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『『たぬきのば・け・が・く!』 』
海原・みなも1252

 海原・みなもはアルバイトが早く終わったため、どこか寄っていくことにした。
(街の新たな発見もありますよね)
 商店街に公民館についての道案内の看板が見えた。
 これまで気づかなかったのだが、これも縁だと足を向ける。公民館は図書室やちょっとした展示などもあったりする。有意義に時間を過ごせるだろう。
 矢印通り進むと、公民館にが見えてきた。道に沿って入り口がある。鉄筋コンクリート三階建てのこじんまりとした建物。明かりもともされており、子供の声もする。
 みなもが中に入ると受付の人が「こんにちは」と声をかけてきた。右手には会議室、左手には図書室。今日の日程の看板が見える。

 ――文化講座・タヌキの化学(初回、無料)、当日参加歓迎

(生物学でも、生態学でもなく?)
 みなもは会場に向かう。会議室の前にはテーブルが置かれ、青年が立っていた。
「こんばんは、受講生ですか?」
「あ、あの……なぜ、カガクなんですか?」
 受付の青年はいぶかし気にみなもをみつめる。そして、意味ありげに微笑んだ。
「見てみればわかりますよ?」
 みなもは質問返しをされて驚いたが、異界の意識が働いたので理由が分かった。
「なるほど……でも、カガクなんですか」
「バケガクと読んでいただけますか?」
「え?」
 みなもはキョトンとした。
「化ける学問『化け学』です」
 青年がわかりやすく示すと、みなもは理解した。
「試しに受けてみますか? その姿以外に化けられるかもしれませんよ?」
 みなもは受けてみることにした。

 中に入ると子タヌキやネコやテングなど受講生が十数人いる。都会に住むには化けることは重要ではある。
「おねえちゃんも参加者?」
 子タヌキたちが群がって席に案内してくれた。その間もみなもにあれこれ話しかけてくる。
(かわいい……)
 タヌキといっても後ろ足で立っている。まるでアニメでも見ているように動く。
「おねえちゃんは何ー? 化けられるのに受けるの?」
「人魚なのです」
「人魚! 知ってる、こんな怖い顔のやつー」
 みなもは日本にあるというミイラを思い出し「南洋系のです」とただしておく。
 子タヌキたちは話すのが楽しいようだった。

 受付の青年が入ってきた。
「ご静粛にお願いします。本日の講師は刑部一族の百一郎先生でございます。拍手でお迎えください」

 見事なビール腹で貫禄のある中年男性が堂々と入ってきて、ホワイトボードがあるところに立つ。
「今回から四回に分けてわしが指導する。まずはわしの経歴をお話ししよう」
 話が長くなる前触れだと感じる。子タヌキはすでに飽きており、みなものスカートをつついたり膝に乗ってくる。
(飽きていますね、この子たち)
 百一郎の話は推古天皇の時代から現代に向かってくるようだった。みなもは膝に乗ったタヌキを撫でる。
「……さてまずは、わしが手本を見せよう」
 みなもは百一郎と目が合った、気がした。
 百一郎は葉っぱを頭に載せたとか、くるりと回ったり何か特殊動作をしなかった。ただ、煙がポンと上がった直後に姿が変わった。

 そこにはみなもがいた。
「え?」
「うわー、すごい、そっくりだー」
 子タヌキたちはみなもと百一郎みなもを見比べる。
「そこにすでに人間に化けられているモノがおるんじゃ、それをまねるのと面白かろう?」
「あたしはタヌキになれたらと思います!」
「まあそういうことになるんだろうな」
 みなもの目標は定まった。
 子タヌキはすでに何かやろうと必死に動き回っている。
「で、どうすれば良いんでしょう?」
「感じたまま動けばいい」
「……?」
「ぬしは人魚とどう使い分けておる?」
「えー」
 どうだったろうかと考える。
「感じるまま、念じるまま化ければいいのだ」
 なお、百一郎はみなもの格好のまま、声はだみ声で口調もそのままであることは付け加えておこう。

