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『薔薇の目覚め 』
天谷悠里ja0115

「……様……」

 呼ばれる声と落とされる口付けで天谷悠里(ja0115)は目を覚ました。

 窓の外には少女と同じ白い月が輝いている。

「おはよう」

 水を受け取りながら微笑むと少女、いや紅い姫も少しぎこちなく微笑んだ。
 いくつかの夜を女王と共に過ごした彼女は、女王からの愛に応えるように、来店当初からあった無機質な雰囲気を崩し始めていた。

「まだ苦手なのね」

「……申し訳ありません」

 愛を注がれる時は自然な表情を見せるのに。揶揄うようにそう囁けば、少し頬を染める姫の姿も愛らしい。
 その前髪の間からしゅんと眉根が下がっているのが見える。

 無意識でそのような反応を見せるようになっただけでも悠里はそこそこ満足している。
 一気に染め上げるのも心地良いが、ゆっくりと侵食するように染めていくのもまたそれはそれで一興だと、姫と過ごす夜の中で女王は感じていた。

  ***

「御召し物を用意してございます。こちらへ」

 フィッテイングルームには、悠里がまだ女王になる前に足を踏み入れた時と同じように、様々な色や形のドレスが並べられていた。

 初めてここに入った時選んだ、水色のプリンセスドレスもこの中にあるのだろうか。そんな考えが一瞬頭をよぎるが、彼女が迷うことなく選んだのは真紅の豪奢なドレスだった。

 いつも着ている洋服のように袖を通し、慣れた動きで椅子に腰を掛ける。
 鏡に映るのは妖艶で高貴な美女。骨格やパーツは初めて店に来た時と同じだが、かつての清楚な女性はどこにもいない。

「真紅の女王に祝福を」

 姫はそう言うと恭しく頭を下げ、壊れ物でも扱うかのように髪に櫛を入れる。

「世の、今までこの地上にいたどんな美女よりも美しい愛しい方にお仕え出来て至上の光栄です」

 聞く限りその声は真実であるようだった。
 悠里の美しさを口にし、愛と忠誠を言葉にしながら少女の櫛が闇の様に黒い髪を梳かしていく。その言葉に、目を閉じ聞き入っていると、背中、腰のあたりに髪が触れるのを感じ、そっと瞼を押し上げる。
 彼女の髪は腰に触れるほど長くはない。少なくともこの席に座るまではそうだった。
 鏡の中で視線がかち合った女王の髪は腰までの緩いウェーブ髪だった。
 先程までなかった。こめかみのあたりの一房の真紅の髪が悠里の目を引く。

「今一度、目を」

 声にそっと目を閉じれば、ついばむ様に瞼に唇が触れる。
 額を、頬を、唇を姫の指が優しく撫で、唇が追いかけるように落とされていく。

 蜜を思わせるような甘さを纏った薔薇の香りと、メイク終了を告げる声に再び目を開く。

 鏡の中には、妖艶な薔薇の文様を纏った女王。

 メイク前でも、以前とは比較にならない程妖艶で高貴だったが、メイクを施された今となっては別人にしか見えない程変わってしまっている。
 かつての彼女しか知らない者や、依然と今の写真を見比べただけの人間は口をそろえて全くの別人だ。と言うだろう。

「これは……」

 身体に伸びる草木のような文様に触れながら、そこまで口にして悠里は思い出す。
 渦を巻きながらの伸びる蔦とところどころに咲く赤い薔薇
 これは、少女たちがドレスアップの仕上げに施された祝福だった。だが、記憶の中の薔薇はミニバラ程度の小さなもので、今の様に大きくはなかった。

「女王様の魅力を内に秘めておく必要はもうありません。その薔薇は、貴女様が昂れば昂るほどその蔦を伸ばし、多くの華を咲かせ、甘く香ります」

「この薔薇が私の熱の象徴。という事?」

「はい」

 姫の腰を抱き寄せその唇を奪いながら自分の体に視線をやる。
 なるほど、伸びた蔦の先で新たな薔薇が開花し、悠里は自分の纏う香りがより強く甘くなったのを感じた。

「いい子ね。ご褒美を上げるわ」

 満足げに口元を歪めた悠里の耳元で姫が小さく甘い声を上げた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / Red rose queen 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お久しぶりです。今回もご依頼ありがとうございました。

 お任せいただいた髪型については、おまけの方で詳しく書いておりますのでそちらもお楽しみ頂ければと思います。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年01月24日

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