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『ある日の日常は四季と共に顔が変わる 』
音無 桜狐aa3177

 自転する地球、太陽と反対側に向けば夜となり、太陽の方を向けば朝となる。
 これは大きな影響か無い限りは“変わらない日常”である。
 しかし、季節は変わり“顔の色は変わる”のが四季だ。
 まだ、薄暗い中で音無 桜狐(aa3177)はゆっくりと瞬きをしながら目覚めた。
「……むぅ……やはり朝は眠いのじゃ……」
 ごしごしと、瞼を擦りながら桜狐とセレン・シュナイド(aa1012)は白装束に身を包み、境内にある滝へと向かった。
「桜狐さん、ちゃんと禊するんだ……」
 寒い、と思いながらセレンは両手で腕を擦る。
「ほれ、はよう」
「あ、はい……っ!?」
 桜狐がセレンの腕を引っ張ると、熱いと思うほどに装束越しから分かる位の彼女の体温が伝わる。
 しかも、胸の谷間辺りに顔面がダイブした図である。
 セレンは熱くなる頬を押さえ、桜狐と共に冷たい水が滴る滝の中へ。
 水の落ちる、力強い音が耳の中に響き、静寂な朝が街中の騒音へと変わったかの様に錯覚する。
「あのっ、あのっ!!」
 セレンの視界には何故か、ほぼ肌色にしか見えない桜狐の姿が。
「……ぬ、顔が赤いがどうしたのかの……」
 アクアマリンの様な大きな瞳で桜狐は、顔から火が出るんじゃないか? と錯覚する位に顔が赤いセレンを見て首を小さく傾げた。
「って、服が……な、なんでも無いっ」
 言おうとしても、セレンは桜狐のほぼ肌色の視界から逃げるかの様に視線を反らすと駆け出した。
「……なんじゃ? 風邪でも引いたのか?」
 セレンの男子心を知らぬ桜狐は、小さくなる彼の後ろ姿をただ眺めていた。

 そんなどたばたな禊を終えると、セレンと桜狐は別々の部屋で着替える。
 用意していた巫女装束を手にし、桜狐はを脱ぐと足袋を履き終えると肌着を着てから白衣の袖を遠し紐をキュッと絞める。
 赤い袴を穿き、前から紐を胴に回して後ろで縛ると、今度は後ろ側に付いているヘラを結んだ箇所に入れ、紐をまた胴に回し前でちょうちょ結びをすれば着替え完了だ。
「や、やっと……」
 ちゃんと見とけば良かった、と心の中でそう思いながらもセレンは桜狐に笑顔を向けた。
「む、ちょっとお守りが足りぬかもしれぬ」
 桜狐は、お守り等が入っている桐箱を見ながら言った。
「お昼休みか、終わった時にでも作らないといけませんね」
 セレンも横から覗き、こくりと小さく頷きながら答えた。
 桜狐の手伝いを始めてから、お守りを作るのは自分達でするという事実に驚いた。
 祈祷された用紙をお守り袋に入れる、それだけの事なのに今までお守りがどんな風に作られていたのか知らなかった。
「参道の落ち葉だけでも退けておくか」
 社務所から桜狐は顔を出すと、鳥居前から続く道である参道に落ち葉で埋め尽くされているのを見て言った。
「そうだね。近所のおばあさん達がたまに来るだけだからね」
 セレンと桜狐は、竹箒と熊手にゴミ袋を持って参道に向かった。
 冷たく乾いた空気、空は綺麗に澄みきった青が何処までも広がっている。
「……秋は過ごしやすくてよいの……。……暑くも寒くもないからのぉ……」
 竹箒で黄、赤と色付いた落ち葉を掃きながら桜狐は、狐の様な耳と尻尾を揺らす。
「紅葉が綺麗……桜狐さんはどの季節も変わらない気がする……」
 セレンはゴミ袋に落ち葉を詰めると、紅葉している木々を見上げた。
「そうじゃろうか?」
「そうだよ」
 常に無表情の桜狐はセレンから見たら分からない。
「そうか……」
 逆にセレンは表情豊かであり、桜狐は少しだけ手を止めて騒がしい英雄達と笑う自分を想像した。
 しかし、そんな自分の姿が思い付かなくて一瞬で想像は消え去った。
「あらあら、お稲荷様と可愛いボク。おはよう」
「あ、おはようございます」
 朝の散歩ルートとしてよく来る老婆が笑顔で言うと、セレンは太陽に向かって咲く向日葵の様に微笑んだ。
「何時も仲良くて良いわねぇ」
「そ、そうですか?」
「若い頃の自分を思い出すよ」
 老婆は二人を見てうんうんと頷きながら話す。
「そうなんですが、さぞかし若い時は美しかったのでしょうね!」
「ふふ、お世辞でもそう言ってくれると嬉しいよ」
 セレンと老婆が話し出したら止まらない、それは老婆が一人で暮らしているのを知っているからだ。
 嫌いではない、セレンは桜狐の神社だから喜んで手伝っているのだから苦ではない。
 落ち葉が詰められた袋を持ち上げ、桜狐はその二人の横を通り過ぎてゴミ捨て場へと運ぶ。

