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『変身と水で合体だ? 』
海原・みなも1252

●交流
 都内某所、海原 みなもが以前訪れたことのあるさびれた雰囲気の公民館。雰囲気だけで古いが適宜使われている。使っているのは人間から、異界と行き来する存在たちと幅広い。
 みなもはたまたま通りがかり講座に参加したのが縁で、時々訪れるようになっていた。
 理由はバケガク、すなわち化ける能力が自身の能力に応用できるかもしれないという考えと、参加者との交流が楽しかったからだ。
 参加者にいる猫又やテングはそつなく変化の術を覚える。みなもの真似をしたり、テレビや雑誌などで話題の芸能人に化けてみせてくれる。
 子タヌキたちは純粋に可愛いらしく、成長も見られる。
「ねーねー、今日は、もふもふに化けるよ! えい!」
(え、すでにもふもふでは?)
 ポンと化けてそこにいるのは、生後半年くらいのぬいぐるみみたいなパンダだった。
「どう!」
「上手です。でも、動きもパンダらしくしたほうがいいですよ」
「うー。おねーちゃん、口はタッシャになったよね」
 子タヌキ・パンダは頬を膨らませた後、のっそのっそと歩き始めた。
「ぼくは、おーきなのに化けるよー」
 別の子タヌキが宣言をする。何分の一かのサイズの東京新タワーがそこにあった。
 全長は子タヌキより、みなも拳一個分大きいかもしれない。
「上手です! モデルが大きいだけですよね……」
「わーい……う、うわー」
 タワーが喜びの横揺れから、パタリと倒れた。
「ふふふ、あたちは猫又のおねえさんの真似をするのー」
 猫又が花魁姿の流し目で「言うこと言うねぇ」と艶やかに微笑む。同性のみなももドキドキするほど、素敵だ。
「じゃ、いくよー」
 三匹目の子タヌキは花魁に化けた。化けたが、体型はタヌキとしてのイメージ年齢、五歳くらいだろうか?
「……可愛いですよ」
 みなもは嘘は言っていない。

