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『My Heart and Soul 』
ソフィア =リリィホルムka2383

 日本刀――それはすなわち、リアルブルーにあると言う島国で造られた刀類の総称であり、反りのある刀身の片側に刃を持った刀剣を指す。
 古来より人々はその刃の美しさに惹かれ、鍛冶師はその技の頂点を目指し、戦士はその刃に宿りし魂に魅せられ己が限界に挑む。
 そう、日本刀とは最も美しく、最も愛されるべく生まれた刀剣なのかも知れない――。

   * * *

「ちわーっす! おやっさんいるー?」
 元気に小屋を開けた灰色の髪の少女。
 彼女は中で寝転ぶ中年のオヤジを見付けると、ニンマリ笑って中に入って来た。
「さあ、今年もあの季節がやってきたぞ! 例年通り、良い鉱物採れてるんだろ?」
「ったく。来て早々に人の持ちもんを覗くんじゃねぇ……つーか、もうそんな季節か。どうだ? 今年は打てそうか?」
「『今年は』とは余計だね! 『今年も』去年の一振りを超える業物を作って見せるさ!」
 少女は自信満々の笑みをむせると、小屋の隅に置かれた鉱物を手に取った。
 彼女の名前はソフィア =リリィホルム(ka2383)。見た目こそ10代前半の少女だが、実年齢「ピー」歳のドワーフだったりする。
 そんな彼女の職業はハンター兼鍛冶師で、年に一度、年が暮れる頃に己が全力を打ち込んだ一本を鍛えると言う目標があるのだ。
「おー……これ良いじゃん! ね、これ頂戴よ!!」
「バカ言え! そんなのは捨て石だ。今年は良い感じの鉱物がわんさか出ててな。そんなのよりももっとマテリアル純度の高い鉱物が採れるんだぜ?」
「へぇ……」
(それってまさか、精霊の顕現が影響してる……とか?)
 かなり前になるが四大精霊がクリムゾンウェストに顕現し、それ以降他の精霊も活性化していると言う。その辺の事情が功を制しているのだとしたらハンターとしても頑張ってきた甲斐がある。
「ただよぉ……マテ純が高い分、歪虚が近付きやすくてなぁ……高純度の良い鉱物はなかなか掘りに行けねぇんだよ」
「ははーん? それってもしかして、わたしを待ってたってことかなぁ〜?」
「どうだ? 退治してくれたら一番良い鉱物をやるぜ?」
「乗ったぁ!!」
 パーンッとお互いの手を合わせて交渉成立だ。
 その時の2人の表情は互いの名誉のために伏せておくが、こうしてソフィアの最高の一振りへの道のりが始まった。

 * * *

 ソフィアは元々、都市同盟の商人と共に各地を転々としながら生活を送っているような少女だった。
 そんな彼女に転機が訪れたのは、今から十数年ほど前で、とある日本刀と出会ったことが切っ掛けだったりする。
 その時の事を語らせると長いので割愛するが、製法や美しさに感銘を受け、それ以降リアルブルーの古刀名刀に匹敵する一振りを鍛つのを目標としている。
「ほい、報酬の鉱物だ。こいつは最上級の鉱物だぜ!」
「うん、わたしにもわかる! これは凄いよ! こんな最高品質の鉱物で造れるなんて……〜〜っ、すっごいワクワクする!」
「わははっ! そいつは良かった。っと、そうそう。前から気になってたんだが、お前さんが見たって言う刀ってのはどんな奴だったんだ? 毎年ここに来るわりには聞いた事がなかったと思ってなぁ」
 ソフィアがこの鉱山とオヤジを尋ねるようになったのは今から数年前。
 その時は「小娘に刀なんか打てるか!」と追い払われたのだが、その言葉に奮起した彼女がその年に作り上げた刀を持って訪れて以降、彼との交流は続いている。
「わたしが見たのは『最上大業物』に名を連ねる刀工の一振り、だったかな?」
「あ?」
「つまり、リアルブルーのすっごい人が打った刀ってこと!」
 ソフィアに刀工の基礎を教えたのはリアルブルーから転移して来た刀鍛冶師だ。
 行商のツテで知り合ったのだが、その時のエピソードはいずれまた。今は過去を振り返るよりもこれからの一振りに向けるべきだ。
「あの刀、また見たいなぁ……」
 もし叶うのならば、刀を知った今、もう一度あの名刀を見てみたい。
 触れて、見て、昔よりももっと素晴らしいと感じたい。
 でもそれが叶わないのならば、わたし自身があの刀を――否、あの刀以上の刀を打つ!
「思い出したら早く打ちたくなってきた! おやっさん、コレありがとう! もし歪虚に困ったら声を掛けてよ。お礼にあと1、2回だったら来てあげる」
「たった1、2回かい!」
「あはは! これでもハンター業も忙しいんだよ! じゃ、またね!」
 そう言って片手を上げると、ソフィアは来た時と同じくらいあっという間に姿を消した。
 その姿を見送ったオヤジが部屋の隅に目を寄越す。
「……今年も見せに来てくれるんだろうな、嬢ちゃん」
 初めてここを訪れた時にソフィアが打った刀はいつの間にかこの小屋に置かれるようになった。そしてその刀を見ては思い出す。
 頬を紅潮させ、目をキラキラと輝かせて「名刀を打ちたいんだ!」と言った少女の事を……。

