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『鴉、初詣〜三年目〜 』
真壁 久朗aa0032)&齶田 米衛門aa1482)&稲穂aa0213hero001)&クレア・マクミランaa1631)&御代 つくしaa0657)&メグルaa0657hero001)&笹山平介aa0342)&セラフィナaa0032hero001)&佐倉 樹aa0340)&シルミルテaa0340hero001

●集まったり眠かったり
 クレア・マクミラン(aa1631)は常日頃のスーツの上に、紺色のフレアコートを着て集合場所に立っていた。
 到着したのは予定時間の十分前。どうやら一番乗りらしい。のんびりと待つつもりで、寒さを凌ぐために持参したコーヒーボトルに口をつけようとした所、道の向こうから笹山平介(aa0342)が、常よりさらに三割増しの笑顔を浮かべて現れた。
「あけましておめでとうございます、クレアさん」
 皆との初詣にワクワクが止まらないのか、声もどこか弾んでいる。先に来ていたクレアのために温かい飲み物をと思ったが、その手にあるボトルに気付き平介は代わりに笑みを深めた。ご馳走をする機会は後に回してもいいだろう。
「あけまして」『おめデトう!』「ございます!」
 三人で台詞をシェアしつつ歩いてきたのは、佐倉 樹(aa0340)とシルミルテ(aa0340hero001)、途中で合流した御代 つくし(aa0657)。メグル(aa0657hero001)は三人の割り台詞には参加せず、「今年もよろしくお願いします」と礼儀正しく頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします。皆さん、迷ったりはしませんでした?」
『ダイジョブ!』
「今年も迷子にならなかったよ!」
「“鴉”で迷子になると言えば……」
 平介の問い掛けにシルミルテ、つくし、樹の順で返した所で、樹のスマホが鳴り響いた。画面を見ればそこにはマイペース農家、齶田 米衛門(aa1482)、の愛称「ヨネさん 」の文字。
「申し訳ねえッスけど、道教えてもらってええッスか? お汁粉売ってる店の前までだばなんとか一人で来れたッスけど」
 などというやり取りを三回した末、米衛門は「あけましておめでとうございますッスよ!」と素敵な笑顔で現れた。二年連続で迷子になり易い属性を発動した米衛門は、「流石に今年は迷わないと思う」と思いつつ、時間より余裕を持って早めに出発、あと少しの所でやっぱり迷った。だが今年は秘密兵器「ガラケーで電話する事」を覚えた。持つべきは頼れる仲間と文明の利器である。(なお英雄組は他で初詣に行っている)。
 その直後、集合時間ほぼ同時に今度は稲穂(aa0213)が到着した。桔梗の花飾りが目立つポニーテールに赤い着物は変わらずだが、冬空という事でいつもよりも厚着をしている。
「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそお願いするッスよ! 今日はお一人なんッスね」
「ええ、お騒がせ忍者の方はお留守番で……」
 そのお騒がせ忍者は今、稲穂が作りすぎてしまった餅と格闘の末喉を詰まらせ、もう一人の英雄がなんとかしようと焦っていた。果たして常に覆面を外さぬ男がどのように餅を食べ、どのように喉を詰まらせたのか……という詳細は割愛する事にする。
 と、そこで一同は、まだ二人来ていない事に気が付いた。他でもない“鴉”の隊長と、その英雄がまだ来ていない。珍しい事もあるものだとそれぞれ顔を見合わせた所、当事者の一人であるセラフィナ(aa0032hero001)が、目付きが悪く寝癖の酷い男をえっちらおっちら連れてきた。
