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『光を求めて 』
煤原 燃衣aa2271)&アイリスaa0124hero001)&一ノ瀬 春翔aa3715)&大門寺 杏奈aa4314)&エミル・ハイドレンジアaa0425)&楪 アルトaa4349)&無明 威月aa3532)&藤咲 仁菜aa3237)&世良 杏奈aa3447)&阪須賀 槇aa4862







プロローグ
 ききなれた心電図の音が響く。
 暗く星も夜空に輝かない夜に、『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』 は一人少年の容態を見守っていた。
 その少年が負った傷、それらすべてが燃衣の……いや、仲間を守ったがために負った傷だ。
 燃衣の表情が陰る。
 もしかしたら目覚めない可能性もあるのだ。その言葉を聞けない可能性もあるのだ。
 燃衣の中で様々な思いが交差する。
 燃え逆る少年は振り返って微笑んだ。その背後に見えるのはかつての親友。
 湧き上がる、思い。しかし、最後に思い出すのはあの言葉。
『ずっとお前を殺したかった』
 その言葉を思い出して燃衣は拳を叩いた。霊力纏わぬ拳はたやすく壁に負け、ずるりと血の跡を伸ばす。
「なぜ、何故ですか。清君……」
 燃衣は苦悩の渦に囚われた。

   *    *
 
 深夜同時刻。壁丼セットをひたすらに胃袋へと落していく少女が佇んでいる。
 『エミル・ハイドレンジア(aa0425@WTZERO)』 はもくもくと、あるいは、もぐもぐと。自分の身長ほどに積み重ねられた肉の山を平らげていく。
 箸休めにうどんの汁を啜るエミル。
 その行いは苦行であるかに見えて少女はただただ無表情である。無心である。
 あの事件以来様々な声を聴いた。
 少年の重傷、仲間たちの泣き声、悲鳴。力不足を嘆く声。特殊能力、自分のルーツ。
 そしてエミルはいつもの場所に立ち返る。自分は何者で、これから何をなすべきなのか。
 無心で食べていたらあっさり無くなったどんぶりに、まだ物足りなさを感じるエミルはうどんのおかわりを所望する。
 うどんはよい、消化にも良い、栄養価も高い。それをしょうがとニンニクで味をつける。
 次の瞬間それをちゅるちゅると食べ尽くすとエミルは思いつめた顔で告げる。
「……ん、そろそろ潮時……」