 * * *

「では、取り掛かりかな!」
 製造方法はリアルブルーでの日本刀制作とほぼ同じだが、ソフィアの場合は砂鉄の代わりに鉱物を砕いて使用する方法を用いる。
 これは純度の高い刀を打つ上でソフィアと移転者である師匠とで考え出した製法で、こうする事で鉱物に宿る精霊がそのまま刀に宿っていくのだと言う。
 バラバラに砕いた鉱物は、そのままでも十分純度は高い。それでもソフィアは妥協しない。
 純度の高い鉱物から僅かな不純物とそうでないものに分けてゆく。そうして自分が納得できるその位置まで鉱物と向き合ったら、次はそれを火に溶かす作業が待っている。
「ここからは時間との勝負……ふぅ……行くぞ!」
 一気に鉱物を小型の炉に流し込んで溶かしてゆく。
 そうして彼女が求める最高の舞台を自ら作り出した後は、本当の本番だ!
「――愛すべき自然の恵み。愛すべき道具達。わたしを受け入れてくれた一年の恵み。その恵みに満ちたわたしの心、わたしの魂は今ここに形となる。いざ、我が腕よ輝き給え!」
 振り上げた鎚がへし金と呼ばれる塊を打つ。
 たぶん、今の彼女であれば大業物くらいはなんとか鍛え上げられるだろう。
 そんなソフィアが1つ、2つ……確かな音を立てて鎚を振り下ろしてゆく。打っては火へと戻されるそれは、徐々に彼女の心を映して形を変えて行った。
 そして一夜が明け、また一夜が明けようかと言う頃、彼女の工房から鎚を振り下ろす音が止んだ。
(……出来た……渾身の、今年の一振り……っ!)
 倒れ込んだその手に握り締めるのは、鍛冶押しすらも終了させた一品。その姿は自画自賛であろうとも神々しさすらも感じる代物だ。
 ソフィアはその刀を見詰めると、僅かに笑みを零して天を仰いだ。
「……まだまだだな……でも……でもさぁ」
 次第に差し込んでくる朝日が眩しい。
 その眩しさに思わず目を閉じると、瞼の裏がツーンッとなって痛みが走った。でもそれは嫌な痛みじゃない。
 彼女は目元を拭うと、勢いよく立ち上がって空に向かって刀を掲げた。
 今年の一振りはここに! これぞ、今の自分が出来る最高傑作なり!!
 刀は出来上がった時にも感じた神々しさを抱いてそこに在る。そしてその刃には、見えなくとも精霊が宿っているのを感じる。
「ぅう〜〜……良い出来だああああああッ!!!!!」
 外まで響く大声を上げ、ソフィアは再びその場に倒れ込んだ。
 実に3日と数時間ぶりの睡眠である。
 彼女はこの後、刀に鞘やはばきや鍔などを作ることになるのだが、それはまた別の話。今は幸せの夢の中に……。

 おやすみ、ソフィア――。

ーーEND.

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka2383 / ソフィア =リリィホルム / 女 / 外見年齢14歳 / ドワーフ / 機導師 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、朝臣あむです。
このたびはご発注、有難うございました。
だいぶ自由に書かせて頂きましたが如何でしたでしょうか。
この作品がソフィアさんにとって、そして背後さんにとって思い出のひと品になる事を願っております。
この度は、ご発注ありがとうございました!
■イベントシチュエーションノベル■ -
朝臣あむ クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年12月15日

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