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『しばしのわかれ 』
彩咲 姫乃aa0941

 チャポーンと、嘘みたいな、マンガみたいな音が風呂場に木霊した。
 髪を洗ってひねりが足りなかった蛇口に腕を伸ばして占めると、自分の姿が鏡にうつりこむ『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』が鏡の向こうから自分を覗いていた。
 こうして濡れた髪で鏡の前に立つと女の子にしか見えない自分にちょっとだけため息が出る。
 まぁ、実際女の子だから仕方はないのだが。
「あ〜、全く」
 姫乃はそう鏡にお湯をかけると勢いよく風呂に飛び込んだ。
 大きなため息をつく、だがそれは自分の容姿に対するものではない。
 友人が遠くに行ってしまうことに対しての声だ。
「わかってたけどさぁ。けどなぁ。急すぎるって」
『ナイア・レイドレクス(NPC)』 は日本で必要な手続きを終え。実習も終え。契約する英雄も決まった。 
 こうなれば故郷に帰らない方がおかしいのだ。
「年の瀬だっていうのにさ」
 そうブクブクと風呂の中に沈む姫乃。その時、思いつくことがあった。
「悩んでてもしかたねぇよな。うん。日の出を見に行こう」
 帰るまでに何か一つ思い出を、そう願い振り絞ったのが初日の出を全員で拝むことだった。
「さっそく連絡を……って」
 その時姫乃はまた思い至る。
「ひかりは、どうすれば……」
 車いすの少女『三浦 ひかり(NPC)』 を思い浮かべて、困り果てる姫乃であった。

