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『『2年目のイブ』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 クリスマスイブ。
 日が変わろうという時間に、2人は仕事を終えて帰路についた。
「こんな時間からでなんだが、食べれるなら軽い食事とケーキくらいなら出せるぞ」
 アレスディア・ヴォルフリートがそう言うと、ディラ・ビラジスはほっとした表情で頷く。
「軽食で十分。行きたい」
 予定よりも帰りが遅くなってしまい、また次の機会にとお預けになるかもしれない。そう思っていたこともあり、アレスディアの言葉がとても嬉しかった。
「そうか。お互い明日も早いから軽めにしておこう」
 ああと頷いて、ディラはアレスディアについていき、久しぶりに彼女の部屋を訪れた。

 数か月ぶりに入った彼女の部屋は、以前と殆ど変りがなく、彼女以外の存在を感じさせない部屋だった。
「……アレスはある意味無防備だからな、俺以外の男を部屋に入れたりすんなよ」
「何でだ?」
 不思議そうに言うアレスディアに、ディラはふて腐れ顔で「なんでもだよ」と答えた。
 良く分からなかったが、アレスディアはディラをソファーに座らせておき、朝仕込んでおいたミネストローネを温めてスープスパを作り、昨日焼いて寝かせておいたガトーショコラと共に、テーブルに並べていった。
「早いな、クリスマスプレゼントせがむ隙がなかった」
「クリスマスプレゼント……?」
「アレスのエプロンドレス姿」
 ディラの言葉と悪戯気な笑みに、アレスディアの顔が恥ずかしげにうっすらと赤く染まる。
 求められれば、着ただろうが……。
(ディラ殿は何故、私にそんなことを望むんだ。似合わぬというのに)
「ああもう十分」
 そんなアレスディアの顔に、ディラは満足そうな笑みを浮かべていた。
「ホントはワインでも一緒に飲みたいところだが」
 と、ディラは鞄の中から小さな紙袋を取り出した。
 クリスマスデザインの缶が入っており、その中には数種類の紅茶のティーパックが詰まっていた。
 それぞれ一つずつ選んで、ティーカップの中に入れてケトルで沸かしたお湯を注ぐ。
 温かな食事を食べて、紅茶を飲み。
 そして、手作りのケーキを談笑しながら食べる。
 家族でも恋人でもない2人の、本当にささやかなクリスマスパーティー。
 一般人の、普通の夜と変わらない時間だったけれど、ディラにはとても幸せな時間で、町中に居る時とは違い穏やかな顔をしていた。
「……ディラ殿、一つ聞いても良いだろうか?」
 食事を終えて、最後の一口を飲み終えたアレスディアは、そっとティーカップを戻しつつ、ディラに目を向けた。
「以前、ここにいるのは自分の意志だと答えてくれたが……」
 目を軽く逸らす彼女を、ディラは黙って見つめていた。
「それは私の生き方を知った上でのことなのだろうか」
 軽く眉間に皺を寄せて、アレスティアは言葉を続けていく。
「私は知っての通り、矛として盾として生きる。人々の『そういう幸せ』を護る生き方は、『そういう幸せ』と縁のない生き方だ。それでも……」
 躊躇いながら、彼女は自分に向けられているディラの目と、目を合わせた。
「いたくていると、言っているのだろうか?」
 彼女は何故、ディラが共にいることを望んでいるのか、解ってはいない。
 ディラが『そういう幸せ』を求めていると思い込んでいた。
 自分の側にいては、彼はそういう幸せを掴めないだろう。それなのに何故、自分の側にいるのか。
「……」
 ディラは彼女を見詰めながら、彼女の問いにどう答えるべきか迷う。
 自分の幸せを掴むために、離れようと言われてしまうのが、何よりも辛い。
 だから……。
「ここに居たいから居る。今以上の幸せは他のどこに行っても得られない。だからアレスの側にあるんだよ、俺の居場所は」
 言葉を選びながら、ゆっくりとディラはそう答えた。
 彼のその返答に、何故だかアレスディアの胸が熱くなる。感極まった時のような、感情の高まりに戸惑いを覚えつつ、アレスディアは声を詰まらせながら静かに言葉を出す。
「……ありがとう」
「こっちこそ、ありがとう」
 ディラは切なげに、彼女に微笑みかけた。
 手を、いや指を伸ばせば届きそうなほど近くにいる、愛しい人。
 どんな関係であれ、去年より少し、心も近づいただろうか――。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
今年もクリスマスのご依頼、ありがとうございました!
翌日も彼は「好きな人と過ごす」普通?のクリスマスを楽しんだと思います。
続くお話しも楽しみにしております。
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東京怪談
2018年01月05日

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