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『『彼の誕生日のあとで』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 約束していた誕生日のお祝い――エプロンドレス姿での料理の提供に、ディラ・ビラジスはとても満足したようだった。
 食事後、名残惜しそうに、だけれどそう遅くならないうちに、彼は自分の部屋へと戻っていった。
 玄関で彼を見送った後、アレスディア・ヴォルフリートは後片付けを始めた。
「ささやかなものだったが、喜んでもらえたようでよかった」
 ディラの嬉しそうな顔、美味しそうに料理を食べる姿を思い浮かべ、アレスディアはほっと安堵の息をついた。
 食卓を片付け、洗い物をして、それから畳んで椅子にかけてあった、エプロンドレスを手にする。
 途端。ドキッとアレスディアの心臓が音を立てた。
 この胸の高鳴りは、そう、これを着た姿を、ディラに間近で見られた時と同じもの。
 ピンク色の、フリルがついた可憐なエプロンを見詰めていると、鼓動はより強くなり、顔は熱くなっていく。
「……女性らしい服装とは縁がない。助けを求める者がいればいつ何時でも駆けつけられるように、女性らしさにこだわったことはない。慣れぬ服装だからだ。あの胸の高鳴りはそのせいだ」
 鼓動を鎮めようと、アレスディアは眉間に皺を寄せる。
「そもそもディラ殿も人が悪い。頼める女性が私しかいなかったにしても、似合わぬとわかっているものを望むとは」
 軽くふて腐れながら、アレスディアはエプロンドレスを持っていく。もう着ることもないだろう……いや、ディラが再び求めてきたら……しかし、お祝い事じゃないのなら、応じる必要もないだろう。
 そんなことを考え、1人でうんうん頷いて納得させながら、彼女はエプロンドレスを洗濯籠の中に入れた。
 そして部屋に戻り、彼が座っていたソファーに腰かけた。
 彼はもうこの場にいないのだけれど、彼の声や、自分に向けられた顔が、アレスティアの脳裏に鮮明に残っていた。
「しかし……ディラ殿はどうして私と共にあるのだろう」
 自らの意志でいたくていると、言っていた……言ってくれた。
 それは何故なのだろう、と。アレスディアは深く考える。
 彼の顔が、声が、アレスディアの脳裏に残っている。
 自分にだけ、見せる顔。自分にだけ、求めてきて。自分と……だけ……側にいることを、望んでいる、彼。
 何故?
「私は……」
 アレスティアの口から、言葉が漏れていく。
「『そういう幸せ』を護る矛として盾として生きる」
 窓に目を向ける。勿論、彼はもう近くにいない。
 彼は『そういう幸せ』を望んでいるのに。
 遠くに、自室に戻っただろう彼を思い浮かべて、彼女は呟く。
「その、私とでも、いたくていると、言ってくれるのだろうか」
 一瞬、過ったそんな考えに、直ぐにアレスティアは首を左右に振る。

 ……否。そんなこと、誰かに望んではならぬことだ。

*****

 ディラは真っ直ぐ自分の部屋に帰らなかった。
 酒を飲んでそのまま彼女と朝まで――などという展開も脳裏を掠めていたのだが、そんなこと彼女が望むわけもなく。
「解ってるさ、だからこれで十分」
 恥ずかしげにエプロンドレスを纏う彼女は、本当に可愛かった。
「可愛いとか、抱きしめたいとか言ったら、どんな反応するんだろうな」
 考えるまでもないかと、ディラは一人苦笑する。
 可愛いと言ったら、恥ずかしげに睨んでくるのだろう。
 抱きしめたいといったら……困らせるだけ、だろう。
 心も腹も十分満たされた。
「誕生日っていいもんだな」
 自分は、彼女の誕生日に何を贈れるだろうか。
 食事、は……奢らなくても、食べたいものは自分の金で食べれるだろうし。作ってあげる能力もない。
 それよりも、彼女の心の満たし方が、わかるようで、わからない。
「やっぱ、あれだろうな……」
 苦笑しながら、ディラは歩く。
 彼女の誕生日はまだ先だが、目星くらいはつけておこう、と。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸です。
今回はアレスディアさん視点があまり長くならなかったので、ディラ視点の話を通常後半とおまけで書かせていただきました。
アレスディアさんの誕生日(もしくは記念日でも)は少々アクティブなものとなるかも……?
今後の2人の物語も楽しみにしております。
ご依頼ありがとうございました。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年12月19日

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