 その日。エミルは暁隊舎から姿を消すことになる。




第一章 光明

 『世良 杏奈 (aa3447@WTZERO)』 はあしげく暁隊舎へと通っていた。
 その医務室には生命維持装置に繋がれた少年が横たわっている、彼のケアを買って出たのが世良である。
 今日も朝のお見舞いの時間に姿を現して、今も彼の意識が戻っていない事を確認する。
 そんな彼女はふと窓際に視線を移すと何事かを口ずさみ始めた。
 だがその奇行は同室している少女たちに気にされず、とがめられることも無い。
 胸のうちに不安、罪悪感を抱える少女たちには一切届かないのだ。
「まったく、ふがいねぇな」
 まだ少年の心臓が生きることを諦めていないことを確かめると『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』 はそうため息をついた。
 少年が重傷を負って意識不明となってしまったのは、それは自分が未熟だからとアルトは強く思ている、自分を追い込んでいるのだ。
「そこまで悩む必要はない、彼が目覚めればそう言うはずさ」
 『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』 が首をひねった。彼女は妖精である。人間の心の機微は理解できるが、それに同調してやるのには少し無理がある。
 だがそんな言葉で止まってくれないのが若さというものだ。だからアイリスは一つため息をついて。こう告げる。
「やれやれ、仕方ないね、確定情報ではないから、黙っていたのだが、救う手だてが一つだけあると言ったら、君たちはどうする?」
 その瞬間二人は目を見開いた。アイリスに詰め寄って。その小柄な体を押しつぶさんとするように覆いかぶさる。
「「その方法を」」
 教えろ、教えてください。そう語尾だけ変えて二人は告げた。
「ははは、すごい剣幕だね……ん? だがちょうどいい、今その方法が現実になるか、夢物語で終わるか報告が来たよ」
 そうアイリスの言葉を証明するように入出してきたのは、一人の。女……男性?
 性別不詳の小柄な人物が、病室の様子を眺めて首をかしげた。
「皆さんどうされました?」
 そう告げると。アイリスがひらひらと手を振る。
 さらにその背後から顔を出したのは『無明 威月(aa3532@WTZERO)』である。
 彼女も病室の惨状を見るとあわあわと、冷静さをかいて、一人で勝手に手元の資料をぶちまけていた。
「ああ、ヴァレリアさん、調査のほどはどうだったかな?」
 アイリスは頭にかかった紙を振り払いながら問いかける。
「僕の事は気軽にVVとおよびください、調査は完了しているであります」
 そう敬礼っぽいポーズをとるヴァレリアと呼ばれた人物は自分の事を「ヴァレリア・ヴァーミリオンであります」と名乗った。
『ヴァレリア・ヴァーミリオン(NPC)』は落陽の調査部隊を束ねるリンカーらしい。
 彼は小柄な体を分厚いジャケットやズボンで覆っていて、ややずんぐりとした見た目であった。
「寒いの?」
 杏奈が問いかけるとVVは首を振る。
「お気遣いありがとうであります」
 被った帽子と頭皮の隙間に覗く髪色が金であることから日本人でないことはわかるのだが、室内であるにも関わらずゴーグルをしていて、なおかつ襟を立ているので、人相の半分も分からない。
 そんな新登場の奇妙な人物に一行があっけにとられている中、威月は資料を束ねて全員に手渡した。
『こちら、資料です』
 そう手近なボードに書く威月。
『すべてヴァレリアさんが集めてくれました』
 VVは実力も折り紙つきで、その要領の良さは落陽が襲われることを見越して、自分だけ逃げられるように準備を整えていたことからもわかるだろう。
「アイリス殿から頼まれていた調査結果がこちら。結論から言うといけるのでは……と判断舌であります」
「ああ、それはよいことだ。これで万能薬の生成が可能になるね」