●実験
 みなもは手で水を紡ぐように動かし首をかしげる。手を動かせば、みなもの想像している形にはなる。モデルに子タヌキを選び、紡ぎあげる。
 自分が変身する術と水を変形させる術は、どこかに通ったところはあるが、やはり違う部分も多い。
(これを変身と合わせるとします……そうなると、両方を維持することが求められるのですよね?)
 理論的にはできる。色や手触りをどのように伝えるかが問題だ。水の子タヌキに色や毛並みなど付け加えていく。
「怖い顔してるよ?」
「もう飽きちゃった?」
「これはぼく?」
 子タヌキたちがつぶらな瞳で見つめてくる。
 みなもは眉間に手をやった。
「考え事していました。あたしも新しい何かに挑戦したいと思っているのです」
 子タヌキたちは目をキラキラさせ、異口同音に「どんなの?」と問う。
「水を糊のように……粘土のように使って、二人以上で大きなものにするとか……」
「やるやるー」
「え、えっ?」
 子タヌキたちは喜び、みなもの返答を待たずに新タワーを作ることが決定する。土台、中間、展望台などがある部分と分解して形を作る。
 みなもはこの子タヌキたちにかけていいものかと考える。
「お前さんが考える術はどういうもんだ?」
 ためらうみなもに講師のタヌキの刑部一門らしい百一郎が声をかける。
「えっと……化けたヒトを包み込んで水で違うものにできればと思います」
「それで危険はあるのか?」
「な、ないと思います」
「それはお前さんが混ざっていないと駄目なのか?」
「近くにいればいいです」
「なら、あの三匹で試してみてもいいだろう? 複数の術を使うのは簡単な作業ではないだろう」
 みなもはうなずいた。一つずつ試していけばいいのだ。
 子タヌキたちはそわそわと待っている。
(無機質な物がワクワクして動くというのは……不思議ですよね)
 みなもの肩の力が抜けた。
「行きますよ! 準備はいいですね」
「はーい」
 タワーのパーツから元気な声が響いた。
 水が三匹を包み込む。みなもがすることはパーツを積み上げて一体感を出すことだ。子タヌキたちは水がくすぐったいのか時々動く。
「できました」
 みなもの宣言通り、子タヌキサイズより大きな東京新タワーになっている。
 タワー相変わらず小刻みに揺れる。
「無機質は難しいのでしょうか?」
「結局は技術だな」
 百一郎は人の手にあったサイズの温かなラーメン入りどんぶりに化けた。
「す、すごいです」
『試しに持ってみろ』
 どこからか声がして、汁の水面が揺れた。
 みなもはそのどんぶりの側面を両手で包むように持とうとして、手を離す。
「熱いです」
 百一郎は元に戻った。みなもの反応に満足げだ。
「あと大きさならば、こういうこともできる」
 百一郎の姿が揺らぎ、そこには見上げるばかりの僧形の男がいるが、天井があるために膝をついた微妙な格好になっている。
 百一郎に押されて子タヌキたちの変化が解け、床に転がった。
「大きさを変えるのは難しいですよね?」
「おぬしだって、タヌキに化けているのだから、サイズは変わっていただろう?」
 しゃべると同時に百一郎は元に戻った。
「大きくするのも要は同じのことだ。こやつらより筋は良かった」
 子タヌキたちはサイズをあまり変えられないでいる。
「先生と協力して一つやってみたいものがあります!」
「ほー?」
「オルトロスです!」
「あれか……しかし、どうするんだ?」
「頭を作ります! いえ、胴体は足だけでしょうか?」
「でも、サイズを変えられないと結局同じだぞ?」
「なら、頭を全身で作ってみます!」
「なかなか斬新なアイデアが……」
 みなもと百一郎はオルトロスの頭部を作る。百一郎がみなもを見て手直しをしてくれていた。
 それから、水で二人を包み込む。
「冷たいかと思ったがそうでもないな」
 百一郎がつぶやく。
 みなもはそれに応える余裕はなかった。変身を維持しつつ、水を操るのは意外と骨が折れる。
「落ち着くんだ。簡単に死んだりせぬ」
 百一郎が言った内容に、みなもの頭の中が一瞬真っ白になった。
(子タヌキの時みたいに、気をつけなくても大丈夫と言うことですね)
 百一郎はみなもの行動をよく見ていた。子タヌキの時は相当気を付けていた事実を見て理解していたのだ。
 水をじわじわ動かすより、一気に形作るほうがきっと簡単だ。
「分かりました! 思いっきりやってみます!」
「おう」
 みなもは水を想像した通り動かした、一気に。自分でもやりすぎたかというくらい水が瞬間あふれたように見えた。。
 しかし、それが引いた瞬間、位置が高くなり周囲の様子が目に入る。
「……成功したか見えない」
 百一郎がため息を漏らす。
「それに部屋が狭いですね……」
 オルトロス、サイズも色々あるだろうが相当の大きさはある。結果、天井が近くなった。
 子タヌキや猫又、テングの反応を見ると成功していることは分かった。
「かっけー」
「わー、頭が二つある犬だ!」
「にげないとなのー」
 子タヌキたちの笑い声が響く。
 みなもは不意に、水の部分を触られた気がした。
「お肉あるみたい」
「もふもふ」
 水であるが、手触りも再現できているようだった。
(成功したのですね)
 みなもはホッとした。
「集中しろ!」
 百一郎の緊張した声が響いた。
「あっ」
 みなもは床に尻もちを付いた。
「いきなり成功では面白くはないだろう」
 百一郎は元の姿に戻りニヤリと笑う。
「でも、うまく行ったんですよね」
「どこが問題か分析すれば良いわけだ」
 みなもは失敗にがっかりもしたが、成功していたことは事実である。だからこそ、何が問題か考えていく。
「おねえちゃん協力するよ」
 子タヌキたちが楽しそうに言う。
「そうですね! 成功していけばいいのです」
「まあ、無茶はしないでじっくりやればいい」
 百一郎はなだめる。みなもは無理してやろうとして、ふらついたのだった。
「はい。また、よろしくお願いしますね」
 晴れやかな笑顔でみなもは頭を下げた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1252/海原・みなも/女/13/女学生
???/百一郎/オス/不詳/バケガク講師

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 再びお目にかかれまして光栄です。
 さて、交流しつつ、新しいことをしつつ、充実するみなもさんの日常となっていればよいなと思います。
 オルトロスって大きいイメージがあるのでそのまま大きくしました。チワワ程度だったら怖くないですね。
 いかがでしたでしょうか?
東京怪談ノベル(シングル) -
狐野径 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年02月16日

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