▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『まもりとなつきの始まりの話・続 』
神塚 まもりaa5534)&高森 なつきaa5534hero001

 世間一般ではこのような状況を「朝チュン」と呼ぶ。

「「…………」」
 神塚 まもり(aa5534)と高森 なつき(aa5534hero001)は一つの布団の中、センチの距離で見つめ合っていた。目覚めたのは数秒前。
「レモンはからあげにかけるべきだったね……」
 寝ぼけているのか混乱しているのか、声を発したのはなつきだった。内容は意味不明だが。
「え、え? お……おはようございます?」
 まもりも脳味噌をグルグルさせつつも一先ず挨拶(?)を返す。おはようございます、と返したけれど今は何時なんだろうか。そっと時計を見れば朝だった。カーテンの隙間からも朝の光が射し込んでいる。そしてまもりがカーテンから今一度、正面へと視線を戻せば――目の前に、色素の薄いやたら整った顔の男。近い、近すぎる。
(ああ、昨晩ののみにゅけーしょんとやらの結果、俺はこの男に――いや、振り返るのはやめよう)
 ゆうべは大惨事でしたね。寸の間だけ、まもりは遠い目をした。
(ああそうだ……昨晩はやっちまったのだ……)
 一方でなつきも昨日の夜に思いを馳せていた。とりあえず謝らねばなるまい。そう思っては、目の前の――ともすれば乙女にも見える彼の頬をそっと撫でて。
「昨日はごめんね……無理させちゃって」
(昨晩の記憶がある……だと……)
 これは気まずい、気まずすぎる。「あー、」とまもりは視線を彷徨わせつつ、モゴモゴと言葉を紡いだ。
「いや……なんかもう途中からどうでもよくなってたんで……」
 なぜ撫でる……と思いつつも、まもりは苦笑する。昨夜、居酒屋にて、突然酔いだした英雄をどうにかなだめて共鳴して――居酒屋の店員に「男性二名様でしたよね……?」という顔をされたけど気にしないことにして――帰宅してそのままグッスリだった。
「ううむ、今まで酔った記憶なかったけど、召喚で能力が落ちた時、酒も弱くなったかな……それともどこかのオレはこうだった、のかな」
 まもりの頬をゆったり撫でながら、なつきは考え込むような仕草を見せる。まもりは「そうなんですか、どうなんでしょうねぇ」と当たり障りのないことを言っておいた。とりあえず上体を起こす。見渡せば、見慣れた自宅。それがどうしようもなく日常で、今の状況が現実なのだと思い知る。愚神に襲われたこと、英雄と誓約して共鳴したこと、H.O.P.E.エージェントに登録したこと……。
「……」
 一つずつ整理して、まもりは深呼吸を一つ。
「狭い」
 そして呟いた。そう、一人暮らしな貧乏大学生の自宅が広いはずがなく。六畳一間の安アパート。キッチン風呂なし、トイレは共有スペースのみ。そこに一組の布団を敷いて、大の男二名で無理やり使えば、約束されし圧迫感。
「うーん……引越し、追々必要だよなあ、これ。稼がないとなあ……。手っ取り早いのは夜の仕事か……」
 ブツブツ独り言ちるまもり。H.O.P.E.エージェントとして活躍すれば報酬も得られるが、こんな昨日に誓約したようなヒヨッコもヒヨッコにいきなり高報酬でデンジャラスなミッションができるはずもないだろう、ていうか怖いし。
「……、」
 なつきも上体を起こした。考え込んでいるまもりの横顔を見る。
「狭いなら、オレは幻想蝶の中でもいいけど」
 究極の話、英雄は食事をしなくても死にはしない、食費はかからない。幻想蝶の中でじっとしていれば場所も取らない。彼は気遣いでそう提案したのだが、
「嫌だ」
 なつきの予想に反して、まもりは真剣な瞳で振り返る。
「家族なら同じ空間で過ごしたい」
 二人が結んだ誓約は、「まもりとなつきが家族であること」。じっと英雄を見澄まして、それから、まもりはどこか寂し気に膝を抱えた。
「……一人は、もう嫌だ……」
「そっか、……うん、きみの言う通りだ。家族なら同じ空間にいないと、だね」
 軽はずみな言葉だっただろうか、詫びも込めて――そして誓約者のいじらしさに心がくすぐられ、なつきは彼の頭を優しく撫でた。青年は大人しく撫でられながら、ちょっとだけ照れ臭そうに視線を揺らしては小声で続けた。
「ん。それと、姉さんみたいに呼んで欲しい……かも」
「わかったよ。じゃあ改めてよろしく、まも……ちゃん」
「よろしく、……。と、とりあえず、布団から出よっか」
「そうだね」