「ごめんね。一人じゃ重たかったよね?」
 話が終わったセレンは、桜狐を姿を見るなり駆け寄って言った。
「慣れておる。それに、先程ゴミ捨て場で会った参拝客に御朱印帳を頼まれてのう」
「良かったね。参拝客さんは僕が境内を案内します」
 セレンが桜狐の後ろから着いてきた客に視線を向けた。
「ありがとう。それではお稲荷様、よろしくお願いします」
 と、言って参拝客は何故か桜狐を拝む。
「……じゃからわしはお稲荷様ではないのじゃが……」
 桜狐は少し不服つそうに呟いた。
「まて、それは英雄にさせるから社務所で少し休憩でも、の?」
「そうだね。じゃあ、お願いしてくるよ」
 桜狐の提案にセレンは頷くと、彼女の英雄に参拝客を任せるために駆け出した。

「秋だからでしょうか? 参拝客、いつもより来ますね」
 温かい社務所でセレンと桜狐は、英雄がいつの間にか買ってきたまだ温かい焼き芋を頬張る。
「実ったお礼しに参っているのじゃろう」
 桜狐は甘くなった口にお茶を入れると、苦味が甘さと中和されてとても美味しく感じた。
「神様だから?」
「豊穣の神様じゃからな、百姓をしている近所の家は春先と秋になると来るんじゃ」
 セレンの問いに、桜狐は小さく頷くと答えた。
 外では巫女姿の英雄達が、竹箒で落ち葉を掛け合う何時もの光景が見えた。
「……今日の夕飯は何かのぉ……」
 日が西に傾き、空が赤く染まるのを眺めながら桜狐は呟いた。
「きつねうどんだったりしてねー」
 と、セレンは無邪気に笑いながら言った。
「たぬきかもしれんのう?」
 桜狐が対抗して言い返す。
「当たったらどうするの?」
「そうじゃな、わしは一緒にお風呂に入るにしておくの」
「僕は……」
 思い付きで言った問いに、桜狐が普通に答えたので返答を考えて無かったセレンは足元に視線を向けた。
 “一緒にお風呂に入る”という言葉が頭の中から離れない。
「ご飯だにゃ〜」
 英雄達が社務所を閉めていたセレンと桜狐に向かって声を上げた。
「な、なら僕は……ひ、膝枕を……」
 セレンは段々と小声になりながら言うと、桜狐は狐の様な耳を傾けた。
「今日の晩ご飯はなんじゃ?」
「それはだにゃ……」
 桜狐が英雄に問う。
 夕日はあっという間に沈み、空に星が瞬き月が美しく輝き世界の半分を照らし出す。
 これは、桜狐が居る秋の神社であったセレンとの何事もない日常のお話。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa3177/音無 桜狐/女/14/アステレオンレスキュー】
【aa1012/セレン・シュナイド/男/14/エージェント】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度は、どさ会場限定イベントシチュエーションノベルの発注をしていただきありがとうございます。
のんびりとした日常のとある1日を楽しんで頂けたら幸いです。
何処か誤字とかありましたら、遠慮せずにリテイクしてください。
沢山いるライターの中から選んでいただき、本当にありがとうございました。
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2017年12月01日

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