『―― 聖なる夜に祝福を ―― 』

松本・太一（8504）

「……なるほど、クリスマスイベント、ですか」
　松本・太一は『ＬＯＳＴ』で行われるクリスマスイベントの案内メールを見ながら呟く。
（色々と怪異に巻き込まれている側なので、イベント参加も最低限にしているんですけど……）
　どうやら、松本はイベントの上位ランキング者にのみ与えられるプレミアアイテムの文字を見て、イベントに参加するべきか否かを悩んでいるようだ。
「イベント内容としては、シンプルなものなんですね」
　イベント内容は、プレイヤーがサンタさんとなってＮＰＣたちにプレゼントを配り歩くというものだ。当然ながら、ＮＰＣが望んでいるアイテムを渡さないとカウントはされないらしい。
（これって、長期的にプレイしている人の方が、アイテムの種類も多く持っていますし、かなり有利になってしまうイベントなんじゃ……）
　自分で上位にランクイン出来るか不安を感じたが、そういったプレイヤーの救済措置としてＮＰＣの欲しがるものは必ず街で買えるようになっているらしい。
（……プレミアアイテムがどんなものか分かりませんが、とりあえず参加してみましょうか）
　こうして、松本は滅多に参加しないイベントへの参加表明ボタンを押すのだった。

※※※

「サンタさん、サンタさん！　僕、お菓子が欲しいの！」
　ＮＰＣの子供が松本にねだるように話しかけてくる。
（お菓子、お菓子……そういえば、以前教会イベントで貰ったクッキーがありましたっけ）
　松本がクッキーを子供に渡すと、そのままＮＰＣは消えていく。
（なるほど、簡単なお願いばかりが出来ないように、一度渡したＮＰＣは消えてしまうということですか……）
　それと同時に、松本の頭上に現在のランキングが表示される。
（……まだ１人しか渡していませんけど、７万台ですか。先は長そうですね……）
　上位１００名がプレミアアイテムを貰えるらしく、先の長いイベントに松本は小さなため息をついた。
（そういえば、参加表明をしただけでクリスマスキャンドルってアイテムが貰えましたね。特に効果のないフレーバーアイテムのようですけど……）
　苦笑しつつ、お願いを待っているＮＰＣの元へと歩いていくのだった。

※※※

　それから、何時間が過ぎただろうか。
　今回の松本は、なぜかイベントに対してのやる気が凄まじいもので、ほとんど寝ずにイベントを地道にこなしていっていた。
（現在９７２位、この状態からあまり順位があがらなくなりましたね）
　疲弊した松本はため息と共に、心の中で呟く。既にお願いを叶えた人数は１万人を超えている。
（せっかくここまで来たんですから、諦めることはしたくないですね）
　再度ため息をついて、松本はお願いを待っているＮＰＣに話しかける。
「ねぇねぇ、私が望んでいるものは教会でしか手に入らないレアアイテムなんだけど貰えない？」
　松本にとっては、かなり余っているアイテムだったが、教会に所属している者、しかも司祭から認められた者しか与えられないアイテムが表示されている。
（特に使う予定もないものですし、別に１つくらいは構いませんけど）
　渡す、をクリックすると、いきなりファンファーレが鳴りだす。
「えっ」
　松本が驚いていると、どうやら今松本が叶えたものはレアお願いだったらしく、一気に１００位付近まで順位があがった。
（こんなお願いがあったなんて、上位の人たちはこういうお願いを見極めて叶えていたのかも。確か、今叶えたＮＰＣはお願いマークがピンクだった……それを狙っていけば……！）

※※※

　そして、イベント終了日。
　松本は苦労した甲斐もあって、５７位という順位でイベントを終えることが出来た。
「……聖女の嗜み？」
　入手したアイテムは「聖女の嗜み」というもので、聖女っぽさがあがるもののようだ。
（……てっきり、強い武器か防具かと思ったんですけどね）
　苦笑しながら、松本は「聖女の嗜み」を装備したのだけど――。
　これが、現実世界にまで影響したという夢を見るのは、あと数時間後のごとだった。

――　登場人物　――

8504松本・太一48歳男性会社員・魔女

―――――――――――

松本・太一　さま

こんにちは。いつもご発注をありがとうございます。
今回は体調不良により、遅くなってしまい、申し訳ございません。
内容の方はクリスマスイベントでしたが、
クリスマス感が出せているといいな、と思います。
今回も書かせて頂き、ありがとうございました。
また機会がありましたら、宜しくお願い致します。

2018113

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2018年01月15日