「万能薬?」
「遙華さんのとこの実験、マクロスフィアで思い出した事柄があってね、そのうちの一つが、万能薬のレシピさ」
 そうアイリスは翼をはためかせながら告げる、病室に甘い香りが充満した。
「万能薬は妖精の羽から抽出する蜜が原料なんだが、この世界では私の実力を限りなく低スケールに落し込められている、何らかの補助が無ければ、万能薬なんて夢のまた夢だ」
 ただ、と。アイリスは言葉を切る
「万能薬として成立させる為にかつての力に近づける必要ある」
 告げるとアイリスは素早く資料をめくると目的地域の写真を見つけ出した。
「そのための精霊ゆかりの土地が必要となったわけだ」
 告げてよくよく見てみるとその場所はアイリスの記憶に引っかかる場所だった。
「ああ! ここか!」
 渓谷の狭間、緑と暖かな日差しが奇跡的に両立する場所。神秘の詰まった霊力溜まり。
「ここは私が召喚されて最初に赴いた場所だね」
 告げるとアイリスは資料を読み込んでいく。
「ここは私が向こうの世界から持ち込んだ種を植えた場所なんだよ」
 そうアイリスの翼が震えた。その翼の付け根にぶら下がる小さな粒が種だろうか。
「私の契約者が住んでいた場所のすぐ近くでもあるね」
「で? 具体的にどうやって助けるんだよ、教えろ」
 じらされるのが嫌いなアルトである。
「それは黄金の属性で黄金へと至らせる昇華の祝福さ」
 黄金とは錬金術に置いて完全を意味する、妖精の世界でもそうなのだろうか。
「よくぞここまで育ってくれたね。お膳立てが整っているのならば、行けるかもしれない」
 そうアイリスは胸を張って全員に告げた。
「黄金の属性で形成された妖精の蜜はあらゆる怪我、病、呪いすら塗りつぶし『完全な体調』へと昇華する万能薬となるだろう」
 ただ、そこにたどり着くまでの道は困難が予想されるとアイリスは言う。
 だがその言葉に大門寺は強く頷いた。
「行きましょう、どんな困難が待っていたとしても」
「けれど全員で行くわけにはいかないね、私一人で行ってこようとも思ったが」
 そうアイリスはVVを眺める。
「僕があまり戦い得意じゃないんで、護衛が欲しいでありますね」
 VVはそう告げると、威月も大門寺も頷いた。
「私達もお供します」
 大門寺は思う、親友も旅立った、であれば自分だけがここで縮こまっているわけにはいかない。
「あたしは、ここでこいつを守るよ、んで、気になることにけりもつける」
 アルトはそう告げるとベットに横たわる少年、その傍らにぬいぐるみを置いた。
「それと同時に大切な仲間だ。それは変わらねぇ……」
 それは少年がくれたぬいぐるみ。
「だいぶ前だからきっと覚えちゃいねーかもしれねーが……それでも」
 願いを込めるように少年にぬいぐるみを返し、今後の方針が決まった一行は部屋を後にする。
 足音が遠ざかり、遠くで扉の開く音、しまる音が聞えたその時だ。
 クローゼットの扉が開いた。そこから『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』 がころころと転がり出ていたのだ。
「ふぅ、見られたかと思った」
 そう仁菜は再び蛍丸の額を撫でると、柔らかな光が舞う。霊力だろうか。
 純粋なそれとも少し違う気もする。
「これで、しばらくは大丈夫、あとはアイリスさんを信じるだけ」
 その時仁菜がまるで熱いものに触ったかのように手を引っ込めた。
 怒られたのだ。英雄に、それ以上はだめだと。
「す、少しだけだよ。……まだちゃんと人でいられるから」
 使えば使うほどに人ではなくなるその力、救済の法。だがそれは冥王の契約を一方的に千切り捨てる法外なもの。
 その代償は重く、彼女にのしかかることだろう。
「さぁ、一ノ瀬さんのところに行こう」
 そう足取り軽やかに少女は病室を後にする。
 血色のよくなった少年の寝息が部屋にしんと染み渡った。


