▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『 夜に月。 』
無月aa1531)&ジェネッサ・ルディスaa1531hero001

 夜一時、草木も眠る準備を始めるその時間帯に、寝つきが悪いのか布団の中から起き出してきてテーブルの上にどんっと。一升瓶を『無月 (a1531@WTZERO)』は並べた。
 秘蔵の日本酒である。酒に酔えばそれが悪酔いとならぬかいつも心配する無月であるが、この酒にその心配はない。
 雪解け後の小川のような澄んだ液体は人工的な光をその身にうけてキラキラ輝き。コップ一杯それを飲み干した無月は一つため息をつく。
 静寂が室内を包んだ。
 かつて暮していた村では夜でも自然の音色が溢れ。本当の静寂など存在しなかったが、このコンクリートで固められた世界は夜になると音が去る。
 こんな生活にも慣れたと思ったがこの静寂が何とも寂しい。そう思い始めたころ人の気配を感じて無月は振り返る。
 するとそこにはラフな格好の『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001@WTZEROHERO)』が立っていた。
「なんだ、無月も眠れないのかい?」
 そう手を振るジュネッサ、彼女は片手で器用にグラスとウイスキー瓶を手に取っており、悠々と歩き来ると無月の隣に腰を下ろした。
 彼女のゆったりとグラスに酒を注ぐ所作、それを眺める無月、やがて灰を黄金色の液体が満たすと二人はグラスをぶつけ合った。
 二人でこうやって酒を飲むのは何度目だろうか。
 無月は考える。ジュネッサと契約してから長い年月がたった。
 あの時から自分は走り続けてきたつもりだったが、彼女からは自分がどう見えているのだろう。だとか、取り留めもない思いが浮かんでは消えていく。
 そんな中、時計の針が二時をうった。
「草木も眠る丑三つ時か」
 ジュネッサがそうつぶやいた。
「慣用句か、どこで聞いたんだ?」
 英雄がこの世界、特に日本のみで使われる言葉を知っていることに違和感があった。
 何気なく問いかけるとジュネッサはグラスを揺らした。
「きみが使っていたんじゃないか。おかしいね」
 そうジュネッサは小さく笑う。
 闇が深まってくる頃あいだ。そんな時刻でも二人は眠気一つ感じられず雑談に興じることになる。
「ところで、闇と言えば」 
 ジュネッサがおもむろに告げた。
「無月は、闇という単語が好きだよね?」
「そうだろうか?」
 無月は首をひねった。
「最近きくようになったかな? そこでボクは思ったんだ。君自身の闇は存在しないのかって」
 無月は空になったグラスに酒を注ぐ。質問の意図を考えながらジュネッサの言葉に耳を傾けた。
「すまない、話が見えなかった」
「そう? まぁ単純な話さ。君の過去が知りたいってこと」
 そう言うことか、と無月は頷く。
 そしてやや頭の中を整理する時間を要して、ゆっくりと口を開いた。
「語るべきことなど何もないが。そうだな。闇というものは特にもなかった」
 それでもきっと無月の話を聞きたいのだろう。ジュネッサは視線を無月に注ぐ。
「なぜなら私の半生はそう、光といっても差し支え奈くらいに、不自由はなかったからだ」
 不自由という言葉に込められた皮肉、それを察してジュネッサは表情を引き締めた。
 無月は窓の外、そこには写らぬ月を探すように視線をさまよわせる。
「私は『月』の一族の出身だ」
 月は、古から続く闇の一族、忍びと呼ばれる集団の流派、その一つ。
 月は人里離れた場所に一つの村を形成しており、極一部の者を除いて村の人達全員が月の者である事は知らない。
「学校やライフライン、外界の情報を手に入れるためにインターネット等。生きるのに師匠のない程度のインフラも整備されていたよ」
 無月はそうかつてを懐かしんだ。
「小さい頃は自由に、そして幸せに過ごしていた。自然と触れ合い、生き物を育てて命の大切さ、死による別れの悲しさ、そして」
 無月の幼少期は日本に住んでいるのであれば当たり前のように享受できる日常があった。
 ただ、小学生の実習で鶏を育て、それを実際に食べるなど、少々過激なところはあったようだ。
「あれはやりすぎなんじゃないかと今でも思うけどね」
 そう無月は苦笑いを向ける。
