▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『―― 大好きな姉妹たち ―― 』
ネフィリア・レインフォードka0444)&ブリス・レインフォードka0445)&フローレンス・レインフォードka0443

 すべての始まりは、ネフィリア・レインフォード(ka0444)が依頼で重症を負ったことだった。
「ネフィ姉様……だいじょぶ?」
 怪我によって、熱に苦しむネフィリアを心配そうに見つめるのは、実妹であるブリス・レインフォード(ka0445)だった。大好きな姉のために何かしたいと思うのに、何も出来ない現状にもどかしさと苦しさを感じているようだ。
「ブリス、ネフィの様子はどう?」
 長女であるフローレンス・レインフォード(ka0443)が部屋に入って様子を聞くと、ブリスはゆっくりと首を振る。その反応でどういう状態なのか分かったようで、小さなため息をついた。
「ブリスちゃん、フロー姉、ごめんね……」
「……? どうしてネフィが謝るの?」
「だって、僕がこんなだから家事も出来ないし……クリスマス直前だっていうのに……」
 怪我で参ってしまっているのだろう、ネフィリアは普段言わない弱音をポツリと零していく。
「ネフィ、あなたは普段から頑張りすぎなところがあるんだから、こんな時くらい休みなさい。あなたほど完璧にとは言えないけど、私とブリスで家事はなんとかするから」
「えっ……」
 フローレンスの言葉に、ネフィリアはギョッとした表情を浮かべる。はっきり言って、家事面を得意としているのは、姉妹の中でも一番野生児っぽいネフィリアだったりする。ブリスも出来ないことはないが、得意とは言えない。そして、フローレンスに至っては、姉妹の中でも一番家事を苦手としているため、ネフィリアは不安ばかりが心に募っていく。
「い、いや、フロー姉、無理しなくて大丈夫だよ? 僕、もうちょっとすれば動けるようになるし……」
「大丈夫よ、私だってやる時はやるのよ? ブリスも一緒なんだから頑張れるわ」
「……ん、ネフィ姉様の分まで……フロー姉様と、一緒に頑張る……」
「わ、分かった……二人がそこまで言うなら任せるのだ♪」
 結局、ネフィリアは二人の気迫に押されて、家事を任せることになった。
 ――しかし、この時のネフィリアは気づいていない。
 フローレンスとブリスに頼んだばかりに、この後大変なことが待ち受けているということに。

※※※

「まずは、料理からね。ネフィリアには精のつくものを食べてもらわないと」
「……フロー姉様、どうやって、料理するの……?」
「そうねぇ、とりあえず火が通っていれば大丈夫なんじゃないかしら?」
「ん、さすがフロー姉様……おいしいご飯、ネフィ姉様に作る」
 不安な言葉ばかりを並べながら、二人は料理をしていくのだけど――……。
「んにゃっ、フ、フロー姉様、指、切っちゃった……」
「まぁ、大変! ちょっと待っててね、ちゃんと手当をしないと……」
 フローレンスはブリスの指を水洗いした後、ばいきんが入らないようにと舐める。
「んっ……」
「ふふ、血はたくさん出てないから、軽傷みたいね、良かったわ」
「フ、フロー姉様……」
「ん?」
 ボオオオオオオッ!!
「火、火!」
「きゃっ! た、大変! 天井まで焦げちゃったわ……火が通っていればいいとは言ったけど、さすがにこれは通り過ぎて真っ黒コゲ……まず、火を止めないと、水、水……」
「フロー姉様、ホース、蛇口に繋いだ」
「ありがとう、さすがブリスね。気が利くわ」
 そう言いながら、フローレンスは火にホースから出る水を向ける――が、この時点で既に料理は失敗となってしまった。

※※※

「……二人とも、大丈夫かな。さっきから変な声ばかり聞こえるんだけど……」
 ネフィリアが心配そうに呟いた時、レトルトのおかゆを持って二人が部屋に入ってきた。
「ごめんなさいね、料理に失敗しちゃって……結局レトルトになってしまったの」
「ううん、僕の方こそ家事を二人に任せきりなんだし、そんなこと気にしないでいいから」
「……でも、ネフィ姉様に、おいしいごはん……食べさせたかったの……」
 ブリスの気持ちが強く伝わってきたのか、ネフィリアは自然と笑みがこぼれてくる。
「僕、ブリスとフロー姉にこうやってしてもらってるだけでも、すごく幸せだよ。レトルトでも、二人が僕のためにしてくれたんだから、すごく嬉しいし、いつも以上に美味しく感じるよ」
 ネフィリアがブリスの頭を撫でながら言うと、よほど嬉しかったのか、ふにゃりと笑顔を見せた。
「次は掃除をしてくるから、ネフィは大人しく寝てるのよ?」
「うん、分かった」
 ネフィリアはレトルトのおかゆを食べながら答えて、二人が出て行くのを見送る。
(……本当は家事なんていいから、傍に居て欲しいなんて、わがままだよなぁ)