第二章 考察


「おら! この程度じゃ遊びにもららねぇぞ」

 VBSルームに燃衣が入ってみると、まず響いたのが怒声。
 まるで自分の体すらも破壊したいという勢いで武装を振るうアルトである。
 焦りや怒り、悔しさが入り混じって無情に「敵」を斃し続けるように。
「もっとレベル上げろ!」
 休む間もなく敵の追加を要求するアルト。だがすでに暁隊舎のVBSは最高難易度、これ以上上げるとなると……。
「これ以上強い仮想敵なんて、ガデンツァくらいしかないけど」
 『西大寺 遙華(NPC)』が淡々とアルトに告げた。
「あのクソババアも呼んでこい!」
「一体につき500Gになるわ」
「おいおいおい」
 一気に脱力したアルト、武装を解いて遙華の目の前に立つ。
「しけたこと言ってんなよ。あたしとあんたの仲だろう?」
「まぁ、それもそうなのだけど、私のお願いを聞いてくれたら、データを提供してもいいわ」
 つげると、視界外から投げつけられたペットボトルをアルトは、反射神経だけでキャッチ。
 同時に投げられたタオルは頭で受けた。
「「休憩をとりなさい」」
 燃衣と遙華の声が被った。
 仕方ないのでアルトはその言葉に頷く。
「遙華さん、ようこそ、何かわかりましたか?」
 燃衣が告げる。その言葉に遙華は冷静に言葉を返した。
「ええ、そこそこに、あなた達が聞いて嬉しいくらいには情報が集まったと思ってるわ」
 その時である、気が抜けたのだろうか、足から力が抜けてアルトがその場に倒れ込む。
 それを抱き留めたのは遙華。
「彼にはあって行かれます?」
「いえ、もう会ってきたわ……」
 遙華が負ぶってアルトを暁食堂まで運ぶ。
「それにしても、いろいろ調べたのだけど。あなたどういうつもり? なかなか相手も規格外よ」
「それは百も承知です」
「私が言ってるのはそれにあなた達だけで挑むことがおかしいって言ってるの。これはもうH.O.P.E.に直接依頼しても問題ないレベルよ。お金も出るし」
 燃衣が依頼していたのは敵組織に関する情報の取集である。
「あなた、どうしても清を追うの? 正直H.O.P.E.全体で対処した方がいいレベルよ、救援は必要ないの?」
「どうしても、まずは聞きたいことがあるんです」
 燃衣は言った。もし他者の手にゆだねてしまえば今度こそ真実は闇の中になってしまうと。
「彼について話したこと、ありましたっけ?」
「ねぇよ、あんたはいっつも何も話してくれねぇ」
 アルトは意識を取り戻すと、長椅子に横たわったままにペットボトルの中味を空にする。
 しばらくは一気に動きすぎた影響で頭が痛いらしく放心状態であった。
「離すと長くなりますが。聞きたいというなら」
 燃衣は語る『黒日向 清』という人物について。
 彼は従兄弟の様な自信家だったという。
 全知全能で、何でも出来てカリスマが有り全てが自分より上……けれど『化け物』と敬遠された自分を守ってもくれた。
「すごく優しい人だったんです。ええ、すごく」
 そう自分の言葉を噛みしめる燃衣の表情は柔らかかった。
「でも何でも欲しがる人物で怖い一面もありました」
 一度だけ、彼が今までにない感情を燃衣にぶつけたことがある。
 静かで、けれど奥に何かとんでもない熱量が秘められていそうな感覚。
『お前は、適正があって良いよな……』
 そんな彼の言葉を燃衣は今でも覚えている。
「彼には『力』は無かった」
 彼は『力』を欲していた
 彼の口癖は『この世の真理は《力》……力が全て』だった。
 力があれば人は何処までも往けると自分に言い聞かせるように言っていた。
 ある意味『純粋』で『人を傷付けたい』人物では無かった。
「それなのに」
 燃衣の瞳に怒りが灯る。
 何故、彼は今、嘲笑う者を率いているのか……分からない。
「そう言えば『偽極姫』だけど、何もつかめなかったわ」
 押し黙ってしまった燃衣。燃衣は今にも机に頭を叩きつけたい衝動と戦っていた。
 そうと知ってか知らずか遙華はアルトにそう切り出した。
「そうか、やっぱな、調べてくれてありがとよ」
「いえ、これはそんなに簡単な言葉で済ませていい話ではないわ」
 遙華はアルトの手を掴む。
「これは、グロリア社の情報収集能力をもってしても何もつかめなかったという事よ。これは大きな情報、ねぇ、アルト。あなたも危険なことに首を突っ込んでるんじゃないの」
 遙華は意を決して問い掛ける。
「偽極姫って何なの?」
 その言葉にアルトは溜息をついて。言葉を投げた、
「あたしもそれほど知らねぇよ、けどな。いくらか知ってることもある」
 アルトが知っているのもほんの少しだ。しっている限りの『偽極姫』の話を今ここでする。
「あれには意思がねぇ、共鳴成功率を上げるために『契約者』の思考データを読み取って同調させるようにされてんだ」
「それは作られたってこと?」
 遙華の時にアルトは頷く。
「ああ。作られただけの人形……」
 その言葉にアルトは複雑な表情を見せた。
「だから、こんなものがあってはいけない。元の世界に送り返すのがいいのかもしれないが、あたしは……あたしが全部ぶっ壊す」
 その言葉にため息をついて遙華は告げる。
「自分の体も? 少しはいたわった方がいいわよ、彼もいい顔しないと思うわ」
 そう言って用事が済んだのか遙華は踵を返した。

