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『黒服さんが草間興信所に顔を出してからの話。 』
黒・冥月2778

 お初にお目にかかります、探偵さんは御在宅ですか――そんな風に草間興信所に訪ねてきたこの黒服は、私にとっても元からの待ち人と言えば待ち人、の一人になる。

 黒冥月は現在、遂行中の依頼に必要――私はそう判断した――なノインへの恋文と手料理、の件を頼む為、草間興信所に草間零を訪ねていたところ。
 ちょうどその用件が済んだ頃に、IO2らしき黒服が現れた。
 声や話し方からすると、恐らく彼が刑部和司。

「…おや、探偵さんは御不在でしたか」
「はい。煙草を買いに出ただけなので、もうじき帰ってくると思いますが…」
「…貴方が刑部和司か」
「ええ。声からすると…貴方が黒冥月さん、で宜しいようですね?」
「二、三確かめても構わないか」
「ええ、どうぞ。その為に直接伺った訳ですからね。…ところでこちらの――草間さんのメールアドレスに亡霊さん…速水博士についての纏まった情報は既に送ってあると聞いているのですが、まずはそれがきちんと届いているか貴方の方でわかりますか?」
「…ああ。それなら見させて貰っている」

 零に色々頼む前――今日草間興信所に来て早々、まだ探偵が外出する前に亡霊こと速水博士の情報は先に知らされている。…刑部の方から事前に言われていた通り、それまでの時点で「情報収集に長けた友人」共々、元々集めていた分だと言う情報。確かにそちらでは、既に死んでいる事が補強される内容でしかなかった。
 …要するに今、こちらで確認事項を持ち出す前に刑部の方から本人確認をする為の判断材料を一つ先回りされてしまった事にもなる。更には以前話した事そのまま――ついでに、元々頼まれていた『届け物』やら新たに暁闇で預かって来た相談事等々、改めて確認するまでもなくそれまでのやり取りを知っていなければ出て来ないだろう話が次々と出て来、自然と確認も取れた。

 その段で私の方でも改めてきちんと自己紹介をし、協力してくれた事、来てくれた事について礼を言う。
 と、俺の方こそ色々お気遣い頂いたようで、と逆に頭を下げられ、改めてそちらからも名乗られた。

 その後はまず、少々込み入った話になるから席を外してくれるか、と零に頼む事をした。…と言うか、情報隠蔽の為にこちらが「誰にも聞かれない所での会話」をする事を刑部に提案した。…要するに私の方が刑部共々影内に席を外す事を提案した訳だ。
 まぁ、話自体は草間興信所の事務所内で済ませて良さそうな話と言えばそうだが、始終監視されているのが常だと言う刑部の事情も鑑みるなら、念には念を入れたくもなる。事実、刑部の方からもそうして貰えるなら有難いとの受け答えが返って来た。
 何にしろ、私は草間が帰ったら影を三回叩いてくれと零に頼む。それから刑部を影内へ案内――しようとしたところで。

 当の草間が帰って来た。



 草間がちょうど帰って来たところで、私は草間と刑部の二人を影内へ招じ入れる。
 事前にしていた電話越しのやりとりに関するお互いの認識の擦り合わせと、元々頼んであった『届け物』――つまり「髪の毛一筋」を届ける事が刑部の来訪目的。影内に来てすぐ、刑部は直々に目の前で自分の髪を一筋引き抜いて手渡してくれた。
 丁重に預かる。

 それから、草間も交えて刑部に対しても改めて事情を説明しておく事にした。…まぁ元々、これまでの経緯からして協力者には事情についてそれなりの詳細を説明しているとも言うのだが――今回の相手の場合、現役のIO2と言う事で何処まで明かすか、そして隠すかについてはこれまで以上に熟慮の上、実行した。が、刑部曰くどうも今回の件に該当しそうだと思い当たる相手が兄一人しか居なかったらしく、敢えて隠したノイン周辺、虚無寄りの事柄についても殆ど察されてしまった為――結局他の相手同様、ほぼ全て話す事にもなった。…つまり、湖藍灰の条件上完全に隠せと言われている憑坐の件「以外」を、である。

 と言っても、刑部の反応としてはマル暴時代の相棒こと常盤千歳の反応と大差ない。つまりは所属組織らしい興味の持ち方をして来る様子は、全くない。
 身内としての感情についても、疾うに乗り越えている様子には見えた。…まぁ、ノインの霊鬼兵時代の姿を思い出せば然もありなん。あれで兄と言うからには、外見年齢からして素体の彼と別れたのはかなり昔の事になるのだろう。
 ともあれ、IO2側への口止めも、快く受けてはくれた。…そうなるでしょうねと苦笑をしつつ。