 みなもは先ほどまで触っていたタヌキを思いだす。
 結構、尻尾は大きい。寸胴かもしれないけれども足はそれなりに長かった。
(タヌキ顔……タヌキ顔……そういえば、雑貨屋さんでタヌキとキツネのグッズが並んでいましたね……)

 ポン。

 視点が低くなった。手は前足になっているらしく、床を感じる。
「変身はできたようです」
 声は普通に出ている。
「絵に描いたようなタヌキだな」
「おねえちゃんかわいいー」
 百一郎や子タヌキが感想を漏らした。
 全身が写る鏡が置いてあるため、みなもは前に立った。
「そ、そんな」
 邪念が入ったのは事実だった。
「おねえちゃん、モデルが必要ならおいらがなってあげるよ」
 子タヌキの一匹がすくっと立ってアピールする。
 みなもは目の前の子タヌキを見つめる。そして、「自分はその格好をしているのだ!」と強く強く考えた。

 ポン。

 視点が少し高くなった。鏡を見ると、後ろ足で立っているそのタヌキになっている。
「やったー、おねえちゃんできたー」
「確かにできました」
 みなもは前足でハイタッチして喜んだが、何かおかしい気もした。
 百一郎が咳払いをする。
「喜んでるところ悪いのだが……動物のタヌキを目指すなら、前足は下さんと」
 みなもは試しに前足を下してみる。しかし、タヌキの姿だから問題はないはずだが、何かおかしい。
「それは動物のタヌキではないからな……待っておれ、わしが手本になろう」
 百一郎はタヌキに化けた。子タヌキたちと異なり「動物のタヌキ」のようだ。
 みなもは観察する。
「妖怪のタヌキと動物……足の長さが違いますか?」
「それも一理ある」
「胴体の感じも」
 百一郎はうなずく。
「やってみます!」
 みなもは百一郎をじっと見つめる。
 百一郎のつぶらな目がみなもを見つめる。
 先ほどの貫禄のある人間の姿を取っていた人物とは思えないほど愛嬌がある。
(思わず、可愛いです、と言ってしまいそうです。せっかく教わっているのですから、それは非礼というものです)
 真剣に取り組んだ。
 ポン。
 前足が自然と床についた。
 鏡を見ると絵に描いたタヌキではなく、本物のタヌキがそこにいる。それがみなも自身だと分かるのは、くるりと回ればくるりと写っている物も回る。尻尾を振れば尻尾も動くからだ。
「やればできるではないか」
 百一郎は貫禄のある男の姿に戻った。
 みなもは試しに会場を歩いてみる。
 机やいすが高いところにある。新鮮な景色である。
 子タヌキたち以外の参加者も思い思いに訓練している。猫は大変きれいに化けている。それも美女であり、みなもが見とれていると、にんまりと猫は微笑んだ。その目は猫で人間になり切れていないようだった。

 みなもは元に戻ろうとした。
「……あ、あれ?」
 自分、自分ってどうだったっけ?
 そう、これまでお手本を前に化けていた。戻るには自分を自分で考えないとならないのだ。
 自分と言う認識。
(人魚から戻るときはどうでしたっけ?)
 みなもは考えるが、人魚の時と異なり、こちらはすべて変わる必要があるのだ。
「おねえちゃん、ピンチ!」
「ボクたちを見て」
「あ、ありがとう」
 参考にならなかった。
 これは、なんとしてでも自分で考えないといけない。
 これまでの自分。
 生まれてこれまであったこと、そして、人と魔との間のこと。
(縁があるからこうして出会えるのです)
「嬢ちゃん、もう、戻れてるぞ」
 百一郎に声をかけられ、みなもは鏡を見た。ひげが残っているのに気づいて、手で抑え念じた。
 そしてようやく、みなもはほっとした。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1252/海原・みなも/女/13/女学生
???/百一郎/男/?/化学講師


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 制作中、力が入りすぎて非常にオーバーになったのは秘密です。煮詰めて結果がお手元に上がりました――濃厚に仕上がったならば良いですが……。
 さて、再びご縁があり、ありがとうございます。
 受講生をあれこれ考えた結果、みなもさんに絡めたのタヌキ一族しかいませんでした。残念至極。
 いかがでしたでしょうか?
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東京怪談
2017年12月01日

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