   *   *

 同時刻、すでにエミルは北極にいた。
 その寒さに共鳴無しで立ち向かうエミル。
 理由としては霊力を探知されないために。
「ん……、へいき」
 英雄の、体は大丈夫なのか、そんな問いかけに対して。そう答えるエミル。
 確かに、前回ズタズタに切り裂かれたその体はいつの間にか元に戻っていた。
 あまりに異常な回復能力である。
「……ん。晴れてきた」
 そうエミルはか細く息をはくと、その息よりも白い眼前の吹雪が弱まっていくのが見える。
 その視界の紗希は坂となっていてふもとには何やら研究所のようなものが見える。
 そこにエミルはこれから乗り込むわけだった。
 そう、お出かけの実態は、自身の怨敵である存在の情報収集である。
 これから、とある組織の秘匿研究施設への強行侵入を行い場合によっては破壊する。無事に帰って来れないかもしれないが、それもそれで、まぁ、あり。そう思ってしまうエミルである。
「……ん、行く!」
 エミルは雪山を矢のように駆けた。奇襲がうまく行くかでこれからこの仕事がうまく行くかどうか、命運を分けることとなるだろう。

第三章 激突

「ぬあー、わっかんねぇお」
 溶けた鉛の匂いが全身に沁みつくほどに、『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』 はその装置をいじり倒している。
AGWに関する教材キット等と、自前のタワーPCを中心に、様々な機械パーツが転がっていて、それらすべてが彼の持ちこんだパーツ類である。
 彼は彼なりに礼し演算技術についての研究を進めていたが、どうやら壁にぶち当たってしまったらしい。
 気晴らしになるかと思い、戦闘訓練をしているリンカーたちの傍らで作業をしていたが、それもあまり効果はなく、ただただ、頭を痛ませるばかりだった。
 横になり、春翔の個人鍛錬を眺める槇。
 ふと槇は普段のふざけた口調とは別の、真面目な声音で弟にこう問いかける。
「……なぁ弟者? 英雄のおまぃはさておき、漏れはどうやってこの世界に来たんだお?」
 だがそれに弟は答えない。知っているからか、しらないからか、それすら判断できない答えを弟は返してきた。
 その横たわった地面越しに槇の体に衝撃が伝わる。
 『一ノ瀬 春翔 (aa3715@WTZERO)』 は全身の色をまだらに変えていた。
 時に白が八割、時に赤が七割。安定しない力の波長はまるで喧嘩をするようにお互いを食い合うように入り乱れる。
 その力が体の中でケンカするたびに春翔は内臓を引きずられるような痛みを感じた。
「くそ……なんだってこんな」
 全てをなぎ倒す白の力。
 全てを撃ち砕く赤の力。
 二つの力を自在に使えるようになれば。それこそ白虎の時のように使うことができたなら。
 そう、春翔はあの時、白虎の瞳に映った自分の姿を思い出した。
「あれも、完成じゃねぇだろうな」
 安定はしていた、だが、完成ではない。
 二人の英雄の力を自分の体の中で解け合わせる。
 それが本当にできるのかもまだ未知数。
 春翔はそう、一人試案から立ちかえり、斧を振り回す。
 もう一度試してみよう。
 そう思った矢先、死角から何かが跳ねるように春翔へ突っ込んできた。
「お手伝いするよ!!」
 告げた仁菜は白きマントを纏い、星の輝き宿した剣を持つ。
 聖騎士と言った風貌、普段の彼女とは一味違うのだろう。
 春翔はにやりと微笑んで斧で春翔を弾いた。
「白虎ぐれぇはやってくれよ」
 結び合う二人。その戦いの中でも春翔は赤と白の力を制御しようと躍起になる。
 それを観察していたのは槇である。
 その槇が眉をひそめた。
「この前の模擬戦ではお世話になりました」
 渾身の回転切り。それを春翔は複製した斧ではじく、防ぐ。
「あの時の恨みか」
「うん、ばれた?」
 吹き飛ばされる仁菜。次いで放たれた斧の雨を持ち前のガードスキルで全て捌き斬る。
 あの時よりは成長したのだと。春翔に見せつける。
「おお、一ノ瀬さん、最大火力を頼むお」
 槇が告げる。
「ん? どういうことだ?」
「いいから、反応にwktkだお」
 そうモニターを覗き見る槇をいぶかしみながら、春翔はその力を最大にまで展開する。
 ドレッドノートとカオティックブレイドのスキルを併合使用。それが春翔の目指す一つの到達点だ。
 無数の刃での連撃。無数の刃での範囲攻撃。
 その火力は他のリンカーの追随を許さないほどになるだろう。
 だが。
「ぐ……」
 春翔は顔をしかめる、直後複製された斧たちは、矢と言うよりは飴のように地面に落ちる。
「すきあり!」
 そのまま仁菜は春翔の懐に潜り込んで、峰うちで春翔の腹部を強打。
 強い吐気に教われた春翔が膝をついて、その戦闘はいったんストップとなった。
「いや、驚いた」
 春翔が呻きながら仁菜に告げる。
「私もやればできる子だよ」
「それは知ってる。けど、迷いがなくなった分。頼もしくなった」
 そう春翔は仁菜の頭を撫でてそして、意識を失った。
「わああああ! 一ノ瀬さん!」 
 あわてて春翔を治療する仁菜。
 その背後で槇が告げる。
「うーん、霊力の乱れがある時はいつも一ノ瀬さんが先に反応してる気がするお」
「どういうこと?」
 仁菜が首をかしげる。
「これは、一ノ瀬さんが二人の力を拒絶しているようにも見えるお。けど、一ノ瀬さんの型に無理やりはめ込もうとして、逆にバラバラになってるようにも見えるお」
「つまり?」
「一ノ瀬さんが、二人を受け入れられてない……もしくは二人が一ノ瀬さんに対して隠していることがある? うーん、はっきり言えないけどそんな感じだと思うお」
 うんうんと頷いて、槇は再び自分の城に戻って作業を続ける。
 たぶん、次の戦いは近い、それまでに自分も成果を上げる必要がある。
 そう槇は指を急がせる。


