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『プロローグ 』
雁屋 和aa0035)&紫 征四郎aa0076)&木霊・C・リュカaa0068
 カランカラン。
 商店街に軽快な音が響く。それは八百屋さんが振るう金色の鐘の音で。
 それと同じ、豪奢な色の玉が『雁屋 和(aa0035@WTZERO)』の眼下にあった。
「え? ん?」
 目をこする和である。しかしその光景が幻ではないと。商店街福引係の皆さんが教えてくれる。
 二等です、おめでとうございまーす。
 押し付けられたのしぶくろ。
 その中には、温泉一泊二日招待券がくるまれているのだった。

本編 久々の休日。

「まさか、旅館の招待券が当たるなんてね」
 そう和は穏やかな表情を浮かべて座席に深く座り直した。目の前では『木霊・C・リュカ(aa0068@WTZERO)』の手札の中から『紫 征四郎(aa0076@WTZERO )』が一枚、カードを抜き取っている最中。
 触れたカードの展示で柄がわかるのだろう。リュカは自分の手札からいなくなったジョーカーを思いほくそ笑んだ。
 征四郎のかみ殺した屈辱んの声がバスに響いた。
「年末に幸運だったねぇ。和ちゃんのおかげで今年の疲れを癒せそうだよ」
「リュカ……おじさん臭いのです」
 とっくに上がってしまった和は征四郎がカードをシャッフルするのを眺めながら「感謝してよ〜」と笑って見せた。
「和と旅行できるなんてとっても嬉しいです! 温泉楽しみですね」
 そうはしゃぐ少女たちの声を楽しく聞いていると、リュカの耳はブレーキの音を聞いた。ゆっくりとバスの速度が緩まって停車。温泉宿についたようだ。
 開かれたバスの扉の向こうから硫黄の香りがちょっとした。
 温泉宿についてから夕食まで時間がある。
 さっそく温泉に入ろう、そんな話をして征四郎はリュカの手を引く。
 リュカ、こっちですよ。
 案内された三人の部屋。 
 そこで初めてリュカは、あれ? っという違和感を感じる。
「どうしたのですかリュカ?」
 その違和感をうまく言葉にできないままに。和がリュカに声をかけた。
「行くわよ、木霊さんの分の袴はこれだから」
「うん、ありがとう和ちゃん。で、部屋が一緒みたいだけど、まさかお風呂も一緒?」
 征四郎が男湯、女湯の暖簾の前で立ち尽くす。暖簾とリュカの顔を交互に眺めた。
「どっちも気にしてないけどお兄さん一緒に行って良いの? 女装しようか?」
「さすがに気にしてるから」
 和が顔を赤らめて告げる。
「あ、でもリュカを一人で温泉に向かわせるのはどうでしょう……」
 征四郎がそう考え込んでしまう。
「俺はいいから入ってくるといいよ」
 そんな風に遠慮するリュカだったが、和がよい物を見つけてきた。
「あっちに家族風呂があるみたいよ」
 これで全ての問題が解消される。そう思った三人、和が走ってフロントに使用申請を出して、女子から更衣室を使うのだった。
「お……お待たせ」
 結果、リュカはバスタオルを女巻にして登場。
「ど、どうかな。似合うかな」
 そう恥じらうリュカの背後には薔薇。風が吹くと花びらが舞い散るような錯覚と共に、ミニスカ顔負けの、防御力皆無な裾がひらり、またひらりとめくれるではないか。
 結果太ももがチラチラ見える。バスタオルのスリットからチラチラと何かが見える気がする。
 和は凍りついた。そして教育に悪いので征四郎を背中に隠す。
「今、行くよ……」
 そうリュカが足を持ち上げたその時。
「ちゃんと水着履いてきてって言ったでしょ!」
 怒る和。桶ごと、お湯をぶちまける和。
「あつ! 意外と熱いよ、お湯!」
「着替えてきて!」
 よく見れば、和も征四郎もバスタオルの下に水着を着ている。
「わかった! ごめんごめん!」
 そう脱衣所に引っ込むリュカである。
「りゅ、リュカ手伝いましょうか」
「いや、これくらいなら自分でできるよ大丈夫」
「全く……」
 リュカは若干の悪ふざけで満足したらしい、鼻歌交じりに着替えている。
 そんな姿を尻目に和は肩まで深くお湯につかった。
 征四郎を眺める。ワンピースタイプの水着だったが似合っていてとても可愛らしいと思った。
 だが顔が赤い気がする。
「どうしたの? 紫さん」
「うう。リュカとお風呂は少し恥ずかしかったのです」
 そう顔をバシャバシャと洗う征四郎。混浴は少し刺激が強かったらしい。いや、相手がリュカだからだろうか。
「和はいつもと変わらなくて、すごく頼もしいです」
 ブクブクと微笑みながら沈む征四郎。髪の毛が水の上にぶわっと舞った。
 そう言えば髪の毛を結うべきだったな、そう思って和は征四郎を手招きする。
「さすがにバスタオル一枚で入ってくると動揺したけどね」
 苦笑いを浮かべる和。その手の中で、征四郎のしなやかな髪は御団子型にまとまった。頭の左右に一つずつである。
「ありがとうございます!」
 そうこうしている間にリュカがカイパン姿で登場した。
「いや、和ちゃんにも恥じらいがあって安心したよ。俺てっきり男でも平気で入っちゃうのかと」
「……どう見ても突っ込み待ちだったでしょ?」
 和はあっけらかんと告げる。
「それに紫さんもいるし」
 割と頓着しないのだろうか、ちょっと心配になってしまうリュカである。
「もし女性陣にハプニングがあっても見えてないから安心してほしい。通報する際も情状酌量の余地を残してしっかり考えて欲しい」
 若干かしこまってしまったリュカであるが。和と征四郎は場所をあけ三人でのんびり湯につかる。
 しばらくは気温差のせいで黙々と上がる湯気や、景色を眺めていた三人だったが、自然と会話が生まれ、今年はいろいろあったねぇなんて話をしていた。
「なるほど。皆で入れるのは楽しいですね」
 和がそう告げて、夕陽を背に立ちあがる。
 その美しさに征四郎は目を奪われた。凛と立つその姿勢に、背中に征四郎は見とれてしまった。
「御背中流しましょうか?」
 征四郎が少し、仲居を気取った風に言うと、和は笑顔を返す。
 
