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『みんなで温泉旅館へ行こう! 』
音無 桜狐aa3177)&水上 翼aa3177hero002)&セレン・シュナイドaa1012)&ATaa1012hero001)&猫柳 千佳aa3177hero001

○それぞれの過ごし方・昼
 大部屋に荷物をドサッと置くと、音無 桜孤はセレン・シュナイドに声をかける。
「セレン、まずは露天風呂で冷えた体をあたためぬか?」
「そうだね。雪山を歩いて来たから、流石に体が冷えたよ」
 顔に疲労の色が浮かぶ二人は仲居に案内してもらい、露天風呂へ向かう。

「ふはぁ……。降る雪を見ながら入る露天風呂は、また格別じゃのう」
 髪を結い上げた桜孤は露天風呂に入りながら、気持ち良さそうに表情を緩める。
 桜孤が露天風呂に来た時には誰もおらず、まるで貸し切り状態なのが気分が良い。
「露天風呂なんて久し振りだなぁ♪」
 しかしそこへ、腰にタオルを巻いたセレンが入って来た。
「んっ? ここの露天風呂、混浴じゃったか」
「えっ……ええぇっ!? しっ知らなかったよ!」
 慌てて背を向けるセレンの肩を、桜孤が恐るべきスピードで掴んだ。
「まあまあ、良いではないか。たまには一緒に風呂に入ろうぞ。裸のままでは、風邪をひいてしまうからのぅ」
「そっそんなこと言ったって、桜孤さんがっ……」
「わしはバスタオルで体を巻いているが?」
「……へっ?」
 湯気で隠されて見えなかったのだが、ゆっくりと振り返って改めて見ると、確かに桜孤は体にバスタオルを巻いている。
「脱衣所に『この露天風呂にはバスタオルで体を隠してお入りください』と注意書き看板があったのじゃ。最近の露天風呂はマナーにうるさいからのぅ。念の為に従っておいて良かったのじゃ」
「あっ、そうだったんだ……。確かに男性用の脱衣所にも、同じ看板があったよ」
 ほっとしたような残念なような複雑な気持ちになりながらも、セレンは桜孤と一緒に露天風呂に入ることにした。
「ふう……。ここの露天風呂、気持ち良いね。忘年会として一泊二日の旅行に来たけれど、年末の忙しい時をずらして来たから他のお客さんはあんまりいないし。静かで良いよね」
「そうじゃの。さて、他の連中は今頃何をしておるのか」


 温泉旅館の中にある喫茶店に、ATと猫柳 千佳の姿はあった。
 二人はテーブルを挟んで向かい合うように座り、ATは淹れたてのコーヒーを、千佳はホットミルクを飲む。
「ここのコーヒー、美味しいわ。水が良いと味が変わるって本当みたいね」
「ホットミルクも美味しくて、体があたたまるにゃーん♪ 翼も一緒に来れば良かったにゃ」
「あのコは落ち着いていられない性格なんでしょう。降り積もる雪を見て、大はしゃぎで外へ遊びに行っちゃったんだから」
「いつまで経っても子供だにゃー」
「では私達は大人として、後でバーにでも飲みに行こうか?」
「それは楽しみだにゃ♪」


 ATの言う通り、水上 翼は外で雪遊びをしていた。
 旅館の中庭には手付かずに降り積もっている大量の雪があり、一面が銀世界になっている。
「雪っー! こんなにいっぱい降り積もっているの、生まれてはじめて見た! 雪だるまをいーっぱい作ろーっと♪」
 翼は大きな目をキラキラと輝かせながら、寒さを気にせず雪にまみれになっていった。


○それぞれの過ごし方・夕方
 泊まる為にとった大部屋で、全員集まると食事会がはじまった。
「イワナの塩焼き、絶品なのじゃ!」
「イノシシ鍋も美味しいよ!」
「自家製手打ちそばも美味しいのだ!」
 桜孤とセレンと翼は山ならではのご馳走を食べることに夢中になり、そんな三人をATと千佳は何とも言えない眼差しで見つめる。
「食事は逃げないんだから、もっとゆっくり食べたらどうだ?」
「騒がしい食事会にゃー」
「そんなことを言う千佳のお魚、貰っちゃうのだ」
 翼が千佳のイワナの塩焼きに箸を付けようとした瞬間、千佳はカッと眼を見開き、猫耳と尻尾をピンッと立ち上げた。
「お魚だけはダメにゃああ!」
 ――その後、食事を終えてまったりしていると、ATは千佳と翼に声をかけた。
「さて、私達はそろそろ露天風呂へ行こうか。二人の背中はおねえさんが洗ってあげるよ」
「そうだにゃー。翼も一緒に入りに行くにゃ」
「そうだね。まだ入ってなかったし、入らなきゃ損だ」
 こうして三人は、露天風呂へ入りに向かう。

