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『『ハロウィンの2人』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 ハロウィンということで。
 そう相も変わらず普段通り、例によって例の如く、アレスディア・ヴォルフリートは街角の警備に繰り出していた。
「しかしなんだ、その格好は……」
 そしてこちらも相も変わらず、アレスディアの仕事に同行しているディラ・ビラジス。
 ディラは眉を顰めながら、アレスディアの姿を眺める。
 彼女は普段纏っている黒衣ではなく、灰銀の全身鎧でがっちり身を固めていたのだ。
 身体だけではない、兜まできっちり被っている。
 肩には特徴のない外套。手には盾と槍。そんな姿で街を歩くものなどいるわけがないのだが。
「普段の格好で盾や槍を持てば問題だろうが、ここまで着込めば大丈夫だ、問題ない」
 しかし彼女は平然とそう言い、仮装パーティーが行われている一画に突撃……いや、警備の為に赴くのだった。
「それ、仮装じゃなくてどう見ても武装。問題ありすぎだ」
 片手で頭を抱えつつ、ディラは彼女のあとを追った。
 職務質問でも受けたのなら、彼女を抱えて逃げるべきか……ディラはそんな使命を胸に抱いていた。

 仮装する人々であふれた街頭にて、アレスディアはお菓子が入った袋を携え、道行く子供達に配っていた。
「ディラ殿はハロウィン初めてか? 『トリックオアトリート』というのは『お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ』という意味なんだ」
 ただつったているだけのディラに、ハロウィンについてアレスディアは簡単に説明をする。
 ディラは普段の格好で、憮然としているだけで、アレスディアがお菓子を持たせたものの、数はまるで減っていない。
「言ってこない子供にも、こうして近づいて配るんだ」
 と、アレスディアは兜を上げて、にこやかな顔を見せ、大人しそうな子供に近づくと「ハッピーハロウィン」と言い、お菓子を持たせた。
 そして嬉しそうな笑みが浮かべた子供の頭を、優しく撫でてあげた。
「できるか、そんなこと」
 の隣に戻ってきたアレスディアに、ディラは憮然とした表情のまま言った。
「子供……苦手なんだ。どう扱ったらいいのかわからない。うっかり踏み潰しそうになるし」
「そうか……? 普段のディラ殿の笑みで十分だ、子供達に笑顔を向けて、お菓子を配るだけで」
「嬉しくもなく、楽しくもないのに笑えない」
 そういえば、ディラはアレスディアに笑みを見せることが多くなった。
 自分に向けられるそんな表情を、普通に思えていたけれど……。彼が町の人や、自分以外の他人に向ける眼には、優しさは見られない。
 とくに子供に対しては、あまり彼は見ようとしない。苦手というのは本心のようだった。
 それでは何故、この仕事を請けたのだろう? アレスディアには良く分からなかった。
「ならば、無理にぎこちない笑みを浮かべるより、こうして側でサポートしてくれていた方が良いのだろうな」
 アレスディアは自分が持っていたお菓子も全て、ディラに預けた。
 そうして、アレスディアは子供に満面の笑みを、ディラは袋から出したお菓子を子供にプレゼントするのだった。

 いつしか夜が深まり、子供達の姿が少なくなっていた。
 冷たい風が吹き抜けていく……。
「早いものだな。この街に来てもう少しで1年か」
 アレスティアが感慨深そうに言うと、ディラも「ああ」と頷いた。
「今年のクリスマスは、何か予定はあるのか?」
 そうアレスディアが尋ねると、ディラは当然のように、
「警備だろ」
 と答えた。
「そうか、ディラ殿も警備か。自らクリスマスに警備の仕事を入れるようになるとは」
 感心したように言うアレスディア。
「そうじゃなくてだな、まーいーけど。夜は空いてるぞ?」
 ディラがちらりとアレスディアを見ると、アレスディアは苦笑しつつ、少し考えてこう言う。
「私も……多分、こうして警備に立つだろうが、仕事の後で良ければ共に過ごすか?」
(仕事ん時も、アレスと一緒に過ごすんだよ!)
 ディラの心の声は、アレスディアには届かない……。
「大したもてなしは出来ぬが、それでも良ければどうだろう?」
 もてなし……家にまた呼んでくれるということだろうか。
「他に誰か来る予定は?」
「特にないが」
「それじゃ、是非」
 ディラはそう言い、苦笑いする。
「さて、そろそろ帰るか……そうだ」
 アレスディアは少し悪戯っぽいく、ディラに言う。
「『トリックオアトリート』と言ってみてくれぬか」
「? ……トリックオアトリート」
 そうディラが怪訝そうに言うと、アレスディアは子供達用とは別に持ってきていた包みを、ディラに差し出した。
 それは、手作りと思われる焼き菓子だった。
「……サンキュー。特別報酬、だな。俺だけへの」
 この日初めて、ディラは嬉しそうな笑みを見せた。
 子供たちと変わらない、屈託のない笑みだなと、アレスディアは感じたのだった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ハロウィンのご依頼ありがとうございました。
そうですね、イベントごとといえば、アレスディアさん警備ですね……!
1年後の2人の様子に、何か変化はあるのか。引き続き楽しみにしております。
イベントノベル(パーティ) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年11月08日

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