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『予期せず何処かの博士と会える算段が付いてしまった後の話。 』
黒・冥月2778

 問題の、速水博士と会える算段が付いた――但し明日、と時間的にかなり急――と言う話。

 真咲御言から預かって来たと言う刑部和司のその話を思案しつつ、黒冥月は大元の本題である依頼――ノインに絡む諸々の現状を確認する。湖藍灰の弟子が都合を付けられるのが今週の土日との事で、決行日をそのどちらにするかは任せると既に言ってありはするのだが…こうなると、少々事情が変わって来る。
 まぁ、博士の件は流れからして御言に任せてしまってもいい話、ではあるのだろうが、博士捜索の依頼主の身でありながら、任せきりで居るのもどうも居心地が悪い。…その旨話したら俺は色々任されてるがと草間武彦の方からぼやきめいた文句が来たが、お前は只の駒だとはっきり言ってやった。…そもそも零の為でもある話で扱き使ってやっている訳だから、草間を萱の外にした方が却って本気の文句が来そうなものでもある。つまり今のぼやきを気に留める必要は全く無い。
 ひとまず、刑部と――草間興信所に来訪早々諸事情で影内に引き摺り込ませて頂いた常盤千歳の二人については、久々の再会だとの事なので親交を深めてと言うか旧交を温めて貰いつつ――影を通じて望むところに送る事にする。…これで仮に尾行されていたとしても追跡は不可能になる。その旨伝えると、刑部からは丁寧な礼をされ、常盤からはこれはまた至れり尽くせりでとか何とかわざとらしい軽口を叩かれた気もするが――まぁ、どちらにしても感謝はされたのだろう、一応。…私にしてみれば大した手間では無い。

 二人を見送ってから、湖藍灰へと連絡を入れる。
 どうやら速水博士と会えそうなので、柵も魂も無い肉体を調達する算段が付くか駄目元で当たってみるつもりである事、但し時間の猶予的に急な話を捩じ込む事にもなるので、念の為、決行日を日曜の方にして欲しい事――交渉の結果が決裂しようと途中放棄になろうと、間に合うように戻る事も伝えた。…今最優先すべきは大元の本題である依頼、即ちノインの肉体の用意ではなくノインと会話する為の儀式――とその隠蔽だと承知している。だが可能性がある以上は――何とか捩じ込めるだけの時間がまだある以上は、速水博士の方との交渉も試みておきたい。
 その旨伝え、了承も得る。…具体的に返って来たのは、うんわかったおっけー、との軽い返事。ほぼそれだけで細かい打ち合わせをする事も無かったが、まぁ、こういう奴だとそろそろ慣れた。

 他にしておく事は。…ノインに関わりそうな姪の持ち物の心当たりを誠名に調べて貰う必要もあった。まぁ、これは取り敢えず草間に任せていいだろう。
 と、そこまで話が付いた時点で私は草間と共に影内から出、興信所の事務所に――零の前に戻る。戻ったそこでだいたい話が纏まったと零にも簡単に伝えつつ、思い切り愛情込めたのを頼むぞ、と敢えて草間の前で意味深に伝えておいた。…勿論、今この状況で零にこんな言い方で頼むと改めて言うような事と言えば弁当の件しか無い。言った途端に草間の方から妙なオーラが漂って来た気がしたが、まぁ無視。零が草間のその様子に気付いたかどうかは、定かではない。
 それより私は、急ぎ御言の方に同行を連絡する。…何か用意すべき物はあるか――私個人が用意出来るのは金と私と言う戦力くらいだが。
 そう付け加えると、備えられる事は備えておいた方がいいと思いますよ、と返された。

 …確かに、その通りだ。



 バー『暁闇』店舗、裏口。

 そこに来訪した私を見、お、とばかりに少々びっくりしたらしい様子の速水凛。それを認めるなり、私の方ではどうも露骨に嫌な顔をしてしまった気がする――と言っても誰に確認をした訳でも無い。それより殆ど反射的に凛のその頭部を影で覆い五感を塞いでしまっていた。…何と言うか、少しでも間を作ったらまた鬱陶しい羽目になりそうな気がした…のかもしれない。
 そのままで、御言を見る。…ちなみに御言は来訪早々いきなり目の前でここまでしても特に気にした様子が無い。私の行動を予想出来ていたのか単に元々の性格なのかは知らないが。

「こいつを無碍に扱ったら速水博士の心証が悪化し協力を断られると思うか」
 無碍にと言うか、暴力も含めての話だが。
「どうでしょう。博士がどういった方なのか、直接は存知上げないのでわかりかねます。ただその前に。現時点で言える事としては――速水博士の心証云々の前に彼女の協力が無いとそもそも速水博士と会う事自体が出来そうに無いんですが」
 一応、俺を連れて来るようにと御下命が下ってはいるらしいですが、何処に居るかとかその辺の事は凛しか承知していないもので彼女の案内が必須です。
「そうか」