「すいません、ちょっと遅くなりました。ほらクロさん、着きましたよ」
 セラフィナに腕を引っ張られ、目つき悪男……もとい真壁 久朗(aa0032)は眉間の皺を少し緩めた。濃紺のニットの上に、ブラウンのピーコートとグレーのマフラーという出で立ちに異常はないが、元々良くない目付きがさらに悪くなっており、ろくに直していないのか寝癖ましましになっている。どうやら夢見が悪かったらしい。
 そんな久朗をセラフィナが、四つ葉の飾りがついたトレンチコート、ヒヨコマスコット付きのふかふかなマフラー着用という恰好で、どうにかこうにかここまで連れてきたという訳だ。
「おはようございます久郎さん、良ければ車で行きますか?」
 まだ眠気の取れていなさそうな久朗を気遣い、平介がすかさず尋ねてみたが、久朗は首を横に振った。寝起きが悪いのは本当だが、皆と合流して幾分気が紛れたのも確かだ。
「……大丈夫だ、ありがとう。そんなに遠くもないし、歩いて行こうかと思うが……どうだろう」
 異論は上がらず、一同は徒歩で神社へ赴く事となった。ならばと平介が道案内を買って出て、稲穂はクレア相手に「年賀状書いた?」「今日は何お願いする?」と雑談を交えつつ初詣場所へと向かう。
「いつきちゃん、手、繋がない!?」
 どこか気負ったような表情で声を掛けてきたつくしに、樹は少々面喰らった顔をした。とは言え、樹の表情がそこまで大きく変わる事はないのだが、つくしはそこには拘らず、少し口早に畳み掛ける。
「えっと、はぐれちゃったら大変だし、私がはぐれちゃいそうだし、二人で一緒だったら楽しいかなって! どうかな……?」
 首を傾げて、伺うように樹を見る。布に隠された樹の右目に、少し顔が歪みそうになったが、表に出すのはなんとか堪えて樹をじっと見続ける。
 樹はしばしつくしを見つめ返した後、「いいよ」と言った。その言葉が、脳にしっかりと届いた瞬間、つくしは飛びつくように樹の右手を握り締めた。
「ありがとういつきちゃん! 今日はいっぱい楽しもうね!」
「……うん」
 手袋の上からしっかりとつくしが樹の手を掴む。樹は少し面はゆいような、なんとも言えない表情をしてつくしと共に歩き出す。
 二人の後ろ姿を見ながらシルミルテは「フむ」と声を漏らした。色違いのおそろいをまとった『半身』の右側は、彼女の友達が居たい模様だ。ならば自分はどうしよう……と思った所で、セラフィナとぱちりと目が合った。セラフィナはにこりと笑みを浮かべ、シルミルテの左に寄りそう。
「僕達も一緒に行きましょう、シルミルテさん」
 シルミルテは「モチろん!」と返し、セラフィナの右手をきゅっと握る。うさ耳でホールドしたベレー帽の下の眼帯は、友達のモチーフであるクローバーをあしらっている。そう、今左隣にいる、一番大好きで大切な友達の。

●引いたり願ったり
 部隊の皆での初詣も今年で三年目という事もあり、稲穂的にはお騒がせ忍者がお留守番という事もあり、神社への道のりは非常にスムーズなものだった。
 神社の作法も、神様への礼儀を尽くしてスムーズに終え、神前へとそれぞれ参る。まずは久朗と平介が。
「……今年も去年と変わらない、が」
 久朗にとっては願い事を言うというよりも、報告や再認識をしに来た意味合いの方が強い。両手を合わせ、己と向き合うように心の内のみで呟く。自分はちゃんと、良い方に変われているのだろうか? そう思う事もある。
 だが、それに対する答えはなく。そして答えがなかったとしても。
(「“今”が続くように、俺にできることをやる」)
 改めて決意を心中で述べ、深く一礼して後ろへ下がる。次はクレアと稲穂だった。クレアの願掛けは「無病息災」。何事も健康が一番である。なおニコチンと酒は己に必須のものとする。