 ただ、そのおかげで自分達の糧となってくれる命に対する感謝を学んだという。
「友達と泣きながら食べたよ」
「食べたんだね」
「ああ、私は。それがせめて鶏にしてやれる最低限の事だとおもったんだ」
 友達と過ごし、苦楽を分かち合う事で思いやりの心や他者の苦しみを知り、他者の幸せを自分の幸せの様に思える心を培ってきた。
「もっと忍者らしい村なのかと思ったよ」
 ジュネッサがそう思うのも無理はない、忍びとは正体が隠匿されているからこそ忍び、正体が隠匿されていれば余計な想像力も働くというもの。
「そうだな、特異な点はあった各地から孤児を積極的に受け入れていたからね。子供はかなり多かった」
 これには新たな血を加える意味もあると無月は言った。
「私、自身は里の出身だが、出身が北海道なんて子もいたな」
 彼女は今どうなっているだろうか、優しい子だったからきっと村でひっそり過ごしているに違いない。
「ねぇ、無月。、『月』の教育は君を忍びにする為の一種の洗脳じゃないのかい?」
「そう、意地悪なことを言わないでくれ、人道は外していない組織だ」
 困ったように無月は髪をかきあげて言葉を続ける。
 月の村では、大きくなった時にどのような道を進むかは自由で、無月の様に忍びとして最前線に赴く者から後方支援や事務、又は里の運営まで好きに決められる。月と無関係になる事も可能だが……。
「その時は記憶を消去、改竄処置を行う」
「そのあたりは忍びらしいね」
「村のありかが漏れれば、一族を利用する者、恨みを持つ者が押し寄せてくる、これは当然の措置だ」
 その言葉を受けてジュネッサは悲しげな視線を向けた。
「じゃあ、君は……故郷に帰れないのか?」
 そのジュネッサの言葉に無月は答えなかった。
「私はは月から独立し、フリーで行く事を希望した、理由としては月の所属では月の目の届く範囲でしか人を救えないと思ったからだ、その時に名前を変えている」 告げると無月はメモ帳を引き寄せて、そこに漢字を二文字『夢月』と、書く。
「前の名前の方がロマンチックじゃないかな?」
 そうジュネッサは悪戯っぽく微笑んだ。
「これは決意の表れだ。月の支援がなくても最後まで使命を全うすると言う私なりの覚悟さ」
 そう無月はグラスをあおり、あける。何杯目だろうか。今日は酒がよくすすむ。
「私は、幸福だった。小さい頃に一生分の幸せな時を過ごした、だから、戦いの中で散ろうとも後悔はない、そして、今は幸せを皆にお返しする為に戦っている」
 その言葉にジュネッサは微笑むとまだあいてもいない無月のグラスに酒を注ぎたした。
「でも、君はそのおかげでボクと言う素敵なパートナーに出会えたって事だよね。君の選んだ道は正しかったんだよ」
 そうジュネッサは満足そうに告げる。
 その言葉がなんとなく嬉しくて、無月は照れ隠しのためにさらに酒をあおる。
 本来であれば緊急時でも出撃出来るように、過度の酒は飲まない無月であるが、楽しそうなジュネッサを見ていると現状もまぁいいかと許せてしまえる。
「いい飲みっぷりだ、さぁ今日だけは全てを忘れて一緒に飲もう」
 告げて自分のグラスも空にするジュネッサ。
「そうだな、たまにはこういう日もあっていい」
 月が地平線に近づくにつれ、窓に顔を出すようになった。
 夜はまだ深い。深夜の酒盛りはまだまだ続くようだ。
 窓の外の月が、二人を見守っている。
 穏やかな日常をずっと、照らし続ける。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001@WTZEROHERO)』
『無月 (a1531@WTZERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 いつもお世話になっております。鳴海でございます。
 納品が遅れてしまい申し訳ありません。
 今回は、いつも戦いに明け暮れるお二人のオフをテーマに書いてみました。
 普段描けない二人の様子がうまく描けるといいなぁと思って全力を出しました。
 気に入っていただければ幸いです。
 
パーティノベル この商品を注文する
鳴海 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年11月20日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.