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『銃刀の戦乙女』
サクラ・エルフリードka2598


 武器は自由、だが防具は変更も修理も不可。
 地下闘技の主催組織が突然、そんな規則をサクラに突き付けてきた。
 この条件で、最後まで勝ち残るか負けるまで、戦い続ける。
 サクラの目の前に、選択肢はそれしかなかった。
 さもなくば、あの少女を捜し出して捕えて戦わせる。闘技の主催者は、そう言っているのだ。
「やるしか、ないですね……うまくいけば、組織の首魁に近付けるかも知れませんし」
 決意を固めながら、サクラは闘技場に立ち、観客たちの熱狂を全身で感じていた。
 防具の交換や修理は不可。つまり、ちぎれたマントを胸に巻き付けるしかないという事だ。
 有るか無きかの、良く言えば可愛らしい胸の膨らみが、ボロ布も同然のマントで辛うじて包み隠されている。
 胸と同じく、膨らみの控え目な尻周りは、ミニスカート状の腰鎧で覆われている。
 控え目な胸と尻を精一杯、強調する感じにくびれた脇腹も、うっすら綺麗に浮かんだ腹筋と可憐な臍の凹みも、愛らしく引き締まった左右の太股も、完全に露出し、観客らのギラギラとした眼差しをまともに浴びているのだ。
 客が、熱狂している。盛り上がっている。地下闘技場に、金を落としてくれている。
 主催組織としても、このままサクラ・エルフリードを使い続けるしかないのだった。
 本来ここで戦うはずだった少女の事を、サクラは少しだけ思った。
 自分が戦わなければ彼女が最初の試合で、あの凶悪な男たちに一体どんな目に遭わされていたものか。
 この観客たちは、そんなものを見るために金を払い、組織の悪事を支援している。
 怒りの炎が、サクラの胸中で燃え盛った。
「こんな見世物を……存続させておくわけには、いきませんっ」
 右手のガンソード、左手の盾。
 たおやかな少女の細腕が、それらを勇ましく構える。見ているだけで不快になるような生き物たちに向かってだ。
「ぐっ、ぐへ、ぐへへへへへ」
 笑い声を発する、大型犬……いや。醜くねじ曲がった顔面は、人間のそれに似ている。人間の男の、嫌らしく弛みきった笑顔。
「ぐヘヘへへ、ぐへっ、ぐへっ」
「げひ、げひひひひひひ」
「あふっ、あふはふ、ふへひひへへへへへジュルジュル」
 合成生物の類であろう。おぞましさ極まる人面の犬が5匹、サクラに向かって眼球を血走らせ、息荒く舌を出して大量の唾液を飛び散らせている。眼前で凛々しく身構える少女の肢体を、舐め回したくてたまらぬ様子である。
 この醜悪な生き物たちが、第2戦目の相手なのだ。
 1匹が跳躍し、襲いかかって来た。
 その襲撃を見据えながら、サクラは引き金を引いた。
「近付いて戦え、とは言われておりませんし……」
 ガンソードが火を噴き、魔犬の全身が歪んでひしゃげた。少女にしゃぶりつこうとしていた人面が、原形を失い、飛び散った。
 1匹が射殺されている間、しかし他4匹が、不気味なほどの敏捷性で距離を詰めて来る。
 サクラは、ガンソードを振るった。
 大型の銃剣が、人面魔犬の1匹に深々と突き刺さる。そして抜けなくなった。
「いけない……!」
 魔犬の屍が、サクラの右手から得物を奪いながら倒れ込む。
「ぐぅへへ、うえっへへへへへへ」
 1匹が、サクラの太股を狙って飛びついて来る。
 ガンソードの回収を諦め、サクラはかわした。魔犬の牙が、腰鎧をかすめた。
 ミニスカート状に部分鎧を固定する金具が、ちぎれかけた。が、気にしている暇はない。
 もう2匹の人面魔犬が、別方向から襲いかかって来ているのだ。
 かわそうとせず、サクラは身を翻した。
 いささか膨らみに乏しいながらも愛らしく起伏したボディラインが、竜巻の如く高速捻転した。
 スリムに鍛え込まれた右太股が、ミニスカート型の部分鎧を押しのけて跳ね上がる。清楚な純白の下着が、高々と露出する。
 それと同時に、ほっそりとした美脚が鞭のようにしなって弧を描く。
 超高速の回し蹴りが、人面魔犬の1匹をグシャリとへし曲げ、吹っ飛ばした。
 その間サクラは、後方へと左腕を叩き込んでいた。
 重い粉砕の感触が、左前腕に貼り付いてくる。
 もう1匹の人面魔犬が、サクラの盾に殴り飛ばされ、ひしゃげながら闘技場に倒れ伏していた。
 生きている人面魔犬は、あと1匹。汚らしく唾液を飛散させながら牙を剥き、舌を踊らせ、少女の太股にしつこく喰らい付こうとする。しゃぶりつこうとする。
 劣情そのものの形に歪んだ人面が、さらにグシャアッ! と歪み潰れた。
 サクラが、右拳を打ち込んでいた。
 人面魔犬が吹っ飛んで行く、その間にサクラは屍に突き刺さったガンソードを引き抜き、横薙ぎに振るいながら引き金を引いた。
 斬撃にも似た、掃射。
 蹴り飛ばされ、殴り倒され、それでも執拗に劣情を燃やして起き上がりサクラに襲いかかろうとしていた人面魔犬3匹が、銃撃の嵐に薙ぎ払われて砕け散る。
 いくつもの空薬莢が、宙を舞った。
 少女のたおやかな繊手が、硝煙まとうガンソードを軽やかに回転させる。
「ふう……何とか、なりましたか」
 息をつくサクラに、歓声が豪雨の如く降り注ぐ。恐ろしく熱狂的な歓声だった。
 悪い予感がしたので、サクラは己の身体を見下ろした。
 ボロ布の同然のマントは、破けたわけでもなく胸に巻き付いたままである。
 サクラは安堵した。やはり今度こそ、観客たちは純粋に自分の戦いぶりを誉め讃えてくれているのだ。
 それはそれとして、下半身が妙に涼しい。
 サクラはもう1度、己の姿を見下ろした。
 壊れかけていた腰鎧が、完全に剥落していた。
 純白の下着が、スリムな両太股の間で、女の子の大事な部分にぴったりと貼り付きながらも愛らしく盛り上がっている。やや未熟な白桃を思わせる尻に、キュッと食い込んでいる。
「あ……ああっ、きゃああああああああッ!」
 可愛らしく悲鳴を轟かせながら、サクラは控え室へと逃げ込んで行った。
 野卑で下品な歓声が、少女を追い立てるように、おぞましく鳴り響き続けた。


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登場人物一覧
【ka2598/サクラ・エルフリード/女/15歳/聖導士】
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小湊拓也 クリエイターズルームへ
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2018年02月02日

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