 となると…どうなんだ、と軽く自問する。彼女の扱いについては正直全く自信が無い。そもそも自信が無いからこそ纏わりつく凛の興味を逸らす為に御言らを頼る羽目になったとも言う訳で…当の凛は暴力も大して気にしないし、無碍に扱えば扱う程却って面白がって絡んで来る場合もある訳で…考えれば考える程悩ましい。ので、つまりこれはもういつも通りでいいか、と結論を出す事にする。…こういうまどろっこしい状況に於いて、細かい機微を考え対処する能力は私には無い。
 むしろその辺りについては御言に頼んでこちらは一歩引いていた方が向きだろうと思い、その旨を伝え改めて頼む。それから――凛の頭部を覆う影の拘束を解いた。直後の凛の反応はと言えば、ったく御挨拶だなとか何とか軽く悪態を吐かれるくらいで済んでいる。
 で、ねーさんまで何しに来たんだと改めて問われたところで、私の方でも今度こそ真っ当に用件を話す――即ち、速水博士に協力を頼みたい事がある旨を話すだけ話した。と――ったくそういう事かよ、と凛は何やら勝手に納得。どうやらこれまでの「こちらの一連の行動」が、速水博士と接触を図る事を目的とした策謀だと思われた、らしい。…まぁ、あながち間違ってはいない。それが最終目的では無いが、わざわざ訂正する必要も無い。

 私が同行すると言う事で、だったら足はねーさんに頼むわとか何とか凛からいきなり頼まれた。…要するに影を介しての移動をする事で、速水博士の元に行くまでの道程を大幅に削減したいと言う事らしい。…確かに凛には影を使ったその能力を見せてしまっているが、だからと言っていきなりそう振られるとは思わなかったのだが。
 何にせよ、案内人の方がそんな緩い調子なので、速水博士の元に向かう往路については拍子抜けするくらい問題なく済みはした。とは言えあくまで往路については、で、その後は少々ややっこしい事態にもなったのだが。
 何がややっこしかったかと言えば、当の速水博士の興味が私個人に向いた点。…そもそも私の同行がすんなり認められたのは「そうなる」だろう事を凛が予想していたかららしく、その予想通りに速水博士の方から私の髪を一筋くれないかと何処かで聞いたような頼み事をされた。
 まぁ、私の方でもある意味好都合。こちらの頼みの対価としてならと水を向け、協力を要請したいとこちらの話に持ち込む。柵も魂も無い肉体が造れるか否か――造ってくれるか否か。先に報酬が提示されたとなれば、交渉はし易い。
 そう思ったのだが――つまりそれは冥月さんの「年の離れた双子の弟か妹」がその内現れると言う事になりそうな気がするんですが、と御言に改めて指摘され、暫し停止する。…つまり御言にとっての凛、のような存在を私で造る気かと言う事に気付き、不覚にも少々躊躇った。

 と。

 その躊躇いを見計らったようにして、何処かで見たような白刃が飛んで来た。その正体は凛の得物――件の邪妖精で構成された青竜刀。前置きも何も無く、いきなりの攻撃。勿論、私の方でもその攻撃への咄嗟の対応は出来ているが――つまりこれは交渉決裂と見ていい訳かと溜息が出る。
 ただ、それにしては――到底戦闘要員とは思えない速水博士の方も、面白そうに状況を見ているだけでこの場から離脱する気配が無い。ならばそれ程娘の実力に信を置いていると言う事か、とも可能性を考えてみるが――どうもそういう感じでも無い。凛も凛でそれなりに本気は感じるが、以前にやり合った時のような――心底楽しんでいるような、刃と共に感情をぶつけて来るような狂熱は感じない。…もっと何か、理性的に、計画的に試しているような小賢しい気配がある。

 ならこの状況は、何を狙っている?


【予期せず何処かの博士と会える算段が付いてしまった後の話。
 交渉中、何やら問答無用で襲われてしまいましたが、どうもただ襲われたのでは無いようで…?】



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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■PC
【2778/黒・冥月(ヘイ・ミンユェ)/女/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】

■NPC
【-(旧異界内表記のみNPC)/速水博士/虚無の境界構成員(元)】

【NPC0463(旧登録NPC)/真咲・御言/男/32歳/バーテンダー】
【NPC5487(旧登録NPC)/速水・凛/女/14歳/虚無の境界構成員】

【NPCA016/草間・零/女/-歳/草間興信所の探偵見習い】
【NPCA001/草間・武彦/男/30歳/草間興信所所長、探偵】

【NPC0534(旧登録NPC)/刑部・和司/男/47歳/IO2捜査官(エージェント)】
【NPC0477(旧登録NPC)/常盤・千歳/男/46歳/警察官】

【NPC0479、480(旧登録NPC)/鬼・湖藍灰/男/576歳/仙人、虚無の境界構成員】

(名前のみ)
【NPC0469(旧登録NPC)/真咲・誠名/男/33歳/画廊経営・武器調達屋・怪奇系始末屋】
【NPC5488(旧登録NPC)/ノイン/男/?/虚無の境界構成員(元)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 いつもお世話になっております。
 今回も発注有難う御座いました。
 そして今回もまた結局期間いっぱいまで使ってしまってお待たせしております。

 今回実は諸事情ありまして、このライター通信部分や本題のノベルの方で普段やらないようなポカをやっていないかどうかが非常に心配な状況だったりしています。そろそろ復帰出来てはいると思うのですが…自分では確りやっているつもりでも何かしらすぽーんと抜けている可能性がまだまだありそうな状況と言うか。
 取り敢えず、まともにこちらの意図通りにお届け出来ていればいいのですけれど。

 内容についてに移ります。
 ちなみにこの後、余程の事が無ければ速水博士&凛側はやけにあっさり手を引いて、交渉については有耶無耶のままに退散してしまうと思われます。
 そして置いて行かれたところから戻るのに少々苦労するかもしれません、と大雑把な予告のようなものを。
 また今回、速水博士の人物像描写がほぼ無い状態なので、結局実質的には正体不明なままだったりするのですが…その辺りは次回以降機会が頂ければきちんと描写出来るかと思います。…文字数が許せばですが。

 と、こんなところになりますが、如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、次に機会を頂ける事がありましたら、その時は。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2018年01月19日

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