる二人である。
 当然AGWも没収、このねぎは今晩鈴音の鍋になりました。
 めでたし。
 
 その後、商店街復旧作業が行われた。
「いや、助かるよ御門さん」
「いや、本当に、御門さんがいるとやる気が出るよ」
 そんな風に男性たちが話しかけてくるが純粋に褒められていると受け取っているらしい、鈴音は笑顔満点で後片付けを手伝っている。
「いえ、もとはと言えばうち英雄が迷惑をかけましたから」
 しかし鈴音はわすれているのだ。
 自分の格好を、デンジャラスなビースト姿をしていることを。
 だから男性が沢山集まってくるのだという事を。
 それを遠目で眺めている朔夜と輝夜。
 二人の頭には大きなたんこぶが出来上がっていて。口には棒付きキャンディーが突っ込まれている。
「うむ、朔夜よ」
「なによ、今機嫌悪いんだから話しかけないでくれる?」
 輝夜がぽつりと朔夜に問いかける。
「お主、何のためにお菓子を集めておったのじゃ」
「それは食べるために決まってるでしょ」
「ふーん、そうかの? お主から薬臭い人間の香りがプンプン漂うんじゃが」
「鬼はそと!」
 そう朔夜は籠の中のお菓子を輝夜に叩きつけた。
「お主……」
 青筋たてる輝夜。だがそれもつかの間、不意に背後から名前を呼ばれると振り返る。
 そこには健太をはじめとする輝夜と仲良し少年団が佇んでいた。
「なんだよ、お前が面白いことしてるって言うから来たんだぜ」
 そうぶつぶつと健太はつぶやく。
「おお、そうか、すまぬのう。もう終わってしもうた」
「おまえ、お菓子のもらい方がなってねぇんだよ。ほら。俺らがお手本みせてやるからお菓子貰いに行こうぜ」
 そう手を差し伸べる健太、その健太の手を無視して輝夜は立ち上がる。
「ふん、お主に教えられずとも今度はうまくやれる……」
 そう言いつつ鈴音をうかがう輝夜。
 鈴音はその視線に気が付いて声をかけた。
「もう、無茶しないでね、あと今日は病院に集合」
「うむ」
 そう子供たちと走り去っていく輝夜。
「なんで病院に集合なの?」
 朔夜はそう問いかける。
 すると鈴音は自分のカバンの中身を見るように朔夜に指示した。
「これって……」
 鈴音のカバンの中にはパイだろうか。甘い香りが芳醇に漂うお菓子が入っていた。
「朔夜がいつも迷惑かけてるだろうから持って行こうと思って」
 その袋を閉じると朔夜はそっぽを向く。
「ちがっ、違うわよ。私が面倒を見てあげてるの。あの子一人だと何にもできないんだから。今日だって。お菓子がもらえないからって」
 そう顔が赤いのを隠す朔夜。
「あ。でも、あの……ありがとう」
 朔夜の言葉に鈴音は驚きの表情を見せる。
「きっと喜ぶと……おもう、私もうれしい」
 そんな朔夜が可愛くて思わず鈴音は微笑んだ。
「さぁ、いきましょうか」
 そう片付けが終わって朔夜に手を差し出す鈴音。朔夜がその手をしぶしぶ取ると、鈴音はバス停に向かう。
 だがしかし。
「ちょっと待った」
 腕を強く引っ張られてすっころぶ鈴音である。
「な、なによぉ」
 頭を打ったのか涙目の鈴音。
「その恰好でバスはやめて」
 冷淡に告げる朔夜。
「え?」
「あと、夢子の教育に悪いから着替えて」
「え? え〜〜〜!」
 そこのところしっかりしている朔夜であった。

 エピローグ
  
 その後三人は夢子の病室で再開した。 
 夢子のトリックオアトリートの声と共に差し出されるパンプキンパイはとても甘く、お子様三人にとても好評であった。
 女三人寄ればかしましいというが。いつにもまして元気な夢子。それを見てなんだか嬉しい朔夜。みんなのテンションが高くて楽しい輝夜はあっという間に体力を使い果たし夢子のベットで一緒になって眠ってしまう。
 そんな三人を一別して微笑む鈴音。

「楽しそうで、よかったわ」

 そんな鈴音を、同じように見守る影があった。
 それは決して触れることが影。鈴音にはまだ見ることができない幽霊。
 そんな彼女の表情もまた優しく。嬉しそうだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
『御門 鈴音(aa0175@WTZERO)』
『朔夜(aa0175hero002@WTZEROHERO)』
『輝夜(aa0175hero001@WTZEROHERO)』
『五条 文菜(NPC)』
『小川 健太(NPC)』
『天城 夢子(NPC)』


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 お久しぶりでございます! 鳴海です。
 この旅はOMCご注文ありがとうございました。
 最近お姿が見られなかったので心配しておりました。お仕事お忙しかったのですね。お疲れ様です。
 今回は三人の人間模様と性格を改めて堀深められたらいいなぁと、テーマづけて書きました。
 気に入っていただけると幸いです。
 それではまた本編でお会いしましょう。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
パーティノベル この商品を注文する
鳴海 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年10月31日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.