 セラフィナも久朗と同じく願い事というよりは、自身の在り方を見つめ直すものだった。こうしてまたみんなで、三度も足を運んでこれたのは、とてもすごい事。お互いがお互いに気を配って、思いやらなければ、人との繋がりはここまで続かないもの。
 だからこそ感謝を忘れずに、これからもみんなで楽しくを続けていきたいと。
 シルミルテも両手を合わせつつ、「今年モお邪魔しマス」程度の事しか唱えない。願い事は自力でつかみ取り叶えるが生き方だ。これまでもこれからも。
(『タダ、協力しテくれタラお神酒を奉納しテあげまショウ』)
 樹は昨年のお礼を述べる事にした。去年引いたおみくじには『願い事。あきらめモードはNG。もっと前向きに』という内容が書かれてあった。そしてあきらめずに前向きに行動したからこそ、願いに大きく一歩近づけた。行動したのは自分だとしても、アドバイスへのお礼はきちんと告げるべきだろう。
「いつきちゃん、終わった?」
 つくしの声に、樹は左目を開いて頷いた。メグルも願い終わったらしく、三人揃って後ろへ下がる。つくしが自分をじっと見ている事に気付き、樹は問われる前に逆につくしへ問い掛ける。
「何をお願いしたの?」
「えっとね、みんなで色んなことがしたい! プールとか温泉とか、またみんなで色んなとこに行きたい! それから、ちゃんと話がしたい。大切な英雄たちと、ちゃんと」
 それと、とつくしは樹をちらりと見る。皆には告げるつもりのない、もうひとつの願い事。その意味も含め、樹の手をぎゅっと握る。それから不安を吹き飛ばすように明るく声を張り上げる。
「おみくじ引こう! 今年も絶対引きたいって思ってたんだ! 今年は何が出るのかな」
「そうッスね。毎年恒例ッスし、今年一番の運試しッスよ!」
 つくしの提案に米衛門が即座に乗ってきた。米衛門にとって、初詣は新年に友に会える良い日であり、それ以外は究極を言えばおみくじ以外は求めない。
 全員おみくじを購入し、「いっせいのーで!」で一緒に開く。つくしのおみくじは「小吉」だった。『願い事。待つが良し』。おみくじは大吉、中吉、小吉、吉、末吉、凶、大凶となっているので、「良い」寄りの普通といった所か。悪かったら気を付けよう、良かったら頑張ろうと思っていた所だろうが。
「気を付けつつ頑張ってって、そういう事かな? ……うん、そうだね。それが一番いいかもね」
「オイは大吉だったッスよ! 内容は『仕事。チャレンジが吉』だそうッス」
 米衛門が豪快におみくじを掲げたが、彼は去年の凶、その前の大凶でもこのテンションだったので、大吉だから豪快に掲げている訳ではない。大吉だろうが大凶だろうがマイペース農家、ブレない。
「僕も大吉です! お仕事と金運で『出会いが吉』だそうです。楽しい一年になってくれればいいですね」
 セラフィナがドキドキしつつおみくじを広げ、クレアは書いてある内容に少し微妙な顔をした。おみくじの結果より中身を見るタイプなので(健康と仕事しか見ないとも言う)、「吉」と書いている事にはあまり拘りはないのだが。
「『健康。柔軟体操が良し』『仕事。勧めるが吉』。仕事はともかく、柔軟体操に言及か……まあ、心がけるとしよう」
 シルミルテは神社をふりかえりちょっとだけムムーとした。『願い事。気合いがちょっと空回り気味。冷静になって』。吉凶には拘らないので「小吉」なのはともかくとして、忠告めいた内容に少し口を尖らせる。
「小吉。『願い事。悲観的にならなければ道が開く』『待ち人。焦らなければ来るはず』」
 悪くはないが、どこか諫めも入ったような内容に、樹はふむと首を傾げた。シルミルテと同じく吉凶そのものには拘らないが、内容は重視するので心に留め置く事にする。
 樹は紙を畳んだ後、即座に久朗のおみくじを覗きに行った。先に述べたように吉凶そのものには拘らないが、久朗とだけは優劣をつけねばならない。つけねばならないと言っても、あくまで恒例行事なので、負けて(?)も気にする事はないが、そこは恒例行事である。
 久朗の結果は「大吉」だった。とは言っても久朗は「もう一人の英雄が凶だったらしいのでそれより良ければよし」程度の感慨しかないのだが、樹は少し「ちっ」と思った。負けて(?)も気にする事はないが、久朗よりも結果が良ければふっと軽く鼻で笑ってから、他者では見ることが出来ないであろうドヤ度が大変高いドヤ顔を披露しようと思ったのに。それはまた今度のお楽しみということにしよう。
『願い事。深刻に考えないで。意外と簡単な事のはず』
 平介は「中吉」と書かれたおみくじに一通り目を通した後、丁寧に細く折り畳んだ。それからいつもの人当たりのいい、にこやかな笑みを皆へと向ける。
「皆さん確認しましたか? それじゃあ結びに行きましょうか」
『結ブ! なルべく高いトコ!』
「よろしければお手伝いしますよ?」
『ヨロしク!』
 樹(達)の密かな比べ合いを密かにスルーしたシルミルテは、おみくじをなるべく高い枝に結ぼうと、平介と共に結び所へと走っていった。稲穂もまたおみくじを畳んだ後、皆の背を追い掛ける。「小吉」『願い事。ひとりで頑張ってもダメ。誰かを頼って』。
「確かにこのお願い事は、私一人で頑張ってもダメよね……」
 聞かれても伏せるつもりだが、稲穂の願いは『彼女達の想いと行動が報われますように』。そう、皆に、そして樹に向けて願う。
「みんな、結び終わったら温かいもの食べに行きましょう! あ、懐炉もあるから、使って使って!」
 稲穂は持参の懐炉を一人一人に配って回った。今日は忍者が居ない分、いつもより皆の方にも目を向けるように心掛ける。おせっかいがちとも言うが、おせっかいを焼くのは稲穂の本分であり本懐だ。

●食べたり遊んだり
 たこ焼き。日本生まれの粉物料理の一種であり、小麦粉の生地の中にたこと薬味を入れて直径三〜五センチほどの球形に焼き上げる、初詣の屋台でも人気のある料理である。
 久朗は数ある屋台から「中はしっとり、外までしっとり!」とのぼりの立った所を選び、ザ・たこ焼きと言わんばかりのプレーンたこ焼きを購入した。たこ焼きはしっとり派。断固しっとり派である。ちなみに好きなおやつは濡れおかきとそばぼうろである。
 一方、久朗の旧来の知己にして恒久の天敵である樹は、どちらもイケる程度のしっとり派。つまり本来であれば久朗と対立する理由は特にない。
 が、久朗がしっとり派であるならば、カリカリ派となるのが恒久の天敵の宿命である。「中はしっとり、外はカリカリ!」を掲げる屋台でたこ焼きを買い、しっとり派と比較してカリカリ派がいかに素晴らしいかを語り出す。なお、しっとり派を直接貶すことはしない。礼儀は守る。
「クリスピーなカリッとした食感と、中のとろっとした食感を一口で一挙に楽しめる。これがカリカリ派の醍醐味だよね」
「……カリカリしたたこ焼きなんて邪道だろ」
 という樹と久朗のいつもの平和なやり取りを、クレアはカリカリたこ焼きを食べつつ少し離れて眺めていた。タコがデビルフィッシュである事は知ってるが、もう慣れた。信仰心はあれど、熱心なクリスチャンというわけでもない。美味しいものは美味しい。なおたこ焼きはカリカリしてる方がいい。
「クレアさん、飲み物お一ついかがですか?」
 と、稲穂と飲み物を買いに行った平介が、クレアに飲料入りのビニール袋を見せにきた。ちょうど飲み物が欲しかった所だったので、缶コーヒーを一つ頂く。
「ありがとう」
「どういたしまして」
 平介はにこりと笑みを深めると、久朗や樹にも飲み物を勧めにいった。クレアはコーヒーを一口飲み、賑わう人々をふと見渡す。さすがに日本を活動拠点にし二年経つため、特に物珍しいということはない。初詣も自然に行ったし、また相変わらず性格が性格なため、目に見えてはしゃぐようなこともない。
 だが、気の合う仲間と一緒なため肩の力は抜いている。染み渡るようなコーヒーの温かさにふっと笑みを零しながら、クレアは改めて辺りを見回す。さて、次は何を買い食いしようか。

 シルミルテは樹達の毎度の事はスルーしつつ、「セラフィナ、あれ食べヨウ!」と友達の手を引っ張った。なおたこ焼きはしっとりカリカリどちらも好きだが、今の目当てはたこ焼きではなくもっぱら甘いもの系だ。
 まずは定番のチョコバナナを買い求め、次はクレープ、綿あめを二人でシェアして……と、「これぞ!」という食べ物があったらまずはセラフィナへおススメする。二人でほくほくしつつ回っていると、セラフィナが、ある屋台の前でシルミルテの手を引いた。
「シルミルテさん、これ、一緒にどうですか?」
 赤い屋根には「ハッカパイプ」と書いてあった。パイプでいう火皿に砂糖・薄荷糖を入れ、笛が付いたパイプから息を吸う事により砂糖の味が楽しめる。子供向けキャラクターをかたどったソフトビニールがついており、ホイッスルとしても使える。
 物静かそうな外見とは裏腹に、好奇心旺盛で新し物好き、割とミーハーな所もあるセラフィナは、世俗の影響を受けまくっており、流行りの言葉やカルチャーやスイーツにも結構詳しい。
 とは言えハッカパイプは定番の屋台物の一つだが、ハッカパイプが気になるお年頃、というヤツである。
「僕はこのヒヨコさんで、シルミルテさんにはこれを!」
 と言って屋台のおじさんに頼んだのは白ウサギのパイプだった。互いに顔を付き合わせ、二人で一緒にピヨピヨする。口の中に砂糖の甘い味が広がっていき、可愛らしく鳴る笛の音に二人は目元を綻ばせた。

「メグル、これ、おいしそうだよね」
 つくしはメグルと連れ添いながら、お留守番しているもう一人の英雄へのお土産を吟味していた。第一候補は去年も買ってあげた林檎飴。メグルも隣で選びつつ、一緒に売っている苺飴にも手を伸ばす。
「こちらも買っていってはどうでしょう。せっかくなので食べ比べを」
「そうだね。たくさん買っていこう!」
 どちらも宝石みたいにきらきらしたものを購入し、他にも鈴カステラなど喜んでくれそうなものを買い求める。戦利品を抱え、ほくほくしながら樹達の元へ戻ると、平介がカメラを持って皆の姿を撮っていた。
 まだ個別で仲を深めているとは言い難い関係だが、メグルはつくしと似た部分のある平介の事を気に掛けていた。平介は大人だから、つくしよりも上手く隠してしまうだろうけれど。
(『「願い事。信じた道に答えあり。浮気心は決して出さないで」……か』)
 メグルの今年の願い事は「踏み込むための勇気を」。おみくじの内容はメグルを後押しするようなものだった。どちらにせよ、自分から行動しなければ始まらないと、メグルは平介へと数歩踏み出す。
「笹山さん、少しカメラをお借りしてもよろしいですか?」
 声を掛けてきたメグルに、平介は少しだけ目を見開いた。とは言っても、その顔から微笑が消える事はないが。メグルはすぐさま理由を告げる。
「つくしが、笹山さんの映っている写真が少ないと寂しがっていたので、出来れば写真を撮らせて頂ければと」
 これは実は方便である。実際は「借りる」と言うより「一度預かる」と言った方が正しいし、「この人も残す何かを作ったらいいのでは」というおせっかいからの行動だった。
 平介はサングラスの奥で柔らかく目を細め、「では、お願いします」とメグルにカメラを手渡した。そこにタイミングよく、「屋台が本番」と言わんばかりに全力で楽しんでいた米衛門が、イカ焼きと焼きもろこしを堪能しつつ屋台を差す。
「射的発見したッスよ!」
 射的。銃に詰めたコルク弾で、屋台の中に並ぶ景品を撃ち落とす定番物の一つであり、おみくじと同じく恒例行事となっている。
「射的ですか……面白そうですね♪」
「良ければ一緒にやるッスよ!」
「射撃大会なら参加する。くろー、勝負しよう。納豆を賭けて」
「だから納豆は賭けないと言っている」
 というやり取りの末、米衛門、平介、樹、久朗が射撃大会(?)をする事になった。そこにシルミルテとセラフィナがおススメ品と共に帰還し、毎年恒例行事がスタートした事を知る。
「コレお土産! 射撃大会が終わッタら、そノ後不参加組デわなげ会シマしょー」
「あら、いいわね」
「わなげだったら私もやるよ!」
 参加を表明してくれた稲穂とつくしに人形焼きをおすそ分けし、シルミルテはクレアの元にもお誘いを兼ねて歩いていった。その間にもすっかりコツを覚えてしまった米衛門がハッスルし、進撃のマタギ農家に屋台の主が恐れおののく。
「齶田さんすごいですね。それじゃあ私も♪」
 勝負なら手加減を……と思っていた平介だが、本気でやった方がずっと楽しくなりそうだ。「素敵だな」と思っている米衛門の笑顔に負けない程にこやかな笑みを浮かべつつ、平介もコルク弾でお菓子の箱を落としていく。
 勝負としては昨年と同じくポイント制を採用し、米衛門一位、平介二位、樹と久朗が同着という結果になった。その後はシルミルテの提案通りわなげ会を開催し、つくし、稲穂、クレア、シルミルテできゃあきゃあ言いながら輪を投げる。
「稲穂さん、そこです!」
「あっ、あとちょっとだったのに!」
「次は私がやろう」
「頑張ッテ、クレアしゃん!」
 わなげを堪能した後は、全員参加でスーパーボールすくい会へと移行した。ひまわりやウサギ、ヒヨコなど個人のモチーフが描かれたものも多かったので、お目当てのボールを狙ってこれがなかなかに白熱した。平介は熱くはならないが、皆と並んでほのぼの楽しみ、「コレなら喜んでくれそうだなぁ」と、お土産品の入ったビニール袋を嬉し気に眺める。
「ちょっとはずみ具合を確認……えい♪」
 袋からスーパーボールを一個だけ出し、人に当たらない様端っこで投げた所、「平介」と声を掛けられた。振り向くと久朗が立っていた。平介が声を返そうとした、その時、思いの外弾んだスーパーボールが久朗の額にびしりと当たる。
「ごめんなさい久郎さん……今はずみ具合を確認してて……」
「……大丈夫だ。隅で何をしているのかと思って少し呼びに来た……」
 なかなか奇跡的な光景だったが、その奇跡を見た者は二人以外にはいなかった。平介はボールを回収し、久朗の隣に並び立つ。久朗は軽く息を吐いた後、独り言という程に小さな声で低く呟く。
「……『願い事。心正しく精進すれば吉』。おみくじにそう書いてあった。だからという訳ではないが、どちらにしろ、俺は俺にできることをやろうと思う」
 淡々と濁らず淀まず、久朗はそのように平介に告げた。今後の己の在り方を、ただ表明するだけの言葉。
 それに対し平介は、「久郎さんは久郎さん……ですからね♪」と、常と変わらぬ笑顔で応えた。その意図を、久朗がどのように捉えたのかは分からないが、久朗は「そうか」と目元を緩めた。それから隣合ったまま、やはり淡々と言葉を紡ぐ。
「お前の願い事はなんだ、平介」
「内緒です♪」
「……そうか」
 それ以上踏み込む事なく、久朗はそのまま言葉を切った。見る者が見れば、部隊の隊長と相談役、という風にも見えたかもしれないが、気心の知れた友人が他愛ない雑談を楽しんでいる、そんな風にも見て取れた。
 二人を呼びに来たセラフィナは、その光景に一瞬、見守るように暖かく目を細めたが、生憎二人きりにしておくという訳にもいかない。自分の役割を果たすために、口元に両の手を当てる。
「クロさん、平介さん、なんだかイベントがあるみたいです。お二人はどうしますか?」

●着たり撮ったり
「私! 巫女さんやりたい!」
「私も私も」
 巫女希望の聴取に対し、つくしと稲穂は元気いっぱい右手を上げた。なんでも今年は初の試みとして巫女・宮司体験を神社で催しているそうで、やりたい人はやってみようか、という話になったらしい。樹も巫女の方にそっと手を挙げ、メグルとセラフィナは宮司に。他の四人は見学という事で、シルミルテはバランスを取って、衣装体験のみという事で宮司の方を希望した。
「きちんとした格好は慣れていますが、なんだか不思議な感じがしますね……」
「身が引き締まる想いがしますね。どこか懐かしい気もします」
 白い狩衣に浅黄色の袴を履き、メグルとセラフィナはそれぞれ述べつつ己の姿を見回した。白い小袖に緋袴姿となったつくしは、同じ格好となった稲穂と樹へぱたぱた駆け寄る。
「二人とも似合ってる!」
「ありがとう。つくしちゃんも可愛いわ」
「うん、よく似合ってる」
 つくしの手放しの称賛に稲穂は両手を合わせて応え、樹も少々控えめな態度ながら頷いた。見学側に回った久朗は、米衛門達と並んでその光景を眺めている。
「意外と様になってるな」
「みんなええッスよ!」
「皆さん、こっち向いて下さーい♪」
 写真撮る係を買って出た平介が上機嫌でカメラを向け、クレアものんびり眺めながら持参のカメラに収めていく。作業体験も出来るそうで、何事も経験、とセラフィナ始めほとんどが参加を表明し、皆がするのであれば、と樹も参加を希望する。
 ただ、どうやら準備に時間が掛かっているようで。「だったら先に記念撮影を!」と言い出したのは誰だったか。通行人を捕まえ、「お願いします」とカメラを渡す。宮司姿も巫女服も見学勢も、ごちゃまぜになって一つに固まる。
 年も性別も出身国も、英雄達に至っては世界さえもバラバラで、それでも彼らはこうして集まり、同じ時を刻んでいる。
 願わくばこの先も、同じ時を歩める事を。
「それじゃ撮るよー、はい、チーズ」

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【真壁 久朗(aa0032) / 男 / 24 / 能力者】
【セラフィナ(aa0032hero001) / ? / 14 / バトルメディック】 
【稲穂(aa0213hero001) / 女 / 14 / ドレッドノート】 
【佐倉 樹(aa0340) / 女 / 19 / 能力者】
【シルミルテ(aa0340hero001) / ? / 9 / ソフィスビショップ】 
【笹山平介(aa0342) / 男 / 25 / 能力者】 
【御代 つくし(aa0657) / 女 / 17 / 能力者】
【メグル(aa0657hero001) / ? / 24 / ソフィスビショップ】 
【齶田 米衛門(aa1482) / 男 / 21 / 能力者】
【クレア・マクミラン(aa1631) / 女 / 27 / 能力者】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 こんにちは、雪虫です。昨年に引き続き、ご指名下さり誠にありがとうございます。
 かなりアドリブを入れておりますので、口調や呼び方、イメージ、やり取りなどに齟齬がありました場合は、お手数ですがリテイクをお願い致します。
 ちなみにおみくじの吉凶と内容についてですが、こちらも昨年に引き続き、雪虫の創作ではなくガチの結果となっております。
 皆様の一年がより良いものとなりますよう、今年も心よりお祈り申し上げます。
イベントノベル(パーティ) -
雪虫 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2018年02月05日

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