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『 我が名は黒の姫 』
シルヴィア・エインズワースja4157

 黒の姫、シルヴィア・エインズワース(ja4157)は、うっとりとしながら少女、いや黒の女王の言葉を聞いていた。
 少女の姿をした主の言葉は耳に心地よく、心に酷く馴染む。かつて赤の女王がそうであったようにシルヴィアの全ては目の前の女王に捧げる為にあるようだ。

「……私、シルヴィア・エインズワースは、その名を捨て貴女様から頂いた名、『黒の姫』を名乗り、振舞い、生きることを誓います」

「捨てなくてもいいわ。私以外がその名前を口にすることは許さない。それだけのことよ」

 嬉しそうに紡がれるシルヴィアの言葉を、黒の女王が遮る。その声は子供を保育士が諭すように優しい。

「……はい」

 自分の名を愛しい人だけが呼ぶ。
 その特別性にシルヴィアの肌は恋人に愛を囁かれた乙女の様に紅潮する。

「女王様以外の方と肌を触れ合わせることは決して致しません」

「あら。私はそこまで禁じた覚えはないのよ?これは誓いなのだからちゃんと言わなくてはダメ」

「……はい。女王様以外と唇を重ねる以上の行為は致しません」

 指摘され言い直す声はどこか不満げだ。
 その様子に女王が首を傾げる。

「私は、女王様以外と肌を触れ合わせたいとは思いません。だから……」

「まあ、忠義に厚いのね」

 ナイトの血を引いているとそうなるのかしら。と揶揄するように微笑う女王に、

「本当に愛している方以外と触れ合いたくないと思うのは当然でしょう?」

 真面目な顔で、揶揄わないでください。と言うシルヴィアの瞳は陶酔したようにうっとりしている。

「いいわ。その気持ちは覚えておいてあげる」

 伸ばされる指に姫はそっと瞳を閉じた。
 細く小さな少女の手が瞼を、頬を、唇を滑り、追いかけるようにキスが落とされる。

「んっ……」

 柔らかな唇の質感に瞳を開く。
 何の気なしに視界を回せば、窓にダークカラーメイクを施された妖艶な姫が写っていることに気が付く。
 白い肌にダークレッドのリップが薔薇の様に咲き、黒に近い紫のアイシャドウが妖艶な蝶の様だ。

「ずっと思っていたの。この方が似合うって」

 そう言いながら女王の指が撫でるように髪を梳く。
 その度に黄金の髪はその色を白金に近づけ、胸元まであった長さを短くしていく。
 俗にショートボブと呼ばれる長さまで短くなったその髪は少し内側にカールし、エレガントさの中に可愛らしさも垣間見える『姫』には相応しい髪だ。

「素敵……」

 モノトーンのドレスに黒を基調としたアクセサリー、ダークトーンのメイク、毛先に金を少し残したプラチナの髪。
 誰が見ても、彼女こそが黒の姫だ。というだろう。
 それ程に彼女のいでたちは黒の姫に相応しくなっていた。

「そう言えば、赤の女王は今頃、何をしているのかしら」

 自分の姿にうっとりとしているシルヴィアに女王が囁く。

『赤の……女王?』

 かつて愛し合った女性のことを思い出す。
 今でこそ過去の存在になってしまった彼女ではあるが、愛していたことは事実であるし、その時の自分の心は確かに彼女にあった。
 その認識もあるし、愛ではないが、彼女への感謝の気持ちは存在する。

「私は『黒の姫』でしょう?」

 頭の中で声がする。

『そうだ。私は、黒の女王にすべてを捧げた……黒の姫』

 声なき声に頷くように自分が何者であるかを思う。

「さようなら。愛しかった人」

 泡が弾ける時立てる小さな音の様に姫から呟きが漏れ、残っていた気持ちが消えていくのが分かった。

「さぁ。興味もございません」

 世の中に無数にいる貴婦人たちの一人に、名を聞けば思い出すかもしれないがそれだけの存在に中でなってしまったのだろうか、シルヴィアの瞳にかつての恋人への想いは微塵も感じられない。

「貴女は私の姫だものね。当然と言えば当然だわ」

 その言葉、その表情に女王は満足げに口角を上げた。
 触れ合う程近い唇からは黒の姫の誕生を祝福する言葉が紡がれ、何度も口付けが送られる。

「はい。私は貴女だけに愛と忠誠を誓い、貴女の為に存在するものですわ。我が主」
 跪きながらそれを受け取る姫には喜びと悦びの微笑みが浮かんでいた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 黒に染まる 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。 お久しぶりです。
 今回もご依頼頂き本当にありがとうございます。

  黒の女王へ気持ちが移った前回からの続きということで、心酔するところまでを描かせて頂きました。赤の女王への心覚えはおまけの方に書かせて頂いております。そちらもお楽しみ頂ければ幸いです。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2017年12月18日

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