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『金木犀、とある一日 』
木霊・C・リュカaa0068)&オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&凛道aa0068hero002

「おはよ、……ふ、酷い毛並み、だ」

 昇ったばかりの朝日が照らす町の景色。オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は自宅近所の空き地にしゃがみこんで、その表情を綻ばせていた。
 にゃあ。少年の周囲には野良猫達が、しゃがんだ彼の足や腰にスリスリと体をなすりつけてくる。オリヴィエは彼らの柔らかい体を撫でてやりながら、持ってきたカリカリをお裾分けするのだ。それから勿論、糞や食べ残しの掃除も行う。
 これがオリヴィエの日課――朝の澄んだ空気を吸いつつ、名残惜しいが猫達とお別れをすれば、彼は自宅にして古本屋も兼ねている「金木犀」へと踵を返した。店先と店の中は、猫達のもとへ向かう前に既に軽く掃除を済ませていた。とはいえ毎日小まめに掃除しているので、「軽く」でもピカピカになる。
 埃一つない家はシンと静まり返っている。この家にはオリヴィエの他に二人住んでいるのだが、まだ彼らは眠っているのだ。オリヴィエは郵便受けから取り出してきた新聞をちゃぶ台に置いて、そのまま休むこともせず割烹着を着て台所に向かう。朝ご飯を作る時間だ。

 昨日、多めに炊いておいた米をラップで包んだもの、三つ。
 生卵、三つ。
 冷蔵庫の野菜室を見る――タマネギと、使いかけのブナシメジ。

 卵に関しては各人が自由に調理できるようにそのままに。お米も電子レンジでチンするだけ。というわけで味噌汁を作るのである。お湯を沸かしている間に手際よくタマネギを切って、顆粒ダシを入れたお湯に投入して……ブナシメジは最後だ。彩もかねてカットワカメもひとつまみ。
 ふう。味噌汁の火を止めて、オリヴィエは時計を見やった。もうこんな時間。少年は家人の一人――凛道(aa0068hero002)の寝室に向かう。
「凛道」
 ふすまを開ければ、布団の中に死体のように静かに収まっている第二英雄がいた。凛道の寝相は良い……というより微動だにしないというか。
「凛道、起きろ」
 呼びかけながら凛道の体を揺する。彼の寝起きは悪くない方だ。じきに、青い色の瞳が開く。
「む……先輩、おはようございます」
「おはよう。……ラジオ体操、行くんだろう」
「おっと、もうそんな時間でしたか」
「支度してこい。……卵、俺は目玉焼きにしようと思ってるが、お前もそうするならついでに作る」
「ではお言葉に甘えましょう」
「ん」
 枕元にキッチリ几帳面に置いてあった眼鏡を身に着けて、凛道が身を起こした。第二英雄は洗面台へ、第一英雄は再び台所へ。

 まもなく。英雄二人で一足先の朝ご飯。「いただきます」の声が重なる――。







「え、嫌です、マスターの寝起き凄く悪いじゃないですか」

 ラジオ体操(兼、近所の小学生の見守り)から帰って来た凛道は、帰宅するなりオリヴィエから「リュカを起こしてきて」と言われて眉根を寄せた。しかし先輩英雄にジロリと睨まれては、しぶしぶ木霊・C・リュカ(aa0068)の寝室へと向かうのだ……。

「……っさい、あと二じかん……」

 で、起こしにかかったらこれである。
 リュカは低血圧で寝起きがひじょーに悪いのだ。目付きも凶悪犯罪者みたいなことになって、いつものお茶目なお兄さんはどこへ行った状態なのだ。
「に……二時間。二時間ですよ、マスター」
「凛道。リュカを甘やかすな」
 部屋の向こうから聞こえてくるオリヴィエの声。「開店時間がある」と釘を刺されては、オロオロしながら凛道はリュカを起こすのだった……。

 そうして、リュカもなんとか身支度を整えたら――金木犀開店。

 とはいえ小さな古本屋。開店と同時にどっと人が押し寄せる、なんてことはない。
 店内BGM代わりにラジオから流行りの音楽が流れている。
 リュカはそれを聞きながら、レジ近くで古書修繕や、内職として原稿等の校正作業を行っている。
 オリヴィエは在庫の整理や電話などで客対応をしつつ、その合間に、来年から通う中学校に向けて勉強を行っていた。
 凛道は鼻歌を歌いながら裁縫をしている。実は結構、凛道は女性人気があるのだ。とはいえ年齢幅はすさまじく広いのだが……近所のマダムにねだられるまま、刺繍を作ったりすることもある。