   *    *

 時間はやや進み、日本国外、某国……都心から離れた一帯。
 そこで地震と間違えるくらいに大きな振動が地面を揺らした。見上げるほどの大きな龍。
 大岩のような龍を倒して、威月は刃を幻想蝶に収めた、一行は先に進む。
 その渓谷は静謐で、人の手を嫌うように存在していた。
 降りるひかりは暖かで心なしかアイリスの足取りが軽くなっていく。
「ああ、見つけた。ここだったのか」
 告げるとアイリスは羽ばたくように羽をはためかせて加速、金色の葉をつける巨大な木の前に立った。
その周りには結晶花の花畑が先みだれ、霊力が光となって空に昇っている。
 まさに幻想郷と呼ぶにふさわしい光景がそこに逢った。
「ここでなら三日三晩の陽と月の光を溜め込むことで、かつての力を一瞬取り戻すことができるだろう。それなら」
「蜂蜜が作れる?」
 大門寺が告げるとアイリスが頷いた。
 威月と大門寺の表情が瞬く間に明るくなる。
「自らと同種の力なので力を高めるのに最適の環境だ、いや」
 アイリスは大木を撫でて花の香りをいっぱいに嗅いだ。
「よく育ってくれたね」
 そのままアイリスは光をため込む作業に入る。背中の翼を大きく広げて、そのばで木のように微動だにしなくなる。
 その光景を眺めながら威月は、大門寺にスマートフォンの画面を解して問いかけた。
『ずっと考えていました。敵のこと』
 その言葉に大門寺は頷いて言葉を待つ。
『何故、人を傷付け虐げる事を至上とするのか』
「それは、わかりません」
 大門寺には傷つけることの喜びが理解できなかった。大門寺にとって傷つけるとは間違っていることで、間違った結果できてしまう爪痕だからだ。
『隊長は『黒日向 清』についてどう思われているのでしょう。敵に対しては強い恐怖、憤りを感じます』
「それもきっと、戻ったら話してくれますよ」
 その時である。大地をまた地響きが揺らした。
 反射的に武装を召喚する大門寺と威月。
 その目の前には先ほどの龍が立っている。
 致命傷を与えたはずだが、その傷は塞がりつつあった。
「殺し切るには。火力が……」
 大門寺は歯噛みする、ここでも自分の力が足りないばかりに仲間を傷つけてしまうのか。
 そう思った。
 だが、大門寺はすぐにそれが間違いであったことを悟る。
「……ん、みつけた。さがした」
 流星のように空を切り裂いて、打ち出された砲弾のごとく龍に突き刺さる弾丸があった。
 それは人の形をしており、刃を携えていた。
「……ん、また難しいこと考えてる?」
 その人物は大門寺に語りかける。
「火力が、ひつよう?」
 龍の悲鳴が渓谷に反響する。
 その額の上でエミルがその刃に足をかけ。こちらを見下ろしていた。
「……ん、お待たせ」
 その姿に大門寺は胸を撃たれる。
「私が、みんなを守る。だから」
「……承知した。私がこいつを倒す」
 三人はアイリスに指一本触れさせない、そんな意志のもと結託し、強大すぎる敵に挑んだ。


