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『ガール・ミーツ・ガールズ 』
ファルス・ティレイラ3733


 ファルス・ティレイラはその日、とある魔法使いの館の倉庫で気合いを入れて立っていた。
 話は数時間前に遡る。飛翔能力と空間転移能力を活かし、配達屋さん兼なんでも屋さんを営んでいるティレイラの元に、一人の女性が訪ねてきた。彼女は魔法使いだと名乗り、ほとほと困り果てた様子でティレイラにこのような依頼をした。
「私の館にある倉庫に、コレクションした魔法品を貯蔵しているのだけれど、最近それを盗み荒らす泥棒さんが来ているの。どうやら魔族のようなのだけど……もしよろしければ、泥棒さんから魔法品を守って頂けないかしら」
 断る理由はまるでなく、むしろ仕事を欲していたこともあり、ティレイラは二つ返事で魔法使いの依頼を受けた。
「おまかせ下さい! 魔法品を見事に守って、ついでにその泥棒も捕まえてご覧にいれましょう!」
 そして現在、有言実行を果たそうと、倉庫前に陣取って息巻いているという訳だ。
「……む、どうやら来たようね」
 かすかに聞こえる物音に即座に気付いたティレイラは、さっそくその物音の方へ……には行かず、まずは倉庫に赴いて、手身近にあった魔法道具を一つ持ち出し外に出た。あらかじめ魔法使いには許可を取りつけてある。これで泥棒を一網打尽にしようという考えだ。
 だが、敵もさるもの引っかくもの、「誰かがいる」と気配を察知したらしく、「誰かいるぞ」「ヤバい、逃げろ」と声と足音が聞こえてきた。
「逃がさないわ、待ちなさい!」
 バタバタという足音を聞きつけて、ティレイラは紫の翼を広げた。ティレイラは普段は人型をしているが、実は異世界出身の竜族の少女である。しなやかな尻尾も出現させた竜少女の姿となり、逃走しようとする泥棒……少女姿の魔族を追い、空を駆るスピードそのままにすかさず体当たりをお見舞いする。
「いたっ!」
「これでもくらえ、えいっ!」
 少女の背に乗ったまま、ティレイラは持ち出した魔法道具を魔族の皮膚へと密着させた。一見すると宝石を嵌めたブローチのような魔法道具は、魔族少女の肌に吸い付き、なんと見るまにその身体を魔法の宝石に変えていく。
「な、なによこれっ!」
「え? うーんと……なんだろう?」
 魔族少女の上げた悲鳴に、ティレイラは少女に乗っかったままこてんと首を横に傾げた。とりあえず手身近な魔法道具を手当たり次第持ってきたが、どうやら着けた相手を魔力を帯びた魔法の宝石に変化させる……そういう類のアイテムらしい。
「いや! ちょっと、外しなさいよ!」
 少女は全力で暴れるが、もちろん言う事を聞く義務も、泥棒を逃がしてあげなければいけない義理もまるでない。ティレイラは少女の要求を無視しつつ、徐々に広がっていく宝石部分に「キレイ……」と感嘆の声を上げた。どうやら宝石の色合いは魔力に呼応しているらしく、深い紅はゆらゆらと怪しい輝きを秘めていて、女の子であれば誰しもが心奪われる綺麗さだった。
 とりあえず今日の仕事はこれで終わり。あとは魔族少女が完全に宝石になったなら、依頼主に報告して彼女の身柄を引き渡して……などと考えつつ、ティレイラは魔族少女の背に乗ったまま一息ついた。ティレイラは完全に失念していた。
 先程聞こえてきた声は、少女「二人」分であったことを。
「相棒を返してもらうよ!」
「え?」
 頭上から降った声に気付いた時にはもう遅く。もう一人いた少女……泥棒魔族は、ティレイラの背後に飛び乗ると、持参した呪い移しの魔法道具を使用した。それで相棒に掛けられた宝石化の効力を、移し変えるようにしてティレイラへと装着する。
 着けられた魔法道具の場所から透き通った紫色の宝石が広がって行き、その箇所の感覚が徐々に徐々に薄れていった。気付いたティレイラが魔法道具を引き剥がそうと懸命に両の腕を伸ばすが、ちょうど腕の届かない所についていて、爪が掠るばかりで一向に外れる気配がない。
「よくもやってくれたわね!」
「お返しに、君が宝石になる所をゆっくり見物させてもらうよ!」
 形勢逆転、先程宝石になりかけていた魔族少女もティレイラの下から這い出して、余裕満点の表情でティレイラの姿を見下ろした。捕まえるには絶好のチャンスだが、それより先に魔法道具を外さないと自分が宝石になってしまう。ティレイラは一生懸命魔法道具を剥がそうとするが、その間にも宝石化は進行していくばかり。ティレイラの健康的で柔らかな小麦色の肌が、美しい紫色の宝石へと取って変わられる。
「ほらほらー、早くしないと」
「君がお宝になっちゃうぞ」
「もう少し……もう少しで取れそうなのに……」
 涙声になるティレイラを、魔族二人が観賞しながら面白そうにからかい続ける。何度か爪が当たり、あと少しで引き剥がせそうな気がするのだが、宝石化は既に翼や尻尾の先まで広がっている。
「ほらほら、早く早くー」
「固まっちゃう固まっちゃう」
「やだ……やだよう……うう、もうダメぇ……!」
 と、ティレイラが弱々しく泣き声を上げた所で、ティレイラの動きが完全に止まり、その全身は広がりきった宝石に覆われていた。煽っていた魔族二人は、宝石と化した少女を見下ろしにんまりとした笑みを浮かべる。
「あーあー、惜しい惜しい」
「ほんと、あと少しだったのになあ」
 などとケラケラ笑いつつ、互いにニッと顔を見合わせ、二人揃って楽しげに固まったティレイラに抱きついた。透き通った紫色の美しさもさる事ながら、宝石のひんやりした質感も心地いい。
 ベタベタ触れて、堪能して、ぎゅっと抱きついている内に、なんだか離れたくないような心持ちになってきた。多分、宝石から感じる竜族の魔力によるものだと思われるが……。
「これは気持ちいいね、相棒」
「もう少しこのままでいようか、相棒」
 少なくとも、今この倉庫にいるのは自分達「三人」だけのようであるし、当分こうしていた所でお邪魔虫など来ないだろう。そう結論付けて、魔族泥棒少女二人は、暫く離れたくないような心地良さに浸りつつ、腕の中でおとなしくしている宝石の像を抱き締めた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3733/ファルス・ティレイラ/女性/15歳/配達屋さん(なんでも屋さん)】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。いつもご指名下さり誠にありがとうございます。
 ティレイラさんの奮闘劇と、ティレイラさんの像に心奪われる二人の少女、をコンセプトに書かせて頂きました。
 お気に召して頂ければ幸いです。またの機会がありましたらどうぞよろしくお願いします。
東京怪談ノベル(シングル) -
雪虫 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年12月25日

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