 露天風呂には誰も入っていなかったので、三人はゆっくりと過ごす。
 翼はATに背中を洗ってもらい、気持ち良さそうな表情を浮かべていた。
「そういえば、さっきは外でどんな遊びをしてきたの?」
「ん〜っとね。最初は一人で雪だるまをいっぱい作っていたんだけど、後から同じ旅館に泊まっている男の子達が来て、一緒に雪合戦をして遊んだよ。楽しかったぁ♪」
「それは良かったが、できれば雪で遊んだ後は体をあたためることを忘れずにな」
 翼は食事会前には戻って来たのだが、あまりに濡れていたので部屋の中にある内風呂に入ってもらったのだ。
「はぁーい。……あっ、そうだ。あのコ達も露天風呂に入りに来るだろうから、僕が背中を流してあげようかな?」
 翼のその一言で、先に露天風呂に入っていた千佳は微妙な表情を浮かべる。
「年頃の女の子として止めるにゃ。そんなことをしていると、いつまで経っても女の子らしさが出てこないにゃ」
「えっー!?」
「ははっ、千佳ちゃんに一本取られたな。まあ男の子達も家族で入るかもしれないし、露天風呂には私達と一緒に入ろう」
「ううっ……。そうする」
 そして三人は充分に露天風呂を楽しんだ後、浴衣姿で廊下に出た。
 部屋に戻る途中で、旅館内にあるお土産屋の中の商品を見ていたら、翼は先程一緒に遊んだ男の子達を見つける。ゲームコーナーで遊んでいるようで、翼はうずうずしながらATと千佳を見上げた。
「ねえ、あのコ達と遊んできて良い?」
「それは良いが、遅くなる前に部屋に戻って来るんだぞ?」
「あまりうるさくしちゃダメにゃ」
「うんっ!」
 満面の笑顔で、翼は男の子達の所へ向かう。
「さて、私達はバーにでも行こうか」
「そうだにゃ。でも流石に旅館の浴衣じゃあ雰囲気が出ないから、着替えて行くにゃ」
「ああ」
 ATと千佳が大部屋に戻ると、桜孤とセレンの姿はなかった。
 二人は持ってきた私服に着替えると、早速バーへ向かう。小さな店だが他に客がいなかったので、貸し切りのようだ。
「それでは」
「カンパーイにゃ♪」
 グラスを軽い音を立てながら合わせて、二人は酒を飲む。
「今年もいろいろなことがあったが、こうやって平和な一時を過ごせて良かった」
「今年一年、お疲れ様でしたにゃー。また来年もこうやって過ごせると良いにゃ。……でも旅館の浴衣から、自前の黒い浴衣に着替えただけではあんまり代わり映えしないにゃ」
「私だって、いつも着ているような私服だ。でもお互い、着慣れた物が一番じゃないかな」
「そうだにゃ♪」


 時をさかのぼり、三人が大部屋を出て行った後、セレンは桜孤に声をかけた。
「桜孤さん、三人は露天風呂へ行ったようだし、僕達は街に散歩しに行かない?」
 しかし誘われた桜孤は、明らかに渋い顔つきになる。
「……こんな寒い中、外へ出ようなどとおかしなことを言い出すのぉ」
「おっおかしくはないよ! 体が冷えたら、お風呂に入れば良いし。せっかく来たのに、旅館にこもりっぱなしじゃ勿体ないよ」
「まあ確かにのぉ。街には足湯があったようじゃし、冷えたらそこを使えば良いか。それにセレンに誘われたら、わしは断れないからのぉ」
 渋々ながらも桜孤は立ち上がった。
「外はまだ雪が降っているようだし、傘を借りて行こう」
 セレンが受付で傘を借りようとすると、桜孤が先に仲居に声をかける。
「傘は一本で良いのじゃ」
「えっ? でも……」
 桜孤は一本の傘を仲居から受け取ると、セレンの手を引いて外へ出た。そして傘を開くとセレンに持たせて、自分は彼に寄り掛かる。
「コレで傘一本でも大丈夫じゃ。たまにはこういう雰囲気も、良いものじゃろう?」
「うっうん……」
 顔を赤くしながらも傘を握り締めたセレンは、桜孤と共に街へ向かって歩き出した。


○それぞれの過ごし方・夜
 空が完全な闇色になる頃、大部屋の前で桜孤とセレン、そして翼がバッタリ会う。
「おや、翼。一人で何をしておったんじゃ?」
「ATさんと千佳さんは一緒じゃないの?」
「二人とは露天風呂から出て、分かれたっきりだよ。僕は同じ旅館に泊まっている男の子達と、ゲームコーナーで遊んでいたんだ。卓球とかして楽しかったぁ♪」
 そこで三人は、大部屋から酒の匂いが漂ってくることに気付く。
「……何か匂うのじゃ」
「この旅館にはバーがあるから、飲みに行っていたのかも」
「それにしては匂いが濃くない?」
 顔をしかめながら、三人は思い切って部屋の引き戸を開けた。
 部屋の中には服を着崩した千佳とATが、真っ赤な顔で畳の上に倒れている。テーブルの上には売店で購入したらしい地酒の瓶や、地元で作られた酒のつまみが大量に置かれてあった。
「にゃはははっ♪ ここのお酒、美味しくてグイグイ飲めちゃうにゃんっ。良い気分だにゃー」
「バーも素敵で良かったが、部屋で気兼ねなく飲むのも良いなぁ」
 完璧に出来上がっている二人を見て、桜孤・セレン・翼はスゥッ……と冷静になりながら思う。
(まあこの二人にとっては、いつものことかのぉ)
(『こうなってはいけない』というダメな大人の見本)
(千佳さんは相変わらず酒癖が悪いなぁ。でもいつも冷静なATさんも、そっちの部類だったのか)
 三人の冷たい視線を感じていないのか、突然千佳が立ち上がった。
「んっもう、暑いにゃー! 脱いじゃうにゃあ!」
「そうだな。暑ければ脱いで……」
 二人が着ている服に手をかけたところで、三人はギョッとする。
「いかんいかんっ! それはいろんな意味でNGじゃ!」
「二人を着替えさせるから、セレンは部屋を出て行って!」
「分かっているよ!」
 桜孤と翼が着ている物を脱ごうとしているATと千佳を止めている間に、唯一の男性であるセレンは慌てて大部屋から出て行った。

 しばらく外で待っていると、仲居達が布団を敷きにやって来る。
 それと同時に引き戸が開いて、桜孤が姿を現わす。
「桜孤さん、二人は……」
「ああ、もう大丈夫なのじゃ。片付けも軽くやっておいたからのぉ」
 セレンが仲居達と共に部屋の中に入ると、確かに五人分の布団が敷けるほどのスペースができていた。
 それというのも、酒瓶やつまみはテーブルの上に置かれて部屋の隅に移動しており、酔っ払いのATと千佳は旅館の浴衣に着替えさせられた上に、毛布でグルグル巻きにされていたのだ。
「こうしなきゃ、大人しくならなかったんだ」
 疲れ切った翼が、ため息と同時にもらす。
「お疲れ様」
 桜孤と翼の苦労を察して、セレンは苦く笑う。
 布団は二組と三組が向かい合うように敷かれて、二組の所には桜孤とセレン、三組の所には翼とATと千佳が並んで寝ることになった。
「明日は再び山道を歩いて帰るから、今夜はもう眠るのじゃ」
「ふわぁ……。おやすみなさい」
「おやすみぃ」
「おや……すみ……」
「にゃあん……」
 すでに眠りの世界に入りつつあったATと千佳も、三人につられたのか寝る時の挨拶をする。
 こうして夜は更けていった――。


○翌朝
「うっう〜ん……。眩しい、重い、暑い……はっ!?」
 唸っていたセレンは眼をカッと見開くと、違和感に気付いて上掛け布団をバッと引っ張る。
「うわああっ!?」
 何故かセレンの布団の中に、桜孤と翼が入り込んでいたのだ。
 カーテン越しに朝日の光が部屋に満ちていて、桜孤と翼は眩しそうに顔を歪める。
「うぅ〜む……。……まだ眠いのじゃあ」
「ふわぁあ……。もう朝ご飯?」
「なっ何で二人して、僕の布団の中で寝ているんだよ?」
 セレンの叫びを聞いて、二人は寝惚け顔でムクッと起き上がった。
「……おや? 本当じゃ。いつの間にか、移動しておったのぉ」
「お酒臭さから逃れたかったのかな?」
 確かに部屋の中には、まだ酒の匂いが濃く残っている。
 その原因であるATと千佳も、軽く呻きながら起きた。
「あふぅ……。昨夜は少々飲み過ぎたな。……おや、いつの間に布団の中に入っていたんだ?」
「うううっ……! ちょっと頭が痛むにゃあ……。って、アレ? いつの間にか、着替えていたにゃ」
 どうやら二人は昨夜の記憶が後半から抜け落ちているらしく、今の自分を不思議そうに見ている。
 あくまでもマイペースな四人の女性達の態度を見て、セレンはキッと表情を引き締めた。
「……もうっ、いい加減にしてくださーいっ!」
 セレンの叫びで、旅館の屋根に降り積もっていた雪がドサドサっと落ちた。

【終わり】


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa3177/音無 桜孤/女性/14/ワイルドブラッド】
【aa3177hero002/水上 翼/女性/14/ソフィスビショップ】
【aa1012/セレン・シュナイド/男性/14/人間】
【aa1012hero001/AT/女性/18/ドレッドノート】
【aa3177hero001/猫柳 千佳/女性/16/シャドウルーカー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご依頼をしていただき、ありがとうございました(ぺこり)。
 騒がしくも楽しげなストーリーを書かせていただきました。
 楽しく読んでいただければ、幸いです。

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2018年01月09日

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