 刑部が暁闇で預かって来た相談事、の方に話が移る。
 つまりは元IO2な暁闇のバーテンダーからの言伝なのだろうが――また随分あっさりと一足飛びな話が伝えられた。

 曰く、速水博士――恐らく本物――と会える算段が付いたがどうするか、と言う事らしい。…新たな情報どころか会える算段である。で、選択肢の提案としては、大きく分けてバーテンダーだけで会って来るか、捻じ込んで冥月の方でも同行し直接会うかの二択。前者の場合は探りを入れたい事柄があれば事前に承るとの事で、後者の場合は冥月側の都合が合うか次第――但しこちらの場合、もれなく蝙蝠さんとの再会も付いて来てしまうが、との注釈も付け加えられた。
 いつ会う予定になっているのかと言えば、明日だとの事。

「って随分急な話だな」
「蝙蝠さんにカマを掛けたらバーテンダーさんが興味を持たれたと言う事らしいですよ。あの方も昔とは立場も違いますし、速水博士側でも警戒が緩んだのかもしれません」
 そうは言ってもこれから明日まで蝙蝠さんはバーテンダーさんに張り付いているようですし、俺がこの話を預かって来れたのも、昔取った杵柄――IO2ならではの符牒が通じる相手だったからと言うだけなので。
「…明日か」

 日付的には一応まだ間がある。次の土日なら憑坐役の身が空いていると湖藍灰に言われ、ならそのどちらかで、と決行日については一任してあるのだが――ここでどう転がるかわからない速水博士の方を明日に捻じ込むとなると、少々タイトなスケジュールにもなりかねない。
 少し考える。

「…刑部さんに伺うが、速水博士なら一切柵のない、魂のない肉体を用意する事が可能だと思うか?」
「さて。あの方の技術体系は本当に読めませんからね…可能性だけは否定できないかと」
「ふむ…IO2ならどうだ? 造る技術なり伝手はないだろうか。いや、どちらにしても用意して欲しいとの意味ではないんだが」
「そうですね、魂のない肉体を造る事自体は技術的に可能ではと思いますが…柵のない、と条件付けがされると、組織と言う形である以上どうしても難しい気がしますよ」
「そう、か」

 そういう意味では、「個人」の方がまだ目があると。そう含んで刑部を見ると、小さく頷かれた。なら、速水博士と会える算段が付いたと言うこの話は降って湧いた好機とも言えるかもしれない。
 考えながら、他に聞ける事だけ先に聞いておく。…先程からついでに挙げてもいるが、私の方でも刑部に相談しておきたい事はある。

「…刑部の一族に関わる品で、ノインが気に留めるような何かはないか」
「ありません」
「…即答だな」
「それはまぁ。うちの家系は元々人が少なくて、一族と言う程のコミュニティすら碌に記憶にないんですよ。代々引き継がれているような品自体も一切ありませんし、俺個人の身の回りの品と考えてもIO2所属以前のものは悉く処分してしまっていますから…『姪』の家の方がまだ何か残っている可能性があるくらいです」
「そうか」

 ならそこについてはまたあの画商に訊ねる事にするか、と思う。となれば問題は速水博士の方になる――バーテンダーへの連絡方法としては、今日中に彼の方に電話連絡を入れてくれればいいらしいですよ、と刑部から付け加えられた。

 と。

 不意に、コンコン、とノックするように影が叩かれた事に気付く。零からの連絡――誰かが来たならそう叩け、と頼んである。

 確かめると、常盤さんがいらっしゃったのですが、との返事が来た。


【黒服さんが草間興信所に顔を出してからの話。
 相談事は速水博士絡みの事だったようですが、さて】



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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■PC
【2778/黒・冥月(ヘイ・ミンユェ)/女/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】

■NPC
【NPC0534(旧登録NPC)/刑部・和司/男/47歳/IO2捜査官(エージェント)】

【NPCA016/草間・零/女/-歳/草間興信所の探偵見習い】
【NPCA001/草間・武彦/男/30歳/草間興信所所長、探偵】

(名前のみ)
【NPC5488(旧登録NPC)/ノイン/男/?/虚無の境界構成員(元)】
【-(旧異界内表記のみNPC)/速水博士/虚無の境界構成員(元)】
【NPC0479、480(旧登録NPC)/鬼・湖藍灰/男/576歳/仙人、虚無の境界構成員】
【NPC0477(旧登録NPC)/常盤・千歳/男/46歳/警察官】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。
 今回も発注有難う御座いました。

 そして今回もまた結局期間いっぱいまで使ってしまってお待たせしております。

 不在だった探偵については合流せずとも良かったかとは思いましたが、また後で情報共有の必要が、となりそうな気がしたので、冥月様的に面倒になるかとの判断で合流してみました。
 また、暁闇から預かって来たちょっとした相談についてですが…ちょっとどころか少々飛び道具過ぎる相談だったかもしれません(汗)
 どう判断するかはこちらにお任せ、との事ではありましたが…さすがにこれは内容的にお伺いを立てた方がいいかと思い、今回の引きにしてみました。
 急な話ですが、速水博士に会う気なら会えそうです。…バーテンダーに丸投げして伝手だけ付けておくと言う手もあります。
 あと常盤千歳については…おまけノベルの方でごにょごにょと。

 如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、次はおまけノベルの方で。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年11月07日

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