※※※

「フロー姉様、ブリス、こっちを拭く」
「分かったわ、じゃあ、私はこっちをするわね」
 お互いに手分けをして掃除をすることになったのだけど――……。
「ん、わわわわっ、み、水、と、とまんな……っ」
「ブリス、大丈夫? 水の勢い、強すぎよ」
 ブリスが慌てている声を聞いて、フローレンスは自分の持ち場から離れてブリスの元へ行く。
「んぅ、びしょぬれ……」
「あらあら、おいで、ブリス」
 両手を広げると、ブリスはおずおずとフローレンスに抱き着いてくる。
「んぅ……フロー姉様、あったかい……」
(あら、ブリスったらこのまま寝ちゃいそうね……)
 さすがにびしょぬれのまま寝かせるわけにはいかず、眠そうなブリスをなだめながらきちんと着替えさせた後、再び抱きしめると、すぐに寝てしまった。
(……料理に掃除、今日は慣れないこと尽くめだったから疲れちゃったのかしら)
 苦笑するフローレンスも、僅かながらの疲労は感じていた。
(ブリスはこのままソファに寝かせて置いて、残りの家事は私がするしかなさそうね)
 ただでさえ、ブリスは昨夜ネフィリアの看病と心配でほとんど眠れていない。そのせいもあって、今こうやって眠くなってしまっているのだろう。
(おやすみ、ブリス)
 完全に寝てしまったブリスをソファに寝かせて、フローレンスは家事を再開させるのだった。

※※※

「……」
 ネフィリアが完治したのは、1週間後。
 部屋から出るのも1週間ぶりなわけで、台所とリビングの惨状に言葉を失っていた。
「こ、こ、これ、い、一体何が……敵襲!? 敵襲があったの!?」
「敵襲なんて来ても、私とブリスがいれば大丈夫よ。その前に、これは敵襲のせいじゃないから安心して」
「えっ、でも何これ、一体何があればこんなことに……」
「……フロー姉様と、毎日家事頑張ったけど……難しくて……」
「片付けようとすればするほど、なぜかどんどん散らかっていったのよねぇ」
 フローレンスの言葉に、ネフィリアはヒクリと頬を引きつらせる。
「結論として、変に触るより触らない方がいいのかなと思って♪」
 フローレンスの言葉は、ネフィリアを脱力させるには十分すぎるほどの効果があった。
(……僕、この二人のためにも絶対に体調を崩したり、怪我をしたり出来ない)
 今回、ネフィリアは自分がこうなってしまった結果がこの惨状だと納得してしまったらしい。
「ネフィ姉様、ブリス……次は、もっと、頑張るから……」
「ブリス……」
 妹の健気な言葉は、ネフィリアの心を強く打ったのだけれど――。
(ブリスは可愛い妹だけど、それだけはもう遠慮したいかもしれないのだ……)
 ネフィリアは心の中で誓う。
 ブリスは大丈夫でも、フローレンスにだけは絶対に家事をさせてはいけないのだ、と。
 分かっていたつもりでも、怪我や熱のせいでその事実がすっぽりと頭から抜けてしまっていた。
 つまり、この惨状は自分のせいなのだ、と無理やり結論付けてしまう。
 ネフィリアの心労も分からないまま、次はもっと頑張ろうと心に誓う二人だった。

―― 登場人物 ――

ka0444/ネフィリア・レインフォード/14歳/女性/霊闘士(ベルセルク)
ka0443/フローレンス・レインフォード/23歳/女性/聖導士(クルセイダー)
ka0445/ブリス・レインフォード/12歳/女性/魔術師(マギステル)

――――――――――――

こんにちは、いつもご発注をありがとうございます。
今回は体調不良により、遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
今回は三人のドタバタ劇とのことでしたが、
上手く反映出来ているでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていることを願いします。
今回も書かせて頂き、ありがとうございました。
また、機会がありましたら宜しくお願い致します。

2018/1/13
イベントノベル(パーティ) -
水貴透子 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年01月15日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.