 さて。

 朝である、と言ったが間もなく昼になりそうな時間だ。
 長いこと寝ていた。疲れは取れたが、昨日は帰宅してすぐ寝たために、着替えも風呂もロクにしていない。
「うっ、汗臭い……」
「お布団の中で汗びっしょりになったもんね〜」
 人間の体温ってあったかいんだねーとなつきはほのぼのしている。
「朝ご飯なにか作ろっか?」
 そのまま問うが、まもりは悲しい笑みを浮かべこう答えた。「冷蔵庫に味噌しかない」と。
「あ、あ〜……流石に具なしの味噌汁は……うん」
「うん……お腹は満ちるかもしれないけどさ、心が削れそうで……」
「そう……だね……」
 いかに料理上手でも、材料がなければどうにもならない。なつきは慰めるような笑みを返した。まもりは「パン屋さんからパンの耳でも貰うかな……」などと独り言ちつつ、ともかくだ。
「まずは銭湯に行こっか。近所にあるんだ。丁度、一番風呂もらえる時間だし」
「いいね〜、行こう行こう〜」
「そうだ! 共鳴したら代金が一人分に」
 指を鳴らして得意気に言い張るまもり。「こら〜」となつきは肩を竦める。
「まもちゃんそれは犯罪ではないだろうか! 許しませんよそういう共鳴の使い方は〜」
「今なら多分人いないし! 俺、女の裸見ても気にならないし!」
「オレは気にするし相手にも悪いよ〜それに各々きれいになれないよ〜」
「あっ そうか……」
 うん、この話はなかったことに。

 というわけで、支度をしたら出発だ。
 今日はいい天気である。町の風景は昨日となんら変わらない――尤も、なつきにとってはこの世界にやってきてまだ二四時間経っていないわけで、昨日というものがないのだが。しかし英雄は別段光景に驚いたり「あれは何?」と聞いてきたりする様子はない。まもりはなつきをチラと見る。噂話によると、英雄のカルチャーショックは凄かったりするらしいが……。
「うん、どこかのオレの記憶と似たような街並みだね」
「? そ、そうなんだ……」
 詳しいことは分からないが、とかく、うちの英雄にはそういう衝撃はないようで。

 そんな感じで徒歩十分程度。道中、「あそこがいつも使ってる激安スーパー」「ここがうちから最寄りのバス停」「この道をまっすぐ行くと最寄り駅」などなど、町の案内もしつつ、昔ながらの銭湯に到着した。

「おっふろーおっふろー♪」
 更衣室(ちゃんと男風呂の更衣室だ!)でいそいそと服を脱ぐまもり。男同士だし風呂場だしなので別になつきの前で脱ぐことに抵抗はない。家族でいよう、と誓約も結んだわけだし。
「……」
 なつきはそんなまもりの姿――ではなく彼のお風呂セットをじっと見ていた。シャンプー、トリートメント、ヘアオイル、クレンジングオイル、ピーリング剤、洗い流すパック、洗顔剤、洗顔用ブラシ、などなど。風呂から上がった時用の化粧水や保湿クリーム、ヘアミストやボディオイルまである。いずれも女子用のもので、パッケージが可愛らしい。
(女子力すごい……)
 しかも安物ではない辺り、ウン。それほどまもりが外見に気合を入れているということだろう。完璧な女装は日々のケアから始まるのか。うーん、すごいなぁ。すごいとしか言えない。これちょっとケチれば、冷蔵庫の中が味噌だけになるなんて事態を防げるんじゃ……となつきは思ったが、そっと黙っておく。
 と、なつきの視線に気付いたまもりが彼を見やった。そして目を真ん丸にする。
「なつきさん脱ぐと凄いな!?」
「ん? あ〜」
 なつきは着やせするタイプなのだった。鍛え上げられた肉体は無駄がなく引き締まり、精悍である。「ほんと見た目だけなら夜の仕事でめっちゃ稼げそう」とまもりはボソッと呟いた。薄々、中身の残念さには気付いている。
「多分、肉体のベースは軍人だったオレだからね〜」
 割れた自分の腹筋を見つつ、なつきが言う。まもりは首を傾げた。
「その、『なになにだったオレ』……って、さっきから気になってたんだけどどういうこと?」
「う〜ん……オレは多分、特定の誰かではないのだよ……」
「へえ〜。英雄っていうのは不思議なんだなぁ」
「そうだね〜」
「他人事っぽい相槌だけど、なつきさんのことだからね……?」
 まあ、まだ出会って一日も経っていないのだ。これからそういうことをゆっくり知っていけばいい、お互いに。
 そんなことを思いながら、風呂場へと。かけ湯をして体を洗ったりして……まもりは色々とケアの工程が多いので、なつきは一足先に湯船に浸かって彼の姿を湯煙の向こうから眺めていた。いやあ、こうして見るとほんと女子。何も知らない人がフッと見ると、女の子がいるのかと勘違いしてブッとなりそうだ。
 そうして間もなく、「おまたせー」とまもりが湯船にやってくる。二人で並んで肩まで浸かって、ほーーーっと息を吐いた。
「っはー生き返るー……」
「お風呂きもちいいね〜……」
 心地よい温かさに心と体を委ねつつ。
「お引越しのことだけど〜」
 言葉を発したのはなつきだ。
「約束通り仕事探すよ〜。目指せキッチンのある家〜」
「いいねー。俺も頑張ります」
「うん、でも、詐欺まがいのことはやめておこうね〜」
「ウッス……もう昨日で懲りました……」
 なつきに諭され、まもりは肩を竦める。もうあんなことはやめよう。真っ当にお金稼ぎをしよう。そう己に誓う。天上を見上げ、深呼吸。

(今日から色々、忙しくなるなぁ……)




『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
神塚 まもり(aa5534)/男/21歳/回避適性
高森 なつき(aa5534hero001)/男/18歳/カオティックブレイド
パーティノベル この商品を注文する
ガンマ クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2018年02月08日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.