   *   *

 三人で浸かる風呂は思いのほかいい心地で、お風呂上りにはアイスを食べながら、ボーっと夕食の時間を待った。
 夕食後、普段の疲れがどっと出たのか。早寝の子征四郎はうとうとしだす。
「せーちゃん、お土産見に行く?」
「いきましゅ」
 かくりと船をこぎながら上げられた手を和がとって三人は売店を目指した。
 全ては連れてこれなかった英雄たちの不満を抑えるため……もとい、英雄たちに喜んでもらうため。
「お酒と、温泉煎餅、温泉プリン……」
「あ、せーちゃん。ご当地アイドルだって……ブロマイド買っていく?」
「……アイドルなら何でも好きなんでしょうか」
 そう、とある英雄を思い浮かべる征四郎である。
 そんな二人から離れて、和は面白い物を見つけたので観察していた。
「卓球台か……温泉にはつきものらしいけど。久しぶりに見たわ」
 そうたたまれている卓球台を一枚の平面に伸ばしてみると、案外整備されているようでつややかな表面が、こう、和の心にわくわくとした感情を芽生えさせる。
「やりますか?」
 征四郎が後ろから覗き込んだ。
「でも、背が……」
 和があたりを見渡すと、立ち台があったのでそれを設置、幅も広いため踏み外すことはないだろう。
「ふふふ、手加減はしないから」
 そう不敵に笑う和。それに対して真剣なまなざしを返す征四郎である。
「例え卓球でも、勝負には勝つのが紫ですので」
 征四郎から放たれたサーブは奇妙な回転がかかっていた。左に飛ぶかと目されていたピンポン玉だったが、逆方向の右に飛び、和は唖然と弾道を観察するしかない。
「な……」
「ふふふ」
 和の真似をして不敵に笑う征四郎、代わりにサーブ権を得た和は早急に球を弾き返す。
「反射神経なら、私も!」
「必殺のサーブを撃ち返すなんて、すごいのです。でも!」
 二人のラリーは情熱的にすぱすぱ続く。
「こういう時って乱れる浴衣見て楽しむものなんだよね〜」
 リュカはそんな二人の間に座って、得点ボードの管理しながら、マッサージチェアにすわり、プルプル揺れている。。
「いいなぁ見たかっtごめん嘘!」
 リュカの言葉に和が反応して、ピンポン球をリュカにぶち当てる。征四郎に至っては予備のピンポン球を投げつける始末。
「リュカ最低です!」
 そんな予定外の運動も相まって、征四郎と和は汗だくになってしまった。
「もう一度お風呂入ってくるわ」
「そう? じゃあ。俺は飲んでるね」
 そう缶を揺らすリュカの手から征四郎はビールをもぎ取って告げた。
「今日はお酒は禁止です」
 そう振り返って微笑む少女は、和の手を取って女風呂へと向かった。
 その光景を胸に思い浮かべるだけで、リュカはとても気分がよくなる。
「そうだね、お酒はいらないかな」
 だって、二人がお風呂でどんな話をするのか。そんな物語を想像しているだけできっと心安らかにいられるのだから。
 そして三人はこの後、部屋に戻るなり夜通しゲームをしたり、お話をしたりして過ごした。
 ちょっとした修学旅行の様な夜が終わり、次の日のバスでは三人寄り集まって眠った。 
 疲れはとれなかったかもしれないが。年末にはふさわしい思い出となっただろう。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『木霊・C・リュカ(aa0068@WTZERO)』
『雁屋 和(aa0035@WTZERO)』
『紫 征四郎(aa0076@WTZERO )』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております、鳴海です。
 この度はOMCご注文ありがとうございました!
 今回は修学旅行的な雰囲気を出せるように頑張ってみました、あとは御三方の関係性が感じられるものになればいいなぁと思って頑張ってみましたがいかがでしょうか。
 年を跨いでのお届けとなってしまいましたが。また今年もよろしくお願いいたします。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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2018年01月10日

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