 男三人、交わす言葉は時折で、ワイワイ会話をし続けることはない。けれどそこに張り詰めた空気も余所余所しさもない。信頼関係と絆があるからこその、各々の静寂。気兼ねなく落ち着ける空気感。
 そんな風に、まるで何事もなく時が過ぎていき――その穏やかな光景からは、彼らがH.O.P.E.東京海上支部のエースエージェントだとはとても想像がつくまい――簡単な軽食で昼も済ませて、時間は午後。

 レジ近くの席に座り直したリュカが「そろそろかな」と思った、ドンピシャリだった。近所のじいさん連中が数人、金木犀に訪れる。
「今日も閑古鳥じゃのー」「ほーぷの仕事はお休みか?」「賑やかしに来たったぞー」なんて口々に自由に笑う彼らはある種の常連――元々この金木犀の店主にしてリュカの祖父、今は亡き銀次という男の友人達である。
「なに、じっちゃん達ヒマなの? ばあちゃん達に追い出されたの?」
 このじいさん達とは顔馴染みだ。いつもこのぐらいの時間帯にたむろしに来るのである。ので、リュカも遠慮のない軽口を挨拶とする。「年上の方にそんなことを仰っては……」と、生真面目すぎる凛道にはまだ軽口という文化はインプットされていないようで、彼がそう言うのも最早一同のお約束となっている。その後に「あれはあれでいいらしい」とオリヴィエが凛道に言って、お茶を淹れに行くまでが一連の様式美だ。

 もう秋から冬の季節、夏場は氷を入れた冷えた麦茶だったが、それはすっかり香ばしい湯気を立てる温かい茶となった。お茶菓子としてお饅頭もご用意。ちょうどおやつ時である。

 と――オリヴィエは電話でちょっとした依頼を受けた。まあ、依頼というほど堅苦しいものではない。衣替えをしたいのだが、衣装ケースが重くて下ろせないので手伝ってほしい……というささやかなもの。ちょうど仕事も合間で手も空いていた。「ちょっと行ってくる」とオリヴィエは店から発つ。
 真面目で働き者でいい少年だ、と老人の一人がしみじみと目を細め、他のじいさん達もウンウンと頷く。「素敵でしょ〜〜うちの第一英雄でぇ〜〜す」とリュカはドヤ顔だ。一方、凛道はお茶の湯気で眼鏡が曇っていた。

 オリヴィエが戻ってきたのは間もなくだった。じいさん達は帰ったようだ。リュカと凛道が何やら一つの本を覗き込んで語り合っている。
「いえ、すみません。心に響かないというか」
「素人モノは凛道の萌えじゃないのかぁ。やっぱアイドルとかロリっこ系とか?」
「やめてくださいそういうの地雷です」
「アッハイ」
「神を汚してはならない……」
「ソッカ……」
 真顔で首を振る凛道、絶妙な表情で若干引いているリュカ。一体何の本を話題にしているのだろう? 気になったオリヴィエは、ヒョイと件の本を覗き込んでみる。

『総天然色 素人若妻、乱れる午後』

 ワーオ。昭和のエロ本! ある意味プレミアム。
「……」
 オリヴィエは本日最大のシワを眉間に寄せて、溜息を吐いた。
「ねえ、オリヴィエはどーゆーのが好みなの?」
 ニヤッとした顔でリュカが問う。オリヴィエは溜息を返すだけで答えなかった。だが、仮に、もしもの話、オリヴィエがその質問に答えていたならこう言っていただろう。「年上の巨乳さん」――と。








 夕方の終わりと共に、金木犀は暖簾を下ろす。最後に軽く掃除と整理整頓をして、今日のお仕事はおしまいだ。
「お夕飯どうしよっかー」
 肩を回してストレッチしながら、リュカが英雄達に問う。
「……あ」
 オリヴィエの動作が止まった。「野菜とか買い出しに行くの忘れてた」と眉間のシワを深くする。今日は激務というほどではないものの、ちょくちょくお使いがあったというか……。
「では、出前などいかがでしょう? それとも外食にします?」
 凛道が提案する。「たまにはいいね!」とリュカは頷くが、
「その前にサクッとシャワーだけ浴びて良い? 肩がちょっと……血行よくしたいというか……」
 それに英雄達がNOを言うことはなかった。というわけでリュカは浴室へ向かう。