エピローグ

 全てのパズルのピースがそろったのは、彼が意識を失って二週間後の事だった。
 その日、世良は月を見あげながら少年の看病をしていた。
 だが、実はその視線は月に注がれているわけではなく、月の煌きを一心に受ける父に注がれていて。それは彼が幽霊であることを示している。
 世良の父は、実は数年前に他界している。ただ、それでもコミュニケーションをとれるのは、彼女の血によるものだ。
「どう? 三途の川に蛍丸君いた?」
 その言葉にその人物は首を振る「いやいなかった。というより、まだ死んでないんだからいる訳が無いだろ」そう世良の耳にだけ声が届いた。
「うーん連れ戻し作戦は失敗かー」
 いったい父に何をさせようというのか、相変らず豪胆な女性だったが。
 これで安心もできるというもの。三日三晩見張らせた三途の川に彼がいないなら。魂はまだここにある。
「誰と話してんだ?」
 そう唐突に病室の扉を開いたのは春翔である。彼は夜も共鳴せずに訓練していたため足をぱっくり切ってしまったのだ。
 幸い消毒して包帯をまけば済むレベルだったので、こうして医務室に来たわけだが。
 きてみれば、世良が一人で話していたので気になったのだ。
 だが等の世良は春翔の問いには答えず外を眺めると一言ぽつりとつぶやいた。
「あら? 帰ってきたのね」
 それから数十分後、食堂が大変騒がしいことになった。 
 先ずアイリスたちを迎えるべく宴会を開こうと燃衣が言い出して、暁名物壁丼をふるまうべく調理が始まった。
 それに連鎖して威月が、もてなされるだけでは申し訳ないと料理を始める。
 この料理がまずいけなかった。
 1/2で地獄行きのミラクルなお味である。
 これを食べた阪須賀兄弟は早々にダウン。
 戦々恐々としながら、負傷が癒えていない燃衣も壁丼を振る舞われた。
 それは、野菜炒めの周りをレア肉で囲った塔の如き巨大な丼。暁では重体者はこれと、すご〜い味の特性ドリンクを胃に詰めて傷を治すルールである。
 エミルはこれを完食していたが、他の人間ははたしてどうだろう。
「……ボクの多くない?」
 とりあえず燃衣はなれていることもあり、最初にやり始めた英雄を恨みながらも、なんとか食べる。
「たべものであそぶなって、おじいちゃんに習わなかったのかよ」
 アルトもうんざりしながらそのどんぶりに端をつけることになった。
「阪須賀さん」
 そう仁菜に揺すられて起きる槇。
「ん? もうだめだお、三途のかわが……って、三途の川の次は、肉の山が見えるお」
 そんな槇をみて仁菜は微笑んだ。
「残したらだめだよ」
 槇はそれを涙目になりながら食べる。
 そんな宴会会場を眺めながら、春翔は酒を片手に杏奈へと問いかける。
「結局なんだったんだ? あれ?」
 その言葉に杏奈は一つ頷くと、ワインの入ったグラスを春翔のグラスに押し当てて話し始める。
「煤原さんには話したんだけどね」
 自分は死者が見えるのだと切り出した上で、あれはお父さんだから安心するようにと告げた。
「お盆やお彼岸など関係なくしょっちゅう帰って来て。家でずっとゴロゴロしてるの。全然死んだ気がしないでしょ?」
 だから寂しくない、と杏奈はつぶやいた。
 そんな中、ある程度場が温まった今を見計らって威月が手を叩いて注目を集めた。
「……っ。あ」
 そう、しゃべることができないことをもどかしそうにしていた威月を見かねて仁菜が代わりに発言する。
「敵の尻尾を掴んだ? って。それほんとう?」
 再戦の日はちかい、そう不敵に微笑む燃衣は肉を噛みちぎりながらも今後の作戦を考えるのだった。

   *    *

 ただ、それは相手も予想している、
 暁の行動など予想の範疇でしかない。
 暗いアスファルトで眠っていたその人物は思う。
 半身はまだかと。
 ズタボロのままに転がる清。
 朱雀と呼ばれるその存在はたいそうな出来栄えだった。
 だが。
「離反するつもりか?」
 その言葉に首を振ると朱雀と呼ばれたそれは天上をぶち抜いて空に舞い上がる。
「まぁいい、好きにやらせるさ」
 告げると清は暗がりにならんだ瞳の群に告げる。
「いけ、お前たちを結ぶ鎖はもうない」
 告げると闇の獣たちが世界に解き放たれる。
 戦いは本人たちの思惑とは別に激化してしまうことだろう。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』
『無明 威月(aa3532@WTZERO)』
『大門寺 杏奈(aa4314@WTZERO )』
『エミル・ハイドレンジア(aa0425@WTZERO)』
『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』
『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』
『一ノ瀬 春翔 (aa3715@WTZERO)』
『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』
『世良 杏奈 (aa3447@WTZERO)』
『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』
『西大寺 遙華(NPC)』
『ヴァレリア・ヴァーミリオン(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 いつもお世話になっております、鳴海です。
 シリーズノベルご注文ありがとうございました。
 次の展開を想像しながら、実は楽しみにしておりました。
 今回は話を整理しながらスタンスを確認する回なのかなと思い演出控えめに書かせていただきましたが、文字数が許せば。春翔さんのとこ、とかアルトさんのとことか、龍との戦闘シーンとか、書きたかった……無念です。
 同時に皆さんのキャラクターの堀深めの回なのかな、と思っており、うまくできていれば幸いです。
 ではお次はリンクブレイブ本編でお会いしましょう。
 ありがとうございました。鳴海でした。
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リンクブレイブ
2017年12月19日

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