   *   *

「日の出? 日本にはそう言う文化があるのね」
 ナイアは防寒着に身を包むとひかりの頭に帽子をかぶせた。
 ひかりは遠出自体があまりないので若干テンションが高い。先ほどからちょっとしたことで笑い声をあげている。
「暗いうちに出発しないと間に合わないから、この時間だけど。まぁ、危険はないから」
 共鳴した姫乃はそう胸を叩いて告げる。
「うーん、途中で寝ちゃったら私も負ぶってくれる?」
「いや、それは……考えとく」
 姫乃の計画はこうだ。孤児院の近くの山を登って朝日が出るまでまつ。それだけ。
 大漁の虫除けスプレーを振りまいて、一行は早速山を登り始めた。
 そしてさっそく問題に直面する。
「あー、これ以上無理みたい」
 ひかりが苦笑いを浮かべる、彼女の筋力的に三度以上の斜面は自力で登れないのである。
「初めから置いてくればよかったな」
 告げると姫乃はひかりをおぶる。車いすは幻想蝶の中に。
「あったかーい」
 そう姫乃はひかりをおぶると急こう配にも関わらず、すいすいと上った。
 そんな姫乃に、ナイアが近付いてきて耳打ちする。
「ねぇ、何か気が付かない?」
 最初に逢った時のミステリアス全開で話しかけてきたとき、姫乃はナイアが悪だくみをしている時だと知っている。
「なにがだよ」
「ひかり、ブラしてるのよ」
 ポンッと姫乃の顔面温度が上昇した。
「なんで言っちゃうの! ナイア!」
 ひかりが暴れ腕をふりまわす。普段なら暴れるなと怒る姫乃ではあるが。今はなんと言葉をかけたらいいのか分からずに俯くままである。
 リンクに異常が生じる、心の乱れは体の乱れ。ナイアは少し姫乃の髪が伸び始めたことに気が付いた。
「へぇ…………姫乃! 私もくっついていい?」
「な! 何でだよ」
「寒いから」
「歩きづらいわ!」
「じゃあ、私も負ぶってよ」
「二人は無理だ!」
「どっちの方が成長してるか確かめてみてくれない?」
「なんの話だよ!」
 最後の方は悲鳴に近い声を出しながら姫乃はナイアを遠ざける。
 その間も髪の毛がもさもさ伸び始めて。
「あ、どこかで見たことある顔になってきた」
「姫菜ちゃんだっけ?」
「なんで二人とも知ってるんだよ!」
 そんな姫乃を見て二人は声をあげて笑う、そんなナイアが顔をあげると、遠くの眺めるように視線を向ける。
「明るくなってきたね」
 確かにと、姫乃は思う、心なしか気温が上がってきた気がしていた。
「走るぞ!」
 姫乃が告げると、ナイアも走る。さすが田舎育ちのナイアは山道をスルスルと上っていく。背中のひかりは手を振り回して歓声をあげていたが。木々が途切れるようになってくると。ある方向を向いて大人しくなった。
「地平線が! 金色だ!」
 光が指差す先からはうっすらと太陽がかおを出している。赤みがつよい光から徐々に金色、白い光へとかわり、太陽も丸丸とした姿を現す。
「これはたしかに」
 ナイアは姫乃に遅れてたどり着くと、地面に座って日の出を眺める。
 確かに綺麗だ。そう思った。
「お茶、いれてきたんだ」
 そうひかりを車いすにおろし、全員にカップを配る。湯気を立てたそれを口に含むたび、疲れとわくわくとした気持ちがあふれ出てくる。
「あけまして、おめでとう」
 姫乃が二人を振り返ると、二人も同じ言葉を返す。
「今年も。よろしく」
 そうカップをぶつけ合うと罷免所はそれを飲み干した。
 しかし、次いで姫乃は引きつった声をあげた。
 目の前を蟲が飛び去ったのだ。
 光の車いす、それを握る手に思わず力がこもる。
「あ〜、温かくなってきて虫が出てきたんだね」
 ひかりが告げる、案外ひかりは虫が平気である。ナイアに至っては。
「日本は無視が少なすぎるから……」
 なんていう始末。だが姫乃はそう簡単に割り切れたりはしない。
 虫が大の苦手なのだ。耳元でぶんっという音が聞えた日には。ひゃっと可愛い声を出す始末。
「くそ! こっち来るな!」
 両手で虫除けスプレーを取り出した姫乃。
 その時、事件が発生した。うっかり手を放されてしまった車いすはゴロゴロと転がり始め。
 そして。
「あ」
「あ」
「ああああ!」
 ひかりが坂の向こうに消えてしまう。
「姫乃! 荷物観てるから走って」
 反射的に叫ぶナイア。
「任された!」
 ロケットダッシュでひかりを追う姫乃。その手にはハングドマン。糸を射出して木々の隙間を縫うように飛ぶ。
 ゴロゴロ転がる車いすは奇跡的に木々を避けていたが、運が尽きたのか目の前に一際大きい木が見えて。それにぶつかると姫乃が目を瞑った瞬間。
 姫乃が車いすごとハングドマンですくい上げて衝突を止めた。
 その様子を眺めてナイアは安堵する。
「姫乃は私のヒーローだね」
 いや、元々は姫乃が手を放したせいなのだが。
 そう突っ込みたそうな顔をしていたナイアだったが、ひかりが楽しそうに笑っているからよしとした。
 ナイアは全員分の荷物を拾って合流すると、木の葉の隙間に見える日の出を眺めて、告げた。
「私、三日後にいなくなる」
 その言葉を聞いて姫乃は振り返り、ひかりは目を潤ませる。早すぎるお別れだった。
「また、会いに来るよ。みんなも会いに来てくれるよね?」
「私は……」
 不安そうなひかり。そんなひかりの手を姫乃はとる。
「いく、行くよ。ひかりもいつまでたっても孤児院にいるお子様じゃない。約束する」
 みんながそれぞれの場所で成長し。そしていつかまた日の出を見にこよう。
 姫乃はそう笑顔で告げて。ナイアはいつか見せたような寂しそうな表情で告げた。
 ひかりがこらえきれず泣きだして。帰り道はひたすらにひかりをあやす道中になったが。
 それはそれでいいと思う姫乃であった。
 


エピローグ
 ナイアは焦っていた。今まさにモニターの向こうで友人が地面に付している。
 いつもの勝気な表情を湛えているが、ナイアからすれば彼女が傷つくこと自体が黙っていられないことなのである。
「いくよ、ドーラ」
 彼女は英雄に静かに告げると座標を記憶させ、そしてH.O.P.E.南アメリカ支部を飛び出した。
 実験運用中の飛行機器を背につけ。無断で、独断で姫乃のもとへと向かったのだった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』
『三浦 ひかり(NPC)』
『ナイア・レイドレクス(NPC)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 遅くなってしまって申し訳ありません、鳴海です。
 この度OMCご注文ありがとうございました。
 今回は三人の思い出作りもそうですが、姫乃さんの心情を前に出しつつギャグタッチで仕上げてみましたがいかがでしょうか。
 気に行っていただければ幸いです。
 本編ではあんなことになっておりますので、物哀しさはないと思いますが。
 今後とも、二人をよろしくお願いします。
 それでは鳴海でした。
 ありがとうございました。
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2018年01月15日

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