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『 それは紅衣のクリスマス。 』
(HN)井合 アイaa0422hero002

 多忙な仕事を終えたなら立ち返らなければならない立場がある。
『(HN)井合 アイ(aa0422hero002@WTZEROHERO)』は鏡の前で白衣をまとい、目の下にクマをうかべた自分の顔を見た。
 ひどい顔をしている、ただこれは不健康というよりは単なる寝不足のためだ。和尚も走る師走時。院内も正月の前に診察を澄ませてしまおう。あるいは、年末の多忙さにやられて体調を崩した人間達で溢れかえり、必然的に自分の出番も増えるというものだった。
 そんな院内をアイは足早に歩きさろうとする。
 呼び止められれば更なる仕事につき合わされかねないからだ。
「早く同士のもとへ」
 アイは院内を見渡す、自分たちの患者が、まだこんなにいる。
 この人々に対応するのも愛の重要なお仕事。、世の中に貢献する大切なお仕事だ。
 だが、アイには現在進行形で考えなければならない問題がある、それが……、
「あら、アイダ先生。今日はお早いんですね」
「ああ。ちょっと用事があってね」
「あら、素敵なお召し物。真っ赤ですね。まるでサンタみたい」
 その言葉に愛想笑いを返してアイは院内を後にするのだった。

    *    *

『紅衣の会』というヴィランズをご存じだろうか。
 赤い服を纏い、白い袋にはたっぷりのプレゼント。合言葉は『メリークリスマス』
 まんまサンタクロースの集団であるがどこかの組織に認められているわけではなく完全ンに非合法。
 その存在理由は『一定年齢以下の子供達がサンタクロースを信じている、という現象を存続させること』であり、おおよそ世間からはばかげていると言われそうな目的のために、この集団は大量不法侵入事件を起こそうとしている。
 なぜならサンタは家に勝手に入ってくる者だから。
 そんな組織の集会が本日あり、その中心に立っているのがアイだった。
 彼はサンタ服の上からマントのように白衣を羽織った姿で登壇し。場のざわめきが静まるまで、左手をあげてあたりに視線を向けていた。
「諸君、待たせてすまない、集まってくれてありがとう。」
 アイが告げるとその言葉はしんっと周囲の人間たちの耳に届く。赤い服を着て中には白いひげまで生やした、サンタクロースがうじゃうじゃいた。
「私は今日、公務の最中に見てしまった、聞いてしまった。それはとある愚神事件に巻き込まれた少年の言葉だった」
 その少年は愚神の手で住む場所を壊されたという。
 このクリスマスにだ。
 その少年と対応していた看護士が「それじゃ、サンタさん来れない」そう冗談めかして告げると。少年はそっぽを向いて。
 サンタなんていないもん。
 そう告げたのだ。 
 それが、アイ……いや。『紅衣の会』首領 井合 アイにとってはかなりショックな言葉だった。
 子供たちの胸から消え去っていく。
 サンタが。
 サンタという子供たちの笑顔のために行動する誰かの存在、それが実際は存在しないと、少年たちは叫んでいる。
 それがアイには許せなかった。
「愚神の爪痕は復興の進んだ今もなお、犠牲者の心の中に残っている。大変由々しき事態だ」
 だからアイは立ち上がった。今日、この日のために仲間を集めた。
「愚神なんぞのために、子供達が昔から信じて来たサンタクロースが、彼らの心の中からいなくなるのも大変気に食わない」
 誰も自分たちを助けてくれない。気にも留めない。そんな気持ちが、サンタを否定する言葉、心となって溢れ出していることが耐え切れなかった。
「諸君の働きに、この世界の夢のひとつが賭かっている。遺憾なく能力を発揮することを俺は願っている」
 具体的な作戦をアイは語った。
 世界中全ての子供達にプレゼントを配るのは流石に無理だ。であれば避難所などの、苦しい境遇にある子を優先してプレゼントを渡すように。
 そうすれば最近、どこの家にも設置されている警報装置が作動することも無いだろう。
「最悪見つかっても仕方ないが、自分がサンタだという事実は命に代えても守れ」
 サンタではない、そう告げるくらいなら死ぬくらいの覚悟が必要だった。
 だからこそ、アイはここで当たりをいったん見渡す。
 ……。
 サンタの目だ。
 全員がサンタとしての職務を全うできる強い意志を瞳に湛えている。
 子供たちの喜びのためなら死んでも構わない。そんな同士の目をしている。
「言う必要はないと思うが。子供に無体を働いた場合、死より恐ろしい罰が下ると思え」
 その時集会場にイエスサーの声がこだました。
「それでは諸君」
 その愛の掛け声にて全員が赤い三角帽子を取り出す。すると。
「メリークリスマス」
 全員がそれをかぶり、誰に言わずともおのが目的のために行動した。

 翌日、新聞の一面をこんな記事が飾ることになる。

 サンタ大量発生。
 そんな見出しを眺めながらアイは擦りむいた頬をさすってコーヒーを飲みほし、また白衣に袖を通すのだった。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『(HN)井合 アイ(aa0422hero002@WTZEROHERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度OMCご注文いただきましてありがとうございます。
 鳴海でございます。
 今回はクリスマスを題材にという事で、明るめに頑張ってみました。
 気に入っていただけると幸いです。
 それでは。またお会いしましょう。鳴海でした。
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2017年12月26日

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