 事件はその三分後に起きた。


「ア゛ーーーーーーーーッッ!!?」


 裏返ったリュカの悲鳴が響き渡る。
「リュカ、どうしたッ!」「マスター、ご無事ですか!」
 何事か。英雄が声を揃えて浴室のドアを勢いよく開ける。
 そこには素肌のリュカが、浴室の隅で震えていた。
「ア……ア……アア……」
 彼は真っ青な顔で、ガタガタ震えながらとある方向を指さす。
 そこには水が出っぱなしになっているシャワーがあるが……?
「オ……オユガ……デナイ……」
「「えっ」」

 お風呂のガスが壊れた。
 冷たい水しか出なくなった。
 ルンルン気分でシャワーを捻ったリュカは冷水の洗礼を受けたのだ。
 今日はもう夜、修理は明日。

 というわけで。
 唇を紫にしたリュカは、こう告げたのだ。

「そうだ……銭湯、行こう」







 この季節の夜だ。銭湯までの道のりは寒くて辛いものとなった。
 だが、空腹なほど、ありついた食事が絶品であるように。寒さに耐えて辿り着いた銭湯の、大浴槽に身の全てを委ねた時は、ここが天国かと――リュカは心の底からそう思ったのだ。
「いぎがえる゛〜……」
 リュカが心身共に溶けている一方、眼鏡を外した凛道は生まれたての小鹿のように浴室内を歩いていた。その歩調は、普段から見えないリュカより危なっかしい。対照的にオリヴィエは、隅っこの方で黙ったままちょっと石鹸で滑ってみたりと……分かりづらいハシャギ方をしている。

「お夕飯どうしよっか〜、コンビニでいい?」
 やがてリュカの近くにて湯につかり始めた英雄へ、彼は尋ねる。「肉まんがすっごく食べたくなっちゃってさぁ」と続ければ、第一英雄は「分かった」と、第二英雄は「付いて行きます」と答えたのだった。

 食べたい、と欲を口にすれば途端に胃が切なくなる。
 一同は銭湯をそこそこに上がり、冬の星座が現れ始めた空の下を歩き始めた。行きと同様、先頭を歩くのがオリヴィエで、しんがりを務めるように歩くのは凛道、そして真ん中にはリュカ。弱視であるものの、白杖さえあれば歩行はむしろ軽快な方だ。
 コンビニは銭湯からほど近くである。バイト青年の気だるげな「らっしゃーせー」に、凛道が律儀に「遅くまでお疲れ様です」とお辞儀をする。リュカはからから笑っていた。
「肉まん一つ……いや二つ下さい。二人は何にする?」
「俺は、カレーまん」
 リュカの代わりに財布を取り出すオリヴィエが答える。「オリヴィエはインドキャラ狙ってるの?」「狙ってない」なんてやりとり――凛道は二人と、そして陳列しているものをジッと見る。
「僕はこの……ピザマンというものを一つ」


 寒い空の下、あったかい蒸し饅頭を割れば、ホクホクの湯気が美味しい香りと共に立ち上る。
 アツアツのそれを口に運べば、約束された美味しさだ。
「オリヴィエ、はんぶんこしよっか」
「リュカは一口がでかい、不平等だ」
 能力者と第一英雄が賑やかに言葉を交わしている。肉まんの他にフライドチキンやらおつまみのお菓子やらも空腹の誘惑に負けて買ってしまった。ちなみにビールもある。流石に飲酒は家に着いてからだが!
(空腹の夜に訪れるコンビニには……魔物が住まう)
 凛道はまた一つ、この世界の常識を知った。ふと振り返れば、寒い夜に輝くコンビニが見える。アレは凄い場所だ。ウン。
 そして視線を今一度、リュカとオリヴィエに戻す。結局、オリヴィエが上手に肉まんとカレーまんを半分に割ることで決着はついたようだ。大きい方を渡す辺り、オリヴィエもお人よしである。
 さて。凛道も彼らにならう。取り出したピザまんを割って、一口。
「……ふむ。……成程、人と寒いなか食べるこれは、特別な物ですね」
 しみいる味に、凛道が言う。やっぱり眼鏡は湯気で曇っていた。
 その声にリュカは振り返り、そして笑顔で、二人にこう言うのだ

「ん、帰ろ!」



『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃

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木霊・C・リュカ(aa0068)/男/30歳/攻撃適性
オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)/男/12歳/ジャックポット
凛道(aa0068hero002)/男/23歳/カオティックブレイド
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2017年11月30日

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