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『『初めての温泉旅行?』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 年末年始。
 ディラ・ビラジスの提案で、アレスディア・ヴォルフリートは彼と共に温泉地に警備の仕事で訪れていた。
 いや、ディラは仕事の提案をしたわけではないのだが……まあ、いつものことである。
 観光客でごった返す温泉街で、2人は警備の仕事をこなし、年が明けてようやく落ち着いたある日。
「疲れているわけではないと言ってはいたが、あれからもずっと仕事につき合わせてしまったことだし、今日1日くらいはゆっくりしてから帰るか」
 そんなアレスディアの提案を断る理由はなく、ディラは子供のような笑顔で頷いた。
「巡回してる時、いい場所見つけたんだ。あの宿いこうぜ。あ、もちろん泊りな」
「ん? ああ、まあそれも良いか」
 明日はまだ仕事を入れていない。一日休むのなら、東京に戻ってから休むのでも、ここで休むのでも変わらないだろう。
 何よりディラがとても嬉しそうなので、アレスディアの顔も自然とほころぶ。
 そろそろ仕事始めということで、宿には空きがあった。
「一緒の部屋でいいか?」
 そんなディラの言葉に「ああ」と平然と返すアレスディア。
「……ダブルでいいか?」
「狭いだろ。和室が良くないか?」
「俺、寝相悪いぞ」
「そうなのか、別に構わんぞ」
 あっさりと返してくるアレスティアにディラは乾いた笑みを見せる。
「……やっぱりやめておく」
「?」
 理由はわからないが、別室にするのだそうだ。
 とはいえ、受付けで尋ねたところ2部屋の空きはなく、仕切りのある和洋室を借りることになった。

 案内された部屋に入り、荷物を下ろしてすぐ。
「さて、露天風呂入ろうぜー! 混浴だけどいいよな?」
 ディラの視線を受けて、アレスディアはドキッと鼓動を高鳴らせた。
「冗談はよせ」
「……俺って、アンタにとって同室で寝るのに、何の抵抗も感じない相手だろ? 素肌の付き合いもあってもいいんじゃね?」
「ディラ殿は戦友だ。しかし、男女別の露天風呂もあるのに、敢えて混浴に入る理由はないだろう」
 ディラの悪戯気な言葉に、アレスディアは苦笑気味に答えた。胸の高鳴りは、主に女として肌を晒すことにではなく、肩にある傷跡を思い浮かべてのものだった。
「ま、そーだけどさ」
 ディラは小声でこう続けた。
「俺もアンタの肌、他の男に見られたくないしな」
「……ディラ殿、まさか……」
 その言葉に、アレスディアはディラはもしかして、自分の肩の傷を知っているのでは……と思うのだった。
 2人の思考回路は相変わらず違い過ぎた。

 食事前のこの時間。女性用の内風呂には、小さな女の子と母親の2人だけしかいなかった。
 驚かせないよう、少し離れた位置で身体を洗い、アレスディアは露天風呂へとでた。
 木の壁の向うは男湯のようで、男の子がはしゃぐ声が響いていた。
「ディラ殿は子供が苦手だったな」
 ゆっくり休めていないかもしれない。
 苦笑しながら、アレスディアは湯につかる。
 日は既に落ちていて、電灯の僅かな明かりが湯船を照らしていた。
 こんなに暗ければ、肩の傷を気にすることもなかったかもしれない。
 大きく息をついて、目を閉じる。
 身体を包み込む心地良い温かさが、心まで温めてくれるようだった。

 アレスディアが部屋に戻ると、ディラは既に戻っていて、旅館の浴衣姿でくつろいでいた。
 アレスディアといえば、湯上りなので多少薄着だが、有事の際には護りに行ける装いだ。
 長い髪は生乾きだが、きちんと整えてある。
「料理、届いてるぜ」
 何故かディラはアレスディアをちらりと見た後、目を逸らした。
 湯上りの彼女の姿を直視していられなかったからなのだが、アレスディアに悟れるわけもなく、やはりゆっくり休めなかったようだなと、思うのだった。
「温泉なら寝る前にも入ってくるといい。遅い時間ならば、子どもはいないだろう」
「ん? ああ……」
 テーブルの上には料理が並べられており、鍋はちょうど食べごろのようだ。
 アレスディアはディラの向かいに座り、一緒に食べ始める。
 あっさりとした味の鍋、天ぷらに刺身、少しの漬物に、出汁の効いた味噌汁。
 2人は他愛ない話をしながら、ゆっくりと食事を楽しんでいく。
「街に馴染めたとは言いがたいが去年はお互い、大禍なく過ごせて何より」
「あっという間だったな、一年」
「ああ。今年も一年、無事に過ごせるよう頑張らねばな」
 アレスディアは誓うように静かに呟く。
「誰も傷つかないように、誰も涙することないように、体も、心も護れるように」
「……」
 ディラは何も言わず、アレスディアを見詰めていた。
 アレスディアは誓いが込められた真剣な瞳で、ディラを見つめ返す。
「ディラ殿も、今年もよろしくな」
「今年もよろしく、アレス」
 そして2人は表情を崩し、微笑み合って。
 並んで窓から星空を見上げて、それぞれ深夜の露天風呂を楽しみ、互いが見た景色を語り合い。
 アレスディアはベッドで、ディラは畳に布団を敷いて、眠りに落ちた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
温泉でのほのぼのとした時間のご依頼ありがとうございました。
泊りにさせていただきました。ディラは絶対一緒に泊りたいと思いまして。
ただ、完全に同室だと彼は色々考えてしまって、眠れないかもですね……。
この度はディラの誘いに応えてくださり、ありがとうございまいた。
また機会がありましたら、よろしくお願いいたします!
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東京怪談
2018年01月15日

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