『『プリン日和』 』

清水・コータ（4778）

　清水・コータは、民族系ショップの店員である。
　店員としての普通のお仕事の他、普通じゃない仕事にも行っているのだけれど……これは普通のお仕事の日。
　彼のショップの店員としての日常のお話のひとつである。

「暇だ……」
　コータはカウンターの裏に置いてある椅子に座って、足をぶらぶらとさせていた。
「朝から殆ど何も売れてない……大丈夫なのか、この店」
　と、その時。
　店頭に並べている品を、覗き見ている少女に気付いた。
　普段なら、よろしければお手にとってごらんくださ〜い、などと声をかける程度なのだが、今日はホントに暇すぎて。店員としても店の売上にちょっとは貢献しないとマズイんじゃないかと思い、コータは営業用スマイルで少女に近づいた。
「どんなものをお探しです……か」
　そこでコータは気付いてしまった。
　その子が、なんと、あの……幻の銘菓、花月堂１日２０個限定、絶品すぎて気絶必死といわれる『幻の超なめらかデリシャスプレミアム・プリン』を手に提げているということに！！
（こ、こいつは、朝一で並んでも手に入るかどうかわからない、幻のプリン。こっこの勝負、絶対負けられねぇ！）
　コータのやる気スイッチが入った。
「あの、店員さんくらいの男の人が喜ぶものって、なんでしょう？」
「彼氏かな？　それとも好きな男？」
「付き合い始めたばかりの彼、です」
　少女は赤くなりながら言った。
「よし、それならオーソドックスなものが良いかもな！　学生でも社会人でも、ちょいとお洒落なこのボールペンなんか、長く使ってもらえていいぞ。あとは、一緒にでかける時なんかに、さりげなく持って行けるこれとか」
　コータは少女の話を聞きながら、文具や小物を勧めていく。
「ペアいいかも……でもまだちょっと早いかな」
「そりゃペアリングとかは早いかもしれないけどさ、例えば、ペアの飾りボタンをつけるだけでも、なんか嬉しいもんだぞ。一緒に使わなくてもカップとか！　ペアだって言わなくてもいいし。お泊りの時にでも持って行ってびっくりさせればいい」
「ふふ……そうですね〜。彼とお兄さん、ちょっと雰囲気似てるかも。お兄さんなら、こちらとこちらだと、どちらが好みですか？」
　コータのやる気マックスの接客に、彼女も乗り気になり色々と商品を見ていく。

　そして……およそ１時間後。
「まいどー。彼氏と仲良くな〜」
「ありがとうございました！　彼と使わせていただきます」
　購入した品物を両腕で抱え、頭をぺこりと下げて少女は帰っていった。
　コータは幸せそうな彼女を、爽やかな笑顔で見送った。すがすがしい気分だった。
「結構楽しい接客だったなー。可愛かったし、彼氏幸せモンだよなー……あ！」
　いつの間にか接客に夢中になり、大切なことを！　『茶を淹れるから休んで行かないか、そして一緒にソレを！』とプリンを貰うつもりだったのに！　スコーンと忘れてしまっていた。
「うぐーっ。俺の花月堂のプリンー。今日の給料全部と交換でもよかったのにー……」
　はあああっと大きくため息をつき、コータはカウンターにつっぷした。
「でもまあいいかー。もらえたとは限らないしな」
　彼女が彼氏と嬉しそうにプリンを食べる姿を思い浮かべ、コータの顔にも笑みが浮かぶ。
　とりあえず、プリンを買って帰ろう。自分も夜を美味しく過ごすんだ、そうしよう！
（花月堂のプリンなら、手に入っても１個だが、コンビニの濃厚絶品プリンならば、仕事後でも複数手に入るはず！　そうだ、全種類大人買いして、今日は１人でプリンパーティを……）
「店員さーん、この品なんですけれど」
　若い女性の声に、コータはプリンな妄想から覚める。
「あ、はい、なんでしょう〜。残念ながらこの店、プリンはおいてないですよー」
　そして、パタパタと客のもとに走っていくのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号／PC名／性別／外見年齢／職業】
【4778／清水・コータ／男／20／便利屋】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
大変ご無沙汰いたしております。
そしてお届けが遅くなりまして、申し訳ありません。
プリンな設定に惹かれてしまい、今回はプリンな話となりました。
とても楽しく書かせていただきました。ありがとうございます！
また何かございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

東京怪談ノベル(シングル)

川岸満里亜

東京怪談

2017年12月04日