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『おらはサンタ 』
ka6890

 しゃんしゃんしゃん……。
 どこからか、鈴の音が聞こえてきた。それだけで、杢(ka6890)の気持ちは浮き立って、そわそわと窓の外を覗いてしまいたくなる。サンタクロースが、やってきたのではないかと。その気持ちをぐっと押さえて、杢はぷるぷると首を横に振った。
 だって。
 今夜は。今年の、この夜は。
「今年はおらがサンタ当番だんず。けっぱっていくだんずよ」
 そう。サンタクロースを待つ身ではなく、杢自身がサンタクロースなのだ。鏡の前で、自分の姿をチェックする。赤い洋服、赤いとんがり帽子。それは、雪のように白い体を持つ杢にこの上なくよく似合った。完璧なサンタクロース姿だ、と、杢は鏡の中の自分に満足してうんうん頷く。プレゼントは白い袋に詰めたし、ソリの準備も整っている。
「さあ、出発だんず!」
 杢は元気よく、寒くて暗い冬の夜の中へ出て行った。



 杢がクリスマスプレゼントを贈るためにまず訪れたのは、少年商人・史郎(kz0242)のもとであった。年の瀬はいつもより忙しいのであろうか、夜中だというのに、小さな営業所にはまだ灯がともっていた。
「煙突は……、ないだんずね……」
 杢は営業所をぐるっと見回した。扉には鍵がかかっているだろうし、入るなら窓からだろうか、と窓枠によじ登ると。
「気配も隠さず堂々と押し入ろうなんてなかなか度胸があるね、何者だい」
 杢が窓を開けるよりも早く、内側から開かれた。美しい顔を剣呑に尖らせて姿を見せた史郎は、窓から入り込もうとしていたのが杢だとわかると、目を一度見開いてから笑顔になった。
「おっと、これはこれは。サンタクロースのお出ましじゃねえか。寒いところご苦労なことだ。さあ、中へ入って暖まりなよ」
 史郎は杢を招き入れてくれた。杢は大きな白い袋をえっちらおっちら担いでぽてぽてと中へ入ると、両手を広げてにこにこと挨拶をした。
「こんばんはだんず、史郎さん。起きてたんずね。せば、ちょうどええだんず。これ、史郎さんへのプレゼントだんず」
「プレゼント? 俺に?」
 杢は、白い袋をごそごそと探って取り出した包みを史郎に差し出す。史郎は、思いもよらなかったというように目を丸くした。
「そうだんず。ええ子にしてたごほうびだんずよ」
「へえ……。いい子に、ねえ。ありがとよ」
 史郎は少し苦笑しつつも、プレゼントを受け取り、早速包みを開いてみた。中ならは、真っ赤な女物の着物と、トンボ玉が飾られた簪が出てきた。
「史郎さんはお仕事で女装をするだんず。お役にたてたらと思ったんず」
「あっはははは、そうかー! そりゃあ有難いや。大事に使わせてもらうよ」
 史郎は思わず大笑いしてしまった。俺の仕事別に女装がメインじゃないんだけど、とはもちろん言わない。杢が心を尽くしてプレゼントを用意してくれたことがわかり、史郎は素直に嬉しかった。
「ありがとうな、サンタさん」
「喜んでもらえて良かったず。せば、おらは次のお家へ行かせてもらうだんず。史郎さん、よいお年を!」
 杢はまた白い袋を担いでえっちらおっちら、窓から外へ出た。それを見送りながら、史郎は呟いた。
「いい子、か」
 子ども扱いされたことなど、随分久しぶりな気がした。



 杢が次に向かったのは、宝石商モンド氏の邸宅であった。この家の一人娘・ダイヤにプレゼントを届けるつもりなのである。広い広い敷地内は、しん、と静まり返っていた。生垣を通り抜け、大きな屋敷へ忍び込み、杢はダイヤの部屋を目指す。似たような扉がいくつも並ぶ廊下を、ぽてぽてと歩いていると。
「お目当てのお部屋はこちらですよ、サンタさん」
 そっと声をかけてくれる者があった。モンド家の使用人・クロスである。杢が来るのをわかっていたように微笑んでいた。
「ありがとだんず、クロスさん。ダイヤさんはもう寝ているだんず?」
「ええ、ぐっすりと。ですから是非、枕元にプレゼントをお願い致します」
「安心してけれ、静かに行くだんずよ」
 杢はこくこくと頷くと、クロスに案内されてダイヤの部屋へと入った。大きくてふかふかのベッドで、ダイヤは幸せそうに眠っている。枕元へとよじ登り、杢は綺麗にラッピングされた箱を、そっと置いた。明日の朝、驚いてくれたらいい、喜んでくれたらいい、と思いながら。
「サンタさん、少々お尋ねするのですが、そのプレゼントは一体何ですか?」
 クロスに尋ねられ、杢はちょっと得意げに答えた。
「ダイヤさんは面白いことがお好きだんず。面白いものを詰め合わせただんずよ。虹色のアフロカツラとか、カラフルだけど変な味のするキャンディーとか、本物そっくりの蛇の人形とか、だんず」
「……そうですか。それはそれは、ありがとうございます」
 クロスは笑顔で礼を言いながら、内心で、ダイヤがそれをどう使うかについては注意しておかなければ、とこっそり思ったのであった。



 こうして、サンタクロース・杢の夜はたくさんのプレゼントと笑顔を届け、更けていった。
 どこかでまだ、鈴の音がしている。しゃんしゃんしゃんしゃん、と……。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6890/杢/男性/6/猟撃士(イェーガー)】
【ゲストNPC/kz0242/史郎/男性/15/疾影士(ストライダー)】
【ゲストNPC/ダイヤ・モンド】
【ゲストNPC/クロス】



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ごきげんいかがでございましょうか。
紺堂カヤでございます。この度はご用命を賜り、誠にありがとうございました。
可愛らしいサンタクロースを描かせていただけた上、紺堂のNPCにプレゼントをいただき、本当に本当に嬉しいです。
杢サンタにも、きっと「ええ子にしていたごほうび」がもらえるんだろうなあ、なんて考えています。
この度は誠に、ありがとうございました。
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ファナティックブラッド
2018年01月09日

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