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『彼女は知らない(2) 』
水嶋・琴美8036

 クナイはまるで迷う事を知らぬように、まっすぐに空を駆け綺麗に的の中央へと突き刺さる。続いて、息を吐く間もなく放たれるは二撃目。今度は先程のクナイとは違うルートを駆けたそれは、人型の的の心臓部を穿った。
 狙った場所へと見事当たったクナイを見て、周囲で訓練をしていた仲間達は思わず感嘆の溜息を吐く。
 その腕の良さももちろんの事、琴美は仕草の一つ一つが美しい。それは訓練中も例外ではない。訓練に励む彼女の姿はまるで映画のワンシーンのように美しく、見ている者が思わず見惚れてしまうのも無理のない話であった。
「先輩、かっこいい……!」
 新入りの少女もすっかり琴美に夢中なようで、先程からうっとりとした表情で琴美の事を見つめている。
「ふふ、人の訓練を見るのも動きの勉強にはなるとは思いますけど、立っているだけですと体がなまってしまいますわよ」
 優しく注意する琴美に返事をし、仲間達は名残惜しそうに最後にもう一度だけ琴美を見てから各々の訓練へと戻った。
 ふと、通信機が着信を告げる音が琴美の形の良い耳をくすぐる。通信の相手を確認してみると、彼女の上司の名前がそこには記されていた。
「司令からの呼び出し……ですわね」

 ◆

 肌触りの良い素材で出来た衣服が、するりと少女の肌を滑り落ちる。着ていたものを脱いだ琴美は、ワードローブから目的の衣服を取り出した。
 慣れた手つきで、彼女は取り出したばかりの衣服を身に着けていく。琴美の女性としての魅力に溢れた体を、黒のインナーとスパッツがぴったりと寄り添うように包み込む。それらは豊満で形の良い琴美の胸と臀部の形を忠実になぞるかのようにフィットし、ありのままの彼女の魅力を隠してしまう事はない。
 ボトムスへと身に纏うのは、ミニのプリーツスカート。綺麗に並んだ折り目は琴美の清らかさを現しているかのようでありながら、少女のグラマラスな身体と相まってどこか扇情的な雰囲気も醸し出している。
 次いで、少女がに取ったのは着物だ。一般的な着物とは違い、両袖を半袖程度の長さまで短くし、帯を巻いたデザインの改造着物である。綺麗な色のそれが、彼女の上半身に彩りを添えた。
 彼女の傷一つない、芸術品のような手を覆うのはグローブ。琴美の手入れの行き届いた指一つ一つを優しく抱きしめるかのように守るそれは、彼女の手によく馴染む。
 最後に、少女のしなやかな足を膝辺りまで包み込む編上げのロングブーツを履けば、琴美の着替えは完了する。
 もしこの場に他の者がいたら、琴美のあまりの美しさに言葉を忘れていた事だろう。今この瞬間に彼女の姿を見る事が出来ている観客が鏡しかいない事は、世界にとっての損失と言っても過言ではないのかもしれなかった。それほどまでにこの衣服は琴美によく似合い、彼女の魅力をより一層引き出している。
 どのような衣服であろうとも華麗に着こなす琴美だが、一番のお気に入りはやはりこの衣装だ。
 デザインは好みだし、着心地も良い。それだけでなく、特殊な素材で出来ているおかげで見た目以上に丈夫であり、戦闘時の琴美がどれだけ速く駆けても激しく動いても決して破れる事はないのである。
 ――そう、戦闘時。この衣装は、戦闘の時に身に纏うくの一の戦闘服。
 琴美がこの衣服に腕を通したという事は、彼女はこれから戦場に赴くという事だ。

 先程、司令に呼び出された琴美は新しい任務を命じられた。
 任務内容は、とある組織の実験施設の壊滅と、捕らわれている者達の救出。
 先日から街を騒がせている失踪事件の被害者達の居場所を、琴美達の部隊は調査の結果割り出す事に成功したのだ。
 幸い、さらわれた者達は無事のようだ。しかし、捕らえられ閉じ込められている彼ら達を襲うストレスは相当なものだろう。琴美が辿り着く僅かな間に、危害をくわえられる可能性がないとも言い切れない。
(一秒でも早く助け出して、安心させてさしあげなくてはなりませんわね)
 決意を胸に一度頷き、琴美は現場へと向かう。今回も、琴美一人での任務だ。しかし、彼女が怖気づくはずもない。堂々と歩く彼女の瞳が見ているのは、自身が勝利する未来のみだ。
 琴美が廊下を歩くたびに、ロングブーツが床を叩く音が響く。それはさながら、少し早い勝利のファンファーレの代わりとでも言うかのように軽快で、耳心地の良い音であった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【8036/水嶋・琴美/女/19/自衛隊 特務統合機動課】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターのしまだです。ご発注ありがとうございます。
連作の二話目となっております。よろしくお願いいたします